宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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AfterWar2199~2202から統合しました


AfterWar2199~2202編
婚姻届/やっと、結婚できます


 私達は、無事に地球に帰還しました。なのでそこからの話をしていこうかなと思います。

 

 大気圏に突入してだいたい対流圏に入った頃でミサトさんはコスモリバースを発動。そのまま地球環境の再生……再構成のような物が始まったの。コスモリバースの仕組み的には上書きに近い事が起こっていたんだと思うけど、Wunderを中心にして大規模な波動エネルギーが拡散すると一気に地球全体に広がっていったのよ。

 

 そこからはあっという間。光が通り過ぎた個所は青い海と緑の草木そして赤茶けていない大地が広がっていた。私達はね、青くない地球しか知らなかったのよ。確か起きたのが2195か6年だったから、その頃には遊星爆弾は結構落ちていたから地球は既にボコボコになってたの。

 だから私達は、この目で初めてキレイな地球を見たの。

 

 

 でも、直ぐに地球に降りられなかったの。

 地球環境が本当に復活したのかをWunderを使って検査する事になったの。センサーフル稼働で地球をゆっくりと数周。環境破壊の原因の放射線やガミラス由来の謎草……有毒胞子を撒き散らす植物がないかを徹底的に調べて、地球全土の確認が終わったのが大体3日後。その頃には各管区の調査班がビデオカメラ片手にライブ中継を初めて各管区で大騒ぎになってたらしい。勿論Wunderにも中継されていて、Wunderでは希望者は甲板に出る事が出来たの。

 

 勿論私達は甲板に出てみたけど……息をのむくらいキレイだった。丁度日が沈んでいて月の光が反射してた事もあって海の反射がすごくすごく綺麗だった。

 甲板に出た人達の中には泣いて喜ぶ人も大勢いた。あれ程ボロボロにされた環境が再生して防護装備とかも無しで普通に空気を吸って動き回れるんだから、泣いて喜ぶのも分かると思う。それよりも私達は「とても綺麗」が勝ってしまったけどね。

 

 ……出来ればこの場でもう結婚式してもいいと思った。けど準備とかも全然してないから、プロポーズの真似事だけしてみたの。もうとうの昔に婚約済みだけど。

 

 

「幾久しく、よろしくお願いします」

 

 

 って応えて不意打ちで頬にキスしちゃったのよ! ああもう恥ずかしいッ!!

 一応人の少ない甲板でやったけどそれでも今思えば恥ずかしいッ!!

 ドラマとかであるあるな指輪も無いし花束も無いけど言葉だけでまさかこんな大胆な事してしまうなんてほんとビックリ!

 

 

 ……ふぅ。兎に角地球帰還して環境の回復も確認した後、私達は色々準備する事になりました。

 

 まず、婚姻届けです。

 


 

「真田さん、今ちょっといいですか?」

 

「どうした? 2人揃って」

 

 

 Wunder帰還から1週間が経ち、一旦僕らは帰宅する事が出来た。そのタイミングで同棲準備をするために真田さんにお願いして、ハルナの荷物を僕の部屋に運び込んだ。幸いにも荷物は少なくて荷物運び自体は直ぐに終わったけど、わざわざ「真田さん」を呼んだ理由は荷物運びじゃなくて、一番大事な物を書いてほしかったからなんだ。

 そういう事で、僕は真田さんにタブレットを手渡した。

 

「婚姻届の証人枠を書いてほしいんです」

 

「……私が書いていいのか?」

 

 目をぱちくりして婚姻届と僕らを交互に見る真田さんは見ていてどこかおかしく思えて来るけど、決してドッキリとかそういうのじゃない。

 婚姻届を書いて提出するためには、夫になる人と妻になる人の名前、住所、家族の名前、そして証人の名前と住所が2人分必要になる。真田さんには、その証人の1人になってもらいたかったんだ。

 

「真田さんがいいんです。既に1人分枠取られちゃったので」

 

 ハルナが苦笑いしながら言ってるけど、証人枠の1人は盛大な争奪戦になった。赤木博士、マリ、アスカちゃん、それに加えて森さんの四つ巴の戦いが何度も行われ、らちが明かなくなったから結局ジャンケンで決める事になった。

 結果、マリさんが証人枠をゲットしたから、証人枠の片方にはマリさんの名前と住所が書かれているけど……マリさん、筆記体で書いてあるけど大丈夫だよな? ちゃんと行政受け取ってくれるよな?

