Fate/Silver Order -選ばれし48人目のマスターは銀髪侍-   作:天パ男

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第二特異点 永続狂気帝国 セプテム
ローマ


  

 

 

 熱狂が── いや、熱狂(ローマ)がこの土地全体に伝わっていく。

 それはある者にとって切望していたモノであり、またある者にとっては恐怖の対象でしかなかった。

 

 

 

「万歳!!」「我等がローマ!!」「真なる皇帝の帰還である!! 万歳! 万歳!!」「正当なりし連合ローマ帝国に栄光を!! 我等の命を捧げよ!! ローマと共にあれ!!」

 

 

 とある街中心に建つ巨大な城。

 城の周りには大勢の兵士たちが集まり、皆異様とも言える程に昂っているのが見てとれた。

 その熱狂を城の中から見下ろす者が三人。

 

「随分な心酔ぶりだ。この時代の皇帝は人間の民共からの人望が熱いものであったはずだがな…… まあ、単純な話。お前はそれを越える程に奴等から神格化されているということか。ふん。実に単純でくだらんな。所詮貴様など、私が不要と見定めれば捨てられ、替えのきく傀儡でしかないというのに」

「…………」

 

 兵士たちの古めかしい鎧とは対称的に随分と現代的な衣装である緑のタキシードに身を包んだ男は滑稽だと馬鹿にするように笑う。

 その笑みには侮蔑の意味も込められていた。

 それを理解していた彼の言う神格化された人物は、あえて何も返さない。

 いや、何を言っても意味がないとわかっているからだ。隣の男は何処までも兵士や己を見下し、ゴミのようにしか思っていない。

 そんな男に己の意見など言うだけ無駄だろう。

 しかし、この場にいるもう一人の男は違った。

 

「だが単純だからこそ扱いやすい。これだけ使える神輿を招けたのもお前さんの運が良かったって所だろう。文句を言う暇があれば少しは自分の豪運に感謝した方がいいと思うぜ」

「ふん…… ただ見ているだけの傍観者が、口出しするモノではないな。貴様を今すぐにでも処分することができないのが口惜しい位だ」

 

 丁度光の届かぬ所に男は立っていた。

 その言葉は神格化された人物を庇ったモノなのか、真意はわからないが、タキシードの男を否定するような言葉であることには変わりない。

 影がかかり姿はよく見えないが、声だけでもタキシードの男を苛立せるのには充分だった。

 

「そういった意味では俺も運が良いな。あんたのもっとデカイ神輿の気紛れで俺は今もこうしてキセルをふかしていられる」

「全くだ。恐れ多くもこればかりは理解できないがね。だが、我が王の寵愛を受けられたこと、貴様は感謝するがいい」

「ククク。ああ、心遣いに痛み入るよ。だがあんたも覚えておくといい」

「なに?」

「掲げた神輿を間違えれば、必ずお前さんは押し潰されるだろうよ。少なくとも隣の皇帝さんは無粋な真似をしないだろうがな…… ま、気に入らないからと、神輿は軽々しく変えるモノじゃないってことだ。ここでの祭りも長くなるだろう。精々大事にしてやんな」

 

 男からしてみれば、ちょっとした気紛れな助言のつもりのようだ。

 だが基本見下す対象である彼の言葉など、タキシードの男にとっては余計苛立ちを募らせるものでしかなかった。

 

「余計なお世話というモノだな。こいつらの有用な使い道。それは使い捨てとしての駒だ。だが、まあ…… 使い用がある以上は手元に残しておくさ。少なくともこいつは貴様の言うこの地における神輿としては適切だ。現状はすげ替えることはない」

「そうかい。だったら暫くはこの連合も安泰だ」

 

 そう言うと、男は城の奥へと向かって歩いて行く。

 

「何処に行く?」

「何、フランスの時と同じさ。俺はここではただの傍観者。ぶらりぶらりと観光でもさせてもらうとするさ。ああ、心配はいらねェ。少なくとも今は…… 壊しはしねーさ」

 

 それだけ言い残し、男は去っていった。

 男の背中を見届けたタキシードの男はチッと舌打ちをする。

 

「不気味な男だ。まあいい。おい」

「………… ウム」

 

 神輿と担がれし、兵士たちの真なる皇帝でもある男が前に立つ。

