Fate/Silver Order -選ばれし48人目のマスターは銀髪侍-   作:天パ男

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英雄達

 謎の人物が一気に四人。人智を越えた力を使い黒いジャンヌダルクたちから逃げる一手を作り出したことから、彼らもまたサーヴァントであることはわかる。 

 彼らサーヴァントに助けられた銀時たちは馬車に乗り、遠く離れた森の中に身を潜めていた。

 

「うぷ、ちくしょぉ…… まさか生でジャイアンリサイタル聞かされるはめになるなんてな」

「先輩、これ水です。飲んでください」 

『通信越しにも酷い歌…… いや個性的な歌だったけど、銀時君のバイタルは然程問題ない。落ち着いて休めば大丈夫だろう』

『うぷっ…… ロマニ、あなたもちょっと休みなさい。私は吐き気には慣れてるから大丈夫よ」

 

 青ざめた顔になりながらもロマニは銀時の健康状態を確認する。吐くのを堪えてしっかり仕事をこなす彼に今回ばかりはオルガマリーは同情しつつ、彼女は所長としての責務を果たす。

 

『こほん。サーヴァントの方々。まずはお礼を言います。私たちを助けてくれてありがとう。それでいきなり質問になるのだけれど、貴方たちは何者? マスターはいないようだし…… こっち側のジャンヌもそうだったけど魔力供給もなしでどうやって現界しているのかしら』

 

 サーヴァントはマスターから魔力を供給してもらうことによって仮初めの肉体を保ちこの世界に現界することができる。

 しかしジャンヌも彼ら四人もマスターはおらず、それぞれ独自にこの世界に現界している。それは一体どういうわけか。

 

「それは単純なことだよ。僕たちは聖杯に呼ばれてこの世界に召喚されたんだ」   

 

 黒服の男、アマデウスと呼ばれた彼が答えた。

 その答えにオルガマリーは目を丸くする。

 

『聖杯に直接!? ちょっと、ロマニ! そんなこと本当にあるのかしら?』

『か、可能性は捨てきれませんね。今はこの異常事態ですし、そういったイレギュラーは起こる、かもしれません。たぶん』

 

 ロマニの返答は煮えきらないものだが無理もない。なにせ前例のないことなのだから。

 

「難しいお話は終わったかしら? だったら皆自己紹介をしましょう! ええ、それがきっといいわ!」

 

 姫のような雰囲気を感じさせる女が手を合わせ、にこやかに言った。

 

「自己紹介っていうけどさ。君、さっき僕の名前を流れるように明かしちゃっただろ。まあいいんだけどさ。僕の名前はアマデウス。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。クラスはキャスターさ」

 

 アマデウスがフルネームとクラスを明かすと、それに続いて三人のサーヴァントも名を名乗った。

 

「次は私ね。エリザベート・バートリー。クラスはアイド…… ランサーよ」

「清姫と申します。クラスはバーサーカーです」

「わたしはマリー・アントワネット。クラスはライダーよ」

 

 明かされた真名はどれも有名なもの。オルガマリーも流石に面食らう。

 

『こりゃまた有名な名前が出てきたわね…… それにエリザベードに清姫って…… ちょっとロマニ、この二人は大丈夫なんでしょうね』

『だ、大丈夫です。多分、きっと、信じてる!』

『全然、説得力ないじゃないのよ!』

「全て聞こえているのですが』

 

 何やらオルガマリーとロマニが騒いでいると、清姫がにこやかに笑みを浮かべながらも、笑ってない瞳で睨みつけてきた。

 その様子を見て、銀時がマシュにこっそりと聞いてみる。

 

「え、なに? あの二人組そんなヤバい奴なわけ? まあ確かに一人は女版ジャアインみたいな感じだけど」

「深く話をすると長くはなりますが…… 簡潔に言うとエリザベートさんはディオ・ブランドーで清姫さんは伊黒さんです」

「無駄無駄── って違うぅぅ!! 全然違うわよ! そう、(アタシ)は言ってしまえばアイドル!」

 

 意外とノリがいいのかエリザベートは拳で空を切り、ツッコミを入れた。

 

「嘘はいけませんよ」

「嘘じゃないわよ! ちょっ、火を吹こうとしないでよ!」

「信用しない信用しない。そもそもエリザベード・バートリーは大嫌いですので」

「アンタ、まじで伊黒さんなんじゃないの!? というか嫌いの対象が私限定じゃないのよ!」

『なんか…… 大丈夫そうね』

 

