宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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ごめんなさい、後編出す前に休載宣言といきます


さらば 我が友 暫しの別れぞ 前編

「状況は?」

 

「敵は、この星を中心にして包囲陣を敷いている。総攻撃を受けるのは時間の問題だろう」

 

 全周スクリーンに拡大表示されたガトランティス艦隊は空母とその護衛艦隊を別に残し、それ以外で星の周囲を固めている。まさにネズミ一匹通さない構えだ。

 

「副長。自分に、この場の指揮を任せて頂けないでしょうか? 勝算はあります!」

 

 一皮むけたような顔で具申する古代の勢いに、リクと真田は押された。何となく互いに顔を見合わせると、後輩の成長を実感して含んだ笑みとなった。

 ここは任せてみよう。そう決めるとリクは右手を古代の肩に置いた。

 

「敵の火炎放射器対策は完了している。あれはこっちからすればもう無効武力だ。作ったシステムで確率8割。プラス島君の操艦技術で回避率は9割を超える。やりようはある」

 

「ああ。手札ならもう一つ真希波君が用意してくれた。準備は万端だ。副長権限で、これより艦の指揮を戦術長に一任する。睦月君も適度に補助を頼む、取らないように」

 

「分かってますよ。爺臭い言葉ですが、若人の成長の機会を取るほど意地悪じゃありません。古代くん、今からこの船の指揮官は、君だ」

 

「はっ!」

 

 人生の大先輩から任された。それを身に受け、古代は精一杯の敬礼を返した。

 

 ______

 

 

 

 一方第8警務艦隊とガイペロン級3隻の元には、バーガーたちを乗せた内火艇が着艦しようとしていた。動物のように伸びた4本足から着陸用のタイヤを伸ばすと緩やかにランベアに着艦して、昇降用ハッチを開いた。

 

「内火艇着艦。調査隊、帰投しました」

 

「心配かけさせて、あのバカ」

 

 臨時でランベアの指揮を執っていたネレディアも安堵し溜息を付いた。だが安堵していられる状況ではない。ガトランティスの連中がすぐそこまでやって来ている。その状況をすぐにバーガーに伝えて戦闘配置に入らなければならない。

 

 だが、内火艇から降りてきたのはバーレンのみ。昇降ハッチを直ぐに閉じてしまい内火艇は浮上を始めた。

 

「内火艇、ランベアを離れます!」

 

「えぇっ!?」

 

 バーガーはどこへ、それを理解するには時間はいらなかった。バーガーはもう捨てにこの状況を知っていて、その状況を打破できる戦力がある事も知っている。

 

 バーガーは、ミランガルを使うつもりだ。

 

「置き去りにしたわね……私を。各空母に連絡、動ける機体を甲板上に出して待機。パイロットもよ」

 

 _____

 

 

 

「アプローチに入る」

 

『こちらミランガル。着艦を許可する』

 

 後部主砲塔がエレベーターで格納されて内火艇の着艦スペースが出来、そこに緩やかに着艦する。

 

 改ゲルバデス級航宙戦闘母艦 ミランガル。数が少ないがガミラス内でも目立つ見た目とサイズを持つゲルバデス級は、空母と戦艦の両取りを目指した艦だ。だがそれは、搭載機数が20機程度である事と、砲塔数は多いが主砲口径が280ミリでデストリア級にも満たないという有様で、結果器用貧乏に終わってしまった。

 

 だがこのミランガルはそんな結果に抗った結果、280ミリが330ミリに。133ミリが280ミリに換装されて砲戦能力の向上が図られた。

 

 しかし、口径がアップした砲門54門を賄うためにはゲシュ=タム・ドライブの出力だけでは不足気味で、完全稼働が出来ず常に何処かを持て余しがちとなった。

 

 だが何であれ器用貧乏から脱却する事が出来たこの船は、正しく「航宙戦闘母艦」としての火力と、空母には劣るものの艦載機搭載能力を持つ事となったのだ。

 

 

「悪いなネレディア。お前の船借りるぞ」

 

「良かったんですか、少佐?」

 

「死なせたくねぇんだ、キリュウを見てたらな。メリアが逝ってネレディアまで逝かせる訳にはいかねぇよ。……なんかガキ臭いな」

 

「別に自分は少佐のそういう所嫌いではありません。やるんですよね? テロン人と」

 

「握りこぶしで握手は出来ねぇよ。てゆうか殴るくらいしか出来ない。手を結んだ以上やってやるさ。あのインチキヴンダーもいる。やりようはある」

 

 内火艇から降りたバーガーとメルヒは艦内に入りブリッジに移動した。艦橋に入ると皆が忙しく動き回っており、少しのもたつきはあれど戦闘準備が進められていた。

 

(やっぱ警務艦隊だな。第6ん時みたいな慣れてる連中じゃねえ)

 

「あれだけやっても沈められなかったんです、あの戦艦は。俺たちが一番よく知っています」

 

「ドメル将軍の言う通り神でも天使でも殺しそうだ、あの船は。強さは折り紙つきどころじゃ済まねぇぞ。指揮官はいるか?」

 

「自分がそうです」

 

 操艦用の舵輪を握っていた1人の大尉がバーガーに敬礼をした。バーガーも敬礼を返し話を続ける。

 

