Fate/Silver Order -選ばれし48人目のマスターは銀髪侍-   作:天パ男

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人の恋路を邪魔するやつは蛇に燃やされてしまえ

 リヨンでついにジークフリートを仲間にした銀時一向。

 しかし素直に喜べる状況でもなかった。

 何故なら、

 

「まずいわね…… 私の力だけじゃジークフリートの傷は完全に癒せない」

「手を煩わせてしまい、本当にすまない…… だいぶ楽にはなった。が…… やはりまだ本来の力を出すことが出来ない」

 

 ジークフリートの手当てを行っていたマリーはお手上げと治療を止める。

 どうやらジークフリートが負った傷はただの傷ではなく呪いによるものとのことらしい。

 これを完全に治すには聖人二人の力が必要だ。ジャンヌは聖人であるため一人目はクリアだが、

 

『もう一人の聖人が必要になってくるわね…… マルタはもう消滅してしまったし、いったいどうすれば』

 

 オルガマリーがどうするかと頭を悩ませているとロマニが問題はないと説明を始めた。

 

『これは恐らくですが…… 敵側に聖人が召喚されている以上、聖杯がカウンターとして味方となる聖人を召喚していてもおかしくはないはず』

「成る程。ですがこの広いフランスの中からどうやって探しだしましょう。ジークフリートさんは手がかりがあったからこそ見つけ出せたわけですが、もう一人の聖人に関してはそうもいきません。何もヒントのない状態で探すとなると…… 時間がかかります」

 

 マシュの懸念は当然だ。時間がかかればかかるほど竜の魔女の魔の手はフランス中に広がっていく。

 それどころかもう一人の聖人を先に見つけ出され消されることもあり得る。

 

「手分けして探すのはどうでしょう。現在フランスはその半分を竜の魔女に征服されています。敵の領域を除外し、その上で手分けして探せば効率よく見つけ出せるかもしれません」

「ま、それしかねーか」

 

 ジャンヌの提案に銀時たちは頷く。

 本当は今直ぐにでもと言いたい所だが、既に日も沈みかけているため、彼らはここて休息を取ることにした。

 今回は敵に邪魔されることもなく、ジークフリートも加え、食事を楽しむことができた。

 やがて夜は深くなり、銀時は休息のためにテントの中で睡眠をとり始める。

 その間、睡眠の必要がないサーヴァントたちは見回りを行っている。

 マシュは純粋なサーヴァントではないので、睡眠が必要なのだが、中々眠ることが出来ず、テントの前に座って星空を眺めていた。

 そこにマリアが来てマシュの隣に座る。

 

「お隣、よろしいかしら」

「あ、はい。構いません、マリーさん」

「ふふ。そんなに畏まらなくても大丈夫よ。マシュはどうしたの? 星を眺めていたのかしら?」

「はい。この時代に来るまで星、いえ自然に触れたことはなかったので。こんな時に不謹慎とはわかっているのですが…… つい、綺麗で見惚れてしまって……」

 

 恥ずかしさと申し訳なさにマシュは顔を伏せてしまう。

 

「あら。不謹慎なんてことはないわ。自然を綺麗と思うのは当然のことだもの。誰だって恋をすれば見惚れてしまうものよ」

「こ、恋ですか? この場合は自然が相手なので恋愛的感情はないと思うのですが……」

「あらそんなことないわ。どんな物でも美しいと思えば人は心を奪われてしまうものよ。それを恋と言うのではないかしら? それとも他に意中の方でもいるの!?」

「え、そ、それは……」

 

 目をキラキラと輝かせてマリーは顔を寄せてきた。

 こういったことに慣れていないマシュは目を泳がせてマリーから顔を背けてしまう。

 

「いいわね、恋バナ! まるで女子会みたい。そうだわ。女子会をしましょう。女の子皆を呼んで!」

「え!? あ、あの私は……」

「それじゃあ呼んでくるわね!」

「マリーさん!? 話を聞いてほしいのですが!」

 

 

 

 

 

 

 

「…… それでこんな時に女子会ですか?」

「そんな怖い顔をしないで、清姫。ほらせっかく皆揃ったのだし」

 

 テントの前にはマシュやマリーの他、清姫にジャンヌ、エリザベードもいる。

 

