宇宙戦艦ヴンダー 《Reise zu einem Wunder》 作:朱色の空☁️
プロローグ 断層制御艦クロノスの端で
1962年。アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディは、月面着陸を実現させたいと演説した。
ソビエト連邦と呼ばれる国との宇宙開発競争があったとはいえ、20世紀の人類にここまでの事が出来るという事を示した事で、当時の人類は活況に沸いただろう。その功績はまさしく、当時の人類にとっては大きな1歩だろう。かのアームストロング船長も言ったとおりだ。
そして21世紀に進み22世紀に人類は足を踏み込んだ。火星のテラフォーミングが行われ、火星に大気が、海が、生活が生まれて行った。人類の活動領域は地球を超えてお隣の星へ拡大し、人類のとっての宇宙は決して遠くない領域にまで近づいた。
2164年、火星独立を巡った戦争「第1次内惑星戦争」が始まった。200年以上世界大戦を回避し続けた人類の忍耐は22世紀の宇宙という舞台では適用されず、独立を巡った戦争は延長戦に入り第2次内惑星戦争が起こった。
2183年、火星側の全面降伏により内惑星戦争は終結。火星人類の地球への強制移住によりこの戦争は終結を迎えた。
「今思えば、内惑星戦争は準備運動だった」
それは、異星人の登場という人類史上初の出来事が無ければ、誰も口にしなかっただろう。
2191年、天王星の監視ステーションが史上初の異星人艦隊を捉えた。国連宇宙海軍は異星人___のちのガミラスへ向けての攻撃を開始するが、圧倒的な技術力の差により壊滅。ガミラス戦争が始まった。
第1次火星沖海戦、第2次火星沖海戦、メ号作戦。国連宇宙海軍は2199年のメ号作戦の時点で実働艦艇をほぼ失った。ガミラスが冥王星基地から投射する遊星爆弾により大地は干上がり、有毒胞子を放出する植物に汚染され、その魔の手は地下都市にまで伸び始めた。人類滅亡までの時間は、この時点でそう多く残されていなかった。
しかし、人類は切り札を切った。
2198年、2199年に地球に来訪したイスカンダル人「ユリーシャ・イスカンダル」及び「サーシャ・イスカンダル」より環境再生システムの供与の申し出と次元波動エンジンの設計図と波動コアを受け取り、地球人類は残りのリソースの全てを1隻の宇宙戦艦に託す事とした。
NHG級恒星間航行宇宙戦艦「Wunder」
全長2500m。最終艤装中だった太陽系脱出宇宙船「Buße」を改装して生み出された人類最後の希望は、同年2月に緊急発進。太陽系、天の川銀河を脱出し、大マゼランへと航海を行う事となった。
犠牲は大きかった。ガミラスからの攻撃、カウントダウン、常に焦りが付きまとう綱渡りの航海だという事は、誰もが覚えている。
そして、次元波動爆縮放射器。波動砲と呼称するこの大砲は、本来イスカンダルが生み出した波動エネルギーの兵器転用の産物であり、忌むべき代物であった。
イスカンダルは、星を渡る為の物として波動エンジンを渡した。それを兵器転用したのは、如何に身を守る為だとしても間違っていたのか、それにはやはり答えを出せない。
それは、バレラスで放ったあの波動砲があったからだ。
第2バレラス落下未遂事件。当時大ガミラス帝星永世総統であったアベルト・デスラーが引き起こした事件であり、WunderがAAAWunderとして限界を超えた力で放った波動砲により、落下軌道にあった第633工区は軌道上で迎撃された。
AAAWunder。正式名称は「
命を救う戦闘艦として。100年以上の時を超えて蘇ったAAAWunderは、最後の乗員として葛城ミサトを、そして綾波レイを乗せていた。彼女らと邂逅、その思いを受け止めた僕達は、彼女らと共に戦う事を決めた。
亜空間回廊海戦、と呼称される戦いもあった。
公的記録から一時的に消された時期もあったこの戦いは、AAAWunderとツインドライヴという特異点の存在があったからだ。僕と、ハルナの変異。AAAWunderの完全起動。そして、ツインドライヴの発現。結果、旧NHGエアレーズングを行動不能にすることに成功した。しかし、空間裂傷と呼ばれる大災害を引き起こしかけてしまった。幸いにもアケーリアスを名乗る人物に助けられ、空間裂傷は最初から無かった事にされたけど、1歩間違えば大災害になっていた。
2199年12月8日。宇宙戦艦Wunderは、地球に帰還した。多くの犠牲と傷を抱えての期間だった。
