Fate/Silver Order -選ばれし48人目のマスターは銀髪侍-   作:天パ男

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 二部七章良かった……
 出てくるキャラクター、全てが良かった…




フランス・オレルアン

 

 かつての王はおらず、城の玉座に座るのはもう一人のジャンヌ・ダルクである竜の魔女。

 そして竜の魔女の前に立ち並ぶのは人間の兵士ではなく、英雄でありながら理性を奪われ虐殺を繰り返してきたサーヴァントたち。

 竜の魔女の元に集まったのは7騎のサーヴァント。

 バーサーク・セイバー シュヴァリエ・デオン

 バーサーク・ランサー ヴラド三世

 バーサーク・アーチャー アタランテ

 バーサーク・アサシン カーミラ

 二人目のバーサーク・アサシン シャルル=アンリ・サンソン

 

 そして純粋な狂戦士、バーサーカーに唯一狂化を受けていないキャスター、ジル・ド・レェ。

 彼らは主人の命令を静かに待つ。

 

「………… こうして見ると、ずいぶんと様変わりした者がいますね」

 

 7騎の内、3騎。

 デオンとアタランテ、そしてサンソンのことだった。

 彼らからは英雄としての威光は最早感じられない。

 目は虚ろで口も開かず、ただ黙ってそこに立っている。

 

「これだから、英雄というものは度しがたく使い勝手が悪い。まあ、いいです。寧ろ下手な感情がない方が、殺戮兵器として都合がいい。ジル」

「おお、ジャンヌよ! 何なりとご命令を!! ジャンヌが望むというのならば我々は全てを尽くしましょうぞ」

 

 ジルは待っていましたと言わんばかりに、大袈裟に振る舞う。

 

「私が望むもの。そんなものは決まっています。フランスを血で染め上げること。そしてそれを邪魔する者どもを消すこと。ジル、既に来ているのでしょう?」

「はい。ジャンヌの言う通り、奴等は攻めて来ています」

「そう。奴は、片目の男はどうしたの? ファントムが返り討ちにあってから姿が見えないけれど」

「それが何処を探しても見つからず…… 恐らくですが、既にこの時代には、いないのではないかと」

「ならばいいです。殺せなかったのは腹正しいですが、いないモノは仕方がありません。それよりも望み通り、命令を下します。あらゆる者に殺戮を!! あらゆる者に絶望を!!」

 

 竜の魔女の命令に従い、サーヴァントたちはワイバーンと共に戦場へと飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おらあァァァ!!!」

 

 銀時の礼装に改造された洞爺湖の木刀が、ワイバーンの顔面に抉るように叩き込まれる。

 ワイバーンはたまらず悲鳴を上げて地に伏した。

 

「はっ! テメェらトカゲ共との戦い方にはもう慣れたんだよ! ペラペラに潰すかカットして、遊戯王擬きのカードにしてやらぁ!」

「いや、やっぱ普通マスターってのは前線に出るもんじゃないと思うけどね! まあ、敵が多すぎるこの状況じゃありがたいもんだけど」

 

 ワイバーン相手に引けをとらない銀時を見て、アマデウスは半分呆れ、半分感心したように言った。

 

「とはいえ、無理はしないでください、マスター!」

 

 無茶ばかりをする銀時に、マシュはワイバーンを殴りとばしながら注意した。

 多量のワイバーンから四方八方囲まれている状況。はっきり言って余裕は全くないが、戦場で無駄話をしてしまうのは銀時の影響故か。 

 エリザベートの槍が。ジークフリートの剣が。ジャンヌの旗が。

 襲い掛かるワイバーンを次々と返り討ちにしていく。

 圧倒的な物量差に精神はすり減りそうになるが、サーヴァントは疲れをしらない。

 このままいけば少なくとも負けることはないはず。しかし──

 

『皆、気をつけろ! サーヴァント反応だ!! 高速で飛来する!!』

 

 

 ドッッ!!!

 

「………お前!!?」

「このサーヴァントは!!?」

 

 アマデウスに見慣れた、いや変質したかつての知り合いの拳が。

 ジャンヌには初めて相対した騎士のサーヴァントの手刀が。

 二人はロマニの警告のおかげもあるが、見事に攻撃を受け止めた。

 しかし勢いは抑えられず、そのまま銀時たちから離れた場所へと飛び、分断されてしまった。

 

「ちっ! 追うぞ、マシュ!」

「はい!」

『待て! まだ1騎、そこにいるぞ!』

 

 上空を飛ぶワイバーン。そこから一人のサーヴァントがゆっくりと降り立つ。  

 それは、まるで茨のような漆黒のドレスを纏い、仮面をつけた淑女。

 女は残忍な笑みを浮かべ銀時たちを見る。

 

「全く、他の連中はやり方が雑で嫌になるわね。もう少し、スマートに出来ないものかしら」

「アンタ………… !!」

 

