宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》 作:朱色の空☁️
冥王星
共和政ガミラス軍 太陽系駐屯基地
「遅いわよフォムト」
「わぁってる。んで、アイツらと通信繋がるんか?」
「無理ね。向こうが受け取れてないみたい。サイバー攻撃じゃないかしら? あとそれと、大使館から送られてきた写真がこれね」
ネレディアがモニターに表示させたのは、月面ガミラス大使館から発艦したツヴァルケで撮影させた映像だ。海面に扇状に展開したタカオ型と突撃してくるVTOL機がハッキリ写され、タカオ型の後方に人型機動兵器が小銃を構えている。
「タカオ型がVTOLを穴だらけにしてんのかよ。で、政府対平和維持軍だって? アイツらの話より早いな」
「恐らく政府が奇襲を仕掛けたのね。大使館に繋げるわ。繋げて」
ネレディアが司令部の通信士に指示を出し、大使館と超空間通信を繋げる。向こうも状況を把握していたようで、通信はすぐに繋がった。
「バレル大使、揃いました」
『リッケ大佐、バーガー中佐。状況は聞いていますね?』
「テロン政府と平和維持軍が戦闘状態に突入。政府軍に対してトウキョウ3は迎撃行動を継続しています」
『トウドウ長官よりそう言う事が起こるかもしれないとお話はありましたが、少し早いですね』
「それでどうするんです? 自分としては、WILLE側に付いてやりたいですが」
平和維持軍と言わずにWILLEという。2人から何が起こっていくかを知らされ勧誘も受け、シャンブロウの一件から親Wunder派寄りになったバーガーとしては肩を並べてやりたいと思っている。が、現実も見なければならない。今のガミラスは地球政府との安全保障条約を結んでいる。そもそも2つの星の今後もかかっているため、当たり前だが感情1つでは動けない。
『既にゲシュ=ダールバム搭載艦がテロン政府に存在している事は把握している。もしもイスク・サン・アリア条約に『波動砲搭載艦の保有禁止』が条項として含まれているのであれば、多大なダメージを受ける事になるがテロン政府から手を引く事も出来る。が、スターシャ女王はテロンの波動砲保有をお認めになられた。あの夫妻に免じて』
「番人、でしたね。自分も第2世代艦をざっくり確認しましたが、今のところはゲシュ=ダール……ああ、波動砲は乗せてません。そもそも確認した限りだと、波動砲抜きでも自分らが勝てる部分は数揃えやすいってとこですね。ロールアウトからもう艦隊組めるくらい数が湧いてるのは不思議ですが」
「船の話は今はいいでしょ。問題は、我々ガミラスはどうすべきかです」
『ええ。傍観するしかないでしょう。政府の方は平和維持軍よりの密命を受けたセリザワさんから情報が上がって来る筈ですが、現在途絶えています』
この戦いを正当化するような声明も何も無い為、ガミラスとしては仮に動きたいと思っても動けない。耳を塞いだまま音のする方を向こうとするのと同じだ。
そう頭を悩ませると、バレル宛に内線で通信が入った。ネレディアとバーガーに断りを入れると内線に応じた。
『どうした?』
『通信中失礼します。テロン方面より接近する機体より受入要請が入りました。デイブレイク仕様機で芹沢と名乗る人物を乗せているそうで、バレル大使に至急お会いしたいとのことです』
__________
月面
在太陽系ガミラス大使館
「地球連邦政府……いや、平和維持軍所属 芹沢虎徹です」
「セリザワさん。まさかあなたがこちらにいらすとは」
「感情でどうこう言える状況ではない以上、私も逃げ込む場所でどうこう言えません。まずは、受け入れに感謝します」
まさかガミラス大使館に極秘裏に逃げ込む事となるとは芹沢も考えている。ガミラスへの感情は抜けない芹沢だが、今はどうこう言っていられる状況ではないから押し殺している。それと同時に、今自分が握っている情報は双方の運命を動かせる程の劇薬であり、今その切り札を切り状況を変える為にここでバレルとあっている事も理解している。
「状況が深刻なため早速本題に入らせて頂きます。バレル大使、ドレッドノート級をご存じですか?」
「テロンの波動砲艦と伺っています。以前テロン政府から要求されたガイデロール級の設計図を元にして、Wunderの戦闘力の一端を付与して生まれたと我々は推測しています。当たっていますでしょうか?」
「概ね、と言わせて頂きます。現在Tokyo3の海中で展開中の艦艇もそれです。ですが重要なのは、建造背景と使われた資材と武装です」
興味深そうな笑みを浮かべたバレルを見ると、芹沢は話を続ける。
「ドレッドノート級の建造には、時間断層工廠が使われました。通常の10倍の速さで流れる工場で約1年。ガミラスから供与された「民間人居住区再建用」の資材を用い、極秘裏に新型波動砲を搭載した艦艇として建造されました」
「新型波動砲……ですと?」
「仮称「拡散波動砲」。普通の波動砲を大威力のライフルと例えれば、拡散波動砲は散弾銃。広範囲に存在する艦艇を全て撃ち抜くための「対艦隊戦闘」を前提とした戦略兵器です」
『セリザワさん。そいつは……間違いないんですか?』
バーガーが通信越しに恐る恐る聞くが、芹沢は間違いないと首を縦に振る。イスク・サン・アリア条約に隠れて「波動砲艦艇」として真の化け物を造っていた。ガミラスによる復興支援の実体を知っているバレルとネレディア、バーガーからしてみれば裏切られたような気持になる。
『条約違反だあーだこーだは俺のキャラじゃねぇが、裏切られたってのは感じるな。クソッ……』
「ドレッドノート級開発と建造の影響で政府による復興計画は、平和維持軍とBRUSSELS2による復興よりも数段遅滞しています。国民はその理由を知らないのは幸いな事ですが、ガミラス政府、及びあなた方の目には、どちらが真面な相手か一目瞭然でしょう」
そこまで説明をしてバレルを唸らせた芹沢は、1つの武器を取り出した。
「バレル大使。地球とガミラスの間に結ばれた平和条約や安全保障条約を、一から結び直すようガミラス政府に提案していただけますか?」
バレルは眉をひそめた。
「……具体的には、どう結び直すおつもりで?」
芹沢は冷静に説明を続けた。
「まず、地球の拡散波動砲艦の存在と、それに平和維持軍……いえ、地球圏平和維持防衛機構WIILEが一切関与していない事を、ガミラス政府に公開します。その上で、地球連邦政府への復興支援の取り決めを、アリア条約条約違反を理由に正式に打ち切る。そして、地球連邦政府ではなく、WILLEと新たな復興専門機関──地球圏復興開発機構KREDIT──を相手に、同様の条約を結び直すのです」
バレルの目が鋭くなる。
「我々ガミラス政府は条約違反を公開し、復興支援を打ち切るだけでも十分では?」