「能天気すぎる…… と言いたいところですが恋バナとなれば話は別です! 私、恋には深い造詣がありますから」 

 

 意外にも乗り気だったのか清姫は声を弾ませた。

 しかしマシュは冷ややかである。

 

「あの、申し訳ないのですが、女子会といったことは初めてで、どう話せばよいのか、わからないのですが」

「ノン! 大丈夫よ。女子会は楽しく話すだけだから。それじゃあまずは、エリーから話してくださらない? 生前の恋の話とか」

「そ、そうね。生前…… は結婚してたけど、今のアタシはその前の姿だから、あまり実感が沸かないし。あ、でも一度だけあったような気がする…… ここじゃない何処かで……」

 

 最初に話をふられたエリザベートは照れ臭そうに頬を赤く染め上げながら話した。

 それに触発されたか、清姫は積極的に手を上げる。

 

「では私もお話ししましょう! 生前、正に燃えるような恋をしました──」

 

 

 

 昔々、安珍という旅の僧侶がございました。

 

「あー疲れた。大分歩いたしよぉー。もう足もガクガクの小鹿ちゃんだよ。疲労は貯まっていくのに巾着(財布)の中身は空になっていく一方だし。あーあー、こんなことだったら馬でも買えば良かった…… ああ、金がないんだった」

 

 死んだ魚のよう目をした安珍は、一人でボヤキます。

 

「疲れたし、宿で休みてーが…… 金ねーしなー。どーっすっか…… あっ」

「あっ」

 

 ボヤいていた安珍は下着を頭に被った変態のオッサンと出会います。

 その時、向こうから下着泥棒よぉぉ!! という女性の声が聞こえてきました。

 

「……」

「……」

 

 その後、なんやかんやあって、安珍と変態のオッサンは仲良くなりました。

 変態のオッサンの正体は、村の事務を統轄する庄屋でした。

 安珍は庄屋さんのご厚意により、無料で家に一晩泊めてもらうことになりました。

 

「何日でも泊めてあげるからまじで黙っててくれよ。まじで頼むよ。本当まじで」

「おいおい。俺とお前の仲じゃねーか。心配しなくても俺の口はマーライオンの如く固いよ」

「全然安心できねーよ! 口、開きっぱなしじゃねーか! つーか時代背景考えてボケろや!」

 

 色々いざこざもあるにはありましたが、悪いことばかりではありません。

 この家の一人娘、清姫と彼は互いに惹かれ合うこととなったのです。

 

「ああ安珍様。私は貴方様に心を奪われてしまいした。どうか私の側に居続けてくださいませ」

「おいおい。お前、アレだよ。俺めっちゃ束縛するからね。異性と会うのも許さないからね。1日三回メールしてもらって、週に二回は部屋を掃除してもらうよ。水星の魔女も真っ青の青い彗星になるよ」

「構いません。私はあたなと生涯を共に致します。邪魔をする者がいれば平手で潰します」

「へ、へー……」

 

 正直、安珍は気が乗りませんでした。

 清姫は安珍からしてみれば、子供と変わりません。それに安珍は積極的な女性はタイプでなかったので、ますます気が乗りませんでした。

 なので適当に嫌われそうな言葉を言ったり態度を取ったのですが、それでも清姫は彼を愛しました。

 そんな二人はしばらくの間、わかれることとなります。

 安珍は旅の僧侶。それ故、いつかは出ていかなければならないからです。

 安珍は必ず再開すると約束し、旅に出ていきました。

 

「安珍様…… ああ早く会いたい」

「たくっ。やっとあの甘党出ていったよ。塩巻いとこ」

 

 後ろで塩を巻く父のこと等気にも止めず、清姫は安珍のことを思い続けました。

 しかし一向に安珍は帰ってきませんでした。

 いったい何故と清姫は悲しみました。しかしどれだけ涙を流そうと名を叫ぼうと安珍は来ませんでした。

 それもその筈。安珍は家に戻るつもりなどなかったのです。

 清姫との約束を破り、彼は旅を続けました。

 当然、初めから安珍に恋心などなかったからです。彼は清姫を恋に恋するような子供としか思っていませんでした。

 自身への愛など年月と共に忘れていくだろうと。

 惹かれ合うなど清姫の思い込み。

 しかし憎悪と悲しみに包まれた清姫はそのことに気づきませんでした。

 

