宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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ユリーシャの話、後編です。
波動砲を作ってしまった人類にユリーシャがかける言葉とは…


力の咆哮の方向

《あらすじ》

 

波動エンジンの設計図で真田さんと盛り上がった2人はbußeの改設計、重武装化に勤しむ。その過程で疑問に上がったパーツ「波動コア」、2人は波動コアについて聞くためにユリーシャさんの元を訪れる。

そして、ユリーシャは「地球が禁断の兵器を設計した」事に凍りつくのであった…。

 

 

第3話 力の咆哮の方向

 

「この兵器、まさか…」

ユリーシャは悲しげな目をした。それは真実を知る者の目だった。

 

「この兵器をご存知なのですか、ユリーシャさん」

それを聞くリクの顔は暗い。ハルナも暗い。

自分たちもこれがどんなに恐ろしい兵器かが分かっているからだ。

 

「はい…この兵器は、元々私たちイスカンダルが生み出した忌むべき兵器です。波動エンジンの生み出す莫大なエネルギーを放つ滅びの光、私たちは『ルミエラ・ディ・ディスディレクト』と呼んでいます」

 

ユリーシャは私たちを見つめているようで見つめてないようだった。遠い昔を見るような目、悲しむような目だった。

 

「この兵器は、私たちが波動エンジンがエネルギー変換する時の原理から生み出したものです。最初は最強の兵器を生み出した事に自信を待っていました…」

「…。」

ユリーシャさんは黙って頷き、続きを促す。

 

「ですが、設計完了後、実際に発射した時のシミュレーションを行いました。その結果、私たちは気づいてしまいました。この兵器を艦隊戦用の特殊兵器として生み出したつもりが、星をも崩す超兵器であったことに…」

ハルナは泣きそうな声で全てを話した。自分が生み出した怪物が1つの星を潰してしまうかもしれない重圧に耐えて、張っていた気が切れそうになっていたのだ。

 

「私は、研究者としてどうすればッ…」

ハルナの目から涙が溢れ、崩れ落ちそうになる。リクは咄嗟にハルナを支えようとするが、それよりも早くユリーシャが動き、ハルナを抱きしめた。

「アカツキさん、いえ、ハルナ、生み出した者として責任を感じるのは私たちはイスカンダルも同じです。生み出してしまった以上、あなた達の上の人がその兵器の搭載を撤回することは無いでしょう。そして、その力を行使する事は避けられない。」

 

「っっグスっ」

 

「ですが、禁じられた力としても、抑えられない力だとしても、力の向きを考える、向きを変える事はできます。」

 

「…力の向きを、変える」

「この兵器は、決して人に向けてはならない。そして、あなた達がこの兵器の恐ろしさを事前に知ることが出来たのは、幸いなことです。」

「…。」

「私たちの星イスカンダルでは、その兵器を艦隊規模で運用して、大マゼランを力で征服した悪しき時代がありました。あなた達はまだ間に合う、力の恐ろしさを知る者達としてブレーキとなることが、今地球にいる私と、あなた達2人が出来ることだと、私は考えています。」

 

「「…はい」」

「生み出してしまった以上、僕らなりにケジメを付けます。」

 

その目は…覚悟が決まった目だった。

 

 

 

 

後日、ユリーシャさんとハルナ、リクは軍上層部のメンバーと「buße改装計画のメンバー」を、真田さんと一緒に招集して、その兵器についての説明とイスカンダルの過去の愚行について話した。

真田さんもあの兵器の発射シミュレーション結果について驚いき、恐怖におののいていた。

 

そして、その兵器の概要説明時にハルナとリクは大型モニターに設計図を移した。

 

その時、設計図が語りかけてきたような感じがした。

 

 

あなたは私をどう使う…?

 

 

(私たちは、あなたを侵略目的で使わない、使わせない。身を守るための武器として使う)

 

笑われようとも構わない。生み出した者の覚悟がそこにあった。

 

 

 

 

その後、その兵器の呼称は次元波動爆縮放射機、通称『波動砲』となり、対人、対艦、対惑星への使用が固く禁じられた。

そして、この兵器の存在を世界各国に知らせ、その恐ろしき力を理解してもらった。

波動砲は、あくまで「主砲じゃ壊せない物に対しての対物兵器」となった。

 

ユリーシャさんも妥協した。しかし、スターシャさんがどう言うか分からない。

 

そこで、ユリーシャさんが『監査官』として船に乗艦する事になった。元々乗って、イスカンダルまで帰る予定だったが、役職付きで乗るとの事だ。

 

そして波動砲発射には、艦長と副長の同時承認が必要になった。

 

強大な力には鎖を付ける。簡単には使えないように縛っておくのだ。

 

 

 

「ユリーシャさん、ありがとうございました」

 

「いえいえ、あなた達がこの兵器を理解して、鎖を付けてくれた事に、私も安心しています。」

ユリーシャさんは安心していた。イスカンダルは今まで多くの星を救ってきたのだが、そのどれもが滅んでしまってる。

 

それは、力の向きを誤ったからであった。

 

彼ら地球人は自分の力を認識し、それに鎖を自ら取り付けた。簡単に行使出来ない力にする事で自滅を防いだのだ。

 

 

波動砲の艦隊規模で運用する…かつてのイスカンダルが起こした戦争は多くの命をその光で焼いた。

もしかしたら地球が復活した後、波動砲艦隊なる物が生まれたら、それこそイスカンダルの二の舞。

そうなる可能性の「1つ」が消えた。

 

 

 

西暦2198年

国際連合宇宙軍 国際波動砲使用制限条約制定

 

第1条

波動砲による艦隊殲滅、惑星破壊を固く禁ずる

第2条

使用には、使用艦艇の艦長と副長の同時承認を行うこと

第3条

波動砲艦の過剰量産を禁ずる

備考(各国が所有出来る波動砲艦は10隻以下)

第4条

毎年各国合同で艦隊運用、及び波動砲艦の監査を行う

第5条

波動砲を用いた侵略行為を固く禁ずる

第6条

波動砲の改良を禁ずる

 

 

この条約は、地球復興後に増産されるであろう波動機関搭載艦艇に「波動砲」を載せる時の縛りである。

 

かつて人類は核兵器なるものを開発、それを使用した悪しき記憶がある。今人類の手にあるのは核兵器とは比べ物にならない兵器。

 

破壊の咆哮は人類の手に余る、波動エンジンでさえオーバーテクノロジーであるのだから…

 

 

 

 

 

 

この条約は以後、「波動砲条約」として後世に語り継がれていくのであった。

 

 




オマケ

ユリーシャ
「ムツキさん、いや、リクくんって呼んでいいかしら?」
リク
「はい、どうしました?」
ユリーシャ
「ほんとに兄弟姉妹みたいだねあなた達( ´﹀` )ニタニタ」
リク
「えぇぇ!」
ユリーシャ
「ハルナのことはあなたが支えてあげてね(◦ˉ ˘ ˉ◦)ニヤニヤ
あなた達なら大丈夫よ!」

リク
「(/ω\*)プシュ---(恥)」
しばらくショートして動けなかったリクくんであった。







波動砲の使い方をしっかり決めた人類は、滅亡の縁で1歩前進しました。

次回、bußeの新たな艦名が決まります
改装計画はついに実行に…


また、イスカンダル語はフランス語ベースなので波動砲を「滅びの光」に言い換えて、それをフランス語翻訳、さらに少し変えてみました。
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