その問いかけには明らかに試す意図が含まれていたが、芹沢は怯む様子を見せず、むしろわずかに口元を引き締めた。
「大使、ガミラス政府はすでに、復興支援に多額の国家予算を投じておられるはずです。それはガミラス本星だけでなく、植民惑星のリソースも動員した規模で。この支援が無駄になれば、企業群から政府への非難と、深刻な財政問題が発生するのではありませんか?」
バレルは一瞬、芹沢を見つめたまま黙り込んだ。彼の指摘は的確で、逃げ場のない現実を突いていた。確かに、ガミラス政府はアリア条約やイスカンダルの力の話で企業群を説得して復興支援を可能にした。しかし、この支援が「無駄」となる状況が訪れれば、政府は激しい批判に晒されるだろう。ましてや、地球政府の拡散波動砲艦がその引き金になった以上、問題はさらに複雑化する。
「その無駄になりかけた支援を、WILLEが引き継ぐとしたらどうでしょう?」
芹沢は間を置かずに続けた。
「復興支援や準備された物資、資材に掛かった費用は、単に相手が変わるだけで『WILLE向け』という新たな投資に転換されます。結果として、政府への批判を回避し、リソースの浪費を防げるのです」
それは、他国政府への支援という無駄遣いを、新興組織への合理的な投資に変えるという発想だった。そしてもうひとつ、この提案には重要な条件が含まれていた。
「さらに、拡散波動砲艦の回収と撤去を地球連邦政府の後始末としてWILLEが行うのはどうでしょうか? すでに拡散波動砲搭載艦が稼働を始めている以上、その兵器はガミラスにとって脅威となり得ます。しかし、これらの艦艇をWILLEで接収し拡散波動砲を取り外してしまう事ができれば、双方にとって大きなリスクを回避できる。取り外した拡散波動砲は、すべて安全な場所で保管する、もしくは分解し、アリア条約に批准した形での「通常の波動砲」に戻す事を条件にするのです。こちらは接収後の構造解析の結果次第でどちらかかそれ以外となりますが」
それは、ガミラスにとって最も脅威な拡散波動砲のリスクを減らし、かつ、復興支援の物資や艦艇を無駄にしないための提案だった。
バレルは再び沈黙した。芹沢の提案の意味を理解しつつも、その実行には多大なリスクが伴うと感じていた。地球連邦政府を露骨に切り捨てれば、ただでさえ不安定な地球圏の情勢が一気に悪化し、再び戦争の火種が生まれる可能性もある。しかし、現状を放置すれば、いずれドレッドノート級のような兵器がガミラスにとって脅威になるのも明白だった。
「セリザワさん、私がこの提案を本国に伝えたとしても、ガミラス政府がそれを承認する保証はありません。むしろ、慎重論が大半を占めるでしょう」
芹沢は冷静な表情を崩さず、毅然とした態度で返答した。
「承知の上です。ただ、現状を知らずに振り回されるリスクを放置するのと、WILLEやKREDITのような現場主導の組織との協力を検討するのと、どちらが現実的かを判断する機会を提供したいのです」
バレルは小さく頷いた。そして、芹沢が「劇薬」とも言えるこの提案を手に、どれほどの覚悟を持っているかを改めて実感した。この男は、感情や地位を捨ててでも地球の未来を賭けた一手を打とうとしている。元情報部であり現在は文官であるバレルは、冷徹に状況を分析するその姿勢にただ感心するばかりだった。自らの私情を一切排し、冷静に計算された行動を取る。芹沢は過去の過ちの事もあり、まさに戦争を引き起こす事を恐れた男そのものであり、その深い洞察力と決断力で戦争回避を願い未来を見据えている。
「わかりました。この提案をガミラス政府に伝えます。ただし、結論が出るまでに時間を要することはご了承ください」
「もちろんです。その間に、私も次の段階を進めておきます。まずは、このお恥ずかしい内戦を終わらせることからですが」
バレルはその言葉を聞き、芹沢の冷静さと確固たる決意を感じ取った。彼はただの戦術家ではない。戦争を止めるために自らの立場を犠牲にし、冷徹に物事を進めようとしている。交渉の結果は未確定だが、その先に待ち受けるリスクと利益を見据えた行動は、賭ける価値があるとバレルは感じていた。
旧千葉方面沖合
『波動防壁やっぱ持ってやがったか!!』
『おいシン! 俺らの装備じゃやれねぇぞ!!』
「分かっている。このままのらりくらりとし続けろ。援軍が来る」
既にノウゼンの震電宛に守秘回線で通信が入っていたようで、ノウゼンは波動防壁を前にしても「まぁそうだろうな」と冷静に戦場を見ていた。波動防壁はVSPSTを防ぐ。電磁小銃1つで被弾経始圧を削り切るにはマガジンが幾らあっても足りないため、震電では波動防壁搭載艦に対し有効打を持てない。
が、波動防壁をどうにかできる機体がいるならどうだろうか?
第三新東京方面からオレンジ色の光点が見える。それが衝撃波で周辺の空間を叩きながら超音速で空を疾走し、まるで彗星の尾の様に粒子を撒き散らす。
『見えたよ! マッハ3.3!』
「何処の機体だ?」
『シンの乗った火竜と同じ、でも名前が違う! 何か、新2号機っていってる!!』
この粒子を使用する機体は電磁波が阻害されるため電波を使用するタイプのレーダーや通常の通信はほぼ無効化される。その特性が早期に判明したことで、火竜には光通信システムと接触回線、外部スピーカーと収音マイクが用意された。これは震電も同様で、無線封鎖環境下での通信手段として装備済みだ。
その新2号機を名乗る機体はノウゼンら第86独立機動打撃群の面々を飛び越え、ドレッドノートへの突入コースを取る。橙色の粒子を彗星の尾の様に散らしながら視覚を欺くほど高速なその機体はそのまま人型形態に変形して空気抵抗の増大を活かし急減速。兵装担架に装備していた二振りの大剣を二刀流で構える。
ドレッドノートはそれに反応したのか、自動迎撃でミサイルを発射した。両舷多連装ミサイル発射管から放たれたミサイルは空を埋め尽くすかのように新2号機目がけて飛来するが、攻撃態勢をリセットし飛行形態に瞬時に変形した新2号機は一気に加速。重力を無視する異常な機動性で急上昇をかける。その動きは既存の航空機や戦術機を遥かに超え、まるで意思を持った生物の様だ。ミサイルは何とか追尾を続けるが次々に振り回され、互いに衝突して閃光を生む。
新2号機はさらなる機動を見せた。まるで宙に描く螺旋。上下左右を問わない複雑なスラローム。ミサイル群が新2号機を取り囲むように収束するが、機体は一瞬の静止から加速し、視界から掻き消えるほどの速さでその包囲を突破する。
追尾を続けていたミサイルの中には、読まれた回避軌道に対応しようと迂回するものもある。それを見越した新2号機は、飛行形態から人型に変形。機体全体を使った急旋回でさらなる撹乱を図る。
そして、太陽炉の回転数を限界ギリギリまで上昇させた。橙色の航跡を引き腰部太陽炉ユニットに異常な量の粒子を生成し始め、各部コンデンサーが橙色に輝く始める。
