Fate/Silver Order -選ばれし48人目のマスターは銀髪侍- 作:天パ男
── あれ? なんだ…… これ…… 空が真っ黒だ。
徐々に覚醒しだしていく意識の中で捉えた世界。
そこは墨汁で塗りたくったかのように全てが黒に染め上げられた世界だった。
── あれ? なんかこんな事、前にもあったような…… あれ? なんか…… 臭い?
鼻孔を擽る妙な臭いに彼は気づいた。
何処か獣臭いような動物園やサバンナを思わせるような臭いに顔をしかめる。
── あれ? なんか柔け…… つーかモフモフしてる……
臭いとは裏腹に、そのあまりにも心地よい感触に彼の意識は再び眠りにつく……
── て、こらあァァァ!! 起きなさい!! くっさいのよ!
「んが!?」
聞こえてきた── というよりも頭の中に直接響いてきた、何処か聞きなれた小うるさい声に銀時の意識は完全に覚醒した。
驚いた事もあり、目は、かっと見開かれる。
しかし、視界に映ったのは夢の中と同じ真っ黒な世界だった。
「フォーウ、ンキュ、キュウぅ」
獣の臭いが鼻孔を擽りふわふわの毛の感触が頬に伝わってきた。それから聞こえる小動物の鳴き声と顔面にのしかかる重み。
今、銀時の顔の上には小動物、フォウが乗っていた。銀時の顔に真っ黒なケツ穴を向けた状態で。
それに気づいた瞬間、黄色いガスが放射された。
「いや、何してんだ、この毛もじゃあァァァ!!」
「フォーウゥゥゥ!!?」
フォウの尻尾を掴み銀時は怒りと共に渾身の力を持ってフォウを投げ飛ばした。
目が覚めたら目の前がまさかのブラックホールだったのだ。
動物愛護団体に目をつけられかねない暴挙とはいえ致し方ないだろう。寧ろ同情すら感じられる。
べちゃっと音をたてて壁に衝突したフォウを横目に銀時は自分がどこにいるのかを確認する。
簡易的なベッドに申し訳ない程度に置かれた観葉植物と小さなテーブルにミニ冷蔵庫。ポールハンガーには銀時の着物がかけられていた
シャワールームと個室トイレがつけられた小さな一室。
恐らくはカルデアの施設内だろう。
どうやら銀時は今の今まで部屋のベッドの上で寝かされていたらしい。
椅子代わりにベッドの上で座り銀時は眉間を抑える。
「いつの間にか帰ってきてたのか…… あー、つーか頭いてぇ。たく、
「それを言うならばレイシフトだろう? そんなスイーツ感のある名前ではないさ」
独り言で終わるかと思っていた銀時のボケに丁寧なツッコミが入れられた。
部屋の扉が開かれ女性が入ってきたのだ。
「やあ、初めまして。そしておはよう人類最後のマスターにして異世界の侍、坂田銀時くん。私の名はダ・ヴィンチ。カルデアの協力者であり召喚英霊第三号さ。気軽にダ・ヴィンチちゃんと呼んでくれたまえよ」
なんと言うべきか。その女性、ダ・ヴィンチちゃんは所謂絶世の美女だった。
艶やかな黒髪に青い水晶の様な双眼。豊満な体つきは男の目線を自然と引き寄せてしまう。
絶世の美女という以外に表す言葉がないほどに美しいーー 右手に握られたバカデカイ杖に肩に乗った金色の変な鳥に目を瞑ればだが。
銀時は頭痛とは別の理由で頭を抱えたくなった。
こいつは絶対、変人だ。と長年の経験から察したからだ
そんな銀時の心情を知ってか知らずかダ・ヴィンチは試すように言葉を投げ掛ける。
「さて。君はこんな所で私と話をしていて良いのかな? いや確かに、私程の美女と話す機会なんてそうそうないけど、君には会いに行くべき人がいるだろう。さあ、カルデアの管制室に行きたまえ」
「……」
銀時は何も答えることなくボリボリと頭をかいた。時おり響く頭痛から顔をしかめる様子も見せる。
動かない銀時にダ・ヴィンチは面白い物を見て興奮する変態科学者の様な目を向ける。
「おやおや、もしかして会いに行くべき人に関して身に覚えがないのかい? いい年してると思っていたが意外と主人公らしい鈍感なタイプなようだね。いや、それとも君はその
「んだよ。もうわかってんかのよ」
ダ・ヴィンチの確信めいた台詞に銀時はようやく言葉を返した。
ダ・ヴィンチの言葉のおかげか。原因であるモノが大人しくなった結果銀時の頭痛がスッと引いた。
頭痛から解放され会話をする余裕が出来たのだ。
「いや、気づいているのは天才である私だけさ。どうせならば君の口から言った方がいいだろうと黙っているがね」
「はっ、そうかよ」
銀時はベットから立ち上がるとポールハンガーから着物をとる。
そのままダ・ヴィンチに何も言うこともなく背を向け扉を開けた。
