決める時に決めないとチャンスを逃すんです。
そういうのは人生でずっと後になって、ふと後悔するときがあるとかないとか。
夜。寝室。
「別にもったいぶってるわけじゃないのよ?」
「ああ、わかってる」
R18を作り始めてから今日で5日目だ。
性的関係になるにはあまりにもゴールが遠い気がしていた。
部屋の照明をオレンジ色の暖色に変えた。優しい光で夕暮れ時のようになり、2人にはちょうど良かった。
音楽もクラシックをやめて、JPOPに変えている。
米津やyoasobiなど流行の曲を小さな音量でかけると、部屋の雰囲気は少し高校生らしくなった。アニソンにはしない。
2人はベッドの上に足を伸ばして座っている。
「今日のテーマはね、衣装についてなんだけど」
「うん」
「ほら、あたし達のパジャマって子供っぽいじゃない?それでもう少し大人も着るようなものに変えようとしたのだけど・・・ルールがあったのよ」
英梨々はR18取扱説明書を読んでいる。
「ほう・・・?」
「脱がされないと交換できないんだって」
「ほう・・・?」
「・・・ってことにしておかないと、コスだけ替えて2人の仲が進展しないのよ」
「ほう・・・」
「わかったかしら?」
「うん。で、どうすればいいんだ?」
「はぁ、あんたバカなの?そんなの決まってるじゃない・・・脱がすのよ」
「ほう・・・」
「なによ・・・」
「いや、脱がせることができるなら、もう着なくていいんじゃねーの・・・」
「・・・」
ですよねー。
どうしてこう、ガバガバな設定なんだろ。
「というわけで、倫也・・・男側の描写は手短にすますわよ」
「まぁ・・・妥当だな」
英梨々が倫也のパジャマのマジックテープをバリバリと外して胸元を開け、腕からパジャマをはぎ取った。
「いやん」と倫也が腕で前を隠す。
「はいはい」とあまり相手にしない。
倫也はTシャツ一枚になった。
「やっぱ、冬なんで少し寒いぞ・・・」
「暖房もう少し強くした方がいいかしら?」
「そうだな」
「でも、取説によると部屋が暖かいよりも少し温度を下げて一緒の毛布にくるまったほうがいいみたいに書いてあるわよ」
「へぇ・・・丁寧だな」
「じゃ、次、ズボンを脱がすわよ」
「いや・・・そこは」
倫也のズボンが宙に舞った。
トランクス姿になる。
女の子とじゃれているので、股間が少し膨らんでいる。
「・・・」英梨々の顔が赤くなる。
「いや、何かセリフいれろよ」
「・・・何、興奮しているのよ」
「別にしてねぇぞ?」
「そんなわけないでしょ!」
「そんなマジマジ見るなよ・・・」
バサァーと毛布を倫也に投げつける。
倫也はため息をつく。脱がされたところで・・・今回も生殺しなのはわかる。
「じゃ、次。あたしね」
英梨々が倫也の前に、ペタンと正座を崩して子供のように座った。
座るとツインテールの長い髪が足にかかる。
猫柄の黄色いパジャマのボタンは5つ。英梨々は襟元までしっかりと留めていた。
「・・・そういわれてもだな・・・」
「こ・・・ここで怖気づくのかしら?」
英梨々が顔を赤らめながら倫也を少し見上げるようにのぞき込む。
倫也は包まっている毛布から腕を出し、英梨々の髪をそっと撫でた。
「俺からも提案があるんだが・・・」
「何かしら?」
「一応、進んだところまでは再現したほうがいいんじゃないだろうか?」
「進んだところって?」
「お・・・おでこにキスまでをだな」倫也が緊張する。
英梨々の顔が固まる。
確かに日をまたぐごとに茶化した雑談をいれているので進展しないのかもしれない。
「そうね・・・」と同意する。
「目・・・つぶってくれるか?」
「・・・うん」耳まで真っ赤。ただ口元がニヤニヤして止めることができない。
倫也は右手で英梨々の耳の下あたりに移動して、顔をそっと引き寄せた。
左手で英梨々の柔らかい前髪を少しあげる。ニキビ1つない白い肌が露わになった。
「英梨々。好きだよ」
優しいセリフを添える。
そして、おでこに口を押し当ててキスをした。
倫也の唇の感触を英梨々は感じた。そのまま口元も奪ってくれたらいいのにと思いながらも、離れる倫也にほっとしてしまう自分もいる。
英梨々が目を開けると、倫也の顔も耳も赤い。目線を合わせずに横を見ている。
曲のサビが終わるまで音楽に耳を傾け、曲が終わったタイミングで倫也が英梨々に聞く。