『例の機体から高エネルギー反応!』
「っ!?」
急上昇に混乱を見せたミサイルだが、優秀な事にすぐに軌道変更をし新2号機を追尾する。が、空を舞う精霊の様に光を零しながら踊る精霊は、ミサイルを嘲笑うかのように振り切る。振り切ったその一瞬の隙を付き新2号機は人型に戻り、腰部太陽炉ユニットを移動させてコーンスラスターを進行方向に向ける。その先端部分が伸長し橙色の光が湧き出す。
『舐めるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!』
震電の収音マイクが外部環境音として女性の声を拾ったかと思えば、新2号機の太陽炉から紫電を纏った橙色のビームが放出された。それがミサイルを襲い一気に薙ぎ払い、20発を一気に仕留めた。
それを脅威と見たのか、他のドレッドノートからもミサイルが放たれた。それを嫌った新2号機は飛行形態に変形し振り切りにかかるが戦術機にチャフは少量しか積んでいない。しかも自分を目がけて一直線に飛んで来るミサイルと回避運動を予測して回り込むミサイルが入り混じっているので、新2号機の機動性でもすべて捌き切るのは怪しい。回避軌道を読まれ本来の軌道に戻れない。粒子砲もそう何度も撃てない。機体で生成出来る粒子量には限度があるからだ。
「各機射撃用意! 新2号機に群がるミサイルを落とせ!」
ノウゼンから指示が飛ばされ、「あり得ない光景」に目を奪われた隊員がハッとし電磁小銃を構える。新2号機の後ろを追尾するミサイルに対し銃弾の雨が食らい付き、その動きを次々にそぎ落とす。援護を得た新2号機はミサイルを振り切る事をやめ、ドレッドノートへの直線的な突入コースを取る。そのままの速度を維持しながら人型に戻り、背部兵装担架から2振りの長刀を装備する。
そして、そのままの速度のまま、波動防壁にその大剣を打ち付けた。爆発でも起きた様な重低音が響き、新2号機の腕部が震え軋みを上げる。
無謀な攻撃に見えたがそうではない。ノウゼンはその機体の装備する大剣を見逃さなかった。刀身部分が水色に怪しく輝き、波動防壁との接触面で激しいスパークが発生する。まるで妖刀。質量で叩き切る大剣ではなく、波動防壁を突破するために生まれた大剣だと理解するころには、波動防壁は大きく切り裂かれ、新2号機は防壁の内側にすぐに侵入してそのまま艦橋を大剣で叩き切った
ドレッドノートを切り伏せた。それは第86独立機動打撃群の面々の目を一気に惹きつけ、ノウゼンは皆に押される形でその機体に手部で触れて接触回線を開いた。
「接触回線オンライン。貴官は?」
『式波・アスカ・ラングレー二尉。援護に感謝します』
新2号機発進20分前
Tokyo3航空隊で教官を務めているアスカは、およそ2年前にWILLEを知りそのまま加入した。まだ駆け出しのパイロットを日々しごき、改修型であるコスモファルコンspec2を駆り、新人を厳しくも的確に、そして真摯に指導してきた。
戦術機が空間騎兵に導入されてからは彼らとの合同訓練も行い、新しい可能性と地球の進化をその目で確認もした。
そして今日だ。街中に鳴り響く警報音はアスカの神経を一気に戦闘モードへ押し上げ、ファルコンspec2を第86独立機動打撃群の滑走路に飛ばし、一気に急減速をかけて駐機させた。
(式波中尉。急で済まないが、君には試製戦術機の火竜に乗ってもらいたい。火竜は可変機体だ。飛行形態時はファルコンと同じ感覚で操縦できるはずだ)
「土方宙将無茶言い過ぎ!!」
これは戦術機の操縦方式を知らないから言える事であり、実際は運動神経が良ければ誰でも動かせるのだ。が、火竜はそうもいかない。可変機であり太陽炉搭載型。ハードルは高い物になり、動かせても飛べるとは限らない。
「お待ちしていました。準備整っています!」
「乗っても飛べるとは限らないから! ダメで元々よ!!」
七色星団以来久しぶりの白い耐高G用パイロットスーツを身を包んだアスカは火竜のコクピットを開き、身体を滑り込ませて席に着いた。太陽炉に併設されたスターターを稼働させると粒子加速が始まり、その準備時間を使い、アスカは初めて乗る戦術機の操縦系統と武器を確認していた。
「……何よコレ、未来から来たって言うの?」
赤を基調とした鋭角的なフォルム。四肢関節部のコンデンサーが余剰粒子を蓄え続け、太陽炉は鼓動の様に脈動する。その脈動がほんのわずかな振動としてコクピットに伝わり、機体表面に流れる音が微かに耳に響いた。まるで生き物。単なる戦術機の枠を超えた、時代を飛び越えた技術の結晶そのものだった。完成当時の火竜の時点で太陽炉という新概念の動力と重力無視の飛行が存在していたが、現在の火竜は明らかに度を越している。
アスカは溜息を付きながらも操縦方式を再確認した。どうやら飛行形態用の操縦桿は別に用意されているようだ。コスモファルコンと同様に左にスロットル代わりで使う人型形態用操縦桿と中央の操縦桿、足元のペダルで操縦でき、その感覚はEURO2時代の物がベースにされている。
そして目を引いたのは、画面上で表示される武装系統のアイコンだ。武装は二つのみだが、その中で特に目を引いたのは二振りの長刀のアイコンだ。
「これ……刀?」
試製02式波動防壁中和機能付与型超高振動近接長刀
「震電の制式配備開始と同時に始まった技術試験機化計画の1つで、『波動防壁中和能力』を持たせた長刀……?」
アスカが呟く間にも、システム情報が次々と表示される。太陽炉には、粒子放出機としての能力を拡大して「粒子砲」としての性能も付与されている。
「こんな機体が、どうやって生まれたの?」
急に通信が入った。
『式波二尉ですか? ハインラインです、手短に説明します。その機体は火竜技術実証機化計画と並行して、非常時に二尉も扱う事を想定して専用機として改修されています。全て、睦月主任達の指示です』
「専用機だったの、これ?」
一瞬言葉が詰まる。その事実が示すのは、彼女自身への期待と信頼。だが、同時に背負う重圧もあった。アスカはわずかに深呼吸をして自らを落ち着かせる。
『まさか本当にこうなるとは思っておらず半信半疑でしたが、準備して正解でした。発進後は旧千葉方面より侵攻中のドレッドノートを無力化して下さい。緊急性が高いため手段は問いませんし、多少感情的にやって壊しても今回は構いません。お2人の現状は聞いていますね?』
「……ええ。出ます」
『ご武運を』
ハインラインとの通信も切れ、アスカは前を向く。赤ベースに白の差し色が目立つこの機体は、目元を保護用バイザーで隠されている。なかなかいい機体と思うと正面にホロディスプレイが表示されてOS調整用のキーボードが自動で手元に移動した。如何やら名前の入力を求めているようだ。