 

「……分かった。君達の門出を祝わせてもらうよ」

 

 優しい笑みを浮かべた真田さんがタブレットからペンを取り出して証人枠にサインをしてくれた。真田志郎と書き終わると軽く頷いて僕に返した。

 

「式はどうするんだい?」

 

「会議室借りて簡単にするつもりです。地下都市に式場なんて物はないはずなので、ちょっと広めの会議室を借りて、最低限の人を集めてやるつもりです。真田さん、博士、マリ、アスカちゃん。古代くんと森さん。あとは、月村さん」

 

「月村会長を?」

 

「会長の支援無かったらで私達生きてないので、直接会って感謝を伝えたいんです」

 

 意外な人物が出てきたからか、真田さんはきょとんとしている。そうだよな、あの通信以外で顔をまだ合わせれてないし、真田さんとしては接点はほぼない。それでも、デイブレイクグループの支援のお陰で僕らは生きているような物だから、せめて顔を合わせて感謝したい。

 それに、新型艦艇の音頭取りの事も聞きたい。

 

 ……いけないいけない。折角の式だから仕事の事は入れないようにしないと、音頭取りの事はまた後日だ。

 

「まぁそういう事なら……それと衣装は?」

 

「加藤さんから借りた紋付とハルナが着ていた巫女服で何とかなります。普通の和装結婚とは大分違いますが」

 

「物が少ないからな。やりたいようにやってみようか。それで気になるのが……苗字はどうなるんだ?」

 

「苗字? 婿入りか嫁入りかの話だったら、嫁入りですよ。でも問題があるんです」

 

「問題?」

 

「暁家と睦月家は、多分偽名なんです」

 

 先祖がいないというか、睦月と暁という苗字は多分偽名として使っている筈なんだ。それでも偽名でも自分の家と名前、どっちを取ろうかと悩んでハルナの嫁入りという形で落ち着いたけど、それでは「暁家」を消す事になってしまうんだ。

 僕は流石にそれは望んでいないし、かといって「睦月家」が消える事も流石に許容できなかった。

 

 

「確かに、極東は基本『苗字と名前』だからな……ん? 真希波君の名前だが、真希波家とイラストリアス家の両方の苗字を取っているはずだ。参考にしてみてはどうだろうか?」

 

 

「……つまり?」

 

「『睦月・リク・暁』と『睦月・ハルナ・暁』という事だ。多少無理矢理かもしれないが、行政に無理を言って通せばあるいは……」

 

 睦月・リク・暁、睦月・ハルナ・暁。これからはこの名前になるのか。確かに良い名前だと思うけど、行政を通せるかが心配だ。いっその事外国人枠で通してもらおうか?

 いやいや火星出身とはいえ一応極東の血だ。白髪赤目の異世界人みたいな見た目してるけどちゃんと極東側だと思う。

 

 

 ……一部例外が起こってるけど間違いないはずだ。

 

 

「あ、出来るって」

 

「マジで?」

 

「要相談だけど出来るって」

 

 ハルナナイス! だったらこのまま行政府に持ってって相談してみよう!