「奴らが来ている。ネレディアにはランベアを任せてきた。迎撃を行うが指揮権を渡してくれるか?」

 

「……了解しました。ですが、第8警務艦隊と空母群のみでは蛮族共を撃退する事は厳しいです」

 

「その辺は戦力の当てがある。とんでもない規模のバケモノ戦艦だ。聞いた事ねぇか? 途方もなく大きな1隻の戦艦。俺らが小鳥に見えるくらいのクソデカい鳥みたいな戦艦だ」

 

「鳥みたいな、でありますか? ……まさか!?」

 

「アイツは有名だからな。ドメル将軍を破った、神殺しの船だ」

 

 全てを察させたバーガーはマイクを受け取り、全艦隊に向けて放送を始めた。

 

「全員そのままで聞いてくれ。俺らは奴らを殲滅し、爺さんやガキ共を故郷に帰す。お前らも、ガミラスの軍人ならわかる筈だ。矢面に立つ俺らが皆揃って帰れる保証はないが、それでも1つ、俺を信じて着いて来て欲しい。この難局を切り抜けられるには俺達と、テロン生まれの苦笑いする位クソデカ出鱈目戦艦の合同艦隊しかいない。思う所もあるかもしれないが、今は同じ方向を向こう。話は以上だ。総員持ち場に付け。戦闘配置ッ!」

 

「「「ザー・ベルク!」」」

 

「「「ガーレ・ガミロン! ガーレ・ガミロン! ガーレ・ガミロン!」」」

 

 ____

 

 

 修復が終了したWunderは甲板部を収容し惑星より発進。厚い雲の中を泳ぐように進み続け、その重厚な艦首で雲を突き破り、その翼で雲を切り裂くようにして浮上した。その横から浮上する艦隊をWunderのレーダーが捉えた。

 

「9時に浮上する艦艇確認、ガミラス艦隊です!」

 

『艦種識別、クリピテラ、ケルカピア、デストリア、ゲルバデス改タイプヲ確認。ガミラス艦隊、Wunderト同航』

 

 イスカンダルまでの航海で嫌という程見てきたガミラス艦艇と、フリングホルニによく似た一際大きい艦艇も確認できた。ガトランティスを相手にしなければならないのにガミラスまで出てきた。艦橋に一気に緊張が走る。

 

「砲撃準備」

 

「撃つな。彼らは友軍だ」

 

「おいおいお前……勝算ってまさか」

 

「ああ、我々は1人じゃない」

 

「休戦協定結んだとしても早いよ流石に。古代くん、一体何があったんだ?」

 

「外で落ち合おうと決めたんです。地球ガミラス連合艦隊です」

 

 涼しい顔で「連合艦隊」を作ったと言われればもう何も言うまい。想定外ではあるが要は戦力が増えたのだ。共通の敵を持っている以上共通の驚異にも晒されている為、すべき事はすぐに分かった。

 

「それだったらあのガミラス艦隊も火炎放射の標的だ。対処の手段は共有しておきたいな」

 

「それならWunderの観測データを向こうの旗艦に送って、旗艦をハブにしたネットワークをガミラス側で組んで貰うわ。向こうが正式に編成された艦隊なら、データリンクくらい問題ないでしょう。古代くん、伝達をお願いね」

 

「はい。ガミラス旗艦に電文を《敵旗艦は高エネルギーをワープで跳躍させて着弾させるアウトレンジ攻撃が可能。敵の攻撃予測データを攻撃兆候時に送信する。全艦リンクし、攻撃に対処されたし》。全艦に達する。航空隊は全機発進し敵艦載機及び空母の撃破を。Wunderはバーガー艦隊と共に、敵主力の進攻を阻止し、これを叩く!」

 

 


 

 

「ツーダッシュ、式波・アスカ・ラングレー。行きます!」

 

「アルファ2山本、出る!」

 

 第3格納庫に格納されていた改2号機が発艦し、第1格納庫からカタパルトに上がったゼロ改2号機も発艦した。続いて第2格納庫では発着艦用ハッチが開き、コスモファルコンの発艦が始まった。

 

「104沢村、出る」

 

 いつも通りの発艦であるが、格納庫の前方に張り出した管制室に桐生の姿があった。一瞬だったが彼女のサムズアップも見えて、沢村も慌てて返す。機体はスムーズにカタパルトに載せられて滑り落ちるように発艦、そのまま前方へと飛んで行った。

 

(もうちょっと時間くれよ……)

 

 

 ミランガルとニルバレスでも発艦が続いており、メルヒもツヴァルケの1機を借りてヘルメットを装着しバイザーを下ろした。

 

『クリム・メルヒ少尉、発艦準備状況知らせ』

 

「CP、各部問題無し。出ます」

 

『了解した。発艦タイミングを譲渡する』

 

 コンソール正面に「準備よし。発艦許可」と文字列が表示され、機体後方の甲板がブラストディフレクターとして立ち上がる。

 

「クリム・メルヒ、発艦する」

 

 ツヴァルケがエンジン出力を上げて甲板を滑走し、ミランガルの甲板から飛び立った。

 

『第8警務艦隊所属の全機に告ぐ。目標は接近する敵航空機及び敵空母。テロンの航空隊と合同で攻撃に当たれ。各機徹底せよ、派手にやれ』

 

