Fate/Silver Order -選ばれし48人目のマスターは銀髪侍- 作:天パ男
銀時たちがヴラドたちを倒した頃。
カーミラの放つエネルギーの塊、通称拷問弾をエリザベートは槍でいなし、かわしていく。
「はあはあ…… ! あーもう! 鬱陶しいわね!」
「鬱陶しいのは、小娘、アナタよ! いい加減、お死になさい!」
「誰が死ぬもんですか! アンタより絶対、長生きするもんね! 天寿を全うして子供たちに囲まれて死んでいくもんねぇぇ!!」
「はあ!? だったら私の方が長生きするわ! 天寿どころか輪廻転生して、再び現世に舞い戻るわよ! 子供たちの前に出てきて感動の再開を果たしてやるわよぉぉ!!」
「だったら私は──!!」
エリザベートとカーミラの戦闘、というかトークバトルは段々と白熱していく。
しかし会話の内容は、お前ら同一人物だし、意味なくね? といったモノなのだが、残念ながらツッコミを入れる者はいない。
「飛び道具だけが私の戦いかたじゃないわよ!」
「くっ!! こんの!!」
「かはっ!」
カーミラの鋭い爪がエリザベートの眼前へと迫った。
しかし、すんでの所で槍で受け止め、お返しに蹴りを一発、カーミラの腹部に入れた。
「ゲホッ! やってくれるわね」
「言っておくけど……」
「?」
「勝つのは
エリザベートには彼女を信じてくれる仲間がいる。
仲間がいるからこそ立ち上がれる。仲間がいるからこそ、槍をふるえる。
「アンタに負ける道理はない」
「言ってくれるわ。でも…… 私は一人じゃない? ふふっ!! 何を馬鹿なことを」
カーミラは嘲笑う。
こんな戦場で子供じみたことをいうエリザベートを見て心底可笑しいと腹を抑える。
「そんなものはこの特異点だけでの話。小娘。アナタがどれだけ改心しようが歴史は、私の結末は変えられない!! この戦いが終わり英霊の座に戻れば、この記憶も無に返すのよ。そうすればまた私たちは一人!!」
「…… そうね。アンタの言う通りよ」
「っ!」
何か反論でもするのかと思えばあっさりと肯定したエリザベートにカーミラは笑みを止めた。
エリザベートは静かに続ける。
「歴史は変わらないし、記憶だってなくなる。でも…… ここに私がいたという事実は、今を自堕落だけど、生きてる小イヌに残るのよ!」
「アナタは…… !!」
「それにマシュだっている。私には友達がいる! アンタとの決定的な違いはそこなのよ! 私には、このフランスでの思い出がたくさんある! 悲しみも! 怒りも! 喜びも!! 城の牢獄で記憶が止まったアンタとは違うのよ!!」
エリザベートの言葉はカーミラにとって到底許せるモノではない。
怒りが魔力と共に込み上げれていく。
「そう。忘れられない思い出があるのよ──」
──友達でしょう。アタシだって
──もちろんよ、エリザベート。あなた達と旅が出来て本当によかった。
友達と最後の別れをした。
──いや、なによ、この恐ろしい話! これの何処がコイバナよ!
──失礼な!! 逃げ惑う安珍様はキュートでしたわ!!
悪友とくだらない喧嘩をした。
──アナタガー、スキダカラー
──ごめんなさい
シルクハットとブリーフのオッサンに告白された。
── その代わり…… 負けんじゃねーぞ
── とーぜんよ!!
