英梨々を甘やかして作る物語   作:きりぼー

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今回の英梨々は可愛いと思う。


【代替原稿】 R18版英梨々 ③

倫也と英梨々はベッドの上に並んで足を伸ばして座っている。

足元には一枚の毛布を共有してかけてあった。

 

「ふあぁあ~」と、英梨々が大きなあくびを1つした。

手元には分厚い『三島由紀夫全集』があるが、読んではいない。

横目で倫也を見ると、けっこう真面目に三島作品を読んでいる。

 

「あんた、真面目に何読んでのよ」

「『潮騒』いや、普通に面白いんだが・・・」そして静かにページをめくる。

「英梨々は何読んでるんだ?」

「あたしはペラペラマンガ制作中」

短い鉛筆一本で、ページの角に絵を描き込んでいた。

「貴重な本だよね!?」

「知らないわよ。そんなこと。だいたいマンガ禁止ってどういうことよ?」

「さぁ・・・誰が言ったんだ?」

「詩羽よ。やるべきことをやるまでマンガ、ゲーム禁止だって」

「やるべきこと・・・」

 

うん。セックス。

 

「なんだか追い詰められている気分がするのよね」

「それは、追いつめられないと締め切りを守らないからでは?」

「でも、この作品は締め切りないわよね?」

「今のところはな・・・」

 

ほんと、この2人、ちゃんとR18作れるのだろうか。

 

「そういえばノートPC合ったわよね。あれでネットつなげないのかしら」

「つながらないし、内部のゲームはフリーセルまで含めて全部消されていたよ」

「そういう細かさは・・・伊織の仕業かしらね」

 

暇バロメーターとして、マインスーパーやソリティア始めたら、だいたい末期。

PCの電源をひっこぬいて外へでかけるか、精神科の受診を検討したい。

 

「でも、ほんと暇よね・・・」

「そういえば田舎ものは暇だから、パチンコかSEXしかしないって言ってたな」

「ものすごい偏見よね」

「今はネットもつながっているし、スマホも普及したからなぁ・・・」

「ひと昔前は、割りと本当だったりして?」

「そういうイメージなんだろ。暴走族がいて、野良犬がいて・・・」

「ふーん」

 

英梨々が自分の描いたパラパラ漫画をつまらなそうに動かして確認している。

 

「おっ、完成したか?」

「そんなたいそうなもんじゃないわよ」

英梨々が本を渡す。

倫也は読んでいたところに栞をはさみ、本を閉じてサイドテーブルに置いた。

 

英梨々の描いたパラパラマンガを確認する。

タイミングよく分厚い本をパラパラするのが難しい。

 

「・・・英梨々」

「どうかしら?」

「凌辱系なんだな・・・」

「そういう作家なんだし、しかたないでしょ」

「そこに照れはないんだな」

 

部屋に乱入してきた男に、美少女が後ろから襲われるという作品。

アングルという、腰の動きといい、妙に艶めかしい。

 

「この本、親が発見したら泣くんじゃね?」

「親公認の同人作家なんだけど」

「そうだったな」

 

一家で腐ってるとか。英梨々の設定にはいろいろ盛り込まれ過ぎている気がする。

 

英梨々はリモコンで部屋の電気を消した。

 

「そろそろ始めるか・・・?」

「・・・うん」

 

いつまでもお茶を濁したまま過ごせない。

 

電気が消え部屋が暗くなると、棚の上のアルコールランプが明るく見えるようになった。黄色い光があたりを照らす。

英梨々はじっと倫也を横目で見る。倫也は虚ろに揺れる炎を眺めていた。

「サイドランプいるかしら?」

「いや、いい」

 

英梨々が体を下にずらして、ベッドに横たわる。

毛布をかぶり、端を両手で持って顔だけ出す。

倫也はそんな英梨々を見下ろしてみていた。髪型はツインテールだ。本当に眠る時はリボンを外すから、今は倫也と過ごすためのツインテールということになる。

 

音楽はラフマニノフのピアノが小さい音量で流れていた。曲目は『亡き王女のためのパヴォーヌ』

 

「確かにさ、静かで落ち着いていて、雰囲気もあっていいんだけどな」

「眠るには最適よね」

「・・・そうだな」

「話をするにしても、横になりなさいよ」

「ふむ」

 

倫也が英梨々の横に横たわる。倫也が英梨々の左側。

英梨々が毛布をそっと倫也にもかけた。2人は天井を見ている。

光がゆらゆらと揺れていた。

 

「この雰囲気作りはさ・・・どういえばいいんだろ・・・高校生ぽくないんじゃないか?」

「そうよね。あたしも三回目でやっと気が付いたわ」

「ちょっと大人びているんだよな。社会人っていうか・・・」

「そうそう」

「音楽を変えた方がいいか?」

「たぶん、そこだけの問題じゃないのよ」

「あとは?」

「全部よ。こう・・・『これからヤリます』みたいな雰囲気にあたし達が耐えられないのだと思うけど」

「ふむ・・・」

「・・・」

 