「おや? 何処に行くんだい」
銀時は背を向けたまま答える。
「決まってんだろ、会いに行ってやんだよ。暇だしな」
ぶっきらぼうにそれだけ言うと銀時は部屋を出ていった。
そんな彼を見てダ・ヴィンチは嬉しそうに微笑み銀時を見送った。
管制室に足を踏みいれるといの一番に銀時に駆け寄った少女がいた。
あの冬木の地で戦った時と同じ鎧に身を包んだ見慣れた少女、マシュだった。
「おはようございます先輩。無事でなによりです」
マシュは顔を少し赤らめ照れくさそうに挨拶をする。
銀時は、頭をボリボリとかきながら、おうと一言だけ返した。
「にしてもヒデー有り様だな。無事なのはあの地球儀擬きだけかよ」
銀時は宙に飾られるカルデアスを見てぼやく。
管制室は火こそ既に鎮火されていたが、瓦礫や破損した壁と床はそのままの状態だった。
「はい。復旧には少しばかり時間がかかるでしょう。レフ教授…… いえレフ・ライノールはあらゆるモノを奪っていきました。彼の事を最も信頼し頼りにしていた所長でさえも……」
マシュは悔しそうに唇をかみ、悲しげな目で管制室を見ていた。
元々マシュとオルガマリーは決して仲が良いとは言えなかった。とある理由からオルガマリーはマシュに対しある種の恐怖感を抱いていたからだ。それ故に互いに関わりは薄く、単なる上司と部下の関係が長らく続いていた。
と言っても、マシュからしてみればオルガマリーの勝手な妄想に過ぎなかったのだが。
それでもマシュにとっては、やはり彼女も大事な者の一人であり共に特異点Fを戦い抜いた戦友だ。
決して蔑ろにしていい存在ではなかった。
そんな彼女を見て銀時は何処か決まりが悪そうな顔をする。
「あ、あのな。そのことなんだけどよ ……」
「コホン。二人とも思うところはあるだろう。僕もやるせない気持ちでいっぱいいっぱいだ。だけど今はこっちに注目してくれないかな」
銀時の台詞はいつの間にかいたロマニによって遮られた
ロマニは銀時に労いの言葉をかける。
「まずは生還おめでとう銀時くん。そしてミッション達成、お疲れさま。異世界の人間、本来ならばこの世界とは無関係の君に全てを押し付けてしまったことに関しては本当に申し訳がないと思っている。だけど君はそんな事には構わずあらゆる事態を乗り越えてくれた。その事に心からの尊敬と感謝を送るよ、君のおかげでマシュとカルデアは救われた」
「んな褒めれる様な大層なことはしてねーよ。俺ぁただ目の前に邪魔な奴がいたからぶっ飛ばしただけだ」
ロマニの労いを寧ろ鬱陶しいと言わんばかりの適当な反応を見せる銀時にマシュはクスリと笑った。
「先輩らしいですね。ですが、先輩のおかげで私たちが助けられたのは事実です」
「マシュの言う通りだ。…… 所長のことは残念だったけれど、弔う余裕がない。悼むことしか今の僕たちにはできないんだ……」
残してたケーキが腐っちゃうよ、とロマニは悲しみを誤魔化すように笑った。
マシュは何も言えずに俯き、銀時はより一層決まりが悪そうな顔をした。
気まずい沈黙が流れるが、ロマニはコホンと咳払いをし、話を再開した。
「僕らに出来ること。それは所長の意思を引き継ぎ人類を救うことだ。人類最後の砦となったこのカルデアを生きる僕たちに出来る唯一の事であり所長への手向けになると僕は信じている。…… あまりにも身勝手なことだとわかっている。だけど、どうか、これからも共に戦ってほしい」
ロマニは深く頭をさげた。
「…… んなかしこまるこたぁねーよ。こっちは、もうとっくにマシュから依頼を受けてんだ。今更誰にどうこう言われよーが辞めるつもりはねぇ」
「…… ! ありがとう。君には感謝してもしきれないよ。じゃあ早速だけど、これを見てほしい」
シバのモニターに地図が映される。それは銀時の知る地球の世界地図と酷似していた。
しかしその地図は何処か歪んでいて、一目で異常だということがよくわかった。
ロマニ曰く、この地図はシバでスキャンした地球だとのこと。
特異点Fを攻略したものの、未来の消却を阻止することはできなかった。それはつまり他に原因があるということだ。
それが七つの特異点。人類のターニングポイントと呼ばれる内の七つだ。人類の発展を決定付けた進化の土台であり運命の時代。銀時の世界で言えば、やはり天人の襲来だろう。
彼の世界もまた、天人襲来というターニングポイントによって発展がなされたのだ