「名前、名前ね……よし」
「行くわよ、新2」
新たな名を与えられた火竜……新2号機は、保護用バイザーを上げ特徴的な4つの目を起動させ、滑走路に立つ。両脚部が踵部から腰部までアームで丸ごと射出台に固定され、少し身を屈めて射出姿勢をとる。
『旧千葉方面、進路上に留意すべきオブジェクトを認めず。GNY-0000S2、新2号機。発進どうぞ』
「新2、式波・アスカ・ラングレー。出る!」
リニアカタパルトの加速が身体を押しつぶすように襲いかかる。視界の端がわずかに暗くなる中で、アスカは全神経を人型形態用操縦桿に集中させた。
急加速に耐えながらアスカと新2号機は時速400㎞まで一気に加速、スキージャンプ形式の滑走路から空に放たれる。その間もアスカは両側の人型形態用操縦桿を握りしめ、強烈なGに耐える。そのまま太陽炉からの粒子を最大にし空へ舞い上がり、そのままの勢いで飛行形態に変形した。各関節部が滑らかに折り畳まれ翼を広げ、太陽炉から粒子が溢れたし橙色の尾を引きながらマッハ3まで一気に加速した。飛行形態用操縦桿を握りしめ歯を食い縛る
「着ててよかったわコレ……ッ!」
ノウゼンが搭乗した時よりも機動力に磨きがかかっている。あふれるばかりの粒子を血潮の如く循環させて、腰部太陽炉以外のスラスターからも噴射させてさらに加速。マッハ3.3に到達。
橙色の流星は、空を駆けて行った。
現在
旧千葉方面
『どおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああッ!!!』
雄叫びと共に剣は振るわれ、現代の妖刀は光を裂く。波動防壁特攻の2振りの大剣の前には無人艦艇など成す術もなく、容赦なく波動防壁コンバーターに近接長刀を突き刺され無力化された。ただの的と化したドレッドノートは震電の電磁小銃に蜂の巣にされ、また1隻が落ちていく。
『すげぇ……魔法の剣かよ』
『あんなものが開発されてたなんて……シン、知ってた?』
「いや、初耳だ」
波動防壁と言う物理光学問わず防ぎきる防御は、陽電子ビームでも防ぐことができる。勿論超高振動を取り入れた短刀でもダメだ。ならなぜあの長刀は切り裂く事が出来たのか。
波動防壁は、艦周囲の量子力学的な性質を変化させて確率的に敵の攻撃を回避している。要はその量子力学的な変化に該当する部分を何とかしてしまえばいいだけなので、この長刀には量子力学がふんだんに盛り込まれ、長刀でありながら観測器としての側面も持つこととなった。
まず、波動防壁は纏う事で攻撃を「回避している」状態を作る。防いでいる様に見えるが実際はかわしているだけで、この不確定状態を突破して確定状態にする事が出来れば防壁は突破可能だ。
と言う事で、波動防壁に波動防壁をぶつける事が考案された。だがぶつけるだけではダメで、対象の防壁とは逆位相の防壁を生成する事が求められた。だが、物理武器である長刀に小型化した波動炉心など搭載できない。と言う事で、波動防壁展開に使う波動エネルギーは対象の防壁から滲み出る共鳴波から掠め取る事となり、この長刀は波動防壁に接触させる必要がある。この辺りの問題は「長刀は近接兵装である」事から問題ない。
そして簡易的に刀身に防壁を生み出せたら、相手と真反対の波動防壁に調整する。量子力学的な変化を打ち消す為に逆位相の波動防壁をぶつけてやれば不確定状態を確定状態にし「量子デコヒーレンス」を引き起こす事ができる。量子の曖昧さがこの攻撃でハッキリすることで、攻撃が通るようになるのだ。その際に長刀側の防壁も消失するが、こちらは防御目的に展開しているわけではないので全く問題ない。
あとは裂け目から防壁内に侵入して切るだけだ。
「皆傾注。新2号機の粒子で通りが悪いが、第三新東京から大型艦がドレッドの迎撃に回るそうだ」
『砲撃か?』
「いや、何というか……物理的に押さえに来るらしい」
『『『は?』』』
何を言っているんだと皆はノウゼンに無言の圧力で問うが、ノウゼンは「指令室に聞いてくれ」とため息半分に応えた。まさかドレッドノートに艦艇をぶつけるんじゃないだろうなと皆異口同音にそういうが、それは想像以上に正しかった。
「来たぞ。……マジか」
第三新東京から一直線に向かってきたのは、タカオ型ミョウコウ7から10とナガト型ムツ、コンゴウ、ハルナ、キリシマII。ミョウコウの両舷にはヤタノカガミが取り付けられていて、既に波動防壁を最大出力で展開している。しかも減速無しだ。
『おいおい特攻すんのかよアイツ!?』
「いや……違う」
ノウゼンの言ったとおり。波動防壁を両腕に、或いは艦首に集中展開してドレッドノートにシールドバッシュを決めたのだ。VSPSTの5速であれば波動防壁を貫通させる事は出来るが大気圏内ではそれは封印。ならば新2号機の突破を支援しようという事で、ドレッドノートの進行を止める盾となったのだ。
ドレッドノートが「明らかに小柄なミョウコウとナガト」に食い止められている。ヤタノカガミがあるとはいえ第2世代艦艇とドレッドノートでは機関部から大きな力の差があり、それがダイレクトに現れている。ドレッドノートは推力を上げ強引に進もうとするが、ミョウコウとナガトはさらに上げ拮抗状態を保つ。
そこに1太刀。波動防壁を切り裂くその太刀筋は美しく、そして容赦なく無力化していく。あとは電磁小銃で蜂の巣になり落下だ。
ラクな仕事だ。そう思えたが機体が音を上げた。
『新2からTango1! あと1、2回で限界!』
アラートがコクピット内で轟き、赤い警告が視界を染める。両腕部の不具合が確実に進行している。アスカの心が一瞬で冷えた。
ドレッドノートの防壁は予想以上に強固だったのか。腕がこんな形で不具合を起こすなんて、想定外だった。
胸の奥で焦りがじわじわと膨れ上がる。残りは8隻もいるのだ。彼女の頭の中で、その数がプレッシャーのように重くのしかかる。
「……了解。残りは火力支援で押し切る。Tango1から統合指令室。火力支援を要請する。波動防壁を飽和に持ち込める規模の物だ」
とは言ったものの、波動防壁は計算上では惑星間弾道弾の爆発を受けても防御し切る事が出来る。その規模の攻撃を地上で行う訳にもいかない。もう手がない。そう思う震電隊と新2号機に、統合指令室より通信が飛ぶ。
『統合指令室より該当空域内の全ての機体、艦艇に通達。これより、侵食弾頭兵器の大気圏内使用を宣言する。着弾地点より半径2000m圏内の機体、艦艇は速やかに退避せよ。繰り返す、着弾地点より半径2000m圏内の機体及び艦艇は速やかに退避せよ』
いつものオペレーターの声ではなく、土方本人の声だった。そして侵食弾頭兵器。名前も聞いた事の無い謎の兵器の使用宣言。明らかにただの火力支援ではない事は明らかだ。ノウゼンの脳内で警鐘がうるさいほど鳴り響く。
(まさか、広域破壊兵器!?)