 

「真田さんちょっと行ってきます! ハルナ行こう!」

 

「ちょっと~気が早いって~!」

 


 

「どうだった……?」

 

「無事受理されました。苗字の件はもめましたけど、無事に睦月・ハルナ・暁です」

 

 顔を赤くしながら頭を掻くハルナが可愛く見えてくる。僕らって、こういう事に限って精神年齢低かったりするのか? 誰か教えてくれ、こっちが持たないぞ。おいそこ眺めるな。

 

「それで確認しておきたいんだが、……どう呼べばいいんだ?」

 

「別に呼びにくかったら私は旧姓でもいいですよ? 仕事は旧姓で通しますから」

 

「まぁ……そうか。睦月君、式は?」

 

「許可はついでに取りましたので」

 

 取り合えず大きめの会議室を取れたのでオッケーだ。さて忙しいぞ、加藤さん……そっか、あっちも結婚したから両方加藤さんか。だったら旦那さんの方の加藤さんに話付けて衣装借りるか。

 

 

 

 

 さて動くか。ATフィールドで感じなくても分かるんだよ。ホントは地上で結婚式したいんでしょ? まずは藤堂長官に話をして式場を作らないとな。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「藤堂長官、これは何かのドッキリですか?」

 

「ん? なにも間違っていないが」

 

「いやそうじゃなくて、ここ()()()()()()()ですよ!? 地上ですよ!? 

 

 入籍から5日たったんだけど、目隠しと耳栓されて私はいきなり連れ出されたの。それはもう突然の事、引き摺られるようにしてどこかに連れてかれて、目隠し耳栓を取ったら日差しが眩しく波の音もしていた。

 

 うん、間違いなく地上。それも海が見える辺りの結構景色のいい所。

 

「大成功だ」

 

「えっ、ちょ、ま……今日のリクそっち側なの!?」

 

「ハイハイ着替えてきて! 森さん加藤奥さんあとお願いします!」

 

「「はいはーい」」

 

 あれよあれよと森さんと加藤奥さんに連れて行かれて更衣室に引っ張りこまれた。メイク道具にヘアセット用の道具とか衣装とかある! もうこのままやってしまおうって事なの!? なんかもうちょっと日にちかかるとか思ってたけどどうなってるのマジで!?

 

「ちょちょちょちょっと待って下さい!! これはいったいどういう事ですか!」

 

「睦月さんのサプライズ結婚式ですよ」

 

 えっ

 

「やり直しの結婚式なんかじゃなくて、ちゃんと希望を叶えるとか言って長官に話を付けて、私達にも話を通してきたのが4日前、睦月さんの事なので、がっつり例のアレ使って隠したみたいですね」

 

 4日前から? その頃は何やら忙しそうにしていたけど何をしてるのって聞いても教えてくれなかったよね? ……がっつりATフィールド厚くしてバレない様にしていたよねリク!

 

「それで、衣装とかも用意してあれやこれやをしてようやく昨日準備が終わったんです。会場に使う分だけ地上を(なら)したりしてもう大変大変で、藤堂長官なんか土木作業チームを地上に派遣するくらいでしたから」

 

 藤堂長官何やってるんですか?! 地上復興用のチームを私的に使わないでください!!

 

「後は古代くんもいますよ、やる事があるって言って。だいぶ緊張してたんですけど、古代くんの事ですから多分大丈夫です」

 

 そんな話をしながら巫女服の衣装がどんどん着せられていく。式に着るって言って加藤さん夫妻の結婚式用に作ったんだった。白い小袖に緋袴、白と緋色。私の色。白は髪で緋色は眼ね。丁寧に紙が結われて簪を挿してあっという間に完成。それと、一輪の花が簪に添えるように挿された。

 

「これは……花?」

 

「造花なんですけど、アカツキザクラって言うみたいです」

 

 アカツキザクラ……桜ね。植物とかには詳しくないけど、何時かこんなきれいな桜がが街中で咲いたりもするのかな。今は造花でも、いつか本物を。

 これで本当に完成みたいで、森さんが更衣室から私を放り出した。勢いでつんのめってしまったけど、よく知ってる影が私を受け止めてくれた。

 

「おっとと、ありが……」

 

「ん? どうした?」

 

 声をかけられるまでずっと見惚れてた。紋付に身を包んだリクの眼は紅い光が揺れていて、エアレーズングの時とは違う優しい光になってる。あの時は彗星の尾みたいだったけど、今は蝋燭の日みたいに暖かい光になってる。

