宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》   作:朱色の空☁️

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火力! 火力! 火力だァ!!


やりすぎ? やりすりじゃない?/真田さん3徹目です/ハロー、FLの皆さん

「( ´∀`)フハハハハ……(  ゚∀゚)ハッハッハッハッハッハァッ!!」

 

「遂に手をつけられるゾォォ!!」

 

「このために入ったと言っても過言では無い!!」

 

「本気になった地球人類が何考えるか教えてやろう!! さあ作ろうではないか! オーバードウェポンを!!」

 

(爆発音)

 

 元からマッドなのは分かりきっているが、今日からはそのマッドに拍車が掛かることとなる。艦体の設計も大詰めで一息ついたので、そろそろアレに取り掛かることとなったのだ。

 

 そう、アレだ。

 

 圧倒的火力、圧倒的制圧力、圧倒的索敵力、(略)防御力、(略)防空力、(略)な艦載機展開能力。その他の様々な要素を一点特化で大幅に底上げする拡張兵装こそオーバードウェポンであり、人類の夢と希望とロマンとバカを詰め込むべき(諸説あり)兵装だ。

 

 名を、オーバードウェポン。内蔵することが不可能な力である事と、単艦相手に使えばオーバーキルな点から「オーバード」という名が与えられている。

 

 そして、このオーバードウェポンは多数考案されることとなっている。主任の計らいで「作った人にはペットネームの命名権を与える」こととなったので、何時ものマッド共は今日より「変人」にクラスアップしオーバードウェポンの考案に入ったのだ。

 

 

 その結果……

 

 

「出てよ! 200センチVSPSC!!」

 

「温いわぁ! 270センチ電磁投射砲だぁ!!」

 

「ふっ、まだまだたな。マルチプル・バルス!!」

 

「「お前それ絶対味方殺るやつだろ!!」」

 

「は?」

 

 

 この有様だ。でも折角なので、その変人共の考案したオーバードウェポンを軽く解説しよう。

 まず200センチVSPSC。シンプルながら強い一撃を放つが、VSPSTの技術をガッツリ反映させたこの巨砲は「可変速陽電子衝撃砲(砲塔では無いのでTではなくCである)」と呼称される。これをオーバードウェポン用のコネクタを取り付けて舷側に1機ずつ。二丁大砲が出来るのだ。

 

 次、270センチ電磁投射砲。これも二丁大砲ができるスタイルだが、名前の通り電磁投射砲だ。「馬鹿デカい三式弾を打ち出してみては?」というアイディアもあったが、それほどの火薬を用意するのも大変で意味が無いということなので、電磁投射砲に落ち着いたらしい。

 そして口径270センチ。波動エンジンから供給される莫大な電力から生まれるローレンツ力が鋼の槍を打ち出し、秒速30000㎞で敵艦を串刺しにする。重力アンカーで踏ん張らないと撃てない事と引き換えにどんなミサイルよりもずっと速い。ビームがダメなら物理で殴ればいいじゃないを体現した「物理最強武装」である。

 

 そして、問題のマルチプル・バルス。扇の様な見た目をしたこのユニットは、扇の骨にあたる部分に48センチVSPSCを備えている。1枚の扇で13門。これを5枚束ねて65門。これで一ユニットとなるが、両舷に装備する事が前提となる為130門となる。

 これをぶっ放す。砲身を前方に向けてぶっ放すのではなく、「砲身を左右に展開しぶっ放し、自分の全周囲を焼き尽くす」とかいう輪をかけて頭の可笑しい兵器だ。

 波動エンジンの出力があっても波動砲並みの充填時間を要するこの兵器は上手く使える時が来れば1対130でもやれるかもしれないが、それ以外が壊滅的すぎる。

 

 

「「「主任!! どれがいいですか!!」」」

 

 

「200センチVSPSC。と、270センチ電磁投射砲は採用。バルスは流石にダメ」

 

「「いよっしゃぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」」

 

「嘘だァァァァァァァァァァァッ!!!!」

 

「で、名前は? どうせ考えているんでしょ?」

 

「では発表します! 200センチVSPSC『ローエングリン』です!!」

 

「270センチ電磁投射砲『ダインスレイヴ』です!!」

 

「進めてヨシ。砲撃専門はこれで打ち切りで、残り5枠」

 

「「\( ‘ω’)/ヒィィィィヤッハァァァァアアアア!!! 」」

 

 おっと、世紀末かな? と勘違いしてしまうが、そんな世紀末を越えたのが2201年の地球だ。これくらいで危機感を覚えてはいけない。

 

「まさか帰還前に考えてたやつ以上が出てくるとはな、ほら。100㎝の」

 

「そういう人ばっかりなのよ、ここは。集めた本人が言うのもなんだけどね」

 

「あ、あの……持って、きました」

 

「あ、ミリアさん?」

 

 ここで紹介しておこう。ミリアは、ユーラシア管区から遥々やって来たロシア系技術者で、このヒャッハー文明の中でも数少ない良識人だ。大人しくて争い事が苦手だからなのか、武装系ではなく索敵能力の開発を買って出てくれた貴重な人材だ。