「各機散開、該当空域から直ちに退避! 巻き込まれるぞ!」
『土方宙将何撃ったんだ!?』
「分からない! ミョウコウ、遠隔艦も下がらせろ!」
『こちらミョウコウ。ミョウコウ7から10は一仕事してもらってから殿で下がらせます。安心してください。ちゃんと逃げれます』
『ムツ艦長の谷だ。有人でもナガトの足の早さは折り紙つきだ。心配するな若いの。上手くやる』
ナーシャと谷の報告から遠隔艦も逃げれる事を確認し、ノウゼンは震電たちと新2号機を連れて一斉に引き始めた。該当範囲からさらに安全マージンを取り着弾予定地点から3000m近くまで離れて陸地に降り立ち振り返る。
そのころには、ミョウコウ達と有人ナガト型はエンジン出力をさらに上げてドレッドノートをさらに沖合の方向に押し込み、上空800mにまで押し上げていた。それほどまで加害範囲が広いのかと推測していると、最後の一押しをすると急速反転し一気に加速、最大出力でドレッドノートから離れていく。
『着弾まで、t-20。着弾時の衝撃波に注意せよ。戦術機各機、可能であれば陸上で匍匐姿勢を取れ』
「全機匍匐姿勢! 衝撃波に備えろ!!」
広域破壊兵器と想定したら匍匐姿勢を取れと言われ、もうノウゼンは従うしかない。何が何だかだ。その視界上で4発のミサイルがドレッドノート目がけて猛進していき、コクピット越しにそのミサイルを凝視した。
「あれが……侵食弾頭兵器」
__________
10分前
統合指令室
「波動防壁を抜くんですか?!」
「そうだ。だが通常のミサイルでは数十発が必要となるだろう。長官、実戦配備前の新型弾頭ミサイルの使用許可を」
「あれをか……!? 確かに軌道上からの発射試験を実施予定だったが、地球上での使用はリスクが大きい」
「しかし、波動防壁を抜くためにはこれが必要です。ミョウコウの遠隔艦で上空に押し上げて沖合上空で着弾させ、周辺地形、海上のダメージは可能な限り抑えます。長官」
地球上での使用のリスク。それは、陸地が被爆跡地となった場合、爆心地が球形状に大きく抉られてしまうからだ。それは海面でも同じで、アイスクリームディッシャーでアイスを掬ったように影響域内の海水が海底地形とそこに住まう生物ごと綺麗に消し飛ばされ、大規模な海水の流入が発生する。
シミュレーション上では半永久的な重力異常が発生する事はないが、影響範囲が重なった場合は重力異常が長時間続く事となり、その影響域内は一定期間生物の生存を拒む。宇宙空間ではそこまで気を使わなくても良いが、大気圏内では使用に細心の注意が必要な兵器だ。
「長官」
「影響域内からすべての機体、艦艇を必ず遠ざける。安全マージンも取らせる。それが、絶対条件だ」
「……了解」
土方はオペレーターからヘッドセット受け取るとマイクを口元に近づけ、一斉通信を入れた。
「統合指令室より該当空域内の全ての機体、艦艇に通達。侵食弾頭兵器の大気圏内使用を宣言する。着弾地点より半径2000m圏内の機体、艦艇は速やかに退避せよ。繰り返す、着弾地点より半径2000m圏内の機体及び艦艇は速やかに退避せよ」
「クロシオ、アマツカゼに通信。タナトスのEW-VLS1番から4番開け、諸元入力完了次第発射命令を待て。これは訓練にあらず。オペレーター、全戦術機に侵食弾頭効果範囲情報を伝達しろ」
「了解。着弾地点周辺の戦術機に対し効果範囲情報を伝達します」
「統合指令室よりクロシオ、アマツカゼ両艦に通達する。EW-VLSの使用許可が出ました。各艦1番から4番を解放。目標、洋上のドレッドノート級。METEORによる誘導に切り替え」
ユキカゼ型航宙高速駆逐艦のクロシオとアマツカゼには、EW-VLSを運用する為だけに作られた特殊なオーバードウェポンが試験に備えて取り付けられている。
OWX-000 タナトス
EW-VLSと呼ばれる大型特殊VLSを両舷に10基ずつ備えるそれは、その名の由来に死そのものを神格化した神を持つ。
フロイトの用語で、生の本能に対する、無機物の不変性に帰ろうとする死の本能(衝動)の事も指すが、このオーバードウェポンは「着弾地点周辺領域にある物体を無にする」極めて危険な兵器を運用する。
それは、侵食弾頭を搭載した「侵食弾頭ミサイル」だ。波動エネルギー研究から発展したそれは、着弾地点に強力な重力波を一定時間一定範囲で発生させ、その域内にある全ての物質を素粒子単位で崩壊させる。そして波動防壁の量子学的不確定性すらかき乱し消失させ、ミサイル1本で波動防壁ごと艦艇を消し飛ばす事も出来てしまう。
これは、ツインドライヴの稼働データから発見されたとある特殊な共鳴波が関係している。次元波動理論研究局内では「超弦振動調律特殊共鳴波」と言われているが、これは次元波動理論と密接にかかわる超弦理論にとっては「ある種の調整器」とも受け取れる。
まず、波動エンジンは余剰次元を元の大きさにもとした際の超重力から生まれたマイクロブラックホールのホーキング輻射からエネルギーを取り出している。と、思われていた。しかし実際の所は、エネルギーを取り出しているというより、ホーキング輻射エネルギーを構成する素粒子を波動コアからの特殊共鳴波を用い波動エネルギー含む各種エネルギーに変換していたのだ。
これに超弦理論を当てはめてみる。
まず超弦理論は、自然界の基本的な構成要素を「点状の粒子」ではなく「1次元の振動する紐」とする理論で、電子や光子や重力子といったすべての基本粒子は、同じ種類の「紐」が異なる振動状態に立って実現すると言われている。この理論に沿って考えれば、この振動状態を変える事が出来れは電子を光子に変換したり重力子に変換する事も可能だ。
この特殊共鳴内の特性を解明には膨大な時間が必要かと思われたが、真田が完成させて皆に理解不能と言わしめた「スーパーチャージャー」にその大ヒントは残っていた。スーパーチャージャーが発生させる波動共鳴波の解析を進めると、先程説明した特殊共鳴波に辿り着いたのだ。
そして次元波動機関研究局は特殊共鳴波を発生させる装置を世界中の頭脳を集結し開発。それをタナトスに搭載し、侵食魚雷専用の特殊共鳴波を発生させる事が可能となった。特殊共鳴波を受けた弾頭は弾頭内部に充填されたディラトンと呼ばれる粒子(スカラー場とも言うが)の弦の振動を重力子として調律し凝縮し極大化、着弾地点を中心にして半径500m圏内を重力波で消し飛ばす事に成功したのだ。
それ故平和維持軍内ではこの兵器の使用の安易性を危険視する声が上がり、たとえ装備したとしても、装備艦の艦長権限で発射していい物ではなくなった。
が、それの許可が下りた。それほど手段を選んでもいられず緊急性の高いこの現状、現状を変える一手はクロシオとアマツカゼに託された。