しかし、それは逆に言えば、その運命という選択肢が変えられた時、人類の未来は大きく変えられ下手をすれば人類そのものが消滅する結果になってしまうのだ。
「僕らはそれを阻止しなければならない。この七つの特異点にレイシフトし、正しい歴史に戻し、人理を修復する。それが世界を救う唯一の手段だからだ。だからこそ、もう一度頼もう。銀時くん。君には全てを背負って戦ってもらわなければならない。人類の未来は君にかかっているのだから」
随分と大きな話になったもんだ、と銀時はかつて、自身が戦った戦場を思い出していた。
大切な者を、たった一人の命を取り戻す為に戦っていた自分がまさか全人類の命を背負うことになろうとは。
だが、怖じけずくつもりも引くつもりもない
依頼を承った以上は万事を守る者として戦わなければならない。
── それに約束しちまったからな。
必ず、守ってみせる。銀時はある恩師と交わした約束を思いだし口を開く。
「やってやるよ。今更一人、二人、何十億人と背中に背負おうが変わらねぇさ」
「──ありがとう。その言葉でボクたちの運命は決定した。これよりカルデアは前所長オルガマリー・アニムスフィアが予定した通り、人理継続の尊命を全うする。目的は人類史の保護、および奪還。探索対象は各年代と、原因と思われる聖遺物・聖杯。これより我々は戦うことになる。数多の英雄、伝説が集う歴史を相手にだ。彼女が、オルガマリー・アニムスフィアが残してくれたこのカルデアと共に──」
「はい。私たちは決して諦めません。人類の、ひいては所長のためにも!」
「………… んー……」
二人が胸暑く語る中、銀時だけは、何とも言えない表情でいた。
しかししばらくすると突然顔をしかめる。
「うぉっ!? うっせーな! わーってるよ! ちゃんと言うから黙ってろ! 頭キンキンすんだよ!」
絶賛シリアス真っ最中にいきなり一人で騒ぎだした銀時にロマニとマシュは目を丸くする。
そんな二人を見て銀時は頬をポリポリとかく。
「あー、あのなー。その、お前らに言わなきゃいけないことあんだけどよ…… そのな、所長はな……」
銀時はゴクリと唾をのみ混む。
「今、いんだよね。取り合えず、ゆ…… スタンドの状態で」
「スタ、ンド…… ?」
「あっ、先輩。それは……」
ロマニは言葉の意味がわからないとポカンと口を空ける。
マシュはそう言えばレイシフトする直前に銀時がそんな事を言っていたと思いだした。
「ちょっ、ちょっと待ってくれないか! いるというのはどういうことだい? その、あれかい? あの、所長はいつでも君の側にいるとか心の中で生きてるよ的な、感じのあれ?」
「いや、そんなじゃなくてマジな意味で…… あーめんどくせ。見せた方がはえーだろ。おい出てこいよ…… あ? なんかはずい? 今更なに言ってんだよ、はやく行けや」
一人で会話をするという奇行に走ったかと思ったら、銀時の顔が突如として別のモノへと変貌した。
髪はぶわっと上がり、顔全体が白塗りメイクにかわる。
目元は黒と赤で濃く塗られ唇には口紅がべったりと塗られた。
そして額に所の字が浮かび上がった。
その突然の銀時の変容にロマニはこの世の終わりを見たかのように顔を青ざめ、マシュは何も言えずにキョトンとしている。
「あわわ。い、いったい何が……」
『ロマニ! こんな事くらいのことで一々動揺するんじゃありません! そんな始末でよくもまあ私の引き継ぎを行うなんて言えたわねぇ! このカルデアの指揮をとるのは私。引き継ぎなんて百万年早いどころか貴方なんかには一生させないわよ!』
声色は変わらない。だが銀時とは思えない女性の様な口調が銀時の口から出ていた。
というか、このしゃべり方には身に覚えがあった。
「こ、この超面倒くさい感じ…… 間違いない。所長…… 貴女はオルガマリー所長ですね!」
『誰が面倒くさいだあァァァァァ!!』
「ステレオっ!?」
銀時? に殴られたロマニは小さな悲鳴を上げて吹き飛んだ
マシュが興奮ぎみに銀時? 駆け寄る。
「所長……本当に、本当に所長なんですね!」
『ええ。マシュ…… 心配かけてごめんなさい。本当はもっと早く貴女の前に出るべきだったんだけど、話そうにも私は完全に死んだ扱いされて…… いや、正確には死んでいるのだけれど。とにかく出づらくなっちゃって』
容姿は銀時だが、中にいるのは間違いなオルガマリーらしい。
彼女が素直に謝罪をしたことからやっぱり別人ではないかと一瞬疑ってしまいそうになったが、彼女もまた変わったということだろう。
彼を、銀時を通して。
