英梨々を甘やかして作る物語   作:きりぼー

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祝日のひとときいかがお過ごしでしょうか。
今回は話を作り込まず、何気ない日常のくだならさを切り取った話になります。


ロッカーに隠れるイベントの予行練習

倫也の部屋。

 

英梨々はテーブルで同人用マンガのためにプロットを練っていた。

最近は凌辱系も飽きてきて、BLでも作ろうかなと考えている。

倫也はデスクで参考書らしきものを広げているが、さっきから一文字も書いていない。

 

「倫也。ラブコメでよく狭いところに隠れるやつあるじゃない?」

「あるなぁ。『なんか見られてはダメ』といって隠れるやつだろ」

「うん。あれ、やってみたい?」

「別に」

「はぁ?あんたバカなの?」

「なんだよ」

「人がせっかく話をふってるんだから、やってみたいっていいなさいよ」

「英梨々はやってみたいの?」

「あ・・・あたしは別にやってみたくなくもないわよ」

「どっちだよ」

「あたしのことはいいのよ。あんたはどうなのよ?」

「さっき答えたよねぇ!?別にやってみたいと思わねぇよ」

「はい?倫也ってもしかしてバカなの?」

「おまえ、RPGのイエスを選択しないと先に進めないイベントみたいになってんじゃねーか」

「だって、ノーって言われること想定してないんだからしょうがないでしょ。だいたいなんでやりたくないのよ」

「掃除用具入れのロッカーに自主的に隠れるハラハラ楽しいイベントなんて、実際問題ありえないだろ?」

「そんなこといったら、ラブコメのイベントどころか、ツンデレ金髪ツインテールすら実在性に乏しいわよ?」

「・・・いや、まぁそうなんだけどな。個人的な経験から言わせてもらうとだな。ロッカーはいじめで閉じ込められる場所だ」

「・・・」

「・・・」

 

二人とも小学生時代にいじめられた経験あり。当然、教室の後ろにある掃除用具入れに閉じ込められた経験をもっている。

 

「あれさ、なれると中でぼんやり考えごとできるから、いじめとして軽度だよな」

「慣れるまで閉じ込められたくないわね」

「エスカレートすると、ドア部分を壁にして出られなくされるじゃん」

「やられたわねぇ・・・」

「あれも力の入れ具合で自力で開けられるようになると、成長を感じるよな」

「変なとこでポジティブにならないでくれる?」

「アレルギーの子だとさ、埃で喘息になって大変なんだよ」

「話題、暗いんだけど」

「英梨々がふってきた話題だろ?」

「あたしは、楽しい方のイベントを言ってるんだけど」

「だから、閉じ込められたトラウマがあるから、入ってみたいとは思わないって」

「はぁ?あんたバカなの?死ぬの?」

「まだ、続けるのかよ・・・で?どこでやるんだ?」

「そこ」

 

英梨々が倫也のクローゼットを指さした。

「中、けっこういろいろ入ってるぞ・・・」

「出しなさいよ。手伝うから」

倫也がため息をつきながら立ち上がって、クローゼットの中の服をベッドに置いていく。

下に積んであるラノベの入ったダンボールや、フィギュアの箱は取り出して部屋の隅に重ねた。

英梨々が中の様子を確認する。

 

「けっこう広いわね」

「元々、押し入れだった場所だからな」

「そうだったわね」和室を洋室に改装している。

「で、入るのか?」

「入るわよ。懐中電灯あるかしら」

「あったっけなぁ。昼間なのに怖いのかよ」

「別に怖くないわよ・・・明かりがないと本とか読めないでしょ」

「えっ、おまえ中で何がしたいの?」

「思ったよりも快適そうだから・・・」

「小学生じゃねーんだから」狭いとこが楽しい時期ってある。

英梨々がスマホを持って中に入る。

倫也がすかさず扉を閉めた。

「って、なんで閉めるのよー!」

「閉めないと雰囲気でないだろ?」

「一人じゃ意味ないでしょ」

「いや、普通一人じゃね?」

「普通、男女で入るでしょ」

「それ、エロゲーじゃねーの?」

「エロ同人なんだから問題ないでしょ、ってあけなさいよ」

「・・・」

英梨々が扉を叩く。

「英梨々、静かに・・・やばい」

「な・・・なによ」

「思い出したんだが・・・この部屋ってさ、なんで改装したか知ってる?」

「知るわけないでしょ!」

「ここ、元々はじいちゃんの部屋でさ。和室だったんだよ」

「話はいいから、開けなさいよ」

「いや、もう抑えてないぞ?」

英梨々が中から押すが扉は開かない。

もちろん、倫也が外から全力で抑えている。英梨々を騙す嘘をついた。

「開かないんだけど」

「冗談やめろよ・・・」

「倫也ぁ・・・」

「それでさ、じいちゃんがさ・・・その押し入れの中で亡くなったんだよな」

「なんでよ!?」

「詳しくは知らないけど・・・後ろの壁のところ見てみ?」

「暗くてよく見えないんだけど」

「スマホの明かりで」

「あ。スマホね」

英梨々がスマホのライトをつける。クローゼットの中が明るく灯る。

後ろを見ると、御札がはってあった。

「ちょっと、倫也、開けないさいって!御札。御札が貼ってあるわよ!」

「だから、何もしてないって」

「開けろぉ~!!」

英梨々がドアを足で蹴る。

 

「壊れるだろ・・・もう、本気にするなよ」

倫也がドアを開けると、中の英梨々が半べそをかいていた。

 

「ほんと、やめてよね・・・これ、いじめじゃない!」

「お約束だろ」

「こんなお約束知らないわよ!」

「なっ?だから俺は入りたくないんだよ」

倫也は何事もなかったかのように箱をクローゼットの中にしまいはじめた。

「倫也・・・あたしと二人で中に入りたくなかったんでしょ?」

「そうだよ」

「・・・なんでよ・・・」

「なんでもなにも、入って密接しながらドキドキするイベントだよな?」

「・・・そうね」

「そんなことしたら英梨々・・・」

「なによ」

「どこで止めていいか、わからなくなるだろ?」

「・・・」

倫也が手際よく箱を重ね、次に服をかけていく。

「もしかして、倫也って意外と考えているのかしら?」

「普通だろ・・・」

英梨々がベッドの上の服を倫也に渡していく。倫也は受け取ってそれをかけていく。

「徒労ね」

「まぁこんなもんだろうな」

倫也がドアを閉めた。

 

「ぜんぜんネタができなかったんだけど」

「類似のイベントでさ、ベッドの下に隠れるのもあるよな」

「あるわねぇ」

「やってみたら?」

「今日はもういいわよ」

「えっ、お前バカなの?やってみたら?」

「今日はもういいわよ」

「えっ、英梨々?やってみたら?」

「今日はもういいわよ」

「えっ?」

「って、立場逆にしないでよ」

「ふむ」

 

インドアイベントも難しい。

外はいい天気だった。

 

「散歩でもいくか?」

「うん」

 

英梨々が苦々しく笑った。二人で過ごせるなら、くだらないことでもまぁ楽しい。

 

(了)

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