 全機発艦しバーガーからの命令が下りコスモファルコンの隊列に合流する。尾を引く水色の光と橙の光。地球とガミラスの混成攻撃隊は氷塊の群れを盾にしながら慎重に速やかに接近を始める。

 即座にレーダーに前方に反応が複数。もう既に相手は発艦しており、凡そ航空機とは思えない見た目のデスバテーダーが接近してくる。

 躊躇わずに敵機をロックオンし翼部兵装ポッドからミサイルを射出。真っ直ぐに目標に突き進んでいき、爆発。惜しくも逃れた機体が幾つか存在しているが、目標を失ったミサイルはそのまま氷塊に突っ込み氷塊が爆散。細かい氷がまるで三段の様に飛び散りデスバテーダーに穴を開け、制御を失った敵機は仲間同士で衝突を起こし木っ端みじんとなっていった。

 

 

 

 ____

 

 

【Transfer alert】

転送警報

 

 

 それは突然の事。戦闘艦橋内に警報音が鳴り響き「転送警報」と大きく表示される。

 

「反応あり! 方位33、vs4!」

 

「バーガー!」

 

『おうよ!』

 

 島が大きく右に操縦桿をかたむけ、バーガーも操舵輪を一気に右に回す。その他ガミラス艦転送位置と予想射線上から、自慢の機動性を使い退避していく。

 

 その数瞬後、退避した射線上を火炎が突っ切っていき、全周スクリーンを光で染め上げる。

 

「方位14!」

 

 更に回避、だが一隻のクリピテラ級が回避しきれず艦底部を解かされ、ダメージコントロールも儘ならず爆沈した。

 

「方位56!」

 

 恐らくこれでラストの1発。相手がこの攻撃を3連装化しているならば、3回撃ってしまえば次のチャージまで時間がかかる。Wunderも至近ではあったもののギリギリで回避に成功し、ミランガルもギリギリ。だがニルバレスが火焔の周囲を飛ぶエネルギーに被弾し艦底部を損傷、何とか小破に収まったが艦底部の砲塔を失った。

 

「被害状況は?」

 

「波動防壁の消耗が激しいです。あの火炎放射器を潰さない限りジリ貧です。向こうはクリピテラが一隻落ちました」

 

「……そうか。完全ではないが、ダメージは少なく済んだ」

 

 完全回避可能な物を作れなかったことを悔やんでいるのか、リクの声のトーンが少し落ちた。だが無いよりは作ってよかったと切り替えるとまた前を向く。

 

「古代くん、今のうちにだ」

 

「距離を詰める。第二戦速でガミラス艦隊と歩調を合わせる。主砲及びVLS発射用意」

 

 既に配置が済んでいる主砲副砲が稼働し始め、VLSも発射管ハッチを一気に開いた。いつもと一つだけ違う事と言えば、艦首に2門設けられていた波動砲口が封印栓で塞がれている事だ。

 

 損傷して修復不可能された波動砲は2門とも取り外されて片方はコスモリバースとなった。大きな手札を失った代わりに地球を守る力を得たが、今のWunderはそれを守りながら戦う必要がある。厳しい戦いとなるだろう。

 

「波動砲は使えない……でも、無くたって」

 

「Wunderはやれる。俺達とこの船を信じる」

 

「そうそう自信を持っていこう。今のこっちの布陣は?」

 

「Wunderを中央にしてガミラス艦隊が左右に展開しています」

 

 Wunderの左右にミランガルとニルバレスが、その両艦の周囲にデストリア級、ケルカピア級、クリピテラ級が周囲を固めるようにした布陣で進んでいく。

 

「古代、正面の旗艦はこっちで相手をなろう。ガミラス艦隊は左右を蹴散らしてもらうべきと考えるが?」

 

「同じ事考えてました。バーガー、正面のバケモノは俺達が相手をする。バーガー艦隊は左右の敵艦を掃討して欲しい」

 

『最初からそのつもりだ、奴らの対処は俺の方が知っている。バケモノは任せたぜ』

 

 ガトランティスとの戦闘経験が豊富なバーガーが左右の駆逐艦級等を掃討し、Wunderがバケモノを倒す。どうやら考えている事に齟齬は無かったようで、スムーズに決まった。

 

「主砲斉射用意」

 

「主砲1番から4番、敵旗艦に照準合わせ。エンジンからのエネルギー伝導終わる。測的よし!」

 

「撃ち方始めっ!」

 

 

 _______

 

 

 

「グヌヌヌヌゥ何故当たらぬゥ! 何故だァ!」

 

 3連装火焔直撃砲。ガトランティスの威信をかけて開発されたこの火砲は、グタバ遠征を何度も何度も押し返されている現状を変えるために生み出されたキメラだ。

 

「恐らく……転送投擲器の転送先が読まれているのでしょう……。空間波動エコーが発生する都合上、それを読み取り回避を行うことが出来れば、この火砲は極端なまでに弱体化します……そうお伝えしたはずですよ」

 

「なら回避できぬようにしろォ!」

 

「それは火砲そのものの改良になりますので……一度帰還……しなければ出来ま」

 

 科学奴隷の言葉はそこで途切れ、そこには事切れた死体が転がっていた。ダガームが振り下ろした剣には紫色の血、ガミラス人の血が滴り、剣を一振りし血を払った。

 