 わーきゃーと騒ぎ始めた二人を見てオルガマリーは呆れながらも安堵する。

 オルガマリーの緊張が消えたのを察したのか、今度はアマデウスが銀時たちに問いかけた。

 

「とまあこちらはそんな感じだよ。次はそちらの事情と状況を聞かせてくれないかい?」

『それもそうね。ただし、聞いた以上は協力してもらうわよ。こっちはただでさえ戦力に乏しいのだから』

 

 比較的常識のある二人は互いの持つ情報を共有しあっていく。

 

 

 

 

 

 

「なるほど…… 事情はわかったよ。異常事態はフランスだけじゃなかったということか」

「ますます負けていられないわね! でしょ、アマデウス」

「そうは言うが現実的ではないね。さっきも言ったがカルデアの戦力は乏しく、僕たちも決して強いサーヴァントではない」

 

 マリーがやる気十分と息巻くがアマデウスは冷静に返した。

 竜の魔女は多数の戦闘向きであろうサーヴァントを従え、多量のワイバーンまで従えている。

 確かにこのままでは勝つことは難しい。各々がどうすべきかと考えていると真っ先に手をあげたのはジャンヌだった。

 

「やはり戦力を増やす必要があるでしょう」

「なるほど…… マリーさんたちが聖杯に喚ばれた以上、他にもサーヴァントがいるかもしれません」

「仲間集めはジャンプ漫画の基本だ。俺も賛成だが…… フランスつっても広いんだろ? 仲間になりそうなサーヴァントがどこにいるかもわかんねーし、ジャンヌ大魔王も狙ってんじゃねーのか?」

「だ、大魔王? え、ええ。そうですね。だからこそ、あまりモタモタしてはいられません。彼女に倒される前にサーヴァントを見つけなければ」

 

 銀時が勝手につけた竜の魔女のあだ名に、ジャンヌは面食らうも彼の懸念に頷く。

 フランスで起きている惨劇を止めるために、彼らは急いで仲間を集める必要がある。

 とはいえ、休息は必要だ。いざとなった時に体力がなくては話しにならない。

 今日のところはここをキャンプ地とし、食事をとろうと準備を進めることにした。

 

 

 

 

 

 テントがはられ、カルデアから持ち込んだ材料や川魚を使い料理が作られていく。

 キャンプの準備が終わるとマシュはテントで休んでいた銀時へと声をかけた。

 

 

「先輩、食事ができたので食べませんか? なんとあの清姫さんが料理を作ってくださったのです」

「ええー、清姫ってあの蛇女のことだろ。料理って蛇の蒲焼きとかじゃねーだろうな」

 

 テントから出た銀時はぶつくさと文句を言う。

 

「あら、申し訳ありません。蛇なのでヌルッと手が滑ってしまいました」

 

 バッシャン!! 

 

 清姫の持っていたシチューが銀時の顔面にぶち巻かれた。あまりの熱さに銀時はその場で悲鳴を上げて倒れた。

 

「ギャアアア!!」

『今のは銀時が悪い』

「さあご飯にしましょう。マシュさん、配膳の手伝いをよろしくお願いします」

「は、はい。清姫さん」   

 

 通信越しにオルガマリーから冷ややかなツッコミを受ける銀時を尻目に二人はアマデウスたちの元へと行く。

 騒がしくも楽しい夜が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 清姫特製の豪華絢爛な食事を囲み、銀時たちは休息をとっていた。

 

「モグモグ…… このシチュー、とても美味しいですよ、清姫さん! クリーミーで味のバランスも整っていてパンにとてもよく合います」

「お褒めいただき恐縮です、マシュさん。いつか出会う理想の旦那様(ますたぁ)の為に家事力の向上を心がけていたので。料理に関してはかなりの自信があります」

「家事力向上の前に少しは優しさも向上させろコノヤロー。見ろ、お前のシチューのせいで俺の頭が濁った白髪になっちまったじゃねーか」

 

 まんざらでもないと自信満々の顔で言う清姫に銀時が文句を垂れる。

 