「いいんだな?」
「うん」と英梨々はうなずく。
「参考まできいておくが・・・、そのパジャマの下は何を履いているんだ?」
「発言だけ切り取ったら、完全に変態よ?」
「・・・そうだな。えっと、ハァハァ。どんな下着履いてるの?ハァハァ」
「・・・倫也?」
「すまん」
英梨々のノリが悪い。
「えっと・・・」
「倫也。あまりしゃべらない方がいいと思う」
「ふむ」
英梨々の表情が硬くなってきた。ニヤニヤが消えて口元も緊張している。目線もベッドの端に落としている。
倫也は大きく深呼吸をして、両手を伸ばして英梨々の一番上に手をかける。
手元が緊張してぷるぷると震えている。
近づくと英梨々の優しい香りがする。いつもの日向のような明るい香りもよりも、少し女の匂いがする。
倫也がボタンをはずそうとするが、なかなか外れない。
時間がかかると、だんだんと焦ってしまう。
ボタンはまるでパジャマに縫い付けられているように思える。
「ふふふっ」と堪えていた英梨々が笑う。
「あれ?英梨々」
「これ、倫也のパジャマと同じ作りなのよ」
「ああ、ボタンは飾りなのか・・・」
裏がマジックテープだった。子供用なのである。
倫也は気を取り直して、1つめのマジックテープを丁寧にペリッと剥がした。両手の指でつまんでいる英梨々のパジャマを離さずに、そのまま首元を広げる。
ゴクッ
唾を飲み込む音が大きく聴こえた。そのすぐあとに、英梨々も唾を飲み込んでいるのか、喉元が動いた。
「ふぅ・・・」倫也が爆弾処理でもいているかのように緊張している。
「倫也。音楽なんだけど・・・消してくれるかしら?」
「ん?」
倫也は集中していて気にならなかったが、英梨々はどうも音楽が気になったらしい。
「わかった」といって、倫也はベッドから降りて、棚を開けてノートPCとオーディオの電源を落とした。
英梨々はリモコンで天井の照明を消し、ベッドサイドランプを灯す。
「アルコールランプはつける?」
「いらない」と英梨々はそっけなく答える。
音楽とか揺らめく炎とか、そういう余計な演出を英梨々は好まなかった。
隣に倫也がいる。それで十分で、それだけで満足で、それ以上のものは自分では抱えきれなかった。
薄暗い部屋になり、ベッド上には英梨々がそのまま座っている。横顔がランプに照らされて憂いているようにも見える。
倫也はそっとベッドにあがり、英梨々を後ろからそっと抱きしめた。
英梨々の細い首に腕を回す。
「こわい?」できるだけ静かな声できく。
「うん」と英梨々は身動きもせずに答えた。
倫也は英梨々の耳元に口を近づけ、その耳たぶに少し触れながら「おさとう」と呟く。
「・・バカ」と英梨々は小さく返事をする。
抱きかかえていた腕をほどき、倫也は後ろから再び英梨々の胸元のマジックテープに手をかけて、貼りついてしまった一つ目のマジックテープを外した。
それから胸元の少し開き、後ろから覗き込むようにパジャマの中を確認する。
・・・丸首の白いインナーシャツを着ていた。しっかりと肌にフィットしている。
かつてのサイズのあっていないネグリジェのように英梨々の胸元や乳首が見えるようなことはなかった。
「白いシャツ着ているんだな」
「あんただって着てるじゃない」
「そうか」
たどたどしく倫也の手が二つ目のボタン・・・の裏のマジックテープに手をかけると、英梨々が手で倫也の手を握った。
「やめとくか・・・?」無理強いはしない。かといって、こんな状況で女の子に許可を得ながら進めるものでないよな・・・と悩む。
英梨々は小さく頷いて、「三千文字」と、まるでノルマを達成してほっとしたかのように言った。
倫也が離れようとしても、英梨々はその手をつかんだまま離さない。
そしてあまり強く押し当てるものだから、倫也の手はパジャマの上から英梨々の胸のふくらみを感じていた。
2人は緊張というよりも、少し興奮していた・・・英梨々は体の芯が熱くなるのを感じていたし、倫也は股間の中のポジションを変えたいと思っていた。
そんな2人を静寂が見守っている。
・・・わけがなく、天井の上がドタバタとうるさい。
(了)
正しくイチャイチャはしているな。うん。
制作済があと一話あるけれど、例によって脱線するので割愛。
ここで未完。