「許さない許さない許さない許さない許さない──── プツン」

 

 清姫の中で、何かがキレました。

 

「安珍様あァァァァァ!! 今、行きますわよおォォォォ!!」

 

 清姫は裸足のまま、家を飛び出し、安珍を追いかけました。

 走り続けていくと安珍の姿が見えました。

 

「あーあー。あそこで止めておけば…… 博打の女神はいつになったら俺に微笑み…… ん?」

「安珍様あァァァァァァ!!」

「…… なんかヤバそうな感じが……」  

 

 流石に清姫が危険だと察した安珍は急いで逃げました。  

 

「ぬおおおお!! このままじゃ殺られる!! 逃げれば一つ? 知るかあァァァ!! こちとら命は一つなんだよおォォ!!」  

 

 しかし清姫も追います。すると清姫の体は段々と変化していきました。

 大きな口、長い舌。真っ白な体色に硬い鱗。

 そう。彼女は大蛇に、竜種となったのです。

 決死の思いで安珍は逃げました。たどり着いた御寺。そこで鐘を安珍は鐘を見つけました。

 

「はあはあ。いったい何が起きてやがんだ。ん? そうだここに隠れれば……」

 

 安珍は鐘を下ろし、体操座りで入りました。 

 それをバッチリ見ていた清姫は火を吹き、鐘を炎で包んだのです。

 

「安珍様あァァァァァァァァァ!! あい! して! まーす!」

 

 こうして安珍は業火に焼かれて死んでしまったのでのす

 

 

 

「と、いう話です」

「「「…………」」」

 

 これじゃない!!

 と清姫以外の女子は頭を抱え、心を一つに叫んだ。

 

「いや、なによ、この恐ろしい話! これの何処がコイバナよ! もっとポップでキュートなのにしなさいよ! ていうか安珍、なんか凄い既視感あったのだけれど!? 誰かに似てない!?」

「失礼な!! 逃げ惑う安珍様はキュートでしたわ!! それに安珍様は唯一無二! 誰かに似てる等あり得ません!」

 

 喧嘩を始めた清姫とエリザベートは放っておくことにしてマリーが話を続ける

   

「じゃあ次はジャンヌね。生前になにか恋したことはある?」

「そう、ですね。当時の私は、髪が短かったので、男っぽい扱いを受けていました。なので恋はありませんでした。でもとても楽しかった…… 友人と山や畑を駆け回り、平和な日々が続いてた。本当に素敵な日々」

「そうね。とっても素敵だわ…… でも恋をしないのは勿体ないわ! 貴女もせっかくサーヴァントとしてこの世に現界したんだから恋をしなきゃ!」

「あはは…… まあ機会があれば。そう言うマリーはなにかありますか?」

「ええ、勿論! 私は七歳の頃、プロポーズをしてくれた男の子に恋をしました」

 

 マリーは少し恥ずかしく照れ臭そうに、でも嬉しそうに語る。

 

「シェーンブルンでの演奏会で私たちは出会った。床に滑って転んだ彼に私は手を差し出したの。そしたら『ありがとう素敵な人。もし貴女のように美しい人に結婚の約束がないのなら、僕が最初でよろしいですか?』と言ってくれたの。物凄くときめいたわ!」

「凄い話です! これが女子会…… なんだか心臓がドキドキします」

「い、言いたいことはわかるのですが、マシュ。心臓ではなく、胸と言った方が…… あ、というか、マシュは何かないのですか?」

「私、ですか? そ、それは、その……」

 

 ジャンヌの問いに、自然とマシュの目がテントへと向けられた。

 それに気づいたエリザベートは清姫との喧嘩を止め、ニヤニヤと笑い出す。

 

 

「なになに!? もしかしてマシュの意中の相手って!」

「ち、違います! いえ、間違いではないのかも…… ああいえ違います! 私は恋がなんなのかよくはわかりません。確かに本を見て学びはしました。本を見て学ぶことはあっても体験したことはありませんでした。だからそれが実際にどういったものなのか。体にどんな変化をもたらすのか…… 何もわからないんです」

 