 成人式ぶりに髪をセットして丁寧に紋付を着たリクは何だか重厚なオーラが出てて、どっしりとした感じがした。何て言えばいいのかな、「覚悟」って感じ? 本当に家族になる覚悟……って感じが……めっちゃした。

 

「和装は卒業式ぶりだけど、変じゃないかな?」

 

「へっ? あっえっと……ごめん、見惚れてた。すごいどっしりした感じがしててカッコ良かった」

 

「見惚れてたって……なんか恥ずかしいな。とにかく行こう、みんな待ってる」

 

 ヤバい、思った事ポンポン言ってしまうよ今日は。抑制抑制……もうしなくてもいいや。

 

 

 ______

 

 

「まず色々突っ込みたい事がありますけどいいですか?」

 

「1つずつ頼むよ」

 

「何で真田さんがその役をしているんですが?」

 

「頼まれたからだよ、その紋付の人から」

 

 うん、真田さんが牧師の格好してるんだよ。皆信じられる? あの真田さんがだよ! キャラ崩壊までいってないけど真田さんこんな面白キャラだったの?! しかも満更でもない顔をしてるし割と似合ってるしおまけに聖書みたいなのも持ってるし今日って何かビックリする事しか起こらない日なの?!

 

「何を考えているかは分からないが、私にも役がある事はうれしいね。だが、2人とも和装なのにキリスト教式でよかったのか?」

 

「気にし過ぎですよ。加藤旦那さんも紋付で誓いの言葉を言ってましたので、それ位問題ないと思いますよ」

 

「本当ならここに教会を建ててから呼びたかったが。『ここに教会を立てよう』と昔の人もよく言ったらしいよ」

 

「冗談ですよね?」

 

「冗談だ。因みに今の言葉のソースは真希波君だ」

 

「ニャハハハハハハ」

 

「全くコネメガネ……とりあえず、びっくりさせてゴメン。睦月さんのお願いだったので夫に免じて許してあげて」

 

 ひょっこりドレス姿で現れたのはマリさんとアスカちゃんだった。2人とも落ち着いた印象のドレスを着ていて私に負けずキレイだなって思う。でも意外なのが、アスカちゃんが落ち着いたドレスを着ているって事かな。なんかさ、アスカちゃん自分を大きく見せたいとか何とかそういう感じで、割と自分を大きく見せる形の服着てそうなのよ。

 

「アスカちゃんも大人っぽいドレスで綺麗だよ?」

 

「ちょっ……あんま言わないで。一応主役引き立ては分かってるし大人しい方着るしかなかったのよ。おまけにコレ借りたやつだし胸とかちょっとキツイ」

 

「似合ってるしイイじゃん姫。まだユーロに帰らなくてよかったよ?」

 

「まぁそれは……よかったわ」

 

 そんなこんな話してると続々と簡易式場に人が集まってきて、タキシードを着た古代くんも入ってきた。着てるというか、これ着られてる感じ? だけど似合ってくるよ。あとあれなんだろ、便箋が2通?

 あ、古代くんマイク持ってる。持ち方違う違うって、それ無線の持ち方。あ、森さん気付いて直した。

 

 

「本日は急でお忙しい中、睦月リクさんと暁ハルナさんの結婚式にご列席いただきまして、まことにありがとうございます」

 

「これより始めさせていただきます結婚式は、ご列席いただきます皆様方に向けて、 おふたりより結婚の誓いを立てていただき、ご列席の皆様にご承認していただく、人前結婚式でございます」

 

「ご列席の皆様は 新郎新婦様にとって大切な方々です。おふたりは、この大切な皆様の前で、愛を誓いたい、見守っていただきたい、というお気持ちからこの人前式をお選びになられました」

 

「おふたりにとって、人生の新しい門出を皆様に見届けていただきたいと思います」

 