 

「ウェポンって言っても、その、撃ったりしなくても、いいんですよね?」

 

「そりゃ勿論」

 

「じゃあ、その……こういうのでもいいと、思います」

 

「なになに……」

 

 ミリアの案を紹介しようと思う。

 ヒッグスドライブシンクロナイズドレーダー搭載大型ドローン射出機。これも二丁拳銃スタイルが出来るようだが、明らかに直接攻撃が出来るような物ではない。ドローンは非武装。仮に敵艦に体当たりさせてもダメージはほぼ無だろう。その代わり、この射出機は広大な索敵半径を提供する事で艦隊の目と耳を強化する事が出来る。

 

 そもそも、ヒッグスドライブシンクロナイズドレーダーは、戦時から宙技廠で開発が進められていた新概念のレーダーであるが開発が難航していた。その一番の要因は小型化。今の状態では航空機に内蔵する事すら出来ず、レーダー単体で10mのサイズだ。兎に角デカい。

 

 そこで、レーダーにコスモファルコンのエンジンや姿勢制御スラスター、送受信用アンテナといった宇宙空間を航行するために必要な物を取り付け、レーダードローンを作り出した。これをコンテナに詰めて片舷10機。都合20機。これを等間隔に配置して一斉に索敵させれば、通常の艦艇の10倍近い範囲の索敵が可能となる。さらに、「艦艇、航空機、ミサイル等」しかレーダーで拾わないので、デブリを検知する事もないのだ。

 

 

「一番まともなのが来た……ミリアさん、やっぱり呼んでよかった」

 

「えっと、その、まともなのって?」

 

 あたまに「?」を浮かべるミリアにハルナは例のキチガイ兵装(マルチプル・バルス)を見せた。全方位砲撃とか言う「ビールを一気飲みして悪酔いしながら考えた様な産物」を目にしたミリアは目をぱちくりさせた。

 

「はぁ……」

 

「名前は?」

 

「えっと、良いのが浮かばなくて……名前がないのはアレだったので、ホルスアイって名前にはしたんです……あ、太陽神ラーっていうエジプト神話の神様がいて、全てを見通す目って事で、その」

 

「うん、進めていいよ。あ、私達の見る?」

 

「えっと、是非」

 

 ハルナはディスプレイに自分たちの案を表示させた。帰還前にマリのアイディアから生み出したヤタノカガミの発展型だ。

 

 ヤタノカガミ。由来は日本神話の三種の神器の1つ。波動防壁を手任意の向きに展開する事が出来る大型アームの形状をしたオーバードウェポンだ。

 98式特殊機動外骨格改を参考にして生み出したアームユニットは重力圏内でも荷重に負けない頑強さと、即座に防壁位置の変更が出来るような機敏さを合わせている。当初は機敏さに今一つ欠ける出来だったが、ハインラインの戦術機設計図を参考にして改良を行った結果、人型兵器由来の機敏さを兼ね備える事に成功した。

 

(重量に負けない頑強さとのトレードだったので、戦術機の腕っぷしは強くなった)

 

 あのマルチプル・バルスと同じような扇形のユニットを4枚備えている。扇一枚当たり波動コイルが13個。片舷で52個。両舷合わせて104個を展開できる。これらはコイル保護用の装甲板の内側に配置されるが、一斉にコイルが起動すれば波動防壁を任意の向きに展開可能だ。

 

 ただ守るだけのオーバードウェポンに見えるが防壁強度がバカにならないので、例え航空機や艦艇が吶喊して来ても防壁で守り切る事が出来る。弱点と言えば、所詮は艦艇と同じ防壁の張り方なので、発生時間と耐圧限界、被弾経始圧が限られているという事。ここは技術の発展待ちだ。

 

「主任の事ですから、なんか、もっと派手なの作ると思いました」

 

「最初は200センチみたいな大砲作ってたよ? でもどこかに攻めに行くわけでもないから、盾作っても問題ないはずなのよ」

 

「主任出来ましたぁ!!!」

 

「今度は?」

 

「折角空母型いないんですから、空母になれるやつ作りましたァァ!!」

 

「空母? 艦載機ならナガトで12機行けるようにしたけど。横倒しドラム式で」

 

「もっと行きましょう!!」

 

 という事でこれが提出された。

 連装式艦載機格納ユニット。あのWunderに搭載されてナガト型にも搭載機数を減らして実装されたシリンダー式格納庫を大型化し横並びにする。都合60機以上の艦載機格納能力を持つ。

 これを両舷備えて120機以上。装備中は艦の性質が大きく変化する事からヒュウガ型かイセ型と呼称される事となるが、その辺りはまぁ良いだろう。

 格納能力はここまでにして、展開能力を見ていこうと思う。元ネタに忠実な発着艦ハッチを開いて1機ずつ射出。と思えば、このハッチがユニット下部と上部に取り付けられている。ユニット前方に伸びるリニアカタパルトで発進。リニアカタパルトは表裏両方を使えるので、1基のカタパルトで同時に2基発艦可能だ。さらに側面(コネクタとは反対側)には前方でも後方にも打ち出せるカタパルトがあるので、同時発艦可能数は7機となる。

