Fate/Silver Order -選ばれし48人目のマスターは銀髪侍- 作:天パ男
『人理継続保障機関・カルデア』
魔術だけでは見えない世界、科学だけでは計れない世界を観測し、人類の決定的な絶滅を防ぐために成立された特務機関。
ここはそのカルデアであり、現在とある理由により世界各国から選抜された48人のマスター適正者と呼ばれる者たちが集まっている。
いや、正確には48番目のマスターはまだ選ばれてすらおらず、数合わせの一般枠候補を探している最中ではあるが。
「── とまあ、大雑把ではあるがカルデアについて現在君に話せることはこれだけだ。さて、他に質問はあるかね。坂田銀時君」
「質問、ねぇ。まあ聞きてーことは山程あるんだが、その前に……」
「ここから俺を出せえェェェ!! 俺は無実だぁぁ!! こんな所に二週間も入れやがって。俺は動物園のゴリラじゃねーんだぞォォ!!」
「お、落ち着きたまえ! あまり騒ぐと……」
ビリリリリリ!!!
「アバババ!!!?」
「電気ショックが走って…… 遅かったか」
全身は黒焦げ、天パもチリチリアフロへ変わってしまった哀れな銀時を見て、レフは帽子を目元まで深く被った。
ゲホッと口から黒い煙を出し、大の字に倒れた銀時は己の不幸を呪った。
銀時は現在、見えない壁に囲まれた不可思議な牢屋に閉じ込められた挙げ句、木刀を奪われ、二週間もの間、尋問や身体検査を受けさせられていた。
少女に拘束しなければいけないと告げられた数分後、直ぐ様駆けつけて来たここの職員と思われる者たちに捕縛され、ここに入れられたわけである。
正直、腰に提げた木刀で反撃すべきかと思いはしたのだが、それは悪手だろうと止めた。
ただでさえここが何処かわからないのだ。一時のテンションに身を任せ、職員を薙ぎ倒したとしても、行く先もわからずに路頭に迷う可能性があった。それに銀時への悪印象が強まり、いよいよ、弁解の余地がなくなってしまう。
ならばいっそのこと、ここは素直に従ってやろうと思ったのだ。
結果、銀時は魔術によって出来た結界型の見えない牢屋に閉じ込められることになった。
しかし正直に全てのことを話す銀時に対し、どういうわけか職員たちは怪訝な顔をし始め、より危険人物として扱うようになっていた。
「たくっ。こんなことなら無理矢理にでも逃げた方がよかったか…… 例えば、ここの所長でも人質にとって」
「どこの誰を人質に取るですって、侵入者?」
銀時がボソッと物騒なことを言うと同時、部屋に一人の女性が入ってきた。
少し癖っ毛のある銀髪ロングヘアーをした女性は金色の瞳で銀時をジロリと睨む。どうやら彼のボヤキは聞かれていたようだ。
「おー、誰かと思えば部長じゃないすか。いやだなー、人質なんて冗談すよ、冗談」
「誰が部長よ! 私の役職は所長! ここのカルデアの全ての管理と責任を任された所長であり…… あ、ヤバい。自分で言ってて胃が痛くなってきたわ」
「だ、大丈夫かい。オルガ」
ここの責任者を語る女性の名はオルガマリー・アニムスフィア。
この二週間の間で既に何度も顔を合わせている人物の一人だ。
「大丈夫よ、ありがとうレフ。それよりも、この男から何か新しい情報は得られたのかしら?」
「いや、それについてだが、まだなにも。彼の正体は未だ掴めずだ」
「おーい、なにコソコソ話してんの? よくないよー、目の前に本人いんのにさ。言うぞ、先生に陰口叩かれましたってチクるぞ! まあ先生っつっても沖田くん擬きのモヤシしかいねーけどよ!」
茶々を入れる銀時にもう慣れっこなのか、二人は完全にスルーし、話を続ける。
「そう…… 全く! こんな忙しい時期に、とんだイレギュラーだわ!」
「気持ちはわかるが、オルガ。そう、イライラしていては余計胃に負担が来る。坂田銀時君に関しては私やロマニに任して、君は自分の業務に集中した方がいい」
「そういう訳には…… いや、わかったわ。貴方の言う通りよね。いつもありがとうレフ。しばらくは貴方に任せるわ」
オルガマリーは一瞬躊躇ったが、レフの厚意に素直に甘えることにした。
そんなオルガマリーを見て銀時は懲りずに茶々を入れる。
「なんだ、コラ。俺には冷てーくせに、そこのタワシ野郎には随分優しいじゃねーか。アレか、そういう感じのアレなのか? 卒業と同時に伝説の樹の下で落ち合うような関係か、赤井ほむらさんよ」