「ガミロンの青虫如きが吾輩に意見を申すとは……笑止ィ!」

 

「大都督、丞相閣下より至急電であります」

 

 そこに丞相からの通信が入り更に苛立ちを覚える。無視してしまいたい気持ちに支配されるが、このメガルーダは大帝の命令で丞相から賜ったもの。無視することは出来ない。

 通信が繋がり床から蒼炎が吹き上がったかと思えば、次の瞬間には白髪の女性が浮かび上がった。

 

「これはこれは」

 

『その報、神殺しの船発見せりは真か?』

 

「……御意」

 

『それを今破壊しようとしているそうだな。撃沈ではなく拿捕を徹底させよ。あの船は帝政ガトランティスが進む先を得る為の方舟。断じて撃沈は許さん。それと、《静謐の星発見セリ》とも報を受けたが、何故申さぬ? 静謐の星への攻撃は断じて許さん。大帝に献上するべき星、遮蔽の技術を傷つけて何と申す』

 

『やはり出自は族の頭目。ガミロンの科学奴隷に作らせた火焔直撃砲と、()()に複製させた神殺しを与える器ではなかったという事か』

 

「黙れェェッ!!」

 

 再び振り下ろした剣はサーベラーを映し出すホログラム装置を叩き割り、装置からは火花が散っていた。副官が後ずさりするがダガームの剣は副官の首を捉え、首と胴体が2つに分かれた。

 

「命する! キスカ隊と合流させ側面から仕掛けさせる! その上で白兵戦を仕掛け制圧する! これは我の手柄、小娘などに渡すかァ!」

 

 ダガームの命令でメガルーダの左右に展開するククルカン級とラスコー級が前進を始め、別行動中のキスカ隊からも艦載機がさらに発進した。

 

「仕留めよォ! 功名を上げよォッ!!」

 

 

 ____

 

 

 

「撃ち方始めっ!」

 

 第1から第4主砲が一斉に陽電子の束を放ち、旗艦直掩の駆逐艦を薙ぎ払った。まだ5隻以上が旗艦の前に立ちはだかり、主砲照準を別の駆逐艦に定める。

 

「続けて、撃て!」

 

 更に放つ。駆逐艦の艦橋部が丸ごと抉れ、撃沈した。だが撃沈してでも一矢報いる積もりか、多数のミサイルが接近している。その数30。

 

「敵艦撃沈座標より飛翔体確認。ミサイルです。数30、直撃までt-32!」

 

「全ミサイルを識別。マリさん、例の物を! 南部、ぶっつけ本番行けるか?」

 

「了解! マルチロックオン用意、スタンバイ!」

 

 全周スクリーンに重ねるようにしてホロスクリーンが展開され、識別されているミサイルにVLSが割り当てされていく。コスモゼロ改に搭載されたマルチロックオンシステム。元々は敵機敵艦を識別して、自機が搭載しているミサイルと機銃、機関砲の目標を半自動で割り当てるシステム。

 メインは人の操作だが情報量の多さから内蔵コンピュータのアシストも必要としており、これを戦艦に持ち込むとなればその砲門数と情報量、尚且つ宇宙という三次元の戦場である以上、情報量は戦闘機の比ではない。

 

 だが、膨大な情報処理能力と的確な空間認識能力をMAGIで管制し、最後に人の目と感覚で目標を識別することでこれを解決。たった半日で出来る最低限度の防空システムとして、これは完成した。

 

 過去に存在したイージスシステムに相当する宇宙戦闘用イージスシステム。それが、このMeteorシステムだ。

 

 

「Meteorスタンバイ。全目標の探知完了。目標各個に割り当て」

 

「撃てる物は全部ばら撒け。撃ち漏らした物は対空で潰す。博士!」

 

「立ち上がっているわよ。南部君、出来れば全部お願いね」

 

「了解! 当たれぇ!」

 

 第二船体と艦尾後方のVLSからミサイルが発射され、1発1発が割り当てられた目標に突き進み、9割を処理した。

 

「3発来ます! 対空防御を!」

 

 撃ち漏らした3発が果敢にも突き進むがWunderの激烈な対空砲火の餌食となる。しかし、その対空砲火の影に隠れて2つの何かが第2船体を潜るようにして接近し、Wunderはそれに被弾した。

 

「艦底部に直撃弾!」

 

「撃ち漏らし!?」

 

「違います! 確認されたミサイルは全て撃ち落としましたので、これは別の何かです!」

 

「未確認か……ダメージコントロール。主砲を残りの直掩艦に合わせろ、落とすぞ。艦艇部VLSミサイル装填、装填完了次第順次射出。ロケットモーターは俺の指示まで付けるな」

 

「何をする気ですか?」

 

「保険を作る」

 

 そのまま前進を続け艦底部VLSに装填、装填次第ハッチを開放し丁寧に射出してまるでデブリの様に撒き散らしていく。それを察知されないように主砲を放ち更に撃沈。今度は撃沈前に撃たせる暇を与えずにエンジン部と艦橋を貫き行動不能にした。

 

 

