お金があったらしたいことがあるうちは幸せで
お金があってもできないことが増えると不幸になる
そんなことを思い浮かべました
すっかり春になった。窓を開けると気持ちのいい風が入ってくる。
今日は倫也が英梨々の部屋に来ている。広いフローリングの部屋には、ベッドやクローゼットなどの他、マンガを描くためのデスクや、ゲームをするスペースもある。
「で、見せたいものってなんだ?」
「これよ」
英梨々の隣には大き目のダンボール箱が置いてある。
「また組み立てからかよ・・・」
「・・・当然でしょ」
「で、何買ったんだ?」
「ゲーミングチェア」
「ああ・・・あの廃ゲーマーご用達のやつだ」
「そそ」
そういうわけで、倫也と英梨々はダンボールを開けて、中のパーツを取り出した。たかがイスだがパーツの数は多く、説明書無しでは組み立てるのは難しそうだった。
英梨々が説明書を開いて、まずは部品を番号通りに並べて確認。次に包装をほどいていく。英梨々の支持に従い倫也が組み立てる。難しいところは英梨々が支えて倫也がネジで留めていった。なんやかんやとイスが組みあがっていく。
できあがったイスはなかなか立派だ。ゲーミングチェアは体を包み込むようなデザインが特徴で、長時間ゲームをやるのに負担を少なくしている。リクライニングはもちろんの事、ヘッドやアームレストも細かな調整ができる。色は深紅に黒のラインと派手目だ。
英梨々は組み立て終わったイスに座って、クルクルと回ってみる。快適この上ない。
「倫也も座ってみたい?」
「そりゃまぁ」
英梨々に交代してもらって、倫也も座ってみる。座り心地がいい。何よりもテンションがあがるし、これに座っただけでゲームが上手くなった気がする。
「いいなっ!これ」
「でしょ?倫也も欲しい?」
「そうだな・・・迷うけど、部屋に置くには少しでかいな・・・」
「なら、ここに置けばいいじゃない?」
「英梨々の部屋に?」
「うん」
「うーん」
「そこは素直に欲しいっていいなさいよ」
「いや・・・英梨々の部屋にあってもしょうがないだろ・・・」
「もう買っちゃったんだけど・・・」
そういうわけで、もう一つのゲーミングチェアを組み立てる。色は鮮やかな青に黒いライン。英梨々とおそろいのものだ。
2人でイスを並べて座っている。なんか照れくさい。英梨々は背筋を伸ばして満足そうな表情を浮かべていた。
「けどさ英梨々。このイスに対してさ、モニターが小さくね?21インチだよな」
「絵を描くだけならこれぐらいで十分なのよ。画面に近い位置に座っているから大きすぎても作業がしにくくて」
「なるほどな」
「でも、そういうと思って買っておいたわよ」
「何を?」
「はぁ?あんたバカなの?今、自分で言ったでしょ。モニターよ。ゲーミングモニター買ってきたから」
「おお」
「運ぶの手伝ってくれる?」
「ああ、あの玄関にあったやつか・・・」
「・・・うん」
でかい。二人で両端を抱えて慎重に部屋まで運んだ。その後、包装を解き組み立てていく。
「これは・・・」
「ふふっ、34インチ湾曲モニターよ。雰囲気でるでしょ」
「おおぅ・・・」
「リフレッシュレートはなんと144Hz!」
「普通だな」
「えっそうなの?あと・・・えっと応答速度?」
「大事なのは映像パネルの種類だろ」
「えっと、どこみれば・・・」
「IPSだな。まぁ無難だな」
「なによー」
「おまえ、どういう基準でこのモニター買ったんだよ?」
「えっと、『かっこよくPS5で桃鉄やりたいんですけど』っていって・・・」
「・・・ほう」
「あとアニメもよく見るんで・・・」
「そうだな。合ってるよ。まぁ充分だ」
「そ?」
「じゃあ、PS5も繋ぐか」
「お願い」
倫也はPS5をつなぎ、デスクトップPCをつなぎ、ブルーレイプレイヤーをつなぎ、ホームシアターの音響をつないだ。邪魔な配線をまとめて見えないように後ろにしまう。
「こんなもんでいいか?」
「いいんじゃないかしら」
「じゃあ、起動するぞ」
「うん」
英梨々は立ち上がって、慌てて部屋のカーテンを閉め、部屋の明かりを消した。高音質でプレステが起動する。倫也がコントローラーでゲームを探すが、桃鉄がインストールされていない。
「桃鉄ねぇぞ?」
「バカね。桃鉄はスイッチでしょ」
「・・・」
「さっ、エルデンリングの続きでもしましょうかしらね」
「一人用じゃねーか!」
倫也は諦めてコントローラーをテーブルに置いた。英梨々がエルデンリングを起動する。倫也の部屋で倫也がクリアするまで見ていたので内容はわかる。自分でプレイには難易度の高そうなアクションRPGだ。画面は美しく、映画を見ているような気分になれる。そして、英梨々が一人でプレイするには少し怖いダークファンタジーものだった。
倫也は英梨々のプレイを隣で静かに見ていた。
だんだんと英梨々が身を乗り出してゲームに集中する。その姿勢ならゲーミングチェアは必要ねぇな・・・と倫也は思いながらも、画面の明るさで照らし出された英梨々の横顔に見惚れてしまう。主人公に合わせて英梨々も体を動かすものだから、金色のツインテールがよく揺れていた。
ちょっと強い敵を倒すだけで英梨々は満面の笑みを浮かべ、八重歯が零れてみえていた。
(了)
いちゃいちゃしたり キスしたりするよりも
これぐらいの距離感の方が個人的には好きです