ユキカゼ型航宙高速駆逐艦 クロシオ
OWX-000 タナトス装備
「藤堂長官、土方宙将より侵食弾頭ミサイルの発射命令が下りた。タナトスの発射準備」
「了解。タナトスからの応答確認。特殊共鳴波発振装置起動、機関からのエネルギー伝達良好」
「目標確認。METEORによるターゲットロックオン。本艦とアマツカゼとの目標割り当て完了」
「EW-VLS1番から4番開きます」
タナトスの発射管の二重ハッチが開き、さらに絞り羽式の最終隔壁を開く。艦載VLS以上に厳重に格納された侵食弾頭ミサイルが冷たい宇宙に姿を晒し、ロケットモーターに火が入る。
「マルチロックオン完了、METEORver.2とのリンク正常。発射準備完了!」
「侵食弾頭ミサイル、発射!」
噴射炎が噴出し、クロシオ、アマツカゼからそれぞれ4発の侵食弾頭ミサイルが放たれた。Wunderで開発された物の改良版であるMETEORver.2の正確な誘導で侵食弾頭はミョウコウが沖合上空に押し上げているドレッドノートに目がけて猛進。影響範囲が重複しないように距離を保ったまま進み続ける。
自身の推進力に地球重力を加算したその速度は通常の空間魚雷を上回り、躊躇なく大気圏に突入しものの数秒で突破。光の防壁を纏った獲物を目標に捉えた。
「特殊共鳴波発振」
着弾まで残り数秒。低軌道上から指向性で特殊共鳴波が発振され、それが侵食弾頭ミサイルを透過した。特殊共鳴波を受けてディラトンが重力子に変換され、高密度状態で一気に励起を起こし、着弾地点丁度で凄まじい重力波が一定範囲で展開された。
重力波で波動防壁の量子学的変異がかき乱され防壁は消滅。そのまま重力波はドレッドノートの艦体の一部を包み、装甲を原子レベルで引き千切っていく。
ミョウコウ7から10が2隻ずつドレッドノートを押し出していたとはいえほぼ誤差無しで命中した侵食弾頭ミサイルは。その間隔2000mを取って無事に励起。これが初めての発射でしかも大気圏内での運用だったが、見事にドレッドノートを討ち取った。
_________
旧千葉方面
着弾地点から3000m 着弾後
試製02式戦術歩行空間戦闘攻撃機 新2号機(旧 火竜)
『衝撃波来るよ!』
『総員衝撃に備え!』
匍匐姿勢で衝撃波に備え、長刀や短刀を地面に深く突き刺しアンカーとして使い、姿勢を固定した。爆音に送れて数秒。秒速40mの爆風が震電隊と新2号機を襲うが、匍匐姿勢を取った事で揺れは最小限に抑えられ、多少の土砂を被った事以外は無傷で済んだ。
『各機損傷無いな?」
「各機損傷無し。ミョウコウ達もギリギリ逃げました。ただ、周辺大気で大量の窒素酸化物の発生やオゾンへのダメージが出てます。後、プラズマの反応も。この程度であれば自然回復可能ですけど……」
『あれは大気圏外用兵装だろ。その長刀の配備が急がれるな』
重力波が消えた後で局所的温度上昇により化学反応が起こり、窒素や酸素といった大気中の原子がイオン化し結合。結果、有害物質である窒素酸化物が発生した。さらに高エネルギー光子が発生しX線や紫外線がオゾンにダメージを与えている。
副次的被害が大きすぎ、紛れもない環境破壊兵器だ。震電や艦艇であればそれを全てシャットアウトする事が出来るが、大気に乗って飛散したり残留してしまうリスクがある。大気圏内での使用はこれきりにしてもらいたいものだ。
『Tango1から統合指令室。全機損傷無し。ドレッドノートの撃沈を確認』
『クロシオ、アマツカゼからも撃沈確認の報を受けた。震電各機、及び新2号機は現地域に留まり、状況終了まで警戒態勢を取れ』
『Tango1了解……式波二尉、助かった』
「ノウゼン一尉、私は頼まれたから搭乗しただけです。こんなのに乗るのも初めてでしたが、睦月さん達とハインライン一尉が専用に調整してくれていたからです」
アスカは航空機全般とWunderを飛ばしてはいるが、戦術機なんて人型兵器を飛ばした経験はない。当たり前だが操縦訓練も受けていない。幾ら誰でも動かせると言っても訓練を積まないと戦術機動は厳しいが、専用にチューンされているなら話は別だ。自分の体レベルで感じ取れるなら後は身体能力1つが決め手となるだけなのだ。
『その睦月さんは今どこに?』
「……政府のクソに撃たれて、緊急手術です。……すみません、切ります」
汚い言葉が出かかったアスカは咄嗟に通信を切り、スクリーンの壁面に拳をぶつけた。事情を知らないノウゼン達に当たり散らすのは違う。多少感情的にやってもいいとハインラインには言われたが、それでも行き場を失った怒りはアスカの中で渦巻いていた。
無意識に動こうとしていた機体の左腕を強引に押さえ、長刀の一振りを地面に突き刺し杖代わりにして片膝を付く。神経接合で「考えれば動く」戦術機ではかなり強い感情の高ぶりで意図しない動作も起こる可能性がある。
理性で抑えている物を、まるで吐き出してしまえと言わんばかりに戦術機は汲み取っていた。
それから数分、誰もアスカに通信を繋ごうとしなかった。アスカも、誰とも通信を開こうとしなかった。ノウゼンが気を遣ったからかどうかは分からないが、狭いコックピットの中で、アスカは悔しさに身を焼き、機体と共に項垂れていた。
新2号機は、静かに泣いていた。
同時刻
宇宙戦艦Wunder艦内
「斉藤中隊、艦橋手前に到着。侵入者を確認!」
通信が入ると同時に、斉藤は体を壁に預け、次の指示を待つ。艦橋へと続く通路は遮蔽物が少なく、侵入者が銃火を使えば被害が広がるのは明白だ。
『分かった。催眠ガスを警戒して侵入犯はガスマスクを付けている。備え付けのシステムが効かない以上、君達が頼りだ』
「分ぁってます。これ終わったら、無人機銃でもつけたらどうですか? これ持つのはどうも好きじゃです」
『危険性は高いが、考えた方がよさそうだ』
この小銃は出来れば持ちたくなかった、と斉藤は思う。嘗て地下都市で暴動が起きた際に空間騎兵は治安維持の為に駆り出され、その際に暴徒鎮圧用の非殺傷銃を使用した。今回の出動はあくまで侵入犯の制圧捕獲。殺害は最終手段とされている。その最終手段の為に本来の小銃も持ってきているが、どうしてもこの非殺傷銃に苦い思い出しか無く、「重いから」という適当な理由付けで捨ててしまいたかった。
「でも、連中ホントにWunderを動かせるの?」
「そうかもしれないから俺らが来てんだ。非番で墓参り行ってたのに集団で呼び出しやがって」
「終わったら、隊長んとこで飲みましょう。途中で来ちまったんで」
「おう。こんなクソくだらない事しやがったやつひっとらえて終わらせるぞ」
「「「応ッ」」」
