英梨々を甘やかして作る物語   作:きりぼー

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日曜のひとときいかがお過ごしでしょうか。

失敗から学び、前へ進む。
言葉にするのは簡単だけれど、行動に移すのはなかなか大変。
唯一の方法は諦めずに継続すること、例え三歩進んで四歩下がっても・・・


R18版英梨々 その⑥ (完結)

(何かがおかしい)

 

倫也はこのR18世界で数日を過ごしながら、違和感がしていた。

それがなんなのか実態がつかめない。

窓の外の世界がおかしいことだろうか?少し出たら狙撃された。

あるいは過ごし方にルールがあることだろうか?

それもあるだろう。

けれど、2人が結ばれないことの言い訳にはならないはずだ。

 

部屋の扉が開いて英梨々が入ってきた。手のトレイにはティーセットがのっている。

「休憩にしましょ」

服装は相変わらず黄色い猫柄のパジャマで子供っぽい。

 

英梨々がサイドテーブルにトレイを置き、ポットからヘレンド製の高価なカップに紅茶を注ぎ入れ、倫也に渡した。

「いい香りだな」

「ダージリンよ」

紅茶の表面に薄いリングが浮かぶ。上手く紅茶が淹れられた証拠だ。

倫也はそれを一口飲む。味は渋いが少しフルーティーな香りがした。

 

英梨々がベッドで倫也の右側に座る。落ち着いた様子で紅茶をすすり、それから倫也の方を見てにっこりと微笑む。

「あら、なかなか似合ってるじゃない」

倫也は上下ともグレーのスウェットを着ていた。肌ざわりがいいことから、これが英梨々の用意した高級品であることがわかる。

「ありがと」と倫也は褒められたことと、服を用意してくれたことのお礼を言った。

 

「なぁ・・・英梨々」

「なにかしら?」

「違和感・・・を感じないか」

「違和感?」

「そう。なんていうか・・・俺らの関係を隔てるような違和感」

「ああ、そういうこと」

「わかるのか?」

「わかるわよ?」

「外に出ようとしたら狙撃されたし」

「そんなのいつものことじゃないの」

「そっか・・・お前はわかるんだな?」

「・・・うん。まぁ・・・ね」

「教えてくれないか」

「倫也が自分で気がつかないと意味がないのよ」

 

そういいながら、英梨々が台本をチェックしている。

 

「今日は・・・昨日の続きで上着を脱がすところね」

「どれ?」

倫也が英梨々の台本をのぞき込んだ。

「上だけならなんとかなるでしょ?インナーも着ているし」

「そうだな・・・ってこういう台本があるところじゃないか?」

「昔からじゃない」

「そうだな・・・」

倫也は首を傾げた。

 

「キス」

英梨々がぽつりと、まるで何かを見つけたかのようにいった。

「キス、しましょ。まずはそこからでしょ?少しずつ進まないといつまでもこうやって過ごすわけにはいかないし、すぐに三千文字になってしまうわよ?」

「そういうところだよな、おかしいのって・・・」

 

英梨々が目を閉じる。

倫也は英梨々の前髪を片手であげて、そっとおでこに口付けをする。

美しい唇が透明のリップクリームで少し光っていたが、その唇を奪う勇気はなかった。

 

「次はマジックテープね」

英梨々が淡々とセリフを読み上げる。

 

「なぁ・・・違和感があるんだよ・・・」

倫也は英梨々のパジャマを少しつまんでいたが、それをやめて、隣に座り直した。

「あんたって、ときどき本当にバカよね」

英梨々があきれている。

「なんていうかさ・・・AVみたいなんだよ・・・」

「あら、わかってるじゃない」

「どうしてだろ・・・」

英梨々はため息を1つついて、紅茶を黙って飲む。

「俺はさ・・・英梨々。お前をちゃんと抱きたいと思っているんだけど」

「あたしだって・・・抱かれたいと思ってるわよ・・・」

「2人の間に障壁はないんだよな?」

「ええ。倫也が嘘をついていないならね」

「俺が恵を気にしているってことか?」

「たぶん、それもあるんでしょうけど、それは大した問題じゃないわよ」

「ふむ」

 

倫也は風邪薬でも飲んだかのように、あたまがぼんやりとしてすっきりしなかった。

原因がわからないと対応ができない。

 

「夢オチにでもすれば解決するわよ?倫也があたしを抱いて、あたしの中でしっかりと『出して』、それで目が覚めればいいの。そしたら下半身に冷たいものを感じるわ」

「夢精するんだな・・・」

「そういうもんなんでしょ?わざわざ夢精の伏線もたてたし」

「それでいいのか?」

「それでいいというよりも、オチなんてどうでもいいのよ。あたしは倫也と『今、この時を』過ごしたいだけなんだから」

「女は強いな」

「あんたがヘタレなだけでしょ」

 

英梨々は飲み終えたカップをサイドテーブルに置いた。

 

「なんだろう・・・昨日の夜みたいに、いい感じになったところで終わるだろ?で、またこうやって始まるのがおかしいんじゃないか?」

「そうね。それもありそうね・・・」

「普通は(了)でなく、(つづく)だろ?」

「しょうがないじゃない。世界が終わるんだから」

「・・・」

「そういうナンセンスな物語は描写をさけているだけで、この別荘の外では全面戦争中なのよ」

「どこの国が?」

「国じゃなくて、あたしと恵ね」

倫也は深々とため息をついた。

 