「貴方の頭が白いのは元々じゃないですが…… そんなひねくれたことばかり言っていると、毛髪だけでなく脳みそまで捻れていきますよ」

「んだコラ! 言っとくけどな俺の頭はアニメではクルンクルンだけど実写だと程よい感じにカーブしてんだよ! お洒落頭なんだよ!」

「落ち着いてください、先輩! 実写の方はイケメン俳優の方なので総合的に見て天パがお洒落に見えているだけです!」

「それ俺がイケメンじゃないってことじゃねーか!」

「はいはい。そこまで。じゃれ合いは後にして今は敵についての情報を共有しようじゃないか」

 

 微妙に一触即発な雰囲気になりかけたので話題を変えようとアマデウスが話を切り出した。

 しかしマリーがまったをかける。

 

「もうアマデウスったら。今は楽しい食事中よ」

「そう言うなよマリア。僕は音楽家だから戦闘についてはからっきしだが、戦いにおいて情報が武器となることは知っているよ。だならこそ情報の共有は必要なはずだ。それにそんな長い話になるわけでもないしね」

『こちらとしても、ハフハフ、ありがたい、ハフハフ、わ。敵にハフハフ、ついて何かハフハフ、知っていることがあるの?』

 

 管制室にて。料理長であるおばちゃんの特性カレーライスを食べていたオルガマリーはアマデウスの提案に同意した。

 ちなみにロマニやダヴィンチ、その他スタッフたちも食べている。   

 

「いや、なにカレー食ってんの!? 話してるとき位、皿置けや!」

 

 珍しく銀時がまともにツッコミを入れた。

 

『うっさいわね。あんたは私たちが座って指示出してるだけだと思ってるだろうけど、想像以上に体力と精神を使うのよ。こっちだって食事とらなきゃ、やってられないわ』

『そーそー。所長の言うと通り。あ、おばちゃーん! デザートのイチゴパフェお願い』

 

 カレーを食べ終えたロマニがデザートを所望する。

 

「イチゴパフェだとおォォ!! おばちゃーん! 俺の分も残しておいてくれ!」

『あんた糖尿病寸前だからダメだよ! 代わりにカボチャの煮物作っておくから食べな!』

 

 おばちゃんの返答に、ちくしょおォォォォ!! と膝をつく銀時。

 そんな彼のことは放っておいて話は続けられた。

 

「それで敵についてのことなんだが、少なくとも敵サーヴァント二騎についての情報は知っている。まず一騎、敵セイバーについて。敵セイバーの真名はシュヴァリエ・デオン。僕らと同時代の英霊であり生前のマリアとも面識ありだ」

 

 

 『シュヴァリエ・デオン』

 

 フランス王家に忠誠を誓う白百合の騎士。十八~十九世紀の人物。ルイ十五世が設立した情報機関「スクレ・ドゥ・ロワ」のスパイであり軍所属の竜騎兵連隊長を担っていたとされる人物である。

 

「そしてもう一騎。敵のアサシンに関してたが── これはエリザベードに話をしてもらった方がいいだろう」

「そう、ね。敵のアサシンの真名はカーミラ…… いえ、エリザベード・バートリーよ」

「は? お前何言ってんの。もしかしてジャンヌと同じピッコロさん?」

「違うわよ! カーミラは言ってしまえば、私の未来の姿。同一人物なのよ」

 

 ナメック星人扱いをしてくる銀時にエリザベードは怒鳴る。

 英雄の魂が記録されているとされる英霊の座には時間の概念が存在しない。故に同じ時代に同じ英雄が別側面の形で召喚されることもある。

 

『なんと言うか…… 頭が痛くなる話ね。敵の真名を知ることは大きなアドバンテージであるわけだけど、今の話を聞くと、結局相手にもこちらの真名がバレてるわけだし。状況はあまり変わらないわね』 

「それにしても不思議ですね…… 因縁のある方が多い」

「聖杯がそういった者をカウンターとして喚んだのかもしれません」

 

 マシュの疑問にジャンヌが答えた。

 

「僕らの知っている情報はこんなもだ。さて考えるのはここまでにして、いい加減、食事を再開しよう」

 

 情報共有は大事だが、あまり長話になれば、せっかくのシチューが冷めてしまう。 

 食器を手に取り、食事を始めようとしたその時──

 

『皆! すぐ近くまでサーヴァントが迫っている! それも三騎だ!』

 

 ロマニからの突然の凶報。楽しい食事は再び中止され、彼らは戦いを余儀なくされる。

 

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