Fate/Silver Order -選ばれし48人目のマスターは銀髪侍-   作:天パ男

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 今更ですが、銀八先生アニメ化決定です。
 嬉しくして、まじで泣きそうになりました。



決着の時

 

 これまで数多くの犠牲を払った。

 一般市民。市民を守る兵士。そして召喚された英霊と狂わされた英霊。

 だが、それでも彼らの瞳に熱が消えることはなく──

 

「放てぇっ!!」

 

 ドンッ!! ドンッ!!

 

 絶え間なく砲弾がワイバーンの群れへと撃たれる。

 駄目押しとばかりに弓兵の矢が次々に射たれていく。

 これにはたまらずワイバーンたちも地に堕ち、絶命する個体も少なくはなかった。

 息があるモノも、チャンスと白兵してきた兵士たちの剣や槍に刺されていく。

 

「進め!! 恐れることはない!! 我らには聖女がついている!!」

 

 フランス側の大将と言えるジルを筆頭に兵士たちは恐怖など忘れ突き進んでいく。

 ジャンヌの身を呈した行動が誤解をとき、彼らの士気に大きく影響した結果だった。

 

 

『凄い!! ワイバーンの数がどんどん減っていく』

 

 敵陣営の魔力反応の消失から、こちら側が優勢にあることを知り、ロマニが興奮気味に言った。

 相変わらず小さいオルガマリーも両手をパタパタさせてモニターを見る。

 

『いける、いけるわよ! バーサーカーの方も相当な手練れでしょうに、四騎で上手く抑えているわ! これなら……』

 

 オルガマリーはエリザベートたちの勝利を確信し、拳を握りしめた。

 しかし現場の方は──

 

「いったあァァァ!!? アイドルの顔を殴る? 普通!」

 

 エリザベートは頬を抑え、叫ぶがバーサーカーは全く意に返さない。

 それどころか、両脇から剣と火を纏った扇子で攻撃してきたゲオルギウスと清姫を軽くあしらう。

 

「むう…… !!」

「今のを防ぎますか…… !」

「二人とも、さがって!! 喰らうがいいさ、僕の音楽魔術を!」

 

 アマデウスはサンソンを抑えた時と同じ、音符による拘束魔術を放った。

 しかし

 

「Arrrrrr…… !!」

 

 あっさりと破壊されてしまった。

 

「うそっ!? あ、いやでもそーか。手負いのサンソンにすら、きかなかったんだし、こいつにきくわけないか。そーかそーか」

「冷静に言ってる場合か!!」

 

 アマデウスはそりゃそーだと目を丸くして言った。

 エリザベートはバーサーカーに攻撃をしかけながら、ツッコム。

 

「いや、でもさ! 最弱の僕を入れてとはいえ、こっちは四人がかりだぞ!? それで倒せないとか、強すぎないか、こいつ!」

「相変わらず真名も分かりませんが、相当な騎士の英霊であることは間違いないでしょう。とにかく連携でおしていくしかありません」

 

 ゲオルギウスは冷静に言いながら、剣を構え直した。

 

「Aaaaaaaaa!!」

 

 四人がかりであろうと、構わず向かってくるバーサーカー。

 エリザベートたちは、それぞれ己の犠牲を覚悟しながらも戦う。

 

 

 

 

   

 

 バーサーカーとエリザベートたちの戦いを見守る男が一人。

 フランス軍を指揮している味方側のジル・ド・レだ。

 彼は兵士たちに指示をしながら、バーサーカーがこちらに標的を変えてこないか注視する。

 

「ゲオルギウス殿…… ! あの方たちですら苦戦するというのか」

 

 ゲオルギウスの強さはこの最終決戦の地に集まるまでに知ることができた。

 人間とは比べられぬ程の力。

 まさに超人とも呼べる彼に、同等の強さを持つであろう三人まで加わっているというのに、接戦になっている。

 その現実にジルは恐怖する。

 

「くっ…… 私は見ているだけなのか…… ! ジャンヌは、民に、兵士に疑われながらも我々を守ろうとした。なのに私は何もできないのか!」

 

 ジルの握る拳に力が入る。

 だが彼は魔術の素養もないただの人間だ。彼ではバーサーカーを相手になど、できるはずがない。

 それを彼自身が一番理解している。理解している故に己の弱さが許せなかった。

 

「私は弱い。知己より譲り受けた聖霊の加護を持つ宝剣ならば傷は与えられようが…… そもそも当てることすら── いや、待て」

 

 それは敵も理解しているだろう。ジルたち、人間は弱く脆いと。

 それ故に己や兵士たちを無視し、厄介であるエリザベートたちを先に始末しようと戦っているのだ。

 

「敵は私の存在など歯牙にもかけていない。ならば…… あるいは」

 

 無謀だとはわかっている。

 けれども

 

「ジャンヌは…… 彼女はたった一人で戦ってきたのだ!! ならば私はそれに報いる!!」

 

 ジル・ド・レはこのフランスを生きる英雄として剣を強く握った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、ジャンヌと竜の魔女──

 