 エリザベートはその女を誰よりもよく知っている。

 吸血鬼に成り果て、残酷な結末を終えた未来、カーミラ。

 エリザベートの槍を握る手が、より強くなる。

 

「子イヌ。約束、覚えてるわよね」

「ああ。ここは任せた」

 

 銀時は特に言葉をかけない。何故なら既にエリザベートは覚悟を決めているからだ。己の魂に従い己がすべきと思っていることをやろうとしている。

 ならばこれ以上何も言う必要はない。

 銀時は背を向け、走り出す。マシュはエリザベートを一人で戦わせる判断をした銀時に一瞬驚くが、マスターの決めたこと。

 直ぐに気を引きしめ、一度だけエリザベートに会釈すると銀時の背を追いかける。

 ジークフリートと清姫も何も言わず、銀時へとついて行った。

 一人残ったエリザベートは真っ直ぐにカーミラと対峙する。

 

「置いてけぼりとは悲しいわね」

「アタシが望んだことよ。それよりも他の連中みたいに不意打ちでもしてくるモノだと思ったけど。アンタにしては律儀ね」

「あなたのこと…… いいえ、私のことだもの。分断など狙わずとも、私との一騎討ちを望むことは読めるわ」

「一緒にされるとか侵害ね…… この未来(オバサン)

「………… 減らず口も大概にした方がいいわよ、この過去(小娘)

 

 ガキンッッ!!

 

 二人の武器が交差する。

 ワイバーンは寧ろ戦いの邪魔になると介入する気はない。誰にも邪魔されることなく、二人であり、一人でもある英雄の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

  

 

 カーミラはエリザベートに任せ、銀時たちは取り敢えずアマデウスの所へと向かいつつワイバーンを蹴散らしていく。

 ジャンヌはまだ心配いらないが、アマデウスは正直言って強くはない。

 それどころか後方支援に適したサーヴァントである為、一人にさせておくのは無謀が過ぎる。

 故にまずはアマデウスの元を目指していたのだが、

 

「止まれ! そーいや、まだいたよな。竜の魔女の使いっぱしり。三人も揃って、なんだ? コロッケパンでも買いにパシラされたのか」

「酷い物言いだ。しかしまあ、的を得ている」

「え。なに、まじでコロッケパン買いにいかされた感じ? なんかゴメン……」

「マスター、たぶん違います」

 

 待ち構えていた三騎のサーヴァントに銀時たちは足を止めた。

 銀時の軽口に敵の一人である、バーサーク・ランサー、ヴラド三世は怒ることなく冷静に返した。

 

「気をつけろマスター。皆、一線級のサーヴァントだ」

「お前…… 知ってんのか?」

 

 ジークフリートは警告をしつつ、銀時を守るように前に立つ。

 それはつまり、竜殺しと言われる程のジークフリートが警戒する程の危険な敵ということ。

 

「以前リヨンで戦った。そして記憶はないが、恐らくは他の場所でも。しかし…… セイバーにアーチャー。あの二人は随分と変わってしまっている。一体何が」

 

 セイバー、シュヴァリエ・デオンにアーチャー、アタランテ。

 虚ろな瞳で立っている二人にジークフリートは眉を寄せた。

 そんな彼の疑問に答えたのはヴラドだった。

 

「訝しむことはない、竜殺し。真っ当な英霊であれば己の行いに耐えきれず歪みもする。アーチャーは子供を殺した結果、発狂し、キャスターの拷問によって霊器を変貌させられた。セイバーに至っては、いくら虐殺しようとも変わらなかったが、敬愛していた王妃が消滅した途端にこの様だ」

「……」

 

 デオンはフランス王家に仕えた忠実なる竜騎士だ。

 マリーが消滅したことにより、今まで瀬戸際まで保ってきた精神がついに壊れたか。

 世界や時代、あり方が違えど、何処か似ている騎士と侍。

 それ故に脳裏に過る。

 主君を失い、イカれたデオンの末路が、かつての記憶と、誰かの姿と重なった。

 銀時の木刀を握る手が自然と強くなる。

 

「その割には…… 貴方は平気そうだが、ランサー」

「いいや。余も堕ち果てた。正に悪魔(ドラクル)よ」

「そうか。では俺が終わらせよう。いいか、マスター」

「ああ。さっさと済ますぞ。俺もあんな面はうんざりなんでね」

 

 銀時の木刀の矛先は、ある一点へと向けられて──

 

 

 

 狂気に塗れて剣を振るう。愛する祖国を剣で穢す。

 狂う。狂う。狂う。

 最早真っ当ではいられない。いられる筈がない。

 表面上はどれだけ平静を装うとも、己の魂までは欺けない。

 それを誤魔化すようにルーラーの命令に忠実に従う。そしてまた剣を血で染め上げ、己の舌で啜り取る。

 救いはない。救われる資格もない、と彼/彼女は思っていた。

 だが

 