「申し遅れましたが、私は本日の司会を務めさせていただきます古代進と申します。精いっぱい務めさせていただきますのでどうぞよろしくお願いいたします」 

 

 古代くんも成長したね、航海前とは大違いだよ。見てますか古代守さん? 古代くんは立派にリーダーできる期待の星になりましたよ? えっ? 安心したって? それは良かったです。

 

 

「これより新郎睦月リクさん、新婦暁ハルナさんの人前結婚式を執り行います。ご列席の皆様には、おふたりの結婚の立会人となっていただきますよう、よろしくお願い申し上げます」

 

 自分たちの後ろにはもう沢山の人がいるのが分かる。赤木博士、マリさんアスカちゃん、森さん佐渡先生藤堂長官に……ビデオカメラ? 

 

「真田牧師さん、あのカメラは?」

 

「病院にいる沖田艦長用に録画をしているんだ。月村会長は『出ない方が良いから後日会う』と言っていたよ」

 

 月村さん、後で会いに来るんだ……それもそっか。私達と月村さんの関係はなるべくバレてはいけないもんね。ホントは式に呼びたかったけど、後で会って挨拶しておかないと。

 

「今回は急な結婚式という事あり本来の手順から大きく外れてしまっていますが、お気になさらずにお2人の新しい門出を祝ってもらえると嬉しいです。それでは、誓いの言葉をお願いします」

 

「新郎 睦月リク。あなたは暁ハルナを妻とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、共に助け合い、死が二人を分つまで妻を愛すると誓いますか?」

 

 死がふたりを分かつまで、か。

 

「真田さん、それ間違ってます」

 

「えっ?」

 

 リク? その文章間違ってないよ? 一応形式はこれで合ってるはずだよ? え、なになに……ばれてたんだ。私の考えている事。「死がふたりを分かつまで」じゃなくて……

 

 

「出来れば、『死がふたりを分かつとも』にして下さい」

 

 

 そう、「死がふたりを分かつとも」。火星で1回、Wunderでまた1回+α……かな。私達の真横を死がスレスレに通っていって、何度も何度も命の危機にあった。こういうのはもう沢山だけど、死の怖さはよく分かったつもり。

 今の私は、多分リクがいないと生きていけない。森さんが亡くなった時の古代くんみたいになってしまうって自分で分かる。だからリクにもう2度と会えなくなるという事は考えたくない。

 でも、いつか死はやって来る。それがいつなのかは分からないけど、私はたとえ死んでもリクを愛するし、もうリクに会えなくなっても愛すると思う。

 だから、結構重たい発言になってしまうけど「死がふたりを分かつとも」と誓いたいの。

 

 

「死がふたりを分かつとも、か」

 

「皆の前でそうやって誓うのは恥ずかしいけど……折角の結婚なので」

 

「そうか。気を取り直して……新郎 睦月リク。あなたは暁ハルナを妻とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、共に助け合い、死が二人を分つとも妻を愛すると誓いますか?」

 

「誓います」

 

「新婦 暁ハルナ。あなたは睦月リクを夫とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのとk」

 

「誓います!」

 

「「「早い」」」

 

 やばっ、ちょっと食い気味になっちゃった。ああ真田さん笑い堪えてる。横向いて口抑えて必死だ必死だ……。ん? リク何々ワザと思念でやり取りして……えっちょ、キスしたいって!?!? ああこの流れだと次誓いのキスだよね!? ああああああちょっと待って心の準備が!!

 

 帰還時に勢いで頬にキスしてしまったけどそれとこれとはあまりにも違うってッ!!

 

「ああ……暁君? 大丈夫、か?」

 

「ええちょっと……顔どうなってますか?」

 

「暖を取れそうなくらい熱くなっているぞ。大丈夫だ、君たちが考えているであろうそれはもう少し後だ。古代、森君、例の物を頼む」

 

「はい。雪、片方頼む」

 

「わかったわ」

 

 例の……物? うう頭回らない。

 

「では、これから結婚のお祝いの祝辞を読み上げさせていただきます」

 

 古代くんが持ってた便箋を取り出して森さんに渡してる。ん? あの便箋ってどっかで見た事が……あ! あれあれ! イスカンダルでちらって見えたあれ! 古代くんと森さんがユリーシャとメルダから預かったやつだ!