「誰がときメモ2の生徒会長だァァ!! 所長だっつってんでしょーが、この腐れ天然パーマ!」
「オ、オルガ……」
「はっ!? お、オホン…… 私の役職は所長よ。ちゃんと覚えておくように。そ、それじゃあ、後は任せたわ、レフ!」
普段とは違うオルガマリーのツッコミぶりにたじろぐレフ。
オルガマリーはレフの反応に気づくと、咳払いをし、慌てて部屋を出ていった。
「君が来てからまだ二週間だが…… いやはや、ある意味凄い能力だよ。オルガがあそこまで自分をさらけ出すとはね」
どうにも銀時という男は周囲の人間に大幅な影響を与えてしまうようだ。
まさかあのオルガマリーがあんなツッコミをするとはとレフは驚きを通り越して感心してしまう。
「能力って、俺はただ普通に話をしてるだけなんですがね、キョン君」
「キョン君って誰? 私の名前はレフだよ、銀時君。ふふ、全く君は人を飽きさせないよ。さて、話を続けようか」
「話って、こっちはテメーの頭の先からケツの穴の中まで全部正直に話したつもりだぜ」
「まあそう言わず、内容を纏めるつもりで話そうじゃないか。君に聞きたいことは、君の出身地、職業や経歴。そして…… 君の住んでいた国の歴史だ」
銀時の語る内容を大雑把に纏めるとこうだ。
出身地は日本の主要都市である江戸。職業は何でも屋を営む万事屋。
真剣は持ってはおらず木刀ではあるが、一応、侍でもある。
そしてレフが最も聞きたかった歴史について。彼のいた国、いや地球では天人と呼称される異星人たちが来訪した。そして様々な思惑が飛び交い、攘夷戦争が勃発してしまう。
戦いは長引くも終結し、それなりに平和な時代が続いたのである。
銀時は、もう既に何度もこの話をレフやオルガマリー、その他、職員にも話をしている。
しかしこの話をしても、
「何度聞いても到底信じられないことだな。はっきり言ってあり得ない」
「ちっ。その反応こそ、何度目だよ。もうこっちは飽々だっつーの」
銀時は心底嫌そうに顔を歪め、その場で胡座をかいて座った。
「飽々している所、申し訳ないが、こちらも同じ説明をさせてもらうとしよう。まず、天人と呼ばれる異星人が地球に来訪した歴史などは存在していない。君の説明から、いた時代を江戸時代末期と仮定させてもらうとしても、来訪したのはアメリカの海軍士官、マシューペリーだ」
「…… ペリーなんてやつ、俺は知らねーぞ」
「その答えも何度目だろうね」
レフは何が面白いのか、フフっと笑う。
それに対し、バカにしてんのかと銀時は益々不機嫌そうに顔をしかめた。
「君と我々の知る世界の共通点は大きく分けて二つ。それは地球と日本国家の存在だ。しかし大きく違うのは天人の存在。我々の人類史においては、異星との接触は叶えられず、人類のみの力で科学を発展させていった。カルデアという魔術と科学を融合させた組織を作り上げる程にね」
「んなこと言われても俺は嘘なんて言ってねぇ。アンタらにとっちゃあ嘘なのかもしれねーが、俺にとってはそいつが現実だ」
銀時は至って真面目だ。ふざけているつもりもレフたちを陥れるつもりも毛頭ない。
だが決してあり得ない。いやあり得てはならない事象を突きつけられてはレフたちも認めるわけにはいかない。
「銀時君…… では君の話を全て本当だったと仮定させてもらうとしよう。しかしそれでは我々は君が第二魔法、及びそれに準ずる魔法を使用した者だと認めなくてはいけなくなる」
「第二魔法…… ? え、なにそれ。FF? ごめん、俺ドラクエばっかやってたから」
「第二魔法、もしくはそれに準ずる力を使用したことを認めれば、君は封印指定を受けるだろう。私が言うのも何だが、ここでの君の扱いは人道的なものだ。だが、封印指定を受ければそうもいかない」
一瞬、レフの細目が開き、鋭く光ったかのように見えた。
「君は体をバラバラにされホルマリン漬けにされるだろう。最早人間扱いなどされることもない。そんな結末は私としても控えたいものだ」
「…… なんだかよくわかんねーが、俺のことを心配してくれてんの? おいおい、俺はそっちの趣味はねーぜ、シャーロットカタクリ」
「いや、誰だい。そのNo.2っぽい名前は…… まあ、安心してくれたまえ。私にもそっちの気はない。ただ本当に心配しているだけさ。君は悪い人間ではないからね。おっと、もうこんな時間か」
