ぜんぜんできない。
『地を這うプロレタリア。
純潔なる魂よ。報われぬ叫びよ
邪悪なりブルジョアを掃討せし革命。
すべてを灰燼と化し、創生せよアルカディア。
カール・マ・ルクス・プロイセン!』
怪しい召喚呪文を唱える英梨々を見て、どう声をかけるか悩んでいた。
「なぁ英梨々」
「何よ」
「共産主義とイスラムあたりはできるだけ関わらずに生きて行った方がいいぞ・・・」
「うるさいわね。あんたには関係ないでしょ」
「関係なくはないと思うが・・・」
「うるさい、うるさい、うるさーい」
「そろそろ夏休みのプロット作らないと間に合わないぞ」
「あーあー、聴こえない。聴こえなーい」
・・・だめだな。当分放っておこう。
※ ※ ※
「で?安芸くんどうするの?」
「どうもできない」
「惨憺たる結果だったもんね」
「・・・そうだな」
「そろそろ作らないとほんとに間に合わなくなるじゃないかな」
「そうなんだがな・・・方針が決まらないとうか、主役がボイコット中というか」
「それ、いつものことだよね」
「まぁそうなんだがな」
リビングのテーブルに向かい合って、加藤と2人。反省と分析をしつつ、途方にくれていた。
「一応、緊急用に去年の英梨々のプロットを流用して加藤と過ごすことも考えてみたんだ」
「うん。それで?」
「意外とちゃんと英梨々用の日程進行だよな」
「うん。でも、わたし用に組み直すことはできると思うけど?」
「いや、まぁそんなつもりもないんだけどな」
「・・・えっ?」
・・・ちょっとした失言で、世界が滅ぶことは稀によくあることだ。
※ ※ ※
出海ちゃんが空をペンキで青に塗って、伊織と美智留は張りぼての家を建てている。こいつらの世界創生もだいぶ慣れてきたな・・・
「まぁ、落ち着け加藤。作品の質が変わらないのに読者が減るってことは需要がないってことだろ?」
「つまらないのを我慢している原作ファンが離れただけだと思うけど」
「まだいるかな・・・」
「さぁ?」
「それで次の企画なんだけどな。やっぱり英梨々で中3の夏休みを過ごすのがいいと思うんだ」
「でも、本人がいないよね」
「プロットだけでも作るわけにはいかないだろうか?」
「そういわれても、コンセプトがないと」
「コンセプトなぁ・・・」
「だってまた英梨々とダラダラと過ごすだけなら春休みの二の舞だよね?」
「・・・なぁ加藤。コンセプトって・・・なんだっけ?」
「あのね・・・安芸くん。そこから?」
しょうがない検索してこよう。
『コンセプトとは、「概念」や「観念」を表す言葉です。 貫く基本的構想という意味で使うことが多いです。 コンセプトは単なる「目的」ではなく、終始一貫してブレることのない基本的な方向性を意味します。 コンセプトは、物事に取り組む際の姿勢・方針・思想を表します』
「なるほど。やっぱり去年みたいに英梨々とエッチをしようとするのが・・・あっ」
「安芸くん?」
ちゅどーん。という古典的な音とともに世界が消えた。
※ ※ ※
「いや、しかしだ加藤。去年をバージョンアップさせる必要はあるだろ」
「・・・じゃあ、勝手にしたらいいんじゃないかなっ!」
「いやいやいや、まてまて」
扉が開いて、美智留が戻ってきた。
「トモ。もう諦めて童貞を卒業するときが来たんだよー」
「なぜそうなる?」
「去年がR15だから、今年はR18。別におかしな流れじゃないと思うけどー」
「いやいや、おかしいだろ・・・」
だいたい英梨々とのR18は結婚もしていないのに・・・
「いや、まて加藤。そのために俺は英梨々にプロポーズをだな・・・」
「だから、それは正妻戦争に決着がついてからだよね」
「そういうもん?」
「そういうもん」
「それってどうすればいいんだ?」
「さぁ?でも、安芸くんが英梨々を選んで、わたしをちゃんとふって、その上でわたしも幸せになるルートを見つければいいだけなんじゃないかな」
「簡単そうにいうけど矛盾してね?」
「それはわたしの知るところじゃないと思うけど」
休憩。
「トモ。だから、難しく考えすぎなんだってば」
「何がだ?」
「ハーレム型ラブコメなんだから、ハーレムを作ればいい」
「いや、良くないだろ・・・」
「トモは史実を補完して、史実通りにわたしで童貞捨てたらいいと思うけどー」
「史実ってそうなのか?」
「だって、わたしがベッドの上で覚悟して『トモとなら悪い思い出にならないからいいか』って受け入れていて、トモはトモで風呂上りに裸でかけあがってきて、わたしにち〇こみせてきているし、そのあとやるのが普通でしょー」
「いや、お前の普通はわからん」
美智留の話は話にならんな。
「とにかくコンセプトが決まらないと・・・」
「そうだな・・・」
堂々巡りな夏休みプロット。春休み制作がギリギリで時間がない。気が付けばもう5か月ちょっとだった・・・
(つづく)