 

 

「リクとハルナへ 

 

 2人の結婚を直接祝うことが出来なくてごめんね。でも手紙といういい方法があったから、頑張って地球語で書いてコダイとユキに渡しました。

 

 初めて会ったときから本当に良い兄妹みたいだな~と思っていたわ。白い髪、紅い目、よーく似合っていてカッコ良くて綺麗でね、そしてどんなことがあっても離れず強く生きていく2人が本当に眩しい。

 

 2人が婚約っていうのを聞いて、最初は何のことか分からなかったけど、『結婚する』ってことを聞いてすっごい飛び上がったわ。私は確信していた! この2人は結ばれる! ってね!

 

 変なお手紙になってしまったけど、イスカンダルから2人の幸せを願ってます!

 

 イスカンダルのユリーシャより」

 

 

 

 

 

「ムツキリク、アカツキハルナへ

 

 こういうのは直接伝える方が良いのだが、帰還してからやることが多くなると思ったから、済まないが手紙に代えさせてもらう。ちなみに、この手紙はユリーシャ様が翻訳してくださった。

 

 まずは結婚おめでとう。何となくだが察してはいたぞ? だが、ムツキは鈍感だ。もう少しアンテナというものを張っておくべきだと、恋愛未経験者だが言わせてもらうぞ。

 

 それはそれとして、レプタポーダでユリーシャ様が話してくださったのだが、アカツキとムツキは相当長いこと連れ添った仲らしいな。これほど長い時間を共にしている以上、それはどんな物で切っても絶対に切れないだろう。

 

 切れない想いを大切に。何時になるかは分からないが、また会おう。

 

 メルダ・ディッツ」

 

 

 

 

 そっかぁ……アレ、祝辞だったんだ。

 ユリーシャもメルダも婚約の事喜んでくれてたけど、それをこう言う形で見せてくれた事はすごく嬉しいな。ユリーシャ、また会えるかな。メルダは……多分こっちに来るんじゃないかな。太陽系駐留艦隊とか呼ぶつもりでいるから勢いで着いてきそうだね。

 

(呼ぶんだな、太陽系駐留艦隊)

 

(大昔の在火国連軍みたいな感じでかな。そもそもめちゃくちゃ距離あるし、冥王星基地再建とかになってもオッケー出すように進言するつもり)

 

 いけないいけない仕事の話は、今日はなし!

 

 

「続きまして、新郎睦月リクさんは永遠の愛を込めて、誓いのキスを交わしていただきましょう」

 

 

 

そうだったぁぁぁぁぁぁああああああッ!!! 

 

 

 

 祝辞で一旦忘れようと思ってたけどそうだったそれがあったんだった!! 真田さん何とかして下さい! 流石に公衆の面前でやるのは恥ずかしいので!!!

 

「……ん? どうした?」

 

どうしたじゃないですよこの顔見えますか?!  顔真っ赤っかで出火しそうなんですよ私! 古代くん司会者何とかして! 

 

「あぁ……皆様カメラを下ろして後ろを向いて目を瞑ってもらえますか? 僕らも目を隠していますので、お2人は安心して下さい」

 

 

 古代くんナイス! 察する力大事だよ!!

 自ら進んで目を瞑って後ろ向いたら皆渋々後ろ向いてくれた。ああ……これで何とか……マリさんなんでカメラ向けてスタンバイしているんですか!?