それから僕らは大忙しだった。
まずは結婚した。今を逃したらいつできるか怪しかったから、サプライズになってしまったけど結婚式を開いた。
そして月村会長に出会い、SEELEを知った。あそこまでクソな組織は見たことがない。
……そういえば、あの壁そのままだな。
第2世代艦も造った。ナガト型、タカオ型、ユキカゼ型。そしてそれらが装備するオーバードウェポン。Wunderの血を継いで生まれた新型艦艇は取り敢えずガミラス艦を超えた。
加持さんを引き込み、第三新東京市に移り住み、ハインラインさんをスカウトして、ハルナといちゃいちゃして……極東事変が起こった。
SEELEからの侵攻を受けた第三新東京は、第2世代艦の緊急発進と迎撃を行った。そこまではいいんだけど、その前に、僕らは銃撃を受けて重傷を負った。
僕は左腕をボロボロにされ、ハルナは左目を失った。……間に合わなかったんだ。出来れば撃たれる前に止めれたら良かったけど、あんな至近距離ではどうにもできなかった。幸いにもハルナが体を少しずらして脳幹を回避していたから即死は回避してたけど、本当に痛くて、怖く、辛かったと思う。代われるなら代わりたかったって言ったら、ハルナは怒るだろうな。イスカンダル航海で左腕ダメにしかけたからそりゃあ言われるだろ。
と言うか、うん、きつく叱られた。「もっと自分を大事にして」って、泣きながら。何も流れないガーゼの奥から、本当に涙が流れてくるように見えるくらいには。
その後、2202年12月に目を覚ました。僕の方は多少のリハビリが必要だったけど、ハルナは薫さんのお陰ですぐに退院して問題ないレベルにまでなっていた。
因みにハルナを起こしたのは僕と、薫さんだ。永遠に近い走馬灯を見ていたハルナは、なんとあの砂浜にいた。あそこは生と死の狭間的な場所だから、向こう側に言っていない事に安堵しながらも、何でこんな場所にいるんだと怖くなった。
最初は僕が、走馬灯の一部か何かに見えていたみたいで、それを解くために強くキスをした。
……ごめん、そういう話するとこじゃないな。まぁ、走馬灯を見ている状態から引き戻したんだ。それから、僕はハルナの意識を現実に戻した。勿論僕らじゃ無理だから薫さんのテコ入れで。
その後僕らは一時的に身を隠し、SEELEに隠れてコッソリとネモ1のクロノスに移乗した、Wunderの改修案と一緒に。ガトランティスと言う強大な星間国家に対し優位に防衛線が出来る様にするためには、Wunderのもつ絶大な戦闘能力を更に強化する必要が出てきたからだ。
だから、今僕達はクロノスの大型モニターでWunderの改装風景を見ているんだ。
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「主砲の換装は終わった。バイタルパートへのVPSの導入はもう少しだ」
「VPS?」
「名前長いから縮めた」
「さすがに名前長いもんね。取り敢えず、010の方は?」
「本体の方は分離合体するルクレティウスってイメージで」
「はーい。レイちゃんはどう?」
「……満足そうだ。身体の件も同意してくれた」
「よかった。一応細部までチェックしてもらったけど怪しい物は仕込まれていないよ。人工授精で生まれた身体らしくて体力面の不安あり。走るとかの激しい運動は暫く出来ないけど、慣らしていけば問題ない程度にはなるよ」
「つまり?」
「病弱な体ではないよ。暫くはリハビリ三昧だけど」
「分かった」
「波動砲は?」
「ツインドライヴに合わせた改良はダメだから再生産品にしてあるよ。ただでさえ惑星を壊しておつりが返って来るから、これ以上強化してもあんまり意味はないよ」
モニターに映るWunderは各部の装甲が取り外され各部のフレームが露出している。KREDITの工作艦が大型クレーンで吊り上げるの巨大な装甲板は、見た目では損傷も無いように見えるが交換される予定にある。バイタルパートへのVPS装甲導入の予算が通った事で、機関部回りから始まったのだ。計画では外界経過時間で3年をかけて段階的に行われる事となっている。
さらに、波動砲を再装備する事にもなった。しかしツインドライヴに会わせた改良はアリア条約への抵触の危険性があり断念。従って伝導管と全波整流回路の調整のみに終わっている。ガミラス政府とイスカンダル王族はそれを容認しており、KOMPASSとKREDIT両上層部も「加害範囲を広げる改良でなければ容認する」と許可を出したので問題なしだ。