 さらにこのユニットはオーバードウェポンコネクタとは別に艦外のハッチとも繋がるようにできており、ユニット側に航空隊の居住スペースを設けなくてもよくなっている。正しく格納庫だ。

 

ここまで紹介したので一番の強みを言うと、「上下で対象になるように作られている」ので、上下をひっくり返して装備する事も出来るので、わざわざ「左舷用と右舷用」を造らなくてもいいのだ。

 

「リトライで」

 

「リトライ?」

 

「ダメというのが惜しいから、これを小さくして対空兵装とケルビンインパルスを追加。それでもう1回持ってきて」

 

「補助エンジンをですか?」

 

「だってこれナガト専用でしょ? サイズ的にナガト側のケルビンインパルスを塞いでしまう。それは回避したい。どうすればいいか、分かる?」

 

「空間装甲にしてエンジンを守り、ユニット1つにつき2つケルビンインパルスを搭載、サイズを小さくするから……ちょっと縦長にします? 正円じゃなくてちょっと縦長楕円に。空母はデカいので被弾面積を小さくして、あとは……」

 

「おっけ、そこまで。それを加えてリトライで」

 

「イエッスマァァァァァァァム!!♪ (o'-')ゞ」

 

 奥様主任と旦那主任の言いたい事をちゃんと把握していた彼は雷撃も青ざめる加速で飛んで行った。

 

「イェスマムって、軍隊か何か?」

 

「一応ここは平和維持軍の中だからね。じゃあ睦月リク三佐? 私は色々突っ込み過ぎて精神的に疲れました」

 

「分かっております三佐。ではこちらにどうぞ」

 

 一応職場なのは分かっていると思うが、甘えたいのだろう。膝に座らせて頭を撫で始める。「もっと撫でて」と顔で訴えて来るので思う存分撫で繰り回す。そうすると纏っている雰囲気が緩い物に変わっていくのだ。でもある一定以上は緩まない。それは髪を纏めているバンダナがストッパーになっているからで、もしもこれを解いた状態で甘えたらどこまでも緩々になっていく。

 まぁそれはそれとして、まだまだ枠は余っている。砲撃枠2つ、索敵枠1つ、防御枠1つ、航空機運用枠1つ。残り枠は3つだ。ダブりNGなので、防空枠か戦術機搭載枠、それか高機動枠だろう。

 

デェェェェェキィィィィィタァァァァァァアアアアアッ!!! 

 

「ハイハイ今度は? ゲテモノはやめてね?」

 

 ハルリクの審査を無事に通る事が出来るのだろうか。オーバードウェポンは狂人共のロマンと発想から生まれ続けるのであった。

 

 


 AW2年(2201年)4月

 次元波動理論研究局

 

「赤木博士……今何日目か、覚えてますか?」

 

「3日目ね。貴方ちょっと寝たら? 目の下凄いわよ」

 

「そういう博士はなぜ平気なんですか?」

 

「私はまぁ、慣れているし寝れるときに寝ているわよ。休憩してきた方がいいわよ。寝るなり遊びに行くなり」

 

 次元波動理論研究局は、デスマーチ2歩手前の状況となっていた。オリジナル波動エンジンを小さくしタウコアを使用する第2世代波動エンジンの設計は、あと1歩の部分で暗礁に乗り上げた。何度シミュレーションを繰り返しても、ワープ可能な出力まで上がらないのだ。

 その結果、出力ではなく真田の連続徹夜日数が上がった。現在3徹目。元コンピュータ人間にはそろそろ堪える頃合いだろうと思い、赤木博士は真田を研究局から放り出して休憩するように言った。

 

 とはいえ、どうしろというのだ。息抜きは自分でもしてきたつもりだが、精々仕事の合間に直列型ツインドライヴの設計をしていたくらいだ。仕事の休憩に仕事していたので、何もしない休み方を忘れかけているのだ。

 

 

「はあ……」

 

 という事で、真田は休む事にした。

 

 

 _________

 

 

「うん、美味しい」

 

「砂糖なしですけど大丈夫ですか?」

 

「今はこれが欲しかったんだ」

 

 ふらふらと歩いていたら何故か到着していたのは睦月・暁国際設計局だった。珍しい来客にリクくんは驚いていたが、目の下のクマを見るなり「これはいけない」と思いハルナくんにコーヒーを淹れるように思念伝達(だと思う)し、2人の私室に引っ張り込まれて今に至る。あ、ただ名前を言っただけなのに1から10まで理解してコーヒーを淹れに言ったハルナを見たマッド共は、「いや分かんのかいっ!」と揃ってツッコミを入れていた。

 

「そっちの調子はどうだい? といっても、定期的に報告は入って来るんだけどね」

 

「あとはライン周りが少しですね。電力、波動エネルギー、タキオン、作動流体、その他諸々。整備性とかも考えないといけないので割と苦労してますけど、オーバードウェポンの事もあったので皆張り切ってます」

 

「そういえば報告書に書いていたね、オーバードウェポン設計してる人は大抵奇声を上げていると」

 