 一方バーガー艦隊は、敵のアウトレンジ砲撃から逃れた艦艇が砲撃と魚雷発射を開始し、ミランガルとニルバレスは自身の飛行甲板を回転させ、砲塔と対空兵装を搭載した隠顕式砲戦甲板を展開した。

 

「ゲシュ=タム・ドライブ回せ! 調整ミスらねぇよう頼むぞ! 各砲塔しっかり狙って痛いのをぶっ食らわせてやれ!」

 

 ミランガルのゲシュ=タム・ドライブが唸りを上げ、出力が安全ギリギリまで引き上げられる。それでもすべての砲塔を運用し切る事は不可能で、艦底部の砲塔は遊んだままだ。しかし強化された主砲は敵艦を確実に撃ち抜き、白と黄緑の艦艇を炎の花に変えていく。

 だが反撃は苛烈で「野蛮」と言われても弁明できない程の規模であり、苛烈な砲火でクリピテラ級が、デストリア級が落とされる。

 ミランガルも被弾し砲塔が一つ吹き飛び煙を上げ始める。

 

「甲板2番沈黙!」

 

「戦艦が簡単に沈んでたまるか! 撃ち返せ!」

 

 ゲルバデス級は魚雷発射管が無くミサイルに乏しい。主砲に重きを置き、雷撃戦ではなく砲撃戦専門となったこの船は全長も全幅も大きくなり、体格由来の打たれ強さがかなり高くなっている。仮に船腹に複数発命中してもいけるとバーガーは確信していた。

 

 現在左右に分かれた分艦隊はそれぞれゲルバデス級を中心にした鶴翼に似た陣を構成しており、それをゲルバデスを頂点にした山になる様にそれぞれ高度をズラしている。これなら仰角調整機能がそもそも無いビーム砲塔での味方間誤射を回避して、それぞれ担当高度を指定して有効に攻撃を仕掛けることが出来る。

 

「敵機襲来!」

 

「対空! 甲板のレーザーも撒け!」

 

 主な対空は僚艦に任せ、自身も対空レーザーを砲戦甲板からばら撒き敵機に対処。Wunderからも長距離ミサイルが飛び援護が入る。対空を信じて主砲を向け更に一発。駆逐艦級を穿ち抜き雲海に沈めた。だが敵艦から射出された恒星のような球体がミランガルに命中し、恐ろしい程の激震に襲われた。

 

「状況報告しろ、どこに当たった!?」

 

「右舷艦首付近です! 命中時に莫大な量の放射線を検出しています!」

 

「放射線がどうしたってんだ」

 

「あれは恐らく対消滅反応を起こす弾頭のような何かです。こっちはゲシュ=タム・フィールドなんて物はありませんから、あんなものを腹に食らえば船腹が抉れます」

 

「クッ……! この野郎、ドメル将軍の言う通りだな」

 

 _____

 

 

 混成航空隊は氷塊で形成されたリングの火砲から接近し、両国同時に急上昇をかける。目視可能距離に敵空母艦隊が確認でき一斉に飛びかかるが、敵空母を取り囲むようにして駆逐艦が展開しており空母を仕留めようと思っても邪魔だ。

 突然の敵機出現に慌てる敵艦隊が残りの艦載機を上げ周囲を固めて半球状の砲塔を連射し始めるが遅く、慌てて上がった敵機は的に、慌てて放たれた陽電子ビームは航空隊を彩る光に、戦略なんてクソくらえと突き進み対空砲火を絶やさない空母は獲物に変わり、その取り巻きは只の烏合となった。

 

 ツヴァルケ隊からはミサイルが、ゼロ改2号機からは機関砲が。改2号機とコスモファルコン隊からは怒涛の機銃連射が始まり、エンジンを潰され、砲塔が潰された。最後の悪足搔きとして残りの艦載機も出そうとする甲板を穴だらけにして格納庫を潰す。終いには艦橋もハチの巣にされ、敵空母艦隊は爆炎と共に消えた。

 

 その光景を尻目に沢村が加藤に通信を入れる。

 

「隊長。次の目標は?」

 

『別の空母いないか索敵。いなければ主力にちょっかいだすぞ。ガミラス側は?』

 

『納得はした、ミサイルを切らした機体は後方で待つ航宙母艦に帰すぞ』

 

『構わない。行けるやつは行こう』

 

 地球とガミラスの戦闘機が機首を揃えて飛ぶなど、誰が想像しただろうか。デザインが大きく異なる2機種が、濃紺と緑の機体が団体を組んで飛んでいるこの現状に両国とも一定の困惑を抱えているが、シャンブロウで過ごした沢村とメルヒはこうも考えていた。

 

 

 案外いけるじゃないか、と

 

 

 今すぐみんな信頼し合おうとは言えない。休戦協定が結ばれてまだ1か月、双方根深い敵意は横たわっている。が、共通の敵に対し並んで飛べているだけでも大きな事だ。

 自分たちが渦になる。皆を巻き込む渦になれば、長い時間は必要だが多少は双方で顔を合わせて話すくらいは十分できる。

 

「向こうも結構やるじゃん」

 

『そっちは薄っぺらいのに凶暴だな』

 

「見た目は関係ないだろ」

 

 オープン回線になっていた事を忘れていたようで、沢村のつぶやきはメルヒとその他大勢にバッチリ聞こえていた。言い返すとメルヒとその他ガミラス人の笑い声が聞こえた。一瞬馬鹿にされているように聞こえたが、小馬鹿にされて駄弁るくらいわけないようだ。