「だな。ツインドライヴの出力なら、
「亜光速で迫りながらメギドの火を吐くってどこの怪物?」
「あそこにいる怪物だけど? 出来るけどやらないってのが1番だ。備える分なら大丈夫だ」
「にしてもツインドライヴって、本当にまともじゃないよね」
「それもそうだ。炉心内に収まるように大改良したけど、全力運転を使い切れるほど今の技術は進んでいない。良い所240だ」
ツインドライヴの問題点は、艦外で余剰次元が展開されていたという事だ。エンジン内部で抱えきれない余剰次元展開が艦外で行われた結果空間を大きく引き裂いてしまい、空間裂傷を引き起こしかけた。
要は炉心内で完結させれば良いのだが、言うは易く行うは難しだ。世界中の学者が一度は頭を抱えたが、前提条件を変えてみればその解決は簡単だった。
出力制限だ。何もフルパワーを制御しろとは言ってないし、フルパワーを扱える程技術が高いわけでもない。拘りすぎな考えを一旦捨て、真田を初めとした技術陣はツインドライヴに制限をかけた。これには不安点も上がったが、ツインドライヴの高すぎる出力から問題ないとされた。
「メギドの火の次はパンドラの箱だよ。造っては縛って造っては縛って、本当に十全に使える日っていつ来るのかな」
「その時は人類存亡の危機だよ。だから、これを用意しているんだ」
OWX-X0000 開発コード[VSPIG-010]
通常の艦艇ではなくWunderの為だけに生まれた兵装であり、主翼丸ごと取り替える事で装備可能となっている。オーバードウェポンの枠を遥かに超えた兵装であり波動砲と同等かそれ以上の戦力として期待できる反面、波動コアが30基も必要となるその高コスト故に一時は開発中止の声が上がっていた。
しかし、ガトランティスの正体の不明さと野蛮的戦法から「仮に全軍で太陽系を蹂躙しに来ても可笑しくないレベル」と判断された事で、実体弾砲戦ノウハウの提供と言うカードを切ってガミラス兵器開発局の建造協力を受ける事で建造が再開されたのだ。
設計は地球側で、建造はガミラスに貸与している時間断層工廠も借りて行われる事となったが、その間はガミラス艦の建造が一切不可能となる。その代償として差し出された実体弾砲戦概念は一先ずバーガーの艦隊の一部を改装して実証される事となった。
今はまだ名も決まっていないが、圧倒的機動力と圧倒的殲滅力で地球を守り抜く為の「戦略兵器」だ。
「まさか元ネタがね……アレとは思わなかった」
「またアニメか。いやまぁ構想としては悪くないけど……鬼だろコレは。どう足掻いても避けられないぞ」
「まぁ、安全かな……うん、安全安全」
どこか安全だ。と問い詰めたくなるが、仮にこの装備を奪ってもWunder以外ではそもそも取り付けられず、起動しようがない。万が一起動できてしまったとしても、ハルナとリクが制御しないとまともに運用できない。Wunderとハルナとリクが揃わなければただのオブジェクトでしかないのだ。
が、その縛りを受け入れた事で、このオーバードウェポンは戦場の盤面を軽くひっくり返す事が出来る力を手に入れた。1対100を3分程度で片付けて、戦場を引っ掻き回し、単艦運用してこそ真価を発揮する筈のこの装備は正しく最終兵器。持ち出したが最後だ。
「でもさ、もうそろそろ普通に暮らしたいよね」
「そうだな。火星で色々吹き飛んで、地球で刺客を送り込まれて、撃たれて、断層管制艦に引き籠って、流石にもう起こらない……よな?」
「起こらないとこで暮らそうよ。最悪WILLEの開発の一線退いてでも」
「どこがいいだろうか。沖田艦長も一軒家買ったから、一軒家買う? 給与溜まってるし」
「一軒家かぁ……それもいいね。だったら海が見えるとこがいい」
「落ち着いたら一軒家のパンフレットでも見ておこう。いずれ、家族も増える」
それを聞くと、ハルナは慣れない手つきで自分の下腹部を擦った。いずれやって来る未来とストレス故の過ちがごちゃ混ぜになり苦笑いをした。
「レイちゃんと……うん。まだ妊娠は出来ないから、もう少し待ってもらわないといけないけど。でも……えっちしてしまったのは……誰にもないしょで」
「言えるわけじゃないか……特にマリさん辺りには」
酒を飲みながらその話題でダル絡みをしてくるマリが目に浮かぶ。言わなくても良い事は言わない。「そういう事」から程遠い筈の人物が「そういう事」をしてしまったと聞けば、「そういうネタ」に食いつきやすい人は食いついて来る。
((あれだけ乱れたのは生涯の秘密ッ!!!))