「いたた……銀時くん、それに所長 ? いったいこれはどういうことですか? スタンドとはいったい?」
頬を抑え復活したロマニが最もな疑問をぶつける。
『スタンドっていうのは要は幽霊のことよ。私の場合は精神エネルギーの塊みたいなモノだから勝手が違うけど』「幽霊言うな! スタンドだ!」『いや、幽霊よ』「だーからぁ!全然違うわ!」
一応銀時の中で会話を成しているのだろうが、はたからみれば一人で話している変人にしか見えない。
この異常な光景にロマニは嬉しさよりも驚きにより唖然とするしかなった。
「まっ、とにかくだな。所長は今もこうして俺ん中にいる。所長が言うには俺の体から外に出たら、直ぐってわけじゃねーが、何分か放ったらかしにされたら消えちまうらしい。だからさっさと何でもいいから所長が入れそうな入れ物を貸してくれってよ」
『そういうことよ。私は英霊でも何でもないし、当然といえば当然だけれど。とにかく、何時までも銀時の中にはいるのは嫌だから、成るべく早く用意しなさい』
色々無茶苦茶な展開にロマニは直ぐには、はいとは言えず、当然ながら質問攻めを銀時は受けることとなった。
レイシフトしカルデアに戻る間
転送中の空間で霊体化したオルガマリーを銀時は自身の体へと吸い込んだのである。
銀時は以前、仙望郷と呼ばれる宿において幽霊、ではなくスタンドを吸い寄せ憑依させる能力を手に入れたことがあった。銀時はその能力を使い消滅する筈だったオルガマリーの魂の受け皿となったのだ。
あまりにも無茶苦茶でご都合主義というにはお粗末にも程がある展開を実現させた銀時にロマニは貧血を起こしそうになった。
しかしマシュはプッと我慢できずに吹き出してしまう。
この無茶苦茶さが正に銀時だと思ったのだろう。
『ですが…… たとえ魂のみでも私は間違いなく、オルガマリー・アニムスフィアよ。このカルデアを司り全人類の命を背負う者の一人。だからこそ、私がここに宣言します』
その言葉は、在り方は、以前の所長からは考えられない姿と言葉だった。しかし別人ではない。彼女は紛れもなく本物のオルガマリー・アニムスフィア。
ただし決意と確固たる意思を持った者として。
『ファーストオーダーは終了し、新たな作戦名をここに。カルデア最後にして原初の使命。人理守護指定・G.O。通称グランドオーダー。魔術世界における最高位の使命を以て、私たちが未来を取り戻すのよ!』
今ここに。
未来を守るべく戦う、マスター、坂田銀時と新たな仲間たちとの絆の物語が始まる。
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『3年
キーン コーン カーン コーン と鐘が鳴る。
銀八「はい。教科書閉じてー。今日はお前らに転校生を紹介しまーす」
マシュ「マシュ・キリエライトと申します! よろしくお願いします!」
銀八「ええー。残念ながら、稼ぎに稼いだゴリラ君が引き籠りになってしまったので、その代わりとしてキノコさん家のマシュさんに来てもらいました」
グルグル眼鏡の留学生、神楽ちゃんが手を上げる。
神楽「先生! ゴリラどころか、私たちってもう卒業したんじゃなかったアルか? なんで未だにここでスクールDAYS?」
銀八「そんなクリスマスの風物詩みたいな名前出すのは止めろー。ホームアローンだってリブート出してただろ。つまりそーいうことだ」
今度は土方くんが手を上げる。
土方「先生! 俺はやっぱり1が志向だと思います! あの時の思い出は永遠に俺の中での宝物です」
銀八「お前は一生、ホームにアローンで引きこもってろ」
次に手を上げたのは長谷川くんだ。
長谷川「先生! 完全に話がズレています! リブートと、この小説はなんら関係ありません!」
銀八「だーかーら。これはタバコじゃなくてレロレロキャンディーだっつってんだろ。ほら、これ」
長谷川「先生! 話をすり替えようとしないでください!」
銀八「まあ、そんなことより。マシュ、席につけー。お前の席は‥‥‥‥ あそこが空いてるな」
指示に従いマシュは空いている席へと向かう。
しかし隣に座る男子生徒を見るとピタリと止まり、銀八を見る。
マシュ「申し訳ありません、先生。眼鏡キャラが被っているので、今度はこの方を転校させてはいただけないでしょうか?」
マシュの無情な言葉を受け、男子生徒、新八君が一言。
新八「家に帰って、ゴーストバスターズ見よ」
今回のイベント、新八を連想してしまった。
感想などお待ちしております。