 マシュは顔を俯かせる。

 

「先輩のことは尊敬しています。先輩の側にいたらとても癒されます。先輩と一緒にいたい。そう思います。でもそれが恋なのかはわからない」

「そう、ね。マシュ、それもきっと── いえ。私が何か言う必要はないわね。いつかわかるはずだもの」

「え?」

 

 マリーがこの気持ちに対して答えをくれるのではないかと期待していたためマシュは驚く。

 

「貴女たちはいつも側にいる。このフランスでの旅が終わってもそれは変わらない。だからきっとわかる時が来るわ」

「そうでしょうか……」

「ええ、きっとそうよ!」

 

 本当にわかる時などくるのだろうか。そもそも自分に恋をする資格などあるのか。

 マシュは更なる疑問を持つことになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「なんか凄い騒がしくて眠れないんですけど」

 

 テントの中で銀時は横になりながらも眠れずにいた。

 ゴロゴロと転がりながら映像越しにダヴィンチの話を聞いている。

 

『まあそう言うなよ。せっかくの女子会。マシュにはいい経験だ』

「いい経験ね。俺には悪影響にしか思えねーよ」

『悪影響だって悪いことじゃないさ。第一君と言う悪性の塊みたいなのと一緒なんだ。今さらだろう?』

「はっ。それもそうだな」

『それはそうと、君、ちょっとばかし無茶しすぎだな。サーヴァント相手に戦おうとするわ、土壇場で契約を結ぶわ。慣れさえすれば多数の契約も可能になるとはいえ、あんな無謀な賭けに出るのはいただけない』

 

 ダヴィンチは柄にもなく、説教交じりに言う。

 だが銀時は特に気にした様子もなく、

 

「そういう性分でね。体がボロボロになるなんてしょっちゅうだ。俺はドSだが、どうやらMっ気の素質もあるらしい。生まれてから今日までこんなんばっかだよ」

『成る程ね。体を痛め付けることには慣れていると…… でもそれはいけないよ』

 

 ほんの少し。ほんの少しではあるがダヴィンチの声色が厳しくなった。

 

『君は一人じゃない。私やロマニに所長。マシュがいる。それにカルデアのスタッフたちが。自分自身を傷つけるということは仲間の心をも傷つけるということだ。本当は言われなくとも、わかっているんじゃないのかい?』

「…… さあな。ただ一つ言えることは、俺は何も失いたくねえのさ、もう二度。だからこそ俺は一人になろうとした、だが……」

 

 思い浮かぶのは江戸の仲間たち。新八、神楽。たくさんのバカたちの顔。

 

「いつの間にか俺の周りには色んな奴がいた。どいつもこいつも可愛げのねえ、憎たらしいバカども。だが俺も悪食でねぇ。そういう連中といるのが癖になって、離れようにも離れられなくなっちまってた」

 

 時には反発しあうこともあった。それでも最後には必ず彼らがいたのだ。

 銀時の周りにはたくさんの人がいた。

 

「だから諦めた。俺はまた大事なもんを失わない為に体はってやるってな。ああけど安心しろよ、ダヴィンチ。俺が大事なのは俺とジャンプと糖分。その次に江戸の連中とお前らだ。間違ってもテメーの命引きかえに世界救うようなバカは、しねーよ。いざとなったら人理のことなんざ放っといてマシュ抱えてトンズラだ」

『人類の未来を放っておいてトンズラ!? いいね! それはとんだ笑い話、いやロマンスってやつかな? 女子会しているマリーアントワネットたちに聞かせたら話が盛り上がりそうだ』

 

 ダヴィンチは思いもよらない銀時の発言に笑う。

 

「んなもん、茶化されて終わりだろーが。こういう話は男だけですますもんなんだよ』

『えー。この私の美貌を見て男扱いは酷いんじゃないかい?』

「美貌もなにも男だろーが。お前は…… ふぁー、流石に眠くなってきたな」

『おっとそれはよかった。少しでも睡眠をとって体を休めるといい』

 

 何気ない二人の会話は終わり、銀時は静かに目を閉じたのだった。

 




 fgoの本編更新が楽しみすぎて、かなりヤバイです。
 そういえば皆様はニトクリスオルタガチャを回したでしょうか?
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