「マルチプル・バルスとか言う無差別兵器とかありましたから。見ます?」

 

「いや、今はそういう設計図を見るのを控えている。赤木博士から休むように言われていてね」

 

「3徹ですって?」

 

「読まれるのは慣れないな。まぁ、そんな所だ。あと、初対面の人のATフィールドはなるべく読まないように。バレないかもしれないが失礼だ」

 

「気を付けます。思ったより進行が速いみたいで、気を付けてないと見えたり聞こえたりしちゃうんです」

 

 そういうと、ハルナ君は少し悲しそうな顔をしながら笑った。エヴァの呪縛モドキの事は、私も聞いている。2人の場合は睡眠時間の減少という形で表れていて、そのうち眠る事すら出来なくなるだろう。眠らなくてもいいというのは一見すると良いように聞こえるが、精神性に影響をもたらす重大な問題だ。人は睡眠というメンテナンスを行う事でコンディションの回復を行う。それが不要、不可能になる場合、何か別の方法で回復する必要がある。

 

「今は、どれくらいだ?」

 

「2時間あるかないかです。呪詛文様の研究もデイブレイクでやってもらってますけど、日常生活を送りながら呪縛を遅らせる配列はまだ見つかってないんです。遅らせる配列はあるんですけど」

 

 ガミラス側から極秘に手に入れた使徒封印呪詛文様の研究はデイブレイクによって行われている。裏死海文書関連の資料から呪詛文様の配列の調査が行われているが、外部から言語学者を招聘して情報漏洩のリスクを負って進めても進みは悪かった。

 

「あ、でも眠れない時はリクに膝枕して貰ったらうとうとくらいは出来るんです。寝れたらいいんですけど。逆もいけました」

 

 現状が良くなくても明るくしようとするのは、時々私の目が眩みそうになるな。……そういえば、もうアレから2年以上も経っていたのか。たしか、中性子星の戦いの後だったな。あの婚約報告は本当に驚いた。雷に打たれたような衝撃だった。そう思い出すと、疲れているのに笑みが浮かんだ。

 

「?」

 

「いや、君達の婚約発表を思い出していた。思い出させてしまうかもしれないが、中性子星の戦いの時に解析室の隣の部屋に着弾したのを覚えているか?」

 

「着弾……ああ、あの時のですね。怖かったです」

 

「私は、君達を失う事が怖かったと思う。あれ程人の名前を叫んだ事はなかった。幸い君達は無事だったが、泣き腫らした君達とマリ君がまだ頭に焼き付いている。そんな事があったからなのかは分からないが、もう友人を失うなよと古代が後ろから見守っている気がしてな、それに応えないとアイツに申し訳が立たない」

 

 別に、後ろから脅迫するみたいに言われているわけでもないんだ。

 

「真田さん……」

 

「だから私は君達の艦艇に載せる波動エンジンを設計してきたが、それが暗礁に乗り上げかけているんだ。どうにも出力がワープ可能出力まで上がらない」

 

「次元波動理論なら一通り理解しましたけど、私達は真田さんみたいに出来るワケじゃないんです」

 

「構わない。だが、私と君達ではそもそもの考え方がの手順が違う。それを突破口にしたい」

 

「突破口ですか。要は、出力を上げればいいんですよね? それ以外は問題ない感じですか?」

 

「ああ、ナガト、タカオ、ユキカゼに共通して残った最後の問題だ。そこさえ何とかすれば完成だ。タウコアも詩作が幾つか出来上がっているから、本当にその問題だけなんだ」

 

「……増幅装置」

 

「今、何といった?」

 

「外付けで増幅装置を用意すればいいと思います。エンジンそのものを改良して上げてもいいですけど、無理そうなら外部取り付けの装置で増幅して上げれb」

 

 

それだッ!!! 

 

 

 増幅装置! 私はなぜエンジン本体に固執していたんだ! どの道タウコアの高出力化かエンジン本体の改良が必要だったが、技術発展を待つ為にこれを繋ぎにするべきかもしれない! だが増幅だと? どこに取り付けるべきだ?

 

「何か書ける物はあるか!?」

 

「局の方に大きいモニターあります!」

 

 ここに来て良かった! とにかく何かに書き留めておかなければ! 幸い二人の私室は局の中に作られているから、大型モニターは数秒走るだけで届く距離だった。

 アイディアが消えないこの短時間で書き上げるしかない。まずは第2世代波動エンジンの概略図からだ。

 炉心、重力場圧縮室、圧縮調整室、主ノズル、タキオン粒子発進増幅制御装置、重力場圧縮装置、主タービン、原動機。概略図だから今はこれでいい。さてどこに付ける。余剰次元展開時のマイクロブラックホールのホーキング輻射からエネルギーを取り出しているなら、輻射エネルギーを炉心と直結するタ粒子発進増幅制御装置と重力場圧縮室に流し込む過程のどこかに付ければいい。そうすれば、オリジナルコアに近い出力を発揮する事が出来るかもしれない。

 

 ならば……!

