Fate/Silver Order -選ばれし48人目のマスターは銀髪侍- 作:天パ男
ストーリーを再構成させし、ハーメルンでの投稿を再開することにしました。
もしよろしければ、読んでいただけると幸いです。
よろしくお願い致します。
ーーあん? なんだこれ……
徐々にではあるがゆっくりと確実に覚醒していく意識の中で彼が最初に抱いたのは疑問だった。
ーーあれ、空が真っ黒だ……
鈍重な瞼を上げ開かれた目に映る物全ては、真っ黒に染め上げられる。
彼にはこれが何なのか。いったい何が起こっているのか。理解することができなかった。
手足を動かそうにも、まるで重厚な鎖に縛られたかのように体は固められ、身動き一つ取ることができない。
ーーあれ? 真っ黒なのは俺じゃねーのか?
そこで彼は気づく。染まっていくのは空でも世界でもない。黒に侵食され包まれようとしているのは自分だということに。
だがそれに抵抗する気は彼にはなかった。何故かその黒はとても心地よく逃れようとすればするほどに快楽は強みを増していった。
『もう…… じんる…… おわ』
何もない筈の空間で、誰かの声が聞こえてきた気がした。
だが声は途切れてしまい、何を言っているのかわからない。
ーー誰、だ? いや、まて。そういや俺こそ、誰なんだっけ……
『あなた…… すくって…… みん……』
-ーなにを、言って…… いや、待てよ。そうだ、俺は……
彼を包んでいた黒はゆっくりと剥がれ落ちていき、覚醒した筈の意識が再び閉じようとしていった。
それと共に最後の声が聞こえる。
『最後のマスター、坂田銀時』
彼の名前を告げて──
ーーー
巨大な窓に映るのは強烈に降り注ぐ吹雪。
一度外に足を踏み入れれば白銀の世界が支配するこの地にのまれ一瞬でその命を枯らすことになるだろう。
無論、そうはならないよう室内はしっかりと暖房が行き届いている。
しかし電気節約のためか部屋と部屋を繋ぐ廊下は温度設定が低く設定されている。そのため好き好んで廊下に入り浸り、あまつさえ眠りこける者などいないはずなのだ。この銀色の髪をした男を除いて。
「フォウ。フォウフォウ」
「んー…… うるせー…… まだねみーんだよ。寝かせろバカヤロー」
何処か気の抜けた獣らしき鳴き声が、眠っていた男、坂田銀時の意識を呼び起こした。
しかし何故か痛む頭と巨大な睡魔に負けた銀時は獣の声に冷たく返答し再び眠りに入ってしまった。
冷たく固い地面。普段の着物姿ではこの寒さに耐えられず自然と身も縮こまるが眠気にはやはり勝てない。
「フォーウ…… フォウフォウ、フォフォウ!!!」
「ぐほぅ!?」
突然、腹に重い衝撃が伝わった。本気で目が飛び出るかと思った程の衝撃に銀時はたまらず飛び上がる。
「何しやがんだ、コラァ!! …… あん?」
「フォウ!!」
体を起こし、まず目の前にいた白い獣を見て、銀時は固まる。
犬なのか狐なのかよくわからない四足歩行の小動物。モコモコの毛が柔らかそうで、思わず撫でたくなるような見た目をしていた。
はっきり言って謎過ぎる生物だった。いや、まあ地球の外に出れば、このような生き物はいくらでもいるので珍しいわけではないのだが。
「なんなんだ一体…… いや、つーか、ここどこ?」
周囲を見渡すと銀時はここが全く見知らぬ場所であることに気がつく。
白を基調とした長い廊下。直ぐ側の巨大な窓から見える景色は吹雪に覆われている。
こんな場所は見に覚えがない。そもそも自分はここで眠ってしまう前に何をしていたのだろうか。
「…… 駄目だ、全く思い出せねぇ。なんか頭いてーし。くそっ! 新八や神楽は何処だ?」
これは明らかな異常事態だ。銀時は家族同然とも言える二人の姿を思い浮かべる。
あの二人もここにいるのだろうか。まさか、危険なことに巻き込まれているのでは……
「あの、質問よろしいでしょうか?」
二人の身を案じる中、背後から声がかかった。
振り替えるとそこには真面目そうな印象を持った少女がいた。
少女の桃色の髪はショートカットに切り揃えられているが前髪は右目を隠す程に長くかけられ、黒縁の眼鏡ごと隠してしまっている。しかしその分、左目から見える菫色に輝く瞳と真っ白で傷一つない小綺麗な肌を印象強く見せていた。
これだけでこの少女が、かなりの美少女だということが銀時にも見てとれた。それも彼が普段相対しているような我の強い美女たちとは対極に位置する正統派の美少女だということに。
そんな見知らぬ美少女がいきなり質問をしたいと言う。
銀時は多少警戒しつつも、素直に答える。
「あ、ああ。まあこっちが色々聞きてーぐらいなんだが…… 俺になんの用なんだ?」
「ありがとうございます。質問といっても単純なことなのですが…… 貴方は一体誰なのでしょうか。もしかして48番目のマスターなのでは?」
「は、マスター? いや違うけど。俺は坂田銀時ってんだ。その、マスターとかじゃなくて、万事屋をやってる」
マスターとはなんだろうか。バーとか飲み屋の店主のことか? だとしたそれは違う。坂田銀時の職業は万事屋。どんな依頼もこなす何でも屋だ。
正直に銀時が答えると、目の前の少女は少し困ったような顔になる。
そしてしばらく考えるよう素振りを見せると、申し訳なさそうな表情で口を開いた。
「あの、申し訳ないのですが、坂田銀時さん…… 貴方はつまり部外者、いえ侵入者である可能性があります」
「はー…… へ?」
少女が告げられたとんでもない事実に、銀時は呆けた顔で声を漏らした。
「本来ならば、即事拘束すべき状況なのでしょうが…… 私には勝手な判断をすることは許されていないので、まずは所長に報告を……」
「ま、待て待て! え、なに侵入者!? ここが何処かもわかんねーのにか!」
こっちは知らない内にここに来ていただけ、もっと言えば被害者であるのに、拘束されるなどたまったものではないと銀時は抗議しようとする。
しかし少女は、狼狽える銀時の何処かもわからないという言葉のみを汲み取り、冷静に答えた。
「ここが何処か、ですか。では答えます。ここは人類の未来をより長くより強く存在させるための観測所──
人理継続保障機関カルデアです」