 

(地球では散々悪魔って聞かされたけど、只の人間じゃないか)

 

 

 


 

 

 

「敵旗艦を狙う。主砲塔を正面に指向。目標、展開中の火炎砲」

 

 火炎砲は3門。その内狙いやすいのが、両舷第2船体に内蔵されている2門だ。砲そのものを失えば発射は不可能。手数を減らす事も十分可能だ。

 

「測的よし!」

 

「撃てぇ!」

 

 第1第3主砲から放たれたショックカノンが真っ直ぐに敵旗艦に突き進み、捻じれ束ね1本の矢となった。一本となったショックカノンは敵旗艦に突き進んだが、それは直撃しなかった。

 

 

 

 

 

 

 敵旗艦の正面に、揺れる光の膜が貼られていた。

 

 

 

 

 

 

 

「敵艦に直撃認めず!」

 

「敵艦正面に空間位相のズレを確認。ATフィールドです!」

 

「NHG由来だな、あの戦艦も。エヴァも内蔵してるみたいだがどういう事だ? エアレーズングやWunderよりも小さい。オリジナルNHGじゃない?」

 

 第2バレラスで遭遇したエアレーズングの改造艦と同じように、この船もATフィールドを持っている。だがサイズが小さい。正面からしか見えていない為正確な全長が測定できていないのだが、それでも全長は1500m。Wunderや、バレラス沖のエアレーズングよりも小さい。両艦とも2500mはある。

 

「多分、複製品だと思う」

 

 衝撃的な一言共にハルナが戦闘艦橋に上がり、リクの腕を支えの代わりにした。

 

「肩は?」

 

「処置してもらったけど、暫くは固定しないと。あ、ちゃんと行っていいって言われたよ?」

 

「それで、アレが複製ってのは分かるけど、それだとエヴァも複製されてる可能性もある」

 

 ガトランティスがNHG級を持っていてエヴァンゲリオンの複製にも成功しているという事は、この先同じ艦艇にまた遭遇する可能性があるという事だ。戦略兵器を持ち、防御手段を持ち、尚且つそれがNHG級由来。今後NHGを祖とした新兵器が大量に生まれても何も可笑しくない。

 

 それ以上に、「何が起こるか分からないNHG」をガトランティスが持っている事そのものが脅威だ。

 

「複製せずに移設したら3か4番艦は大きいだけの艦艇になる。余りにも勿体なさ過ぎるよ。兎に角ATフィールドを破るよ」

 

「通常兵器では破れない事は分かってるだろ。ATフィールドを押し付けるくらいしかないと思う」

 

 そこが問題だった。エアレーズングの時はAAAWunderとして展開されたATフィールド以てして対抗できたが、何度も同じ手を使う訳にはいかない。AAAWunder側とコンタクトを取るにも時間がかかり、最悪ハルナがその場で眠ってしまう。それを今この場で提案する事自体、リクはやりたくなかった。

 

 頭を悩ませてると、不意にハルナの声が頭に響いた。

 

 

(実はあるの、ミサトさんが実際に実行した作戦にそれらしいのが。二子山決戦、通称ヤシマ作戦)

 

(おいおい、こっちでもヤシマ作戦してないか? 発進する時に)

 

(それとこれは別。使徒をATフィールド抜きで倒すための作戦で、エヴァで構える陽電子砲を撃ったみたい。こっちには何門もある事だし、やってみよう)

 

「あ~言わんとする事は分かった。何とかしてみよう」

 

 ハルナの突拍子もない案に大きな溜息を付いたが、実際それしか方法がなさそうに思える。波動砲での一撃必殺は今は出来ない。出来たとしてもご法度。なら一点集中で強引に割るしかなく、取り得る方法と砲門数を軽く計算し、ゴーサインを出した。

 

「古代くん南部くん、全部使ってATフィールドを破ろう。主砲を全部右舷側に向けて。マリさん、博士、ホーミングも立ち上げて重力子配置を計算してください。島君、このまま直進で針路を少しもずらさないで。十分な威力を保った主砲全門による一点集中攻撃を用いて、ATフィールドを叩き割る。先人の知恵に倣おう」

 

「先人」とはだれの事かと皆が疑問に思ったが今は戦闘状態。島が操縦桿を握り直し、古代と南部、北野が主砲を操り敵艦の只1点を狙い撃つように照準を向ける。

 

「コード777起動、ショックカノン、ホーミング安全出力解除。照準固定、第1射目標、敵旗艦左舷第2船体決戦兵器砲身部。第2射目標、右舷第2船体以下同様」

 

「ショックカノン、エンジンからエネルギー伝導終わる。捉敵よし」

 

 古代がゆっくりと手を挙げ、そのまま振り下ろす。そして下令する。

 

「撃て!」

 

 正面に指向可能な砲塔は8つで24門。ホーミングは18門全て。合計42門は敵艦の只1点のみを狙い突き進み、ATフィールドに阻まれる。が、42門を束ねた高エネルギーの塊がATフィールドを強引に押し通し、文字通り力で叩き割りメガルーダの右舷第2船体を抉り飛ばした。

 