 

 

 

(ここからは、『知覚と快楽の螺旋』*1を流しながらお楽しみください)

 

 

 

 

「「うわぁ」」

 

 モニター占領して済まない。だが思いついたんだ。単純な増幅ではなく段階的な増幅を、必要な時に必要な分の増幅を与えられる増幅装置。過給機とも呼ぶべきその装置の構想が源泉から湧きだしてくる。いけない、多すぎて私では抱えきれないかもしれない。

 

(半分受け持ちます。シンクロするので残りは書いて下さい)

 

「!?」

 

「ペン下さい」

 

 また触れられたような感触がしたようなしなかったような。ダイレクトに頭に声が響くのはなかなか慣れないが、どうやら私のATフィールド(私は知覚出来ないし、便利すぎるのは流石におかしいと思うが)に重ね合わせて書き切れていない分の構想を読み取ったのだろう。変な気分だ。

 

「書けていない部分を頼む」

 

「「いぇっさー」」

 

 __________

 

 

 数分後

 

「……スーパーチャージャー、これでいけるかもしれない」

 

「スーパーチャージャーってなんですか? 元ネタは?」

 

「昔のガソリン車で使われていた過給機の事だ。本来の仕組みとは当然異なるが、必要な時にパワーの底上げを行う点では同じだろう」

 

 という事で、書けてしまった。私+シンクロ中のハルナ君とリク君でアイディアを一つも余すことなく書き起こしたが、それを纏めていたら驚くほど小型になり気持ちが悪い程の性能となってしまった。ハルナ君とリク君が加わったら異常な補正がかかるのか?

 

 とにかく、これでワープ時の出力向上が出来る。増幅を上げれば波動砲までいける。ツインドライヴには……恐らくいらないだろうが念のため2基分搭載しておくか。

 

 さて、後はこれを……

 

「MAGIに入れて試します?」

 

 ほら、読まれた。まぁ後で試すが。

 

「このデータをこちらの局に回しておく。いい結果が得られるかもしれないから、期待して欲しい。来てよかったよ。あとそれと」

 

「「?」」

 

「無暗矢鱈に使わない事。私は君達の練習の付き合ったから慣れているが、普通の人なら違和感で不調をきたすぞ。進行も進んでしまうはずだから、程々に」

 

「「……はい」」

 

 さて、気のせいか足取りが軽いな。すぐに戻ってシミュレーションにかけてみよう。

 

 ________

 

 

 結果として、スーパーチャージャーを搭載した第2世代型波動エンジンはワープ出力まで上げられることが分かった。それどころか、全力稼働をすればVSPSTや波動防壁の並列全力稼働も賄える程の出力を提供できてしまう。

 

 ただし、スーパーチャージャーの構造は赤木博士に「訳が分からない」と言わしめるほどの物であり、今のところ局で詳細な構造と理論を理解しているのは私と赤木博士(何とか理解してもらえた)だけだ。

 

 あの2人が関わると、大抵の場合はオーバーテクノロジーになるのか?

(なってます。オーバーテクノロジーなってますって)

 


 

 

「調子はどうですか?」

 

「現在、MAGI内部仮想空間内での状態検査中です」

 

「凄いね。封印されて1世紀以上経過しているのに」

 

「当時の秘匿技術がぶっ飛んでいるという事です。最初のボトムアップ型人工知能。大昔の軍事AI開発計画と聞いていますが、問題は、彼女たちは自我を持っているという事です」

 

「知ってます。ですので、彼女たちの言葉を聞きたいと思います。地球を守る力になりたいかどうかを。拒絶されれば、他の案を考えます」

 

 1世紀以上前に計画された軍事AI開発計画。それは北米管区旧アメリカ合衆国からの介入による事故により計画そのものが世界に露呈。当時の日本政府は開発拠点であった洋上プラント「オーシャンタートル」の電源の切断に乗り出したが、彼らの恒久的生存を望んだ者達の手により辛うじて存続。

 しかし、その繁栄も長くは続かず、現実世界でその5年後にオーシャンタートルは解体。ライトキューブは自我保存処置を施され20万個すべてが大切に保管された。

 

 計画名は「プロジェクト・アリシゼーション」、非常に高度なボトムアップ型人工知能を生み出し、それを無人兵器に転用する事を最終目的にした自衛隊主導の極秘計画だった。

 

 彼らは便宜上FLAIと呼称されているが、その実態は光量子ネットワークの集合体である。このネットワークは我々の脳内のニューラルネットワークと同一であり、実はほぼ同じ精神体を持った生命体と見る事が出来る。体があるかないかはもう些細な違いだ。

 

 そして同じネットワークを持ち生身の人間と同等の知性を持ちながら、その演算速度は人間を優に超えていたのだ。その理由として、彼らはアンダーワールド内でシステムコマンドを用いた「神聖術」と呼称される魔法じみた現象を起こしていたからだ。システムそのものに働きかけるコマンドではあるが、肝心な演算部分と制御部分は術者本人に依存していた。

 

 

 これはただ1つの例だが、FLAIが義体を使い現実世界に来訪していた。そのFLAIの場合、内蔵されていたインターネット機能を使い瞬時に情報を収集したそうだ。以下に内蔵された機能とはいえ、人間と同質の知性体がここまで扱えることに、義体製作者は心底驚いたらしい。