 

「私はト・ク・ベ・ツ♪」

 

「マリさん、Wunder使って家に三式弾を送りますのでちゃんと受け取ってください。なんなら時限式にしておきましょうか?」

 

「very dangerous お断りだにゃ!」

 

 リク、圧かけナイス。

 よし、これで誰も見てないね。これで……何とか……ん? リクどうしたの紋付ごそごそして、何か探しているの? あ、写真だね。それももう1枚しか残されてない筈の、月村さんが持ってた写真だよね。借りてこれたんだ。

 今だったら確かに誰も見てないから出せるよね。

 

(一番見たかった人が、ここにいるからね)

 

(……そうだね。お父さんとお母さん、それと風奏さんには見て欲しいかな)

 

 ゆっくりと思念で会話しながら、写真を空高く上げる。もう今はあの海の向こう側にしかいない。それでも、私はお父さんとお母さん、風奏さん(お義母さん)の事は、決して忘れません。

 

 

 とても長い時間が経ってしまったけど、私は3人に育ててもらえて、幸せです。

 

 

 色々あって人から片足超えてしまったけど、至って普通の生活を送れそうです。

 

 

 真田さん、赤木博士、アスカちゃん、マリさん、に出会って、古代くん森さん沖田艦長……多すぎる人たちに出会って、人類救う為に色々頑張りました。

 

 

 だから、ちょっと遠い所で、のんびりと見守っててください。

 

 

 色々大変な時代だけど、今は幸福気分でいさせてください。

 

 

 

 

 

 

 

「リク、ん」

 

 少し上を向いて目を閉じる。

 

 

「すぅ……はぁ……いくよ」

 

「うん、お願い」

 

 どうやっても抑えられない感情は今は置いておこう。

 

 キスされるのは初めてだけど、覚悟を決めて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は、唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハルナっち。式中失礼、仕事用の方で何か鳴ってるにゃ」

 

 えっちょっ見られてた! マリさんニヤニヤしてないで!

 あれでもなんかテレビ電話みたいなのが繋がってる。 ん? これジャックされてる? 通信元は何かガバガバで隠してないけど……AAAWunder!?

 

『暁さん、睦月さん。結婚、おめでとう』

 

 レイちゃん!? どうやって繋げたのこの端末に!

 

『なかなか繋がらなかったから手段を変えてみた。ちゃんと言えてよかった』

 

「ああ君が綾波君か、話は聞いているよ。ここには君を知っている人しかいない。勝手に出てきた事は驚いたが、まあ安心して臨席して欲しい。カメラは……見えてるんだな」

 

『真田、さん。ありがとう。ちゃんと見えている』

 

 いそいそとマリさんが内カメラで構えた。まさかレイちゃんが私の端末に繋げてしまうなんてビックリしたよ。これ結構セキュリティしっかりしたやつだけどどうなってんの? あ、レイちゃん=WunderだからMAGIも使えたのかな?

 

 ……一応無暗に繋げないように言っておこ。

 

 

 

「それでそれで! 初めてのKissのご感想下さいな!」

 

「フンッ!!」

 

 メキッ

 

「ぎにゃぁ!!」

 

 アスカちゃんナイス。ああ引き摺られてくマリさん。でもさっきのは自業自得だよ。でもメキッって言ってなかった?

 でも失礼な事聞いてきたのはそっちだし、そっちが悪いのは悪い!

 

 

「……最後に写真撮影に入ります! 皆さん新郎新婦を囲むようにお並びください!」

 

 

 

 皆一斉に椅子から立ち、私達の周りに集まってくる。私はリクに寄り添い、真田さんは一歩離れたところから穏やかに立ってレイちゃんの内カメラを向けて、マリさんはアスカちゃんに張り付いて、古代くんと森さんは……言わなくても分かるかな。藤堂長官は三脚に変わったカメラを立てたら一番端っこに行ってしまった。

 

 

「あのカメラ何ですか?」

 

「一眼レフだ。SEELE対策で極力ネットを介さない様にしている。常用の端末では不安があってね」

 

 藤堂長官が言うにはどうやらそういう事らしい。SEELE対策、地球に帰ってきたからにはちゃんとしておかないと。

 でも、そんな珍しいカメラなんてよくあったね。レコード盤並みに絶滅危惧種だと思うけど……。あ、藤堂長官のなんですかアレ? 何だか沖田艦長と気が合いそうですね。確かレコードプレーヤーお持ちでしたから。古いものだと思うので