マスター、子イヌと約束を交わした。
「いや、なんか一部、変な思い出混ざってなかった!? 一部記憶改竄されてなかった!? 多分、読者も知らない事実混ざってたわよ!?」
「だから私は負けない!!」
「聞きなさいよ、人の話! 全く…… 茶番はここまでよ!!」
ついツッコンでしまったが、カーミラの怒りが収まったわけではない。
「小娘! アナタにこそ、相応しい最後を与えてあげる!! 全ては幻想の内、けれど少女はこの箱へ── !!」
カーミラの頭上に女性の形をした像が具現した。
それは究極にして実在しなかった幻想の拷問器具。
「
前面が左右に開き、像の中身を露にする。
開けた扉には、長い釘が内部に向かって突き出しており、仮にあの中に人間が入れば人溜まりもない。
絶叫と共に血を流し絶命するだろう。正に究極の拷問器具。
それはエリザベートへと真っ直ぐに向かい、
「っ!!」
彼女の体を像の中へと閉じ込めた。
「ふっ、ふふふふ!!! 勝った。これで私の勝ち──」
ビギッ!!
像にヒビが入っていく。
そして声が聞こえてくる。
カーミラにとって最も忌むべき声が。歌声が響いていく。
「Laーーーーーーー!!!」
「あ、あああああ!!! まさか、こんなフザケタことを──」
バキンッッ!!
像は四散し、中から翼を生やした少女、エリザベートが飛び出した。
彼女は唄う。窓もない城に閉じ込めれ、死ぬまで何故と恨み言を吐き出したカーミラとは違う。
彼女は思いを全て歌にして届けるのだ。
それこそがアイドル、エリザベート・バートリー。
「今日は特別ショーよ!! サーヴァント界最大のヒットナンバーを、聞かせてあげる── !!」
エリザベートの背後に巨大な城が現れた。それはカーミラもよく知るモノ。
生涯に渡り彼女が君臨し最期を遂げた、チェイテ城。
エリザベートはその城をバックに心から唄う。
「
チェイテ城はまるで巨大なアンプのように、エリザベートの唄をより強く周囲に響き渡せる。
大地にヒビをおこし、戦いの様子を見ながら飛んでいた上空のワイバーンたちを地に落とした。
正しく音による衝撃、スーパーソニック。
これにはたまらずカーミラは耳を抑え、体を震わせる。
「ぐああああ!!? こんな、こんなふざけた宝具が…… !!」
「La~♪ これで、終わりよ!!」
「っ!!?」
ドスッ!!
歌が終わると同時、エリザベートの槍がカーミラの心臓を貫いた。
感じる痛みと霊核が破壊されたことを感じたカーミラは抵抗することもかく、地に仰向けに倒れる。
「かはっ…… ああ、ふざけた。本当にふざけた結末ね……」
「私の歌を聞いておいて、とんだ感想ね」
「いやあなたの歌は冗談抜きでひどいわ」
「はあ!?」
あと数秒すれば自身は完全に消滅する。
カーミラはそれを自覚し、ならば言うだけ言ってやると続ける。
「ええ、認めるわ…… この特異点に限っては、あなたと私は違う。あなたには仲間がいて…… 私はずっと一人…… 精々私の繋がりなんて、マスター気取りの狂った聖女が関の山よ。でも、そんな違いはほんの微々たるモノ。結局、私たちは同じ歴史の同じ英霊でしかない。なのに、何故私を殺し、何のために戦うのかしら…… ?」
「…………」
「今さら罪滅ぼしをしたところで私たちが許される道理など何処にもない。あなたが言った、今を生きるあなたのマスターにあなたの記憶が残ったとしても…… 世界は私たちを許さない」
彼女は罪なき女性たちを己の為だけに無慈悲に殺してきた。
それは悪逆そのものであり、償いをするにしても、犠牲は大きくあまりにも遅すぎた。
だがそれはエリザベートも
「わかってる。だから私は許されるつもりも罪を消すつもりもない。だって今ならわかるから。何が悪いのか。何が罪なのか。だからこそ、私は
それはあまりにも幼稚で未熟な少女の、出鱈目な物言い。
「私のせいで、友達が苦しい思いをしているのなら、武器をふるう。過去の罪も全部背負った上でアンタを倒す。そして叫び続けてやるわよ」
だがそれはあまりにも、鬱陶しいくらいに眩しくて