レフは壁にかけられた時計を確認する。
様子を見るに、どうやら今日の尋問はこれで終わりのようだ。
「今日はこの辺りで終わりにするとしよう。私はもう行くが…… 銀時君」
「あん?」
「さっきの話の意味をよく考えておいてくれたまえ。我々に何を話すべきなのかを、ね」
それだけ言い残し、レフは部屋を出ていくのだった。
今日の尋問や健康チェックを終え、レフが部屋を出ていった後、銀時は特にやることもなく、牢屋の片隅におかれた簡易ベッドの上でゴロゴロと横になっていた。
そんな時、一人の少女が部屋に入ってきた。
「すみません、お時間よろしいでしょうか?」
「おー、お前か。別にいいぞ。見ての通り、暇だからな」
銀時は体を起こし、少女の姿を確認すると、ひらひらと手をふる。
「ありがとうございます! では失礼します」
少女はペコリと小さく頭を下げると、近くに置いてあったパイプ椅子を寄せて、そこに座った。
「レフ教授からの尋問を受けたばかりでお疲れかとは思いますが……」
「あー、いいって。気にすんな。別に話すだけで疲れはしねーんだし。まあ話聞かせてやる代わりにジャンプの差し入れとかはしてほしいけどな。ここまじでなんもねーし」
「ジャ、ジャンプですか…… わかりました! では後日、必ず用意し、お持ちします。なので、今日もよろしくお願いします。
「マシュ…… お前、本当に真面目なのな」
いつの間にか銀時は少女のことをマシュと呼び、彼女も銀時を何故かはわからないが愛称で『先輩』と呼ぶようになっていた。
実は、この二人がこうして話をするのは、初めてではない。マシュは数日前から、この部屋へ足を運ぶようになったのだ。
彼女は他の職員達程、銀時に警戒心を抱かず、あっさりと『マシュ・キリエライト』と自身のフルネームまで教えてしまっていた。
こうして足を運ぶようになった理由は実に単純なもので、銀時への好奇心によるものだった。
「んじゃあ、まあ、話すか…… て、何処まで話したっけ?」
「はい。前回は先輩の所で働いている志村新八さんがエロメスさんという天人の方と共に、ホテルのような外装をした自宅前まで行く所で終わっていました! それにしてもホテルのような見た目とは…… エロメスさんは裕福な家庭の生まれなのでしょうか?」
「うん、ごめん。お前にその話はしない方がいいわ。つーか、前回の俺、そんな所で切り上げちゃったっけ?」
あまりにも純粋すぎる少女の思考回路に銀時は冷や汗をかいて話を止める。
正直、今まで関わってきた女連中と180度毛色が違うので、接するのが難しいところである。
「そ、そうですか。残念ですが、わかりました」
「ああ悪りいな…… んじゃあ代わりに長谷川さんの絡繰ペットがヤクザの犬とドッキングした話をだな」
いや、結局そっちの話じゃねーかァァァ!!! と何処ぞのメガネのツッコミが入るような邪魔もなく、二人の会話は楽しげに続いていった。
カルデアで銀時に対し、行われているのは、何も尋問だけではない。
身体に異常がないか、何か怪しい点がないか、そもそも人間なのかを調べるため、健康チェック及び、身体検査が行われていた。
軽い健康チェックは毎日行われている。そして銀時の相手をしてくれる医者も同じ人間であった。
「やあ、調子はどうだい? 銀時君」
ポニーテールが特徴的な優男。彼の名前は、ロマニ・アーキマン。カルデア医療部門のトップを務めている。
ちなみに皆からはドクターロマンと呼ばれている。
「よお、先生。そっちも相変わらずモヤシみてーな見た目してんな、ドクターオクトパス」
「僕は親愛なる隣人の敵じゃないよ! ドクターロマンだから!」
「あー、はいはい。ロマン、ロマン」
見えない壁の牢屋越しにロマンはツッコミを入れる。
しかし適当に流す銀時にロマンはこれ以上言っても仕方がないと諦めて、健康チェックを再開した。
正直、このやり取りも慣れっこである。
「その調子だと、特に何もないと思うけど…… 体調に変化などは?」
「ないね。いっそのこと病気にでもかかってキレーな姉ちゃんに看病されたいもんだよ」
「君の担当医は僕だからそれは無理だね。体調変化なし、と。今のところは糖尿病寸前という所を除けば、かなりの健康体だな」