 だがフィールドが無いという事は向こうも反撃可能という事。敵艦第二船体に鎮座する5連装大口径徹甲砲塔に第1主砲と第2副砲が射抜かれ機能を沈黙した。さらに量子魚雷が左翼に命中し、波動防壁で威力が散ったとはいえ破られ、ホーミングが5門死んだ。

 

「第2射! 撃て!」

 

 それでも至近距離でフィールドを叩き割れるのは今しかない。このまま強行し残り31門で一点集中発射を行うが、ATフィールドに阻まれてしまった。

 

「エネルギー総量が不足している……ッ! 一度引くしかない!」

 

「防壁展開し全速急降下、敵艦の射程上から離脱を!」

 

 リアルタイムで解析に付いていた真田が撤退を推奨する。ATフィールドを破る現状唯一の手段が閉ざされ、Wunder単艦ではどうしようもない。

 古代も一時撤退を決め指示を出したが……

 

 

 

『待て! もう1回やれ!』

 

 

 

 バーガーの声が通信で響き、レーダーの反応が動いた。Wunderの後方、右翼と左翼に分かれていた分艦隊から一隻が突出し、Wunderと同航し始めた。

 

「ゲルバデス2隻が、本艦の左右に付こうとしています!」

 

『何でも単独で出来るわけじゃねえんだぞ。フィールド中に俺らを引き込め。ぶち込むぞ』

 

「バーガー……頼む!」

 

 31門で足りなければさらに足そう。Wunder31門、ミランガル18門、ニルバレス12門。正面に指向出来る全ての砲を動かし、Wunderは波動防壁の一部を解きミランガルとニルバレスを防壁内部に引き込んだ。

 

 ゲルバデス級の全長はWunderの約6分の1。Wunderからしてみれば小鳥のように小さな船だが、今はとても頼もしく大きな存在だ。砲身に赤い陽電子の光が、真っ白となった陽電子の光が灯り、3隻の主機が唸りを上げ雄たけびを上げる。

 メガルーダが5連装大口径徹甲砲塔を何度も連射してくるが、波動防壁に阻まれて撃ち抜けない。無敵とは言えないがこちらにも盾はあるのだ。

 

 

「『統制撃ち方用意、撃てっ!!』」

 

 

 61門の陽電子の束が一点に襲い掛かり、再びATフィールド叩き割った。貫通した陽電子の束が敵左舷第2船体を抉り飛ばし炎の花を咲かせ、追撃とばかりにミランガルとニルバレスがさらに発砲して5連装大口径徹甲砲塔を亡き物にした。

 

『煮るなり焼くなりあとは任せるぞ。クソ駆逐共はこっちで捌いてやる。押し込め!』

 

「ああ! 助かったバーガー!」

 

 決戦兵器を失ったメガルーダはWunderの暴力的な出力に押し込まれ、艦隊から強引に引き離される。が、メガルーダも主機の出力を強引に上げて押し返そうとする。それに対抗し、山崎がコンソールを操作してさらに出力を上げる。

 

「主機はこっちの方が、上だ!!」

 

 波動エンジン最大出力。イスカンダルの力を一身に受けたNHGの1番艦がさらに押し込みをかけ、波動防壁も徐々に軋みを上げる。

 

「主機そのまま! 主砲3式用意!」

 

 ショックカノンにエネルギーを回せなくてもWunderは砲撃が出来る。それが3式融合弾で、太陽系からWunderを支え続けた武装の1つだ。

 第2第3第4主砲に3式弾が装填され回頭、仰角が調整される。

 

「波動防壁限界まで、t-6!」

 

「3式用意、消失と共に発射する!」

 

「2、1! 消失!」

 

「撃てぇ!!」

 

 3基9門の砲から3式弾が轟音と共に発射され、砲弾という野蛮な暴力の塊が「野蛮人」と言われるガトランティスのメガルーダに突き刺さる。爆炎と共に第2船体が炎に包まれ中央船体からも小さな爆発が生まれる。

 さらにWunderが斥力を利用して自律的にメガルーダと自身を弾き飛ばし距離を取った。

 

「全砲門開け!」

 

 前方指向可能で使用可能な砲門 18門、ホーミング 13門、VLS 24門が一斉に開き、止めを刺す構えに入る。

 

 


 

 

 メガルーダの第2船体から炎が上がり、火焔直撃砲が発射不能となり、艦橋も荒れ果てていた。

 

「ウヌゥゥゥゥゥァァッ!! メガルーダは、メガルーダは負けぬゥゥ!!」

 

 

《カエリナサイ》

 

 

「ヌゥ!? 貴様ッ何者だァ!?」

 

 ダガームの恐怖に満ちた顔面に迫って来たのは1人の少女。一糸纏わぬ真っ白な姿をして声も使わずに語り掛けてくる。その顔には目が無く、真っ黒で何もない空洞となっている。

 

「図々しく近寄るなァ!」

 

 振り下ろした剣もその少女を素通りし、触れる事すらできない。自分は頭がおかしくなったのだろうか。否、この場にいる全員が見えている。この場にいる全員の元に同じ少女が現れている。

 

 何かが倒れる音がした。虚ろな少女を誰かが殺したかと思いダガームが音の方向に目をやるが、そこに倒れていたのはついさっきまで剣を振るって追い払おうとしていた戦士だった。生きてはいるが、何に対しても反応を示さない。まるで心だけ殺されたような状況だ。