 

「ちょっとごめんね」

 

「へっ? うわあ!」

 

 ちょっと危ないって! お姫様抱っこする時はちゃんと言って! あ、真田さんレイちゃん端末持っててください落としたら危ないのでお願いします。

 それにしてもお姫様抱っこなんてどこで習ったの? Wunderにいる時やらなかったじゃん。あ、そもそもする機会がなかったんだった。でもよく持てるね私これでも60キロくらいあるんだよ? 見た目スラっとしてるけど近接格闘用に一緒に鍛えたらその分体重増えちゃって……脂肪じゃない筋肉だよ! でも、あんまり目立たない程度に付けたとはいえ筋肉のある技術科って、変だよね。やっぱり。

 

「綾波君、カメラはこれでいいかい?」

 

『ちゃんと見える。ピースは、した方が良い?』

 

「そこは君に任せるよ」

 

「なら、そうしたい」

 

 わ、画面越しだけどレイちゃんもピースしてる。それも、ミサトさんが残していった艦長帽と服もちゃんと着てる。似合ってるよ。まだダボダボだけど、ピシッて決まるようになるよ。

 

「あとどれくらいですか?」

 

「タイマーは1分だったからそろそろだろう。皆カメラを向いて」

 

 皆カメラを向いてニッコリ笑ってピースする。

 

 それにしては、今日は本当に驚いたり恥ずかしくなったり忙しいな。サプライズで結婚式なんて全然想定できないよ。会議室借りて結婚式する積もりで動いていたのに、まさか地上で一番最初に結婚式が出来てしまうなんて……リク、やっぱり分かってたんだ。

 

 でも何となくだけど、ATフィールドで読み取った感じがしなかったの。多分、そういうのに頼らなくても察してコッソリ動いてくれたんだなって。「そんな物使わなくても分かるよ?」って感じでさ。

 

 あの日に私達は家族になろうって思って、ざっくり8か月。今の私は地上で皆に囲まれて、大好きな人に抱き抱えられている。

 これを幸せって言うなって言われても、私は全力拒否するよ。今が一番幸せ。生まれてきて一番、幸せ。

 

 

 ああ、もう家族なんだな。そう思ってたら、シャッターは切れていた。

 

 

 

 一眼レフの液晶には、皆が満面の笑みで映った最高の一瞬が映っていた。

 

 

 

 貴方を愛します、私の旦那様

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2199年12月20日。復興した地球の日の本で、私達は永遠の愛を誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 __その夜__

 

「眠れないの?」

 

「なんか今日はな。だからさ、やっておきたい事があるんだ」

 

「やっておきたい事……って?」

 

「子供の名前、考えておこう。地球とか人類の為にってよりかは随分と分かりやすい目標と思う」

 

「いいね。だから後ろにそんな分厚い本隠し持ってたの?」

 

「バレたか……加藤さんのとこで紋付借りる時に渡されたんだ。子供を迎えるにはまだ早いし、それに、ハルナの事だから我慢してるのは分かる」

 

「加藤奥さんが妊娠した時は羨ましさで暴走したけどね、ホントテンポ速いって。私も欲しいのに、子供」

 

「そういう状況じゃないって事、分かってるだろ?」

 

「もちろん分かってるから暴走で済ませたんだよ? 私達の子供達は、なるべく戦争とかが聞こえない時代にしておきたいの」

 

「んじゃ、色々考えて書き出してみるか」

 

 その夜、私達は寝落ちするまで子供の名前を考え続けた。

 翌朝起きた時には用紙にびっしり名前が書かれていたけど、大きく丸を付けた名前が書いてあったの。

 

 

 男の子だったらアオ、女の子だったらマツリと名付けよう。

 

 

 良いなって思ったから、「こんにちは」と言える日を目指してこの子の為に頑張っていこうかな

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