「え? ちょっと待って。俺の糖尿病寸前設定ってここでも生きてんの? おい、ふざけんなよ! ここ来てから、甘いもんなんてデザートのプリンしか食ってねーんだぞォォ!! 完全な設定損じゃねーか、コノヤロー!」
いや、プリン食べてんじゃんと、軽く流す感じでツッコミをしつつ、ロマニは銀時の様子をメモしていく。
後で纏め上げ、報告書をオルガマリーに提出するためだ。
「…… さて、話は変わるんだけど。銀時君」
「あん? んだよ。いっとくけど、俺は蜘蛛のマスクの下が誰なのかは知らねーぞ」
「いや隣人関係じゃなくて、彼女、マシュのことだ」
「マシュ? あいつがどうしたってんだよ」
キョトンとした顔で聞く銀時に、ロマニは困ったように指先で頬をかきながら答える。
「ここ最近、マシュは君の所に話をしに行っているんだろう? 実を言うとそれがうちの所長は、その、なんというか気に入らないらしいんだ」
「はあ?」
「あまり深く説明は出来ないんだけどね。所長はマシュのことが苦手なんだよ」
ロマニ曰く、マシュに対してオルガマリーは強い苦手意識を持っており、悩みの種の一つでもあるらしい。
できる限りはひっそりとカルデアで過ごしてほしいとさえ思っている程だ。
しかしそこに、銀時という劇薬がカルデアに侵入してきた。今まで自分というものを見せてこなかったマシュが好奇心を抱き、銀時へ積極的に関わっている。
オルガマリーにとって不都合な影響がマシュに及ぼされるのではないかと、恐怖を持ち始めているのだ。
「なんだそりゃあ? マシュの何がこえーってんだよ」
「まあ、色々あるんだよ。色々と」
「…… まあいいや。んで、俺にどうしろってんだ? もうあいつと話すなってことか?」
「いや、寧ろ逆だね。所長には悪いけど、今後も君にはマシュと仲良くやってほしい」
ロマニの頼みは意外なものだった。
所長のストレスの原因である筈の二人の接触を今後も推奨しようというのだ。
「おいおい、いいのかよ? それってつまり、所長さんを裏切る行為なんじゃねーの?」
「僕は所長の健康を管理してはいるが、それと同時にマシュの専属医でもある。所長は今回の件を悪影響だと捉えてはいるが、僕はその逆で、いい影響を与えてくれるだろうと、いや既に影響していると僕は思う」
マシュは銀時が来るまでは、積極的に誰かと関わろうとはせず、一人でいることが多かったそうだ。
それが自ら銀時に接触をし、楽しそうに話をしている。
これはマシュにとっては善き成長だと、ロマニは思ったのだ。
「所長には、僕が上手いこと言っておく── というか、意識が逸れるように誘導しておくよ。だから君も、悪いけど、マシュの名前や関連しそうな言葉は所長の前では避けてほしい」
「ま、いいけどよ。別に俺としてはどっちでもいいし」
「そう言ってくれるとこちらとしてもありがたいよ…… これからも仲良くしてあげてほしい」
「そりゃあ仲良くはいいけどよ。はやくここから出せよな」
割りとガチで言う銀時に対し、それは所長次第だからなーと、何処かイラっとする笑顔で答えるロマニであった。
ロマニとのちょっとした密約がなされた次の日以降、レフやマシュだけでなく、何故か。
カルデアの職員、マスター候補たちの何人かが、銀時の元へと出向くようになっていた。
ある日は、騒がしいオカマが。
「あら、やっだァァァ!!! マシュがお熱になってる侵入者がいるらしいっていうから、どんな人間かと思えば…… 中々イケてるじゃないのよォォ!!!」
「いや、あのすいません。ちょっと耳が痛いんでボリューム下げてもらえませんかね?」
「でもあれね。その死んだ魚の様な目がなければ、きっともっとイケメンに…… なーんて冗談よ! 貴方は寧ろ、その目がチャーミングポイントよ! そこが素敵! ああ、やばいわ。私、惚れちゃいそう…… ああ、でもダメよ! 私にはもう心に決めた人が!」
「俺の話を聞けえェェェェ!!」
ある日は、眼帯が特徴的な美女が。
「貴方が噂の侵入者ね…… 一つ聞きたいことがあるわ」
「んだよ?」
「一体どんな汚い手を使ってマシュを懐柔したの! あの娘が貴方みたいな見るからに怪しい人間に関わるなんてあり得ないわ! は!? まさか…… 貴方、あんなことや、そんなことをマシュに!」