「だいぶ、ファヴニールの元から離されましたね…… 全く、随分と無様に立ち回ってきたものです。心底呆れるというものね」

「無様かどうかわかりませんが、多くの人に助けられここまで来れました。ええ。とても恵まれていると感じます。ありがたいことに」

 

 竜の魔女はジャンヌを見下すように冷めた目を向ける。

 しかしジャンヌはそれに対し、心の底からそう思っていると笑顔を向けて言った。

 竜の魔女は呆れを通り越したか、皮肉すら返さず黙ってしまう。

 

「………」

「おかげで定まりました。今まで矛盾は感じていましたが…… ここに来てようやくです」

「何…… ?」

 

 いったい何のことだと竜の魔女は訝しげに眉を寄せた。

 

「ずっと迷っていました。貴女を倒し祖国を救う。それは決まっている。しかしどのような感情で貴女に向き合えばいいか? それがわからなかった」

「軟弱ですね。そんなことで──」

「でもわかりました。私は私で、貴女は貴女だ」

「── は? な、なにを訳のわからぬことを…… !! そもそも私こそが本物で貴様は──!!」

 

 竜の魔女の胸が大きくざわつく。

 かつて命を奪った敵ライダーの言葉が脳裏をよぎる。

 

 ────本当の貴女は一体何者なの?

 

 これ以上は語らせてはいけないと竜の魔女自身、訳もわからず叫ぶ。

 だがジャンヌは言葉を続ける。

 

「竜の魔女。貴女は…… 自分の家族を覚えていますか?」

「……………… え?」

「やはり、そうなのですね」

「…… 何、を…… 言って……」

 

 竜の魔女は意味がわからないと固まってしまう。

 最早いつもの皮肉すら言葉にする余裕もない。

 ジャンヌはそんな彼女を見て、悲しそうにほんの少しだけ目を伏せる。

 そして旗を強く握った。

 

「竜の魔女、私は貴女を倒します。だがそれは怒りからではない。ましてや憎しみでもない。私は哀れみを以て貴女を倒します!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エリザベート!!」

「ええ! ボエ~!!」

「っ!?」

 

 アマデウスの奏でる音楽。それに加え、エリザベートの歌声。

 二人の音の力が合わさりバーサーカーの動きを止めた。

 

「今です!!」

 

 清姫の扇子から炎が放たれた。

 炎はバーサーカーを大きく包み込み、絶命とはいかずとも全身に大きな火傷を負わせた。

 

「Aaaaaaaaaaa!!!」

「ゲオルギウス!!」

「わかっています!!」

 

 バーサーカーは音と火による攻撃で動きを止めた。

 この最大のチャンスを逃すわけにはいかないとゲオルギウスは剣の矛先を向けて駆ける。

 しかし──

 

「Arrrrrrrrrr!」

 

 ザンッ!!

 

「かはっ……」

 

 ゲオルギウスの剣は弾かれ、腹部を斬られてしまった。

 動きを止めたのは演技だったのだ。清姫たちの攻撃は確かなダメージにはなっていた。

 だが動けなくなるほとではない。

 バーサーカーは鎧越しにニヤリと笑う。まずは一人と。

 

「うおォォォォォ!!」

「っ!?」

 

 ザシュッ!!

 

 バーサーカーが勝利を確信した次の瞬間。

 彼の首は宙を舞っていた。

 

「人間は無力…… しかし…… 人間を舐めるな!! 英霊!!」

 

 気にも止めなかった。

 当たり前だ。だって彼はただの人間。死後に英霊の一人に数えられようが、今は魔術師でもない普通の騎士なのだ。 

 バーサーカーの首は地に落ち、ゴロゴロと転がっていく。

 そして己を倒した男の顔を見た。

 ジル・ド・レ。ただの人間。だが、正に今を生きる英雄の一人。

 

「Ahrrrr…… Ohrrrrr……」

 

 体が消えていく中、彼の脳裏には何が過ったのか。

 それは誰にもわからない──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ファヴニールは魔力反応の消滅を一つ確認した。

 恐らくはこちら側の主力がまた消えたのだろう。これで戦場に残る主戦力は己が仕える主と己自身のみとなる。

 ならば、いい加減に決着をつけなれけばいけない。

 ファヴニールは魔力を込める。

 そこに油断や慢心はない。確実に、徹底的に敵を。そして怨敵を消すために、竜は放つ。

 滅びの吐息を──

 

 ドッ!!!

 

 これで全て終わった。

 その予測が外れても対処する余力は十分にある、はずだった。

 

「────っ!!」

 

 油断はなかった。慢心もなかった。

 ただ想像ができたかったのだ。未知の驚愕に動きを止めた。

 己が対峙してきた者は皆、戦士だったから。

 

 最も大きな輝きを放ち、滅びの吐息を止めた者たち。

 それは英雄でもなければ、魔術師でもない。

 小さな、二つのか弱き存在。

 それは弱き者でありながら勇気を振り絞っただけの──

 

「ロード・カルデアス、限界出力…… !! 止めました!!」

「はあ、はあ…… ああ! よーくやってくれたよ、マシュ!!」

 

 人間だったのだ── 

 

 

 

 

『使用許可は出したわ!! 魔力放出の── いや! あんたに難しいこと言っても仕方がないわね! 銀時、思う存分…… ぶちまけなさい!!』

「ボーナス弾めよ、所長!!」

 

 銀時は手を掲げる。

 すると嫌でも目に入る。

 手の甲に刻まれた趣味の悪いタトゥー、もとい令呪が。

 

「こんな中二くせーセリフ、新八と神楽に聞かれたら笑われんだろーがあァァ!! たくっ! 今回は銀八先生アニメ化もかねた特別サービスだ、こら!!」

 

 令呪が赤く光出す。

 今まで意識したこともない。使ったことはある。たが、それは冬木でのアーサー王戦の一度切り。それも無意識だ。

 とはいえ、この決戦前に使い方と令呪とは何なのかを改めて聞かされている。

 これは簡単に言ってしまえば、無理難題をサーヴァントに実行させる絶対命令権。

 そう。どんな無理難題も。

 

「令呪を持って命ずる!!! 邪竜をぶちのめせ!!! セイバァァァァーッ!!!」

 

 ジークフリートがファヴニールの頭よりも高く跳んだ。

 邪竜とジークフリートの目が合う。

 

「マスター。貴方の怒りに我が信念、我が正義にて応えよう── 真エーテル、全開放」

 

 天が割れた。

 そしてジークフリートの剣に魔力が流こんでいく。

 

『なんて長大な剣気…… !! 成層圏に届く勢いじゃないか…… !!』

 

 管制室でモニター越しに見ていたダヴィンチは驚き、目を丸くする。

 周囲にいる所長を含むカルデアスタッフたちもにわかに騒ぎ始めた。

 

『ちょっと! ちょっと、ちょっとォォ!! なんか凄いことになってるわよ、奥さん!! サバミソちゃん、あんたつまみに、柿ピー持ってきて!』

『ムニエルだっつーの!! つーかねーよ、柿ピーなんて!』

『おばちゃん! もうどっか行っててくんない!? それよりもロマニ! これだけの出力…… 銀時は!?』

 

 オルガマリーの懸念にロマニは苦々しく答える。

 

『はい…… ジークフリートは勿論、彼を支える令呪の所有者は! 己に流れる魔力に、焼かれ続けることになります…… !!』

 

 ロマニの言う通り、銀時は全身に感じる焼けるような痛みに歯をギリギリと噛みしめた。

 

「先輩っ!!」

 

 マシュの心配する声に応える余裕もない。

 ただ痛みに耐え、意識を保つのが精一杯だ。

 

「……痛いなマスター…… !! だからこそ共に越えよう…… !! 眼前の敵を討ち倒す為に!!幻想大剣 最大出力!!!!」

「…… いや、もうなんでもいいから…… さっさとぶっ倒せえェェェェ!!! こっちは魔力どころか、全身の穴と言う穴から変な汁飛び出る寸前だ!! つーかもうちょっと出てるぞ、コノヤロー!!!」

 

「黄金の夢から覚め──」

 

「いや、だからそういうのいいから! 早くしてくんない!?」

 

「揺籃から解き放たれよ…… !!」

 

 その圧倒的な光景に、戦場に生き残った者たちはワイバーンを含め、誰もが固唾を呑んで見守った。

 この一撃で、勝者は決まると── !!

 

「オ……… !! オォオオオオォ!!」

 

 ファヴニールもただ黙ってはいない。

 ジークフリートの宝具諸とも葬ってやうとブレスを放つ。

 

「邪竜──── !!! 滅ぶべし!!! 幻想大剣(バル)天魔失墜(ムンク)!!!」

 

「ガァアアアアアアアアアア!!!!」

 

 ファヴニールが光に呑まれていく。その巨体を焦がし、魂を消失させていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な…… !! ファヴニールが…… 倒された? 人間が…… !? 人間が…… !? どうして、人間がここまで…… ガハッ!!」

「終わりです、竜の魔女。貴女もたった今、敗れた」

 

 ファヴニールを倒されたことによる動揺。

 その隙をジャンヌは見逃さなかった。

 ジャンヌの旗が竜の魔女を体を貫いたのだ。

 

「ガハッ!! くっ…… 違う!! 私は、ガフッ!! まだ── !! っ!? ジル…… ? えぇ…… そうね……」

「なっ!?」

「ガアアア!!」

 

 突如。複数の海魔が現れ、ジャンヌへと飛びかかった。

 即座に竜の魔女から離れ海魔の攻撃をかわし、逆に返り討ちにする。 

 ワイバーンに比べれば弱く、随分とあっさりとしたもの。

 しかし

 

「撤退しましたか……」

 

 海魔を相手にしている隙に竜の魔女は戦線から離脱していた。  

 だがそれよりも気になることが一つ。

 

「ジル…… ジルと言いましたか…… やはり貴方が……」

 

 ジャンヌは己の予想が当たったことを。当たってしまったことを悲しみ、目を伏せた。

 




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