友達とは
①一緒にいて楽しい同年代の人
②利害関係が生じていない
この条件を満たすことが必要と考える。一緒にいて楽しくないなら友達ではないし、金銭的にトラブルが起きても友達ではなくなる。
『元友達』はいても、『ずっと友達でいられる人』かどうかはわからない。
多くの場合は①②が破綻している。相手が友達でないこと認める、絶縁することでトラブルが解決に近づく。
「男女間の友達は成立するのか?」しばしば議題に上がるが、結論から言って「主観における定義は意味を成さない」要するにイエス・ノーではない。
本人たちがどう思おうが自由だが、社会的に年頃の男女が会うことは許容されない。少なくも婚約、結婚と発展する場合にはトラブルになる。
倫也と恵の関係も、英梨々と結ばれるなら、関係性は友達ではなく純粋なビジネスパートーナーになっていくのが良いだろう。
夏休み制作作品の修正を重ねながら、俺と加藤は意見をすり合わせていた。
「やっぱり後半が難解になっていくのが気になる」
「原石の売買のところか?」
「うん。数字は極力なくした方がいいと思うけど」
「もう少し削ってみるかぁ・・・」
いっこうに完成が見えない夏休み作品。昨年のノーテンキなイチャイチャ物に対して、今回は経済が大きく絡む。
「ご都合主義は目をつぶるにしても、理由や流通の説明はいらないんじゃないのかな。要するに効率があがって儲かっていくって話だよね?」
「まぁそうだな」
「そこに、税金、交通費、手数料、紹介料、雑費などなどを書けば、ややこしくなるのは当然だよね」
「でも現実ってそうだし」
「現実はご都合主義で通らないよね」
「そうだな・・・」
「なら、より明確に表現して、本筋を進めることを意識した方がいいんじゃないかな」
「ふむ」
本筋・・・それはつまり英梨々を喜ばせることになるんだろうか?
「あとさ安芸くん。ずっと2人で旅行しているの・・・ずるくない?」
「はい?」
「世界中を旅行するのは楽しそうだし、いいと思うけど。でもブレッシングソフトのゲーム制作をほっぼりだして2人で旅行するって無理があるよね?」
「そこは加藤にがんばってもらってだな・・・」
「そんな人いないんじゃないかなぁ」
「それは加藤の行動原理が『恋愛至上主義』に基づいていたからだろ?むしろここはサブヒロインから英梨々の友達として割り切って・・・」
※ ※ ※
一度世界が滅んだので、俺は気を取り直して世界を創生する。
「頼む」
とりあえず、加藤にひたすら土下座をして頼む。これが世界が安定する唯一の正解である。加藤にサブヒロインどころか、脇役ないし裏方に徹底してもらわないと世界が成り立たない。
「わたしの気持ちはともかくとして、そんな風にほっとかれて働く女の子なんていないよね」
「そこは同人ジゴロ的にだな・・・」
「同人ジゴロも、ホストでも、ゴッキーでもなんでもいいけど、それは相手がフリーだから女心を揺さぶられるんだよね?安芸くんみたいに英梨々に一途でプロポーズする人に惚れて、ただ働きする人なんていないと思うんだけど」
「加藤でも無理」
「無理もなにも、そんなことするのはボランティアする以上におかしいよね」
「ただじゃなければいいんだろうか?」
「どういうこと?」
「普通の大学生がバイトをがんばってもせいぜい月に10万円程度だろ?そこでブレッシングソフトが加藤をそれ以上の金額で雇ったら、働いてくれるんじゃないか?」
「またそうやってお金の話をする」
(お金の話をしたのは加藤だよな)
「それ、口に出して言える?」
「心は読まないで・・・」
主題を恋愛・正妻戦争からほんわか日常系へ移すことで争いごとのないみんな優しい世界にしたい。これも昨今の流れだろう。
「そこでだな加藤。まずは俺とは仕事上のパートナー、英梨々とは親友という基本のポジションに立ち返ってだな・・・」
「基本?」
「まずは楽しくゲーム作りをしたという延長にブレッシングソフトがあり、大学生になってからも運営を続ける。会社は十分な利益をあげているから、加藤への報酬もしっかりしている。・・・ということにしておけば、加藤がゲーム作りを続ける理由にもなるのでは」
「そんなに儲かっている会社なのかなぁ。ただの同人ソフトを売っただけだよね」
「たかが同人と侮るなかれ、今や売り上げは1000万を超えているところもある。それにコミュケなどの同人会はファンサービスの場で、主戦場はあくまでもネットだ。ネットでダウンロード販売数が稼げれば、あっという間に売り上げの0が1つ増える」
「それ、ご都合主義なんじゃ」
「そこはもう、そういうことにしてだな・・・」
「うーん。要するにわたしに買収されろということだよね?」
「・・・そうなるのかな」
※ ※ ※
何度目かの世界が滅びたあと、俺は1つの悟りを得た。人を動かすのは金と熱意である。それで加藤を根気強く説得して押し切る。
「というか加藤。もう7月なんだ」
「今年も半分終わったね」
「どう転んでも新しく作るのは無理だ」
「まぁそうだよね」
「なんでこの『英梨々に毎日プロポーズする夏休み』の企画を通してだな・・・」
「どぉぉぉぉ~~~しても、安芸くんは英梨々にプロポーズしたいんだね?」
「・・・そうなのか・・・」
「そこ、ブレちゃだめなんじゃないかな。2年前はあんなにわたしとオセロしたのに」
「それはほら、別の物語だから」
加藤がペラペラとプロットのまとめた企画書をめくっている。
「うーん。ここ。スペイン旅行のところ」
「うん?」
「これ、わたしが英梨々と行くから」
「はい!?どうして?」
「安芸くんばかり旅行してずるいから」
「いや、そういう話だし」
「それか、もう夏休みは投稿しなくてもいいんじゃないかな」
「そういうわけにも・・・とりあえず考えてみるけど、加藤が英梨々とスペイン旅行に行きたいってことでいいんだな」
「違うよ。わたしは仕方なく安芸くんに頼まれてスペインまでいくんだよ」
「なんで・・・」
「そういう押し切られるキャラだから」
とりあえず、スペイン編を加藤にすれば企画が通るらしい。後半だし修正は自転車操業的に運営すれば間に合うだろうか。
「押し切るキャラついでに加藤、たまにはオセロやらないか?」
「・・・もう、安芸くんとオセロすることもないんじゃないかな」
こうして俺と加藤の関係性はいつのまにかクールダウンして、どこぞのラノベ主人公のように何もしなくてもモテるハーレム主人公になれるはずもなく、つながりをなんとか維持してもらいつつ、今日も土下座で世界を救うのだ
(了)