 

 そんなFLAI達を起こす事となったのは、平和維持軍の技量問題があったからだ。如何にシミュレーションを熟していてもそれを実際の戦場で活かせるかと言われれば分からない。さらに言えば、乗員の少なさと1人1人の仕事量が増えてしまう事もありどこかが疎かとなってしまう。だから1人分の仕事を減らし、減らした分をFLAIに任せるのだ。

 これは大昔のアニメにあったイメージから作られた構想だが、軍艦に自我をもった人間体(と言っていいのか?)があり、それに人間が乗り込み海戦をする描写があった。主に人間が操艦していたが、時に自律操艦や自律砲撃を行う事もあった。

 

 しかし先程も書いたとおり、これを実現するにはFLAI達の協力が必要である。

 

 

 それと、FLAIの件で当初の計画から変更になった部分がある。

 ……FLAIは人間の魂と同じである為、新規に生み出す場合は何らかの方法でFLAIと同じ空間に立ち、擬似的にFLAIを育てなければならないのだ。

 

 これは搭載の決定が下されて日も経たないうちに分かった事なのだが、現時点ではそんな事が出来る設備が残されていない。かと言って、既存のライトキューブ内の光量子ネットワークを完コピして複製して量産した場合、「自分のコピーが沢山いる」という事実に精神が破綻してしまう。思考に制限をかけることも出来ない。

 

 という事で、封印された彼女達に協力を仰ぐ事となったのだ。ちなみに、戦艦だから女性形がいいなとかは諦めた。

 

 

「封印解除完了、あとは目覚めてもらうだけです。こちらからは強制的に目覚めさせることは出来ません」

 

 ________

 

 

 

「覚醒確認、目を覚ましました」

 

 その数分後、活性を確認したライトキューブが取り外され、用意された義体に装着されて義体はすぐに起動した。少女はカメラ越しの視界に映る研究室の風景に目をぱちくりさせて辺りを伺う。中世に近い世界にいたはずなのに、目を覚ませば一気に近代化した研究室の様な見た目となっているのだ。それにここは自分が生活していた世界「アンダーワールド」ではない。それが少女の警戒を一気に押し上げた。

 

 

「初めまして。僕は睦月・リク・暁。こっちは睦月・ハルナ・暁。君は?」

 

「名前……ミリシャ・イリスニーアだ。ところで、随分と洗練された部屋の様だが今は何年だ?」

 

「AW2年、2201年。こちら側で最後に記録されたアンダーワールドの技術水準を超えた世界だ」

 

「超えた?」

 

「機竜とは違う戦闘機が宇宙を縦横無尽に飛び回れるし、何なら他の異星人に会いに行けた世界だ。途方もなく大きな戦艦がワープする事も出来るし大陸を吹き飛ばすことも出来た。ああ、これは全て等倍状態のアンダーワールドを内部から観測した人類側の記録だ」

 

「……追い越されたのか。リアルワールドの住人の方が大昔は進んでいたと聞いていたが、また逆になったのか。アンダーワールドは?」

 

「全ライトキューブの封印処置を施され、1世紀以上前に解体された。アンダーワールドのバックアップデータは調査中だ。むしろよくこれで済んだと思っている」

 

「よくこれで済んだ……だと?」

 

 自分たちの世界が消えた事に関して「よくこれで済んだ」と言われれば流石に顔をしかめる。勿論そんな妙な意図はなかったリクは謝った。

 

「気に障る言い方だったら謝らせて欲しい。君達アンダーワールド人は、大昔の人類からすれば軍事利用を目的とした超高性能AIでしかなかったんだ。人と同じように考えられるAIは当時の人類からすれば喉から手が出るほど欲しい代物だったんだが、実態は人類と何ら変わらない知性を持った命であった。それの兵器転用は倫理とかの問題でなくなった。安心してほしい、封印直前まで生存していたアンダーワールド人全員は兵器転用されていない」

 

「本当にか? こうして私を起こしたのは、その回避された軍事利用を私達に強いようとする為ではないのか?」

 

「強いるつもりはない。でも、力を貸してほしいんだ」

 

 そう言うと、リクとハルナは深々と頭を下げた。世界救えるなら頭など軽いと言わんばかりにいとも簡単に頭を下げたのを見て研究員は慌てたが、ミリシャは冷静だった。見たところそれなりに階級が高い。リアルワールドがどうかはよく知らないが、アンダーワールドでは上に立つ者ほど腐りやすい事をミリシャは知っている。主に貴族や軍だ。

 

 だがこの2人からはそういう腐敗が感じられなかった。誠意をもって接している事が義体越しに分かる。目を覚ませたと思えばいきなりこれかと思ったが、このままああだこうだと言って拒否するのも柄ではない。

 

 

「話も聞かずに拒否をするように私は出来ていない。どういう訳か、説明を求める」

 

 


 

 

 という事でミリシャはハルナとリクに連れられて、第2世代艦艇のモックアップを見せられた。洋上艦艇しか知らないミリシャからすれば

 