「
「
── ああ、これだから、
カーミラは何かを言いかけたかと思うと口を閉じ、微笑む。
そして、光と共にこの世界から完全に消滅した。
「かっ、たわね……… でも、相当魔力使ったわ」
エリザベートはその場にへたり込む。
一気に脱力し、深く息を吐き出した。
「取り敢えず、少しだけ休んで、子イヌたちと合流を──『ギャオオオオンン』っ!?」
聞こえてきた咆哮にエリザベートは血相を変えて立ち上がった。
見ると多数のワイバーンがこちらに向かって飛んでくる。
カーミラを倒し、魔力を消耗した所を狙ったか。
息つく暇もない状況にこれがエリザベートは舌打ちをする。
「くっ…… 少しは休ませないよね!!」
エリザベートは銀時と正式に契約を結んでいない。
故に宝具を一度使用した状態での連続戦闘は消滅の危険すらある。
それを覚悟し、エリザベートは槍を構えた、その時。
「はっ!!」
「グギャアアアア!!?」
巻き起こった炎によるワイバーンたちが焼き尽くされていった。
ワイバーンは地に倒れ、炎にまみれてジタバタと暴れる。
火種となった正体。それにエリザベートは覚えがあった。
「アンタ…… !? どうしてここに。子イヌたちはどうしたのよ!」
「まずはお礼を言うべきでは? 全くこのドラ娘は…… 私がいなかったらどうなっていたことか」
エリザベートの窮地を救ったのは、この特異点で出来た悪友、清姫だった。
清姫は呆れた顔で、エリザベートの疑問に答える。
「マスターにはきちんと別行動をするとの了承をとっています」
時は少し遡る──
銀時たちはワイバーンを蹴散らしつつ、前進していた。
そんな最中、清姫が手を上げる。
「すみません、皆さま方。私、少々この場を離れてもよろしいでしょうか?」
「は? おいおい、お前まさか。こんな時にウン──」
「シャッッ!!!」
ボッ!!
「ギャアアアアアア!!!!」
「マスターァァァァ!!」
とんでもなく失礼な発言をしかけた銀時に、清姫は炎で返した。
銀時は火だるまとなり、ワイバーンの元へと駆け抜けて行った。
ワイバーンたちは、その光景にギョッとし、逃げようとするが、時既に遅く。
「ギャオオオオ!!?」
「あちあちあち!! 水、水ゥゥゥ!!」
銀時に巻き込まれ、ワイバーンたちも燃えていったのだった。
「ね?」
「ね? じゃないわよおォォォ!! 子イヌ、真っ赤に燃えちゃってるじゃないのよ!!」
清姫の回想を聞いたエリザベートは激しくシャウトした。
しかし清姫は涼しい顔で続けた。
「大丈夫です。フレアドライブみたいなモノなので」
「全然大丈夫じゃないし! 普通に3分の1ダメージ受けてるし!! 下手したら瀕死だし!」
エリザベートはツッコミを入れるが、清姫は何処吹く風といった様子。
悪気は全くないらしい。
「アンタ…… 本当に助けに来てくれたわけ? 正直…… まあ、ほんの少しだけ! う、嬉しいけど。でも今のこの状況じゃ」
「わかっています。優先すべきはマスターであるあの方の命。そして竜の魔女の討伐。でも、私に命令をしたのはマスターです」
「へ? 子イヌが…… ?」
先程の回想の流れからして、銀時が命令を下した事実などないはず。
一体どういうことだとエリザベートが首をかしげる。
「ケツ…… お尻を引っ張ったけと、あの方は言いました。男は格好つける生き物だとも。確かにあの方はエリザベートとカーミラの一騎討ちを了承しました。でも、あなたの死は望んでいない」
「…… っ!」
「勿論、あなたの勝利を信じてはいる。でも不安はあるものでしょう。あの方も人間ですし。だったらケツ…… は下品なのでサポートすべきでしょう? それもひっそりと。だってあの方がそうしろと言ったのですから。理想の
「アンタ……… ん? りそう、の…… え? ちょっと、まさか」
エリザベートは何かを察し、体を震わせた。
それに対し、清姫はニッコリと微笑んだ。
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