Fate/Silver Order -選ばれし48人目のマスターは銀髪侍-   作:天パ男

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さよならとこれからと

 残存していたワイバーンが消えていく。

 その光景を見ていたフランス軍の兵士たちは自分達の勝利を確信し、喜びの声を上げた。

 だが、そんか中でフランス軍元帥、ジル・ド・レェだけは何処か重い表情で消えていくワイバーンを見ていた。

 

「状況確認の為に一部隊を残し、撤退を進めよ。後の指揮は任せる」

「え!? お、お待ちください元帥!! いったいどこに……」

  

 突然の指令に狼狽える兵士。

 だがジルは、すまぬと一言だけ言うと馬に股がる。

 全てはあの人に謝る為に。

 

 

 

 

 

 

 

 キャスター、ジル・ド・レェが消滅し、残された銀時たちもまた、勝利を確信していた。

 カルデアからも喜びの声が上がっている。

 

『聖杯の回収が完了した! これより時代の修復が始まるぞ!』

『…… 銀時、マシュ。あなた達、本当によくやってくれたわ。お疲れ様。帰還の準備をするけど、まだ時間はあるわ。最後に話せるだけ話しときなさい』

「はい。ありがとうございます、所長」

 

 オルガマリーの労いの言葉を受け、マシュはこの特異点で仲間となった彼らに顔を向ける。

 彼らと言葉を交わすのもこれで最後だ。

 

「ジャンヌさん、皆さ─── ってあああああ!? 皆さん、消えかかっていますが!?」

 

 マシュはサーヴァントたちの姿を見て絶叫した。

 それは冬木でのクーフーリンの時と同じく、霊器を破壊されていないにも関わらず体が消えかかろうとしていたのだ。

 

「そりゃそうよ。敵もいなくなったし、お役御免ってところね」

 

 彼女たちはあくまでも聖杯に呼ばれたサーヴァント。

 それ故に与えられた役目が終われば、彼女たちも自動で退去するということだ。

 エリザベートの説明に、クーフリーンの前例もあったし、悲しくはあるがマシュも納得する。

 

「あ、やばもう本当に直ぐに消えそう…… その前に子イヌ」

「んあ?」

「あんた、私のこと、絶対に忘れるんじゃないわよ」

「……… はっ。あんな歌聴かされて忘れられる訳ねーだろ。こっちは寧ろ忘れてーくらいだってのによ」

「それどういう意味よ! ……… たくっ。今度は音楽の国を貸しきったワンマンライブやってるんだから覚悟しなさいよね!!」

 

 200億の女になってやる! という謎の捨て台詞を残し、エリザベートは消えた。

 それを見ていた清姫は呆れたように言う。

 

「あのドラ娘ったり本当におバカ。聖杯戦争において同じ人間に出会うなんてほぼありえないのに…… 私もお別れです。ええ、二度と会うことはないでしょう」

 

 清姫はそう言うと銀時を見て、何処か悲しそうに目を伏せた。

 

「最後に醜い姿を見られてしまったのは残念でした。ですが──」

「あ? なんの話だ」

「え? あ、あの私の宝具のことなのですが……」

「お前、鬼滅読んだことねーの? あれに出てくる蛇鬼、まじで気持ちわりーんだぞ。それに比べりゃ、お前は海賊女帝だよ」

 

 銀時としては蛇の中では、という意味だったのだが、決して嘘をついている訳ではない。

 その為、世辞を言ったわけではないと嘘を見抜く力を持つ、清姫は顔を一気に赤く染めた。

 

「ああ、ああ………」

「え?」

「あ、あああああ…………」

「え、ちょ」

 

 清姫はワナワナと肩を小刻みに揺らす。そして天高く飛び上がり、銀時へと向かって──

 

「やはり、貴女こそ、理想の旦那様(ますたぁ)!! いざ、正式に契約(キッス)を!!」

「うおおおおおおおおお!!!?」

 