「洋上を進むにはあまり向かない」

 

 と言わしめる形状だが、これが空を飛び宇宙を進むと言われれば

 

「関係も無いか」

 

 と言った。気付いたら時代が進んでいて元居た世界が解体されていても、そこまで激しく狼狽えなかった事から、どうやら物事への適応が速いようだ。それとは別に、ガミロイド技術で作られた義体で動く謎の生命体が随分と珍しいようで、マッド共が遠巻きに見物していた。

 

「なるほど、これは軍艦か。私達をこの軍艦に乗せる、という事か?」

 

「半分は正解。正しくは、人間の乗組員と共に二人三脚で戦ってほしい。もし戦ってもらえるなら、WILLEとしてアンダーワールドを何とかして再建する。人権保障は、君を起こした時点でこれから封印解除される全アンダーワールド人に対して行う事が決まっている」

 

「それは、このリアルワールド側の意思決定機関による決定か?」

 

「君の言う意思決定機関、地球連邦政府は一切関与していない。今は一応政府の元で活動しているが、1年以内に政府から独立をして独自活動を行うはずだから、独立後も君達の人権保障は軍部で行う事となる」

 

「ほう。そうすると我々は君達の組織が生き続けられるように協力した方がいいという事か」

 

「恥ずかしい限りだが、そう言う事だ。代案はあるけど出来れば良い方を取りたい。引き受けてもらえるだろうか」

 

 

 この人物から邪気のような物を感じようと思っても感じ取れない。義体だから、というのではない。ミリシャは人を見る目を磨いてきたと自負している。不穏そうな人は避けてきた。それでも裏が見えない。何をしてそこまで頼み込むのか、真意が知りたいと思った。

 

「1つ、聞いてもいいだろうか」

 

「どうぞ」

 

「貴方は相当に優秀な技術者に見える。プライドもある程度ある様に見える。だが、なぜそこまでして頭を下げて頼み込むか知りたい。この地球という星の為か? この世界の人類の為か?」

 

「それがとても単純な理由で、さっさと平和に暮らしたいからだ。それを実現するための過程に平和を据えているだけ。それに、誰もが人類の為とか地球の為とか思ってるわけじゃないんだ。個人的な願いとか目標の通過点に地球の平和とかを置いているだけ。君達のアンダーワールド再建と同じように、地球の平和は通過点でしかないんだよ」

 

 毒気を抜かれた。そんな大きな目標の為に動いているかと思えばただの通過点扱いで、実際は「穏やかに暮らしたい」だけなのだ。ミリシャの目の前に敷かれようとしている道は、その通過点に地球平和を置いた再建までの道だ。どの道同じ道を進む事になる事に気づけば、ピリピリ警戒し続けるのもバカバカしく思えた。

 

「私と共にする乗員がいるなら、顔を合わせぬまま承諾する事は出来ない」

 

「……分かった、予定の調節をしよう。一先ず艦長と会ってみるかい? 人となりが分かると思う」

 

「そうしてもらいたい。一先ず君は信用出来そうだ。目を覚ました仲間たちには私から呼びかけよう。それともう一ついいだろうか?」

 

「もう1つ?」

 

「いつ言おうかと思っていたがむき身のボディはやめろ。私の見た目は教えるからその通りのボディを作ってくれ。勿論志願する全員分だぞ。制服はそちらの物を着るが、ボディの製造は絶対条件だ」

 

 


 

 

 その後、ミリシャの説得によりまずは5人のFLAI……いや、FL乗組員が集まった。彼ら彼女らの容姿をそっくりそのまま再現したボディは、ミリシャのボディと纏めて時間断層工場でガミロイド由来の技術を応用して製造され、頭脳であり魂であるライトキューブを頭部に内蔵する事で生を持ち動き回れるようになった。

 

 内定済みの艦長をハルナに集めてもらう間に、リクは一通りの準備をすることにした。

 

 まず、21世紀から現在までの大まかな動きを知ってもらった。100年以上戦争を起こさなかった事には感心していたが、星を出た途端に戦争した事には呆れられた。

 次にガミラスの登場と人類滅亡の危機。そして超戦艦と呼ばれるWunderの建造とその奇跡を余す事なく伝えた。「なぜこのような最重要機密を?」と疑問に思われたが、「隠し事して誠意を見せる方法を知らないから」と伝えると笑われてしまった。

 

 

 最後に、今の地球の状態をその目で確認してもらった。ガミラス戦争前と戦時中、そして今。ビフォーアフターの差が激しくてFL乗組員一同発する言葉を見失ったが、ミリシャだけは何とか口を開いた。

 

 

「完全な再建に、何年かかる?」

 

「首都で数年、残りで10年以上は使うと思う」

 

「一見するとただの平和な星だが、そこまでして急ぐ理由はそのガトランティス人がいるからか?」

 

「そう。野蛮が手と足を持って動き回ってる感じだ」

 

「君達は山賊か何かに睨まれたのか? それとも勝手に睨んで来るのか?」

 