第1空間機甲師団は元第7連隊の面々も多く所属している。それ故、元第7連隊隊長で故人の桐生悟朗の人となりを知る人が多く、今もなお慕う隊員が多い。こんな騒ぎが無ければ今頃ガミラス戦争の慰霊碑前に酒を供え、今後の予定の報告や思い出話をしていたはずだ。
斉藤は体を壁に預け、次の指示を待つ。艦橋へと続く通路は遮蔽物が少なく、侵入者が銃火を使えば被害が広がるのは明白だ。
『慎重に進め。奴らを追い詰めても、相手を殺すな。目的は捕獲だ』
「了解!」
短く応答し、斉藤は手を上げて部下に合図を送る。永倉たち別チームも機関室側で交戦中らしく、激しい銃声がヘルメットの通信機越しに聞こえる。斉藤の隊は艦橋付近の侵入者を抑え込むのが役目だった。
「投降する気、ねぇよな!!」
斉藤は通路の先に向かって呼びかける。応答はなかったが、代わりに閃光弾が転がってきた。
「伏せろ!」
閃光と轟音が空間を満たし、次の瞬間、侵入者が一斉に動き出した。4人が物陰から飛び出し、艦橋への扉を狙う。しかし、待ち構えていた斉藤たちの非殺傷銃から弾が放たれる。侵入者たちは倒れることなく、巧みに壁や床を利用して銃火をかわしながら進む。
「こいつら、相当訓練されてやがる……!」
歯を食いしばりながら斉藤は指示を飛ばす。
「援護射撃を強化しろ! ヤツらを艦橋へ行かせるな!」
部下たちが即座に反応し、侵入者の進路を遮るために連携して火力を集中する。だが、侵入者たちはそれすらも予測していたかのように動きを変え、互いに支援し合いながら前進を続ける。
『斉藤、時間を稼げ。隔壁を閉じる準備が整った』
「もうちょい早く頼みますよ、真田二佐!」
斉藤は笑みを浮かべつつ、再び指示を出す。
「全員、位置を変えるな! 奴らをここで食い止める! 閉じ込めろ!!」
その頃、隔壁の操作を続けていた綾波は目を細め、艦内のモニタリングを続けていた。彼女は侵入者の動きと斉藤たちの位置を正確に把握し、可能な限り彼らをサポートしている。
『真田さん、大きい人。隔壁、あと10秒で出来る』
『助かる。っ何で普通の回線に繋いでるんだ!』
「隠さない方が効率はいい。侵入者の後ろにもう1グループがいるかも。注意して」
綾波の声にはいつもの冷静さが戻っていたが、その裏には確かな決意が込められていた。彼女はただ命令を遂行するだけでなく、この状況を終わらせる方法を冷静に探した。その一つとして、効率よくする為に空間騎兵に自分の声を晒した。
「おい嬢ちゃん! 機関室の永倉どうなってる?!」
『嬢ちゃんじゃない、綾波レイ』
「綾波の嬢ちゃん、機関室の状況教えてくれ!」
『銃撃がまだ続いてる。エンジンは私が握ってるから動かない。あとは捕まえるだけ。今は誰もケガしてない』
「ああそうかい! ならさっさととっ捕まえるぞ!」
隔壁が閉じる音が艦内に響き渡り、侵入者たちが再び行動を加速させる。艦橋の扉を目前にした彼らは、最後の一押しで突破しようと動き出した。
「全員、奴らを包囲する! 撃て!」
斉藤の声に応じて、一斉に非殺傷弾が放たれる。侵入者たちはその一部をかわしながらも、何発かを受けて動きが鈍くなる。しかし、彼らの中の一人が腰のポーチからスモークグレネードを取り出し、床に投げ込んだ。
視界が遮られた斉藤たちは、一旦足を止めるしかなかった。煙の中から聞こえる足音を頼りに狙いを定めようとするが、侵入者たちは混乱を利用して艦橋内部に滑り込む。
『斉藤! 艦橋のセキュリティを突破されるぞ!』
「クソったれが! 煙が晴れる前に突入するぞ! 」
艦橋の扉が完全に閉じ切る直前、斉藤は強引に体を滑り込ませる。
「隊長! 危険すぎます!」
「俺に構うな! お前らは後ろを固めろ!」
扉の内側に入った斉藤はすぐさま体勢を整え、侵入者たちの動きを追う。艦橋内部の主要なコンソールに一人が取り付き、残り二人が警戒態勢を取っている。その中にやけに小柄な女性がいたが、斉藤は一瞥するだけで終わった。
「おいお前ら! コンソールから手を放して伏せろ!」
斉藤が威嚇するように叫ぶと、コンソールを操作していた侵入者が顔を上げる。ヘルメット越しにわずかに聞こえたのは、冷たい笑い声だった。
「簡単に出来るどうか、試してみればどうだい?」
「ああそうかい!」
斉藤は非殺傷銃を構え、コンソールの侵入者に狙いを定める。引き金を引く直前、警戒に当たっていたもう一人が斉藤に向けて何かを投げつけた。
「閃光弾──!」
反射的に目をそらしたが、視界が一瞬白く染まる。咄嗟に遮蔽物に隠れた斉藤は、耳鳴りが響く中で侵入者たちの動きを感じ取るしかなかった。
『斉藤、落ち着け。綾波君が艦橋の映像を送っている。奴らの位置を確認して攻めろ』
真田の声に耳を傾けつつ、斉藤は端末に送られてきたリアルタイム映像を確認する。この数秒もない時間で画像を補正して確認できるようにした
「なるほどな……!」
斉藤は隙をついて動き出し、侵入者の一人に非殺傷弾を放つ。正確に命中した弾が相手を倒し、もう一人も一瞬気を取られた隙に次の弾が放たれる。
「2人目!」
コンソールに貼り付いている2人に狙いを定めるが、一瞬の隙を付かれ間合いを詰められ、非殺傷銃を弾き飛ばされてしまう。すかさず通常の小銃を構えコンソールの影に身を隠す。元から艦橋内で銃撃する事は侵入犯も望んでいない。運用に必要なコンソールを破壊され、操作出来なくなることを恐れたからだ。
「綾波の嬢ちゃん、すまん!!」
一言入れると斉藤は小銃の照準を侵入犯からずらしコンソールに向けて連射した。これを潰されれば終わりなのは侵入犯。こっちは後で始末書でも書いて終わらせればいい。それを理解した斉藤は勝ちだ。穴だらけとなったコンソールから離れた侵入犯は中央電算室に向かおうとするが、全ての隔壁とトラムリフトも掌握されてしまっているので侵入犯は動きようもない。
「観念したらどうだ? 俺の仲間もようやく来たみたいだし。遅いぞお前ら」
「隊長が強すぎるのがいけねぇんすよ」
「相手が悪かったな。この超戦艦は名前の通り普通じゃない。だから簡単には取れない。それこそ曳航でもしない限りな」
侵入犯を取り囲み、非殺傷銃ではなく普通の小銃を一斉に構えた斉藤中隊は侵入犯に対し投降を促す。
「俺らに人間を穴だらけにする趣味はねぇよ。このまま大人しく捕まってくれりゃ助かるんだが」
侵入犯のリーダーらしき人物は、一瞬だけ周囲を見回した。遮蔽物もなく、孤立無援の状況であることを確認した彼は、静かに両手を上げた。続いて残りのメンバーも武器をゆっくりと床に置く。
「賢明な判断だな」
斉藤は緊張を解かず、小銃を構えたまま侵入者たちに近づく。部下たちも慎重に動き、彼らを拘束していく。
「隊長、全員確保しました!」
「よし、怪我人の有無を確認しろ。念のため医療班も呼んでおけ」