ストレスで求めてしまって、避妊はしたけどそのままズルズルとやってしまったなんて誰にも言えない。写真の中の父と母にすら言えない、墓にも持っていけない秘密だ。
「でも、リクが私を愛してるってのは分かったから……嬉しかったかも」
「……愛していなかったら、拳銃止めるために左腕潰してない。でもそれは本当に良くなかった、ゴメン」
耳の先を赤くしてボソッと呟いた言葉にリクは鼓動がひと際大きく聞こえた。そのまま言葉を返すと、自分もハルナも悶えてしまった。慣れている筈なのに、今回は顔の熱が引きそうにない。
「リク、ん」
リクにしなだれかかったハルナはそのまま抱き締め、その熱を独り占めする。どこからどこまでが自分なのかが曖昧になり、溶けて一つになるような感覚は通常の人類にとっては致死性の麻薬だが、今はそれを心地よいと感じてしまう。
妻を受け止めたリクはそっとその頭を撫でる。硬い左手ではなく、まだ暖かい右手で。
「戦争、本当に起こるのかな」
「衝突は不可避だ。まぁ来るだろうな。問題はガトランティス星の位置と実態だ」
「まだ分からないの?」
「いや、実態だけは分かってはいる。ガミラス軍にお願いして、何度もガミロイドのFS型を飛ばしてもらったからな。主にやったのは真田さんだけど。んで、たまたま1隻が捉えた画像が、これ」
ハルナを抱えながら端末を操作して、1枚の画像を表示した。観測カメラがひび割れて画質が酷いが、真っ白な塊が映っていた。そしてそこに吸い込まれるようにして帰還していくラスコー級とククルカン級がボンヤリと映っていた。
「嘘ぉ」
「マジだ。観測された白色彗星と同じとみて間違いない。これでハッキリしたな。アケーリアスかは兎も角、あれはガトランティスの移動母星だ」
「……最悪」
「最悪だ。本星が移動できるなら、こっちに星ごと来る事が出来る。もしそうなったら、多分無理だけど星ごと破壊するしかないだろう。もしアケーリアス文明の攻勢兵器とかなら、それより下のイスカンダル文明の波動砲はバッチリ防がれると思う」
「うえぇ」
「代案として、侵食弾頭ミサイル集中投下」
「太陽系壊れるから却下で」
「じゃあ、ガトランティス母星殴り込み艦隊で星を攻略」
「出来る……のかな。オーバードウェポンでRPGのパーティみたいに組めばある程度できるとは思うけど……問題は何隻出て来るかだよ」
「4桁はいるだろうな」
「5桁は?」
「規模から考えると、無いとは言い切れない」
「今のこっちの隻数は?」
「有人無人纏めて500くらい。ユーラシアとアフリカの艦隊がまだ出来てないからだいたいそれくらい」
「足りない……」
「そこは艦隊司令に任せる。ミラージュコロイドステルスの解析も進んでいるらしいし、設計局には、オーバードウェポンのオーダー開発もどんどん受けるように言っておこう。艦隊ごとに得意を持たせるのも良いと思う」
単純な艦の数では到底足りないが、それをカバー出来るのが戦術だ。ガミラス戦争を生き抜いた極東の名将達と、指揮官として頭角を現した古代。海外管区の生き残った将官と指揮官候補、指揮官適性を見出された防大生。埋もれていた人材を掘り起こして磨いた結果、幸いにも指揮官が増えてくれたのだ。
彼らも自分の艦隊を持つこととなるので武装に関してある程度の裁量が与えられる事となる。第2世代艦もオーバードウェポンも高い完成度を誇るとはいえまだ新しい技術で、現場の意見による改良が必要だからだ。既に武装に関する改良の要望が提出されていて、設計局では「ローエングリンの拡散モード」の実現性の有無の検証に取りかかっている。予算が出れば配備も可能だ。
「今頃古代くんたちは、着いてるのかな」