「後者だね。はっきり言って今の地球は脆弱だ。地ガ安保でガミラス駐留艦隊の警戒網があるとはいえ、大艦隊で押しかけられたら1発アウト。自衛手段を早急に整えないと地球が無抵抗のままやられることとなる」

 

「それで我々の力も必要と」

 

「1人の乗組員としてだ。アンダーワールド再建という引換条件を使わせてもらって交渉じみた事をしたけど、アンダーワールドの性質上、地球の安全は前提条件になるんだ」

 

 解体前のアンダーワールドは、リアルワールド側からの干渉に極端に弱い。電源、メンテ要員、そして施設。仮にそれらをアンダーワールド側の人間が整備出来るようにして地球人類側との友好を結べたとしても、外宇宙からやってくる野蛮の塊には効かない。

 だから、地球人類側の理解が得られて外からの驚異がほぼない状態を作る必要があるのだ。

 

 

 

「仮にバックアップが無くても作ること自体は難しくない。過去にもフルダイブ型のゲームがあって広大なワールドがあったくらいだ。これからやるのは、未来を賭けた壮大な下準備だ」

 

「宇宙まで行く下準備だがな。ん、どうした? そちらの方向には何も無いぞ?」

 

 ミリシャはそう言うがリクは何も無い草原の向こうを見ていた。ミリシャや他のFL乗組員も同じ方向を向いたが誰もいないように見える。何が見えるのだと思い全力で拡大してみると、白い髪の女性が誰かを連れている。

 

「まさか、どうやっていると分かったのか?」

 

「愛、かな?」

 

「そういうのとは無縁そうに見えたが。神聖術でも使えるのか?」

 

「流石にないよ。言ってなかったと思うけど、ハルナは僕の妻だよ。兄妹かなにかに見えていたと思うけど、れっきとした夫婦だ」

 

 そうこう話していると、艦長に内定した1人がミリシャに向いて敬礼をした。ミリシャは何のことか分からない顔をしたが、礼儀のような物だろうと理解すると反射で体に染み付いた姿勢を取った。

 

 左手は腰に帯びた剣を持つように構え、右手は握り拳で左胸に当ててお辞儀をする。目上の人に対しての礼儀として叩き込んだこの姿勢は、義体の動作範囲でも問題なく実行できた。が、相手からすれば「敬礼をしたのに西洋の騎士のようなポーズをされた意味不明な状況」なので、相手は頭の上に「??」を浮かべた。

 

「ああ済まない。気にしないで欲しい反射でやっているようなものだ。君達のそれと、意味は一緒のはずだ」

 

「……ああ、敬礼の事ですか。分かりました。自分は、平和維持軍暫定第1艦隊艦隊旗艦、ナガト型航宙巡洋戦艦ナガトの艦長に内定した古代進三佐です」

 

「コダイ艦長か。私は、元整合機士ミリシャ・イリスニーア。そちらで言うところの元軍属だ。いずれ貴方の元で動く事になるかもしれないから、貴方の人となりを知りたいのだが」

 

「事情はハルナさんから伺ってます。他の艦長候補の方は予備庁舎の方でお待ちです。実は、自分は無理を言ってハルナさんに連れて来てもらったんです」

 

「好奇心の強そうな人だ。ムツキさん、思っていたよりも良さそうな人じゃないか」

 

「あんまり執着すると古代くんが彼女さんに嫉妬されるからね。程々に頼む」

 

「そうか、コダイ艦長もそういう人なのか。既に未来の伴侶を得ているとは……」

 

「ちょ、ちょっと睦月さん!」

 

「まぁいいじゃないか。森さん待ってるからプロポーズは早めにな。じゃあ、他4人にも艦長候補の人とも合わせたいから簡単に説明を行う。艦長とタッグを組みシミュレーション訓練を通して人となりを知り自分に合うかどうかを確かめて欲しい。君達が選ぶ側だ」

 

「了解した」

 

 ミリシャ・イリスニーアは笑った。

 

「はいよ」

 

 ガング・バルトーは不敵に笑った。

 

「ん」

 

 ウーリエ・ツーベルクは無表情に見えるほほえみを返した。

 

「は、はい!」

 

 ナーシャ・セルルトは勢いよく返事をした。

 

「おう」

 

 バルトロ・リーバンテインは低いが決意の籠る声を返した。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、最初の5人と呼べるFL乗組員は息の合った艦長を見つけ、アンダーワールド再建を約束した平和維持軍(実際は睦月夫妻とWILLE)との協力を結んだ。

 以降、元整合機士であるミリシャの呼びかけにより、全ての有人艦にFL乗組員が登場する事が決まり、艦長とFL乗組員のマッチングはまるで合コンの様だと言われるようになった。

 

 

 また、担当する艦艇が決まる事に合わせ、各々名前の後ろに艦名を持つ事となった。

 ミリシャ・イリスニーアの場合は、「ミリシャ・イリスニーア・ナガト」となった。本人は悪くないと言っているが、アンダーワールド人の公用語が日本語だった事もあり、FL乗組員の大半には好評だった。

*1
ガリレオのテーマソング




FLAIの設定ですが、前に書いた話がガバガバだったので、それをカバーしながら書きました
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