 清姫と銀時の唇が重なりあう── ことはなく、首から下だけを残し、清姫の顔面は完全に消滅していた。

 一応、残った体は銀時に抱きついてはいるが……

 

「あれぇ!? な、なぜ!? なぜ私だけこのような感じなのです!? ああ、旦那様──」

 

 そのまま清姫は消滅した。

 

「ハハハハ。まったく賑やかな聖杯戦争でしたな。では、マスター、私もこれで。いずれまた何処かで会いましょう」

「ああ。まあ、次どっかであったら、またよろしく頼むわ」

「ええ。こちらこそ」

 

 ゲオルギウスも別れを告げて消える。

 そしてジークフリートも

 

「マスター、そしてマシュ。君たちのおかけで俺は望む戦いができた。お礼と言ってはなんだがこれを受け取ってほしい」

「ん? おいおい、そんなんいいのに」

 

 ジークフリートが懐から取り出したモノを銀時はそう言いながらもニヤケながら受けとる。

 彼程の英霊ならば物凄いお宝の可能性が高いからだ。

 

「龍が如くだ。あ、それ2だから、プレステ2用意しておいてくれ」

「いや、これアストルフォ君のじゃねーか!! 名前書いてるし! 借りパクしたモノ渡すんじゃねーよ!!」

 

 銀時の最もなツッコミにジークフリートはフッと笑うと消えてしまった。

 それを見ていたアマデウスはやれやれと首をふった。

 

「全く格好がつかないな。ま、僕が人の事言える立場じゃないんだけどさ。マスター、君の指揮はかなり雑多な部分も多かったけれど退屈はしなかった。眠気が吹き飛ぶくらいにはね! そしてマシュ。君みたいな透明な音色を奏でる娘と出会えて良かった。それじゃあ………… まあ、また何処かで会おうじゃないか」

「ああ、今度はワンピースのOPでも聴かせてもらうぜ。後祭りでも作品とか無視してやってたし、いけるだろ? 音楽家」

「はい! アマデウスさん、いつか、また」

 

 アマデウスは笑い、そしてこの特異点から退去する。

 残されたのは銀時とマシュ、そしてジャンヌだ。

 

「皆、行ってしまいましたね…… では私も──」

「ジャンヌ!!」

「ジル!」

 

 馬を駆け、息をきらして現れたのはジル・ド・レェ。この時代を生きる英霊ではない彼だった。

 ジルは馬をおり、ジャンヌに駆け寄る。

 

「ようやく、しっかりと顔を見合わせて話すことができましたね……」

「ジル……」

「……… 赦してほしい、ジャンヌ・ダルク。我々は、フランスは、貴女を裏切った…… ! 救うことができなかった!!」

「………っ!」

 

 ──やっと貴女をあの炎から

 

 目の前のジルの姿と、キャスターのジルの姿が重なった。

 同一人物である以上、当然と言えば当然。

 だが、どれだけ闇に堕ちようと、どれたけ悪逆に染まろうと、彼には変わらないモノがあったのだとジャンヌは改めてそれを知ることができた。

 ジャンヌは思わずクスリと笑ってしまう。

 

「もう。まったく貴方という人は──。大丈夫ですよ、ジル。私はもう……… だから、最後は笑顔で」

「ジャンヌ………… !!」

 

 ジルの目から涙が溢れる。

 マシュもそれを見ていて何か胸に熱いものが込み上げてくるのが感じた。

 それが何なのか、マシュにはまだよくはわからなかった。

 

「あっ…… 先輩、どうやら私たちも」

 

 銀時とマシュの体が淡く光だす。

 彼らもまた、この特異点から退去しようとしているのだろう。

 

「お二人の方が先のようですね」

「ジャンヌさん」

「良いのか? 野郎とは」

「いいんです。話すべきはもう話しましたから。それに──」

「ジャ、ジャンヌさん!?」

 