「第1は出た頃合いだろう。バーガーさんが付いてるから大丈夫だとは思うけど、指揮官は大変だと思う。やったことあるから何となく分かる」
「亜空間回廊海戦ね。手動操作の機銃で犠牲が沢山出てしまったから、かなり堪えた。会合のタイミングは決まったから、一緒に慰霊碑に足を行っておこうよ」
「英雄の丘、だな。終戦慰霊祭には行けなかったから、行っておかないと。お義母さんは中継を見ていたらしいけど。さて、そろそろ仕事に戻らないといけないと思うけど?」
「このままでも出来る」
「いや俺が出来ない」
「私はこのままが良いんだけど」
「はいそこまでだ」
いつも通り溜息を付いては言ってきた真田の一声でハルナは頬を膨らませながらリクから離れた。コーヒーとココア合わせて3人分を器用に配り、真田は特濃のコーヒーに口を付けた。
「真っ黒で墨みたいです」
「糖分の塊が近くにいるからかな。ああ、自覚があるなら程々にしなさい。ストレスが溜まってるのは分かるがここは自室ではない」
「「……はい」」
「分かったならいい。さて、010の進捗は?」
「4割ってとこですね。磯風型のモデルを流用できたのは良かったです。さすが歴史ある宇宙駆逐艦です」
「先人に感謝しなければならないな」
「あ、真田さん。例の白色彗星の件は? 写真は確認しましたけど、まだ情報が欲しくて」
「大使館とKOMPASSで協議中だ。アケーリアス文明の有識者も集めて話し合っているがなかなか進んでいない。が、重要な事が分かった」
「何ですか?」
「ガトランティス人はアケーリアス人類がベースだが、第三者とも呼ぶべき文明が作り出した人造兵士かなというのが、遺体解剖をしたガミラスの見解だ。捕虜の扱い方についても情報が得られた」
「かなり協力的ですね、ガミラス政府」
意外にもガミラス側が提供した情報が多いと思ったリクは不思議そうな顔をした。
「彼らは何度も侵攻を受けているからな。根を断てるなら断ちたいのだろう。WILLEも対ガトランティスを考えてきたから迎え撃つ事は出来るが、攻め込むのは否定していた。WILLEはあくまで積極的防衛を行う防衛組織だ。潜在的脅威を積極的に潰しに行くような軍隊ではない」
「私達はまずは平和に暮らせればいいだけなんです。その平和を脅かすものには容赦しませんけど」
「君達の行動原理が夫婦らしい至極真っ当な物で安心しているよ」
(よそよそしい時もあったが、まぁ気にしないでおこう)
「もうしばらくはここで生活する事になる。だから、まぁ、そういう事は私の目の届かない所で節度を守ってやりなさい」
「「……ッ!?!?」」
「……?」
「い、いえ、何でも……」
「そうか」
「やらかしてしまった事」を一気に思い出してしまい、顔が燃えるように熱い。真田が「やらかしてしまった事」を知っているかどうかは知らないが、急にこんな事を言われれば否応にも思い出してしまう。
寝室の常夜灯に照らされた艶やかな曲線。壁にぼんやりと映る影。肌から染み込む熱。熱に浮かされたようなハルナの声が蘇る。
(リク……もっと……んっっ……あっっ)
(バカ野郎何考えてるんだぁぁぁぁああああ!!)
「あ、暑いから顔洗ってくるっ!!」
義手の左手で思いっきり頬を叩くと一気にコーヒーを煽った。如何やら考えている事が伝播してしまったようで、ハルナも顔を真っ赤にして顔を洗いに行ってしまった。ハルナが出て行ってしまったタイミングで真田はこう言った。
「多くは言わない。やるなとは言えないが、程々にしなさい」
「冗談抜きでロケットパンチしますよ」
「怪我をするからやめてくれ」
2203年1月、人類史上最大の大戦争が始まるまで、あと少しだ。
ストレスって怖いですね。
次回、ガトランティス編本編開始です。