「なんの話をしてんだ! 大体俺は閉じ込められてんだから、何もできるわけねーだろ!」
「さあ、聞かせなさい! ボイスレコーダーも用意したから! できるだけ細かく! 特にマシュの反応を──」
「おーーい!! ここの連中は話を聞かない奴らばっかりかあァァァ!!」
ある日は小太りのメガネをかけた職員が。
「実際のところ、半信半疑ではあるんだが。異世界から来たってことを信じるとして、あんたにズバリ聞きたい。異世界には、その、可愛い系の男の方はいるのかな?」
「…… いるよ。歌舞伎町辺りにいっぱい。特に白ふんで有名な──」
ある日は白い小動物が。
「フォウ! フォウフォウ!! フォーウ!」
「いや、何言ってるかわかんねーし…… ん、なに? この紙読めってか?」
「フォウ!」
「なになに…… 『メルブラ参戦よろ』できるかァァ!! お前は一生スマホ端末に引きこもってろ!!」
そしてある日は、銀時と同じく銀色の髪をした若々しい青年が。
「あんたは、なんでここに来た? 何が目的なんだ」
「だーからさ、目的なんてねーよ。俺はいつの間にかここにいただけ」
「…… 本当なのか。異世界から来たって話は」
「よくわかんねーけど、そうらしいぜ。皆、信じてねーけど」
「そうか…… なんだか、マシュの真似事をするみたいだが、今日だけでいい。僕に聞かせてくれないか。あんたの世界での話──」
あのマシュが興味を持った人間だからか、はたまた自称異世界から来た人間だからか。
暇だとボヤイていた筈の彼の元には何故だが、訪問する者たちが徐々に増え、銀時が退屈することはなくなってきていた。
しかし、
「あんの、腐れ天然パーマ~あァァァ!! ぜっっったいに許さないわ! 私の許可もなく、マシュどころか多数の職員やらマスターと密会するなんて!」
ついにそのことがオルガマリーの耳に入ってしまった。自分の知らぬ所で勝手なことをしまくる連中に怒り心頭な彼女は、ずんずんと足音を鳴らし額に青筋を浮かべて、銀時のいる部屋へと向かって歩く。
その様子を見た職員たちは、さっと道を開けた。
誰に止められることもなく、部屋の前に辿り着くと、オルガマリーは、まずは深呼吸をし、
「クォラァ、この侵入者があァァァ!! 今日こそ、勝手は許さな── って、なによこれえェェェェ!!?」
扉を開けて勢いよく入ったはいいのだが、目の前のあり得ない光景にオルガマリーはシャウトした。
そこには、
「行きますよ先輩! 最後の切り札です!」
「うぉぉ!? 俺のマリオが……」
「僕のカービィ、巻き込まれたんですけど!?」
「油断したな! セフィロス使いの力見せてやる!」
マシュ、そして数名のカルデア職員たちが、銀時と共に通信でスマブラをする姿があった。
「あ、あなた達、いったい何をしているのよ!!」
「っ!? や、やべぇ! 先公だ! 隠れろ」
「おい、火を消せ!」
「誰が先公だ!? なんで修学旅行みたいな雰囲気になってんのよ! お前らさっさと出てけ、そして仕事しろおォォォ!!」
何故か、急に先生が来て慌てる修学旅行生の真似事をする職員たちを怒鳴り、部屋から追い出す。
職員たちは、ヒーッと悲鳴を上げながら牢屋を走って行った。
「あ、あの所長! これはですね……」
「マシュ!」
場に残ったマシュが、怒るオルガマリーを宥めようとするも、言葉は遮られる。
「今後、この侵入者との接触を禁止にします! 決して近づかず話などしないように。これはあなたに対する、所長としての命令よ」
「で、ですが…… いえ、わかりました。もう、ここには来ません」
一度は反論しようとするも、顔を俯かせてオルガマリーの命令に応じる。
「所長さんよぉ。そいつはぁ、いくらなんでも横暴──」
「部外者は黙ってなさい! いいかしら? 侵入者。私たちは人類の未来の為にこのカルデアにいるの。あなたのような人間と馬鹿みたいに遊んでる暇なんてないの! ほら、行くわよ。マシュ」
「はい。所長……」
マシュは決して銀時へと目を合わせないよう、俯いたまま、オルガマリーに連れられ部屋を出ていった。
そしてこれ以降、レフやロマニ以外に銀時の元へ訪れた者はいなかった。
ある一人の男が現れるまでは──
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