「けど、やっぱりそれも倫也。あんまり問題じゃないのよ」

「問題だとだろっ」

「つまらない話はこれぐらいにして、そろそろノルマを達成しておこうかしら?」

「今日はまた、ずいぶんと冷めているな」

「そうでもないわ」

 

英梨々が倫也のカップを回収してサイドテーブルに置いた。

ベッドの上で倫也の前に座り直す。

 

倫也も座りなおして、英梨々のパジャマのマジックテープを上からペリペリと剥がして、開いた。

英梨々は白いキャミソールを着ていた。

パジャマをそのまま持っていると、英梨々が手を袖から抜いていった。

 

脱ぎ終わった黄色いパジャマを英梨々はたたむ。

「昨日と衣装が変わってんじゃねーか・・・」

「細かいことつっこむわね」

 

昨日は丸ネックの無地の白いTシャツだったはずだ。

今日はおしゃれなシルクのキャミソールを着ている。

肩紐とブラ紐が見える。

 

「ああ、わかってきた」

「そう」

 

英梨々がパジャマをベッドの下に腕を伸ばして置いた。

あとは上下で不釣り合いな、この子供パジャマズボンを脱ぐだけだ。

 

「さて、倫也・・・ここでクイズです」

「白」と質問前に倫也が即答する。

「・・・そうね」

 

下着の色は何色でしょう?答えは白。ブラ紐が白だから。

 

「わかったよ英梨々。視点だろ?」

「そうね。視点というか語り手」

「・・・ふむ」

「この語り手の目線がどうにもこうにも気になるのよ。ましてや作中人物として自覚があるんだから、もうどうしようもないじゃない?」

「だから、撮影されている感じがするんだな」

「おそらく・・・そうね」

 

英梨々は体育座りをしている。

流石に袖のないキャミソールだと部屋は寒い。

 

倫也はそれに気が付いて、毛布の中に入るように促した。

 

「・・・うん」

 

倫也と英梨々が並んで毛布の中に入って横になる。

 

「これじゃ、衣装関係ねぇな」

「どの道、衣装は関係なくなるでしょ」

「まぁ・・・な」

「コスプレするわけでないし」

「そうだな」

「やっぱり、その内コスプレをしたいものなのかしら?」

「学校帰りにうちに着たら、そういうこともあるかもな」

「ほんと、バカなことばかり考えるわよね」

「と・・・とにかくだな。原因が分かった以上は一人称視点にしてみるか」

「倫也視点?」

「そうだな」

「ついでいうとね。劇中劇とか、イデアがどうこうとかもやめた方がいいわよ」

「そりゃあそうだな」

 

ごもっとも!

よくぞ気が付いた。

 

「じゃあ次回から変えてくれるかしら?」

「できるかわからんけど、そうしてみるか」

「そしたら・・・うまくできるわよ。きっと。」

「ふむ」

英梨々が左手で倫也の右手をつないだ。

「ただ、問題がまだあるのよ」

「なんだ?」

「この衣装でスタートしてしまうわ」

「そりゃあ、ださいな」

「・・・うん」

 

英梨々が枕元のリモコンを探して、部屋の照明を消した。

倫也は腕を伸ばして、ベッドサイドランプを消す。

部屋が真っ暗になって何も見えなくなった。

 

「怖いぐらいの暗闇ね」

「ランプぐらいつけるか・・・どうせ毛布の中は何も見えないだろうし」

「そうね」

 

英梨々が指をパチンッと鳴らすと、棚の上のアルコールランプが灯った。オレンジ色の光がほのかに部屋を照らす。

「懐かしいな・・・」

「ふふっ」

「いいんだな?」

「倫也」

「ん?」

「なんでもない・・・」

「ん」

 

倫也は毛布の中にもぐりこんで、英梨々のパジャマのズボンに手をかけた。

英梨々が抵抗するようにその手を抑えた。

 

「倫也」と毛布の中に顔を入れて呼びかけた。

「なんだよ」倫也は緊張している。

「三千文字超えてた」

「おおぉ・・・」

「また来週があるわよ」

「一週間更新なんだな・・・」

「ふふふっ」

「だから、笑ってごまかすのダメだからっ!」

 

暗闇なので八重歯がみえない。

 

その時、天井が大きく崩れ落ちた。パラパラとコンクリートの粉が舞っている。

ランプの光に照らされて、漆黒の翼がゆらゆらと揺れていた。

 

「あのさぁ・・・倫也くん?」

「・・・」

 

迷彩服の上下に包まれた加藤が右手にライフルを構えて立っていた。

 

「迷彩服に翼は・・・変じゃないか?」

「つまらないツッコミはいらないから」

 

冷めた声でいう。「・・・はい」倫也は無駄な抵抗はしない。

 

「ねぇ。作っていい話と、作ってはいけない話があるんじゃないかなぁ・・・?」

「ちょっと、待ちなさいよ恵!」

「何?英梨々」

 

声が怖い。目線ははっきり見えないが、たぶん外の暗闇よりも深淵の瞳を宿している。

 

「そりゃあ、恵はツッコミはいらないかもしれないけど・・・」

「ん?何?」

 

「突っ込んで欲しいのはあたしなんだからねっ!」

 

理解するまでに少しの時間がかかる。場が凍てついている。

 

「はい!?」倫也と加藤の声がかぶった。

 

2人はあきれて、口をポーカンとあけた。

英梨々はモジモジして、「台本だから・・・」と消え入るような声で言い訳をする。

 

 

 

こんなオチでは、きっとボツ原稿行き。

 

(了)

 




あの・・・英梨々?
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