 

「来るなァ!?」

 

 情けなく口から出た言葉が「来るな」だったが、少女は意に介さずダガームに触れる。冷たくもなく暖かくもない手に触れられ、ダガームは何かを見た。

 

 大量に作られては押し込められて、使い捨てのように運用される自分達。心の様な物があるが何も持たない自分達。部品として扱われた自分達。憎悪、諦観、吐き気を催すような記憶。

 

 およそ常人には理解しがたい光景。全ての人間が「首の無い巨人」に変わり、世界が真っ赤に染まっていく。体を失い、当ても無く彷徨う魂と死の大地。

 

 余りの情報量にダガームは白目をむき大量の泡を吹き始める。意識が遠のき、自身の胸がとても冷たくなっていく感触に襲われた。

 最後にダガームが見たのは、自身の胸に白い手が突っ込まれている光景だった。

 

 

《カエリナサイ》

 

 

 


 

 

 

「後方の星、及びガトランティス旗艦に異常発生!」

 

「モニターに出せ!」

 

 その状況は、Wunderの後方でククルカン級とラスコー級との戦闘を繰り広げていたバーガー艦隊も捕捉し、索敵と駆逐艦排除に回っていた合同航空隊も肉眼で確認していた。

 

 自分たちが背にしていた薄鈍色の惑星が、まるでベールを剝いだかのように姿を変え始め、上下から巨大な一枚岩が円を描くように迫り出し、星は只の骨組みとなり、籠の中に世界樹を封印した様な見た目に変化した。

 

 だが、それ以上に異常な変化を見せたのがメガルーダだった。メガルーダの中央船体が真っ二つに割れ、いびつな断面から湧き出る青い粘液のような何かが足の形となった。翼の装甲断面からも青い粘液が噴出し、翼がフレキシブルに動く腕となった。

 

 

「何なんだよ……あのバケモノは」

 

 メダルーサ級殲滅型重戦艦。それは最早戦艦ではなくなり、別の何かとなった。

 誰もがあれが何なのかが分からなかった。が、バーガーだけは分かった。ドメル将軍と共にアリステラ星系に向かった任務、第666特別編性戦術戦闘攻撃軍として陽動に徹していたあの時に見た異形のバケモノに見えていた。

 

 この異常の後に起こった戦いから生還した兵は、口を揃えてこう言ったという。

 

 

「あれはバケモノだった」と。

 

 

 

 この異常な変形を誰よりも間近で見ていたWunderも、その異常性に目を見開き、兎に角後退を続けていた。

 

「目標変形……いや、変身、しています」

 

「光学観測を続けて。リク、さっきの斥力はやっぱり」

 

「ミサトさんだ。兎に角距離を取れて良かった。バーガー艦隊に被害は出てない?」

 

「レーダー上のガミラス艦影数は変わりません。この異常事態前より全艦健在です」

 

 

(あれは獣。人類の敵で、使徒の成れ果て)

 

 ハルナの頭に響く声は幼くそっけないように聞こえるが、何処か切羽詰まったようにも聞こえる。ミサトとも違う声に眉を顰めるが、直ぐにその声に心当たりがあり、リクの手を掴んで「聞こえるようにして」声をかけ直した。

 

(もしかして、レイちゃんって子? アレが使徒ってどういう意味?!)

 

(あの大きな船はエヴァをその身に宿している。でも、エヴァに押し込まれた使徒が、私の様な何かに取り込まれ、あの姿になった)

 

(私の様な何か?)

 

(2番艦はハッキリ私のクローンと分かった。でも、あの船からは私みたいな何かとしか分からない。多分、私を無理矢理増やして大量に詰め込んだと思う)

 

 これ程胸糞が悪くなる事実は聞いた事が無い。表情に出さないようにやり取りをしていたが我慢できずに顔を顰めてしまう。明らかに異常な雰囲気を無意識に出していたようで、余りの圧に全員の視線がハルナとリクに向き、真田も目を見張っていた。

 

「アイツらは……ッ人を何だと思っている……ッ!?」

 

「何とも思っていないだろう、アイツらは。バレラス以来だ、こんなに怒ったのは」

 

 何の躊躇いも無く「アイツら」と呼称する程怒り、片方は荒く、片方は静かに激昂していた。無言でハルナが手を伸ばし、古代に指を指した。

 

「古代くん、地球ガミラス合同艦隊に通達。これより、対使徒撃滅戦を行う。全艦隊に伝えて。アイツを破壊し、解放する」




ガトランティスは禁忌を侵してしまったって事なんです。

エヴァの粗悪複製品に魂ガン積み? そりゃあこうもなるよって事で、倫理観ガン無視暴走メガルーダ誕生です。

見た目としてはこんな感じ、山下いくと氏がシンエヴァのネルフ側空中戦艦をデザインされた時の案の1つをお借りしています。
https://twitter.com/ikuto_yamashita/status/1410953526344257537


なお倫理ガン無視なので、当のご本人は怒っています。倫理無視ダメ絶対。


それでは主は休載に入りたいと思います。
試験が終わり次第執筆を再開して、後編と最終章を書いていこうと思います。
(@^^)/~~~
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