斉藤は素早く指示を出すと、無意味とはいえ身元確認の為に顔をチェックし始めた。航海艦橋の手すりに強引に縛り付けているので抵抗しようのないので、彼らはガスマスクをはぎ取られ、顔のスキャンを受けさせられた。
「だろうな、未登録ばっかだ」
「戦略自衛隊自体、俺ら初めて聞きました。極秘なら頷けます」
そして斉藤が撃った小柄な人物のガスマスクを取った。恐らく女性だろうと思っていた斉藤だが、マスクを取るなりその若さに驚いた。身長だけならほぼ中学生。学生生活を謳歌している年代の子がなぜこのような事に関わっているのか斉藤は分からなかったが、考える事はまた別の仕事として今はありのままに報告する事にした。
『斉藤、そちらの状況は?』
通信が再び入り、真田の声が響く。
「侵入犯は全員確保、艦橋もコンソール撃っちまったけど大体無事だ。ただ、侵入犯……戦自の中に中学生くらいのやつがいた」
『中学生だと? 画像は?』
「送ったからあとは取り調べに任せる。とにかくこれで一段落だ」
斉藤はヘルメットを外し、額の汗をぬぐった。部下たちの顔を見ると、皆疲れ切ってはいるが、それ以上に安堵の表情を浮かべている。
「さて、俺たちも少し休むか。お前ら、よくやったな」
「お疲れ様です、隊長。でもその前に、約束の一杯……ですよね?」
部下たちの冗談交じりの声に、斉藤は苦笑した。
「終わってからだ。まずは報告だぞ!」
_______
「……霧島マナ。碇君と同じ班にいた子」
『確認した。当時の乗艦名簿にも名前と顔写真があるが、恐らく偽名だろう。まさかこのような手段を使い細工をしたとは……』
斉藤たちが立ち去った後、AAAWunderでは、綾波が静かに映像を再生していた。第1中学校2年A組の見学時の映像と、斉藤が送った顔写真。何度見比べても同じで、整形等の痕跡はどこにもない。
『一先ず君の事は、私の助手として乗艦していたという事にしておいた。君の存在は本来極秘なんだ。AAAWunderの管理人だと露呈した場合どうなるか想像も付かない』
「でも、スムーズになった。声だけにした。終わり良ければ総て良し」
『それをどこで聞いたんだ……』
戦時隊員の工作があの見学の時から始まっていた事には驚いたが、これで兎も角政府側の目的は挫いた。気がかりな部分はあれど取り調べである程度分かるだろう。
「……疲れた」
軍帽を取った綾波は、適当な補助席に座り大きく息をついた。
地下統合指令室
「第1機甲師団より入電。Wunderに侵入した部隊の制圧完了、現在移送中!」
指令室内にオペレーター群の歓声が響き、土方も小さく頷く。戦端は収束しつつある。太平洋上ではミョウコウと北見の機転でミサイルを爆雷に転用。水中移動砲台となっていたドレッドノートに損傷を与え沈黙させた。VTOL機体は震電隊の掃射で一機も逃さず叩き落した。旧千葉方面は震電隊と新2号機の連携で2隻撃沈。ミョウコウ遠隔型と有人型ナガトの活躍で侵食弾頭ミサイルが見事に着弾し8隻撃沈。
Wunder艦内での戦闘は空間騎兵第1機甲師団が見事に制圧。多少の物的被害は出てしまったが十分修復可能だ。
これ以上何を仕掛けて来るのか。土方は身構え続けていたが、政府との通信を開く事にした。
「通信は回復しているか?」
「中継通信であれば可能です」
「それで構わない。ノナタワーに繋げ」
連邦政府中枢は遥か海の向こうの北米管区。そのNEWYORK1に聳え立つノナタワーで何が起こったのか。これは政府の総意なのか、それとも一部の連中による暴挙による物か。返答次第ではこちらも大きく動かざるを得ない。
「繋がりました」
正面に大きく映されたホロスクリーンには、連邦政府初代大統領ユリシーズ・クリストファーが映されていた。如何やら執務室にいるようだが、その目から生気を感じ取れない。
「さて大統領。出来ればもう少し早くにお聞きしたかったのですが、これはどう言う事ですか?」
『どう、とは?』
「とぼけないでいただきたい。こちらにも少なからず被害が出た。何故ここに攻め込む事となったのか。あなたの説明を求めます」
さらに強く出る土方は強烈な圧を放つが、ホロスクリーン越しの相手はまるで人形のように表情を変えない。むしろ、「やっぱりそう来るよね」と言いたげな態度だ。
『我らの願いの為に』
まるで今までボイスチェンジャーを嚙ませていたように声が切り替わり、クリストファーではない別人の声となった。そして執務室の椅子から立ち上がったクリストファーは
『連邦政府と時間断層。我等の身を隠すには最適な場所と道具であった。我らの願いは幾年経とうと果たされない。が、それは過去の話となる。人類の保管、安らかな魂の浄化の為に。我等は
そこまで話し終えると、クリストファーは糸の切れた人形のように床に崩れた。
________
その後の事を説明しようと思う。
まず、クリストファーの体は義体だった。見た目では分からない程精巧に作られ、脳ユニット内の情報は交換できるように作られていた。ここからこの義体をSEELEが複数人で運用していた可能性が浮上し、構成員は複数である事が確定した。
次に、元北米管区長官であるアルフォン・アイリスの仲介があり停戦。この軍事衝突は連邦政府の本意でなくクリストファー……SEELEが進めた物であり、動員された部隊は只従わされていただけであった。
第1目標はWunderの確保。予備目標は第3新東京直下に存在する黒き月だった。VTOL機による陽動を使い、侵攻したドレッドノートから陸上戦力を降ろし第3新東京を確保する事がベストな結末だったようだが、エリナケウスの本気を見て無理だと悟ったらしい。
なお、月面のガミラス大使館から極東に帰還した芹沢がもたらした情報により、連邦政府が極秘裏に拡散波動砲搭載艦艇の建造と極秘就役を進めていた事が発覚。平和維持軍は、芹沢がバレルに提案した内容を基にWILLE計画に修正を加え、「拡散波動砲艦建造を知っている」というカードを政府に対し伏せた状態でガミラスからの決定を待つ事となった。
なお、アイリス元長官も連邦政府の危険性を理解し、WILLEに入る事となった。その際、政治機能を失う可能性の高い連邦政府に代わる統治機構の設置を提案され、連邦政府内で「何も知らなかった人間の再雇用先」も兼ねて地球圏民主主義統治機構KOMPASSの設立準備が進められた。
これにより地球連邦政府の解体が極秘裏に決定し、政府所有時間断層工廠とノナタワーの制圧作戦が立案された。
2202年6月29日。後世で極東事変と呼ばれるこの一連の武力衝突は、何とか終結した。
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タナトスも出た事ですし、今あるオーバードウェポンは別に纏めて書き起こしておきます