再び英梨々はあくびをした。倫也もつられてあくびをする。

 

「リラックスしすぎなのよね」

「そうだなぁ」

「高校生って、もう少しアクティブな方がいいんじゃないかしら?」

「アクティブ?」

「えっと・・・例えば、1人用のゲームをしていて・・・シューティング系みたいな」

「それで」

「今度は俺の番な!みたいにコントロールを取り合って」

「小学生か」

「・・・茶化すなら、話さないわよ」

 

英梨々が倫也と反対の方向を向いた。

 

「ごめん。そんなつもりはないんだけど。それで?」

「コントローラーを取り合っているうちに、こう・・・体がもつれて倒れて・・・」

「それで、女の上に男が重なるみたいな?」

「そ・・・そうよ!悪いかしら?」

「いや・・・目が合って、ドキドキして、それから女の方が目を閉じる・・・みたいなやつだろ?」

「もう、そこまで口に出していわなくていいわよ」

 

倫也が体を横にして、英梨々の後ろ姿を見る。

ツインテールが枕もとに広がっている。

左手で片方の髪を手でくるくるといじり始めた。

 

英梨々は何も言わず、体をくの字に曲げて硬直する。

(な・・・なによ)の一言がでない。

このままじっと過ごしていれば、きっと倫也が雰囲気に耐え切れなくなって、ふざけはじめるに違いないのだ。その時に、何か気のきいた一言でも・・・

 

「きゃっ!?」

 

思わず声を上げてしまった。

倫也が右腕を英梨々の頭の下に突っ込んできたのだ。

 

「うでまくら」と、ぼそりと言う。

 

「もう・・・驚かせないで」

英梨々は頭を動かして、倫也の腕枕を適当な位置にする。それから手のひらを重ねた。

 

1つの曲が終わり、少しの静寂の後、次の曲が流れ始める。

 

英梨々は両手で何か大切な壊れやすいものでも触るように、倫也の指をいじる。

体の一部が触れ合うだけで、鼓動が激しい。

ついさっきまで否定していた雰囲気にあっさりと飲まれてしまう。

 

「えりり」と倫也が優しく声をかける。

名前を呼ばれるだけで耳がくすぐったい。

 

返事をしない。だから、音楽だけが流れていく。

 

倫也は髪をいじるのを止めた。

英梨々も指を触るのやめて、ぎゅっと握る。

 

倫也が後ろでごそごそと動いている。

それから、英梨々の頭にコツンとおでこを当てた。

そして、もう一度「英梨々」と声をかけた。

 

「な・・・なによ」

 

もう今にも落ちそうだった。

とはいえ、もうすぐ3千文字。

ここを乗り切れば、次回もまた倫也と過ごせる。

 

『ツン』になれば、『ツン』を演じて終われば、また次回だ。

また少しだけ茶化した導入から始まって、少しだけイチャイチャして・・・

 

そんなこと倫也だってわかっているはずで、英梨々は倫也がそろそろオチを作ってくるだろうと、ぼんやりと考えていた。現実的でない。幻想的なのだ。いや、現実逃避か?

 

「英梨々・・・そっちを向いたままだと、キスができないんだが・・・?」

 

「ふぁ!?」英梨々の声がひっくり返って変な裏声が出た。

 

驚いて、倫也から離れるように体を一回転させたら、

 

ドスンッ!!

 

と、絨毯の上に落ちた。

 

倫也が上半身を起こして、落ちた英梨々をのぞき込む。

「大丈夫か?」

 

英梨々が頭を片手でなでている。落ちる時にサイドテーブルに頭を少し打った。

 

「もう・・・やめてよね。あんたバカじゃないの・・・」

 

昔なら追い打ちでタライが落ちてくるところ。

でもR18だし、けっこう真面目に2人は結ばれることを考えているので、

「『痛いの痛いのとんでけー』をしてやろうか?」と言って倫也は笑った。

 

「・・・うん」

 

英梨々は素直にうなずいて、ベッドの上に戻る。

膝で歩いて、倫也の前にペタンと座り、頭をそっと倫也に向けた。

 

「よしよし」と、倫也が撫でる。「英梨々、ちょっと上向いて?」

 

「ん?」といって、英梨々が上を向くと倫也と目線が合う。

 

澄んだ蒼い瞳は涙で潤んでいた。倫也は動揺する。発言とか仕草が子供っぽいのに、見た目は完璧な美少女なのだ。そりゃあセクシーさには多少欠けるところがあるのかもしれないけれど・・・

 

倫也が右手で英梨々の前髪を上にあげる。それから顔を近づけて、そのおでこにそっと唇で触れた。

 

優しいキッス。

 

不意を突かれた英梨々は、そのまま倫也の胸に頭をつけた。

「・・・ともやぁ・・・」と、甘えた声。

「痛いの、消えたか?」

「・・・うん」と小さく頷いてから、「ばか・・・」聴こえないぐらいの声でつぶやいた。

 

ツンで終わるために。

 

(続)

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