フランス(ヴィヴ・ラ)万歳(フラーーーンス)!!』

 

 あの方が現れた。

 あの方こそが救いであり光だった。あの方ならばきっと私を止めてくれるはずだ。殺してくれるはずだ。

 それだけが、此度の現界で抱いた唯一の願い。

 だが、そんな歪な願いすらも、今や叶わない。

 

「あああああああああああああ!!!!!!」

 

 あの方の消滅にプツリと何かが切れた。

 光が消えていく。僅かに見えていたか細い光すら消失し、目前に闇が広がっていく。

 魂すらも真っ黒に染まる。

 もう彼/彼女には、英霊デオンには何も残っていなかった。

 

 

 

 

 ズバンッッ!!!

 

 

「マスター…… !」

「今の…… 空っぽのお前の剣じゃ俺には届かねぇ。少なくともそれがアイツ(・・・)とお前との違いで、この戦いの敗因だ」

 

 血が吹き出す。

 だが、それはこの場で、最も弱い筈である銀時のモノではなく、敵、デオンの体から流れ出たモノだった。

 礼装として改造された洞爺湖の木刀の矛先から血が滴り、デオンの体は背中から後ろへと倒れていく。

 

「ああ……」

 

 ルーラーからの命令に従い、セイバーは単純にマスターである銀時へと斬りかかった。

 だが、あまりにもあっさりと斬り捨てられた。

 本来ならばあり得ない。サーヴァント、それも最優のセイバーであるデオンが人間に負ける等。

 だが負けた。それは紛れもない事実だ。

 

「王妃よ……」

 

 何も見えない、感じない闇の中。

 一筋の光が見えた。それは王妃の様な輝かしい光とは違うけど。

 濁った銀色でお世辞にも綺麗とは言い難いけれど。

 

「私の過ちに決着を……… 感謝、致します………」

 

 真っ直ぐな魂は似ていて──

 

 

『敵セイバー、シュヴァリエ・デオン。消滅よ』

 

 戦いの様子を見ていたオルガマリーが所長として、静かに戦況の様子を声に出した。

 一介の、それも非魔術師である銀時が狂化されたセイバーを倒したことに驚きはあるし、マスターである彼が危険をおかしたことに怒りもある。

 だが、今言うべきことではない。

 彼は、きっと一人の侍としてやるべきことをしたからだ。

 ならば己も所長としてすべきことをする。

 

『銀時!! 今、ロマニが、巨大な魔力反応を確認したわ! 来るわよ。2騎同時による宝具が!!』

「セイバー…… 汝は使命を全うし、見事望みを叶えた。此度の聖杯戦争で余は王としていることができなかったが…… せめてこの宝具を褒美として、手向けの花として送ろう」

「ああ…… ああああ!!!!」

 

 二人に無尽蔵も言える程に多量の魔力が流れていく。

 そして、

 

「血に塗れた我が人生をここに捧げようぞ。血塗れ王鬼(カズィクル・ベイ)!!!」

 

闇天の弓(タウロポロス)!!!」

 

 

 ヴラドからの体内から射出された杭と、狂っていても精密なアタランテの弓矢が銀時たちへと襲い掛かった。

 

「マスター、いいだろうか」

「ああ。何かしら因縁あんだろ? だったらテメーでケリつけとけ。でねーと後で夢見が悪くて目が冴える」

 

 たが彼らは冷静に言葉を交わした。

 短い言葉だけで、自身を信じてくれる銀時に、ジークフリートは少しだけ微笑むと剣を構えた。

 

「ランサー。アーチャー。あなた方もまた英雄だった。この一撃を持って終わらせる。邪悪なる竜は失墜し 世界は今 落陽に至る」

 

 銀時からジークフリートへ。

 魔力が流れていく。その代償に銀時は体に異常な負担を感じ、嫌な汗を流した。

 

「同時契約なんてクソキッツいことしてやったんだ。勝たなきゃマジで許さねーからな、コノヤロー」

 

 この特異点における3騎目の契約。実はこの決戦前夜に済ませていた。

 当然、オルガマリーは大反対したが、いつもの銀時の口の悪さに翻弄され結局契約を交わすこととなったのだ。

 この契約を持ちかけたのはジークフリート本人だった。この戦いに勝つには充分な魔力供給が必要だ。

 とはいえ相当に体に負担をかける契約を銀時は二つ返事で承諾してくれたのだ。

 ならばその思いに答えねばならない。

 

「撃ち落とす!!幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!」

 

 巨大なピーム砲とも呼ぶべきジークフリートの斬撃がアタランテの矢とヴラドの杭を大きく飲み込んでいく。 

 そしてやがては二人をも。

 

「ああああ!! あああ…… わた、しは……」

「………」

  

 その一撃にアタランテとヴラドは何を思ったか。

 それは誰にもわからず、この世界から完全に消滅した。

 




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