 ジャンヌはマシュを優しく抱きしめた。

 マシュは思わぬ不意打ちに顔を赤らめる。

 

「この特異点での出来事は全てなかったことになる。失った筈の命が戻ることは喜ばしい。…… それでも、マスター、マシュ。これまで一緒に過ごしてきた時間。共に戦ってきた記憶。それが全てなかつたことになるのは、私には少し悲しい」

「ジャンヌさん……」

「しんみりはよくありませんね。笑って別れましょう。マシュ…… 貴女も、どうか前に進んでほしい。これから辛く長い道のりが続いたとしても、どうかこの記憶を失わず進み続けてほしい」

「……はい、ジャンヌさん!」

 

 ジャンヌはマシュから離れ、笑顔を向ける。

 その様子を見ていた銀時は茶化すように笑った。

 

「おいおい、聖女さんよ。俺には来てくんねーの? 優しく包容してやるよ?」

「貴方は素直に包容されるような人ではないでしょう? どちらかというとお尻を…… いえ、貴方風に言うとケツをひっぱたかれるどころか、ケツに棒をぶっ刺されて前に進むタイプ、ですよね?」

「聖女様が酷ぇ、物言いじゃねーか? 熱烈なギョロ目信者からクレームが来そうだ」

「何を言っているんです? ここでのことは、なかったことになる、ですよね?」

 

 ジャンヌは人差し指を唇に当て、声を出して笑った。

 それにつられてマシュも、銀時も笑う。

 

『……三人共、話中、不躾で申し訳ない。レイシフト開始だ。本当に、これでお別れだ』

 

 ロマニが通信越しに言うと同時、二人の体が浮かび上がった。

 これが本当に最後。

 だが、最後まで二人は笑顔を向ける。

 

「ジャンヌさん! いつか、また……!」

 

 マシュが手をふり、ジャンヌも笑顔でふりかえす。

 

「ええ…… また、いつか────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますと、そこはフランスの空ではなく、最早、見慣れた近未来的な天井。カルデアだった。

 銀時はコフィンから起き上がろうと腰を上げる。すると先に目を覚ましていたマシュが手を差しのべてきた

 

「先輩……」

「ああ、ありがとよ」

 

 銀時はマシュの手を掴み、コフィンから降りた。

 フランスでの戦いが本当に終わったんだ。

 それを実感した二人の元に騒がしい声が近づいてくる。

 

「銀時、マシュ! 貴方たち、本当によくやったわ!! キャラ崩壊とか知るか! 今日は祝杯よ、祝杯!」

「銀時くん、マシュくん! 二人ともお疲れ様!!」

 

 オルガマリーにロマニを初め、駆けつけたカルデアスタッフたちが労いの言葉を次々にかけていく。

 その中には笑顔を向ける者もいれば嬉し涙を流す者も。

 

「あんたたちはもーう! 本当によく、やってくれたわよ! 母ちゃん! 泣いちゃう! ふんっ! チーーーーーン!!!」

「オイコラババア!! そのハンカチも私の服改造したやつだろ!」

「はいはい。みんな、泣くのも笑うもボケるのも良いけど、その前に言うことがあるんじゃないかい?」

 

 ボケ、ツッコミ合戦が始まる勢いの中、ゆっくり歩いてきたダ・ヴィンチが言った。

 それを聞き、オルガマリーたちカルデアスタッフたちは全員顔を見合わせてニヤっと笑った。

 そして二人に顔を向けて、

 

「「二人とも、お帰りなさい!!」」

「「ただいま!!」」

 

 

 

 

 フランスでの激動。英雄たちの記録。 

 その全ては歴史の表舞台には残らず、殆どの人の記憶に残らない。

 それでも確かにここに残るものが一つ。

 彼らの魂は銀色の今を生きる英雄たちに残り続ける──

 

 

 

 

A.D.1431 第一特異点 邪竜百年戦争 

オルレアン 定礎復元

 

 

 

 

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