英梨々を甘やかして作る物語   作:きりぼー

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日曜のひとときいかがお過ごしでしょうか。

今回のテーマは桜。
桜と英梨々とか無理っす。


桜の咲く頃に

3月下旬。暖かいかと思えば寒い日もあり安定しない気候が続いたが、それでも今年も桜が開花して春の訪れを告げた。

 

「五分咲きってところかな」

 

 桜の木を見上げながら、澄んだ声で呟くように加藤が言った。

「花見には少し早かったか」

 加藤は何も答えず、少し首をかしげてから俺の方を見た。そのポーカーフェイスの表情からは感情は読み取れない。加藤は実に加藤らしい白いワンピースに桜色のカーディガンを着ていた。一年前、桜の咲く季節に加藤に出会った。それは俺にとっての・・・

 

「ねぇ、安芸くん・・・」

 

加藤が立ち止まった。柔らかい風が吹いて髪が揺れた。加藤はそれを手で抑えてから眉を少しひそめて、開いている木製のベンチを指さした。

 

「少し座ろうか」

 

その声は物静かでとても澄んでいて、耳に心地よく響いた。俺は加藤の隣に座った。

 

 今日はサークルのみんなでお花見をしている。この先の伊織が確保した場所に英梨々やみんながいる。俺は飲物が切れたので近所のコンビニまで買いにでかけたら、加藤がついてきてくれた。だから2人はペットボトルのはいったコンビニの袋を1つずつもっている。

 

 公園は賑わっていた。あちこちにシートが敷かれて、お弁当やお酒でそれを彩っている。

俺たちのところも、加藤が用意してくれたお弁当や、英梨々が持ち込んだお菓子など華やかだ。

 

「あのさ・・・桜はね。安芸くん・・・」

「んっ?どうした?」

 

加藤がこちらを見て、「桜は・・・わたしの領域だと思うんだけど」と言った。それから口を閉じて片方の頬を膨らませてから、また前を見た。しぐさが可愛い。ただ、言っていることは意味不明だ・・・

 

「英梨々とお花見をするっていうはさ、ルール違反なんじゃないかな」

「ルールって」

「ルールはルールだよ。英梨々はアニメやゲームや美術を司って・・・」

「司る・・・」

「うん。霞ヶ丘先輩は本とか文章。氷堂さんは音楽。そうだよね?」

「それ、ゲーム制作のはなしだよね?」

「あのさ・・・今、そういう話してた?」

「・・・なんのこと?」

「だから、この物語の話だよ」

 

 ああ、うん。知ってた。知っているけど、知らないふりしないと物語にならない。

とはいえ、加藤は物語を正統に進める気がないらしい。

 

「それで?」

「桜はどう考えてもわたしの担当だよね?わたしから桜とったら、ただのボブカットのおとなしいモブになっちゃうよね?」

「・・・それはどうだろうな」

「その桜の咲く季節にさぁ・・・」

 

 あっ、非難めいた加藤の声だ。ただ、顔はまだ無表情だった。返す言葉がみつからず、俺は桜を見つめる。枝には蕾のほうが多い。隣に座っている加藤との間には、コンビニの袋が置いてあって、風でカシャカシャとビニールのすれる音がする。

 

「みんなで花見するのはおかしくないだろ?」

「おかしいんじゃないなかなぁ」

「・・・」

「だからね、安芸くん。これでおしまい」

「おしまいって何が・・・」

「おしまいはおしまい・・・だよ」

 

 桜が咲いている。淡いピンク色の花。隣には加藤が静かに座っていて、俺と同じ花を見ている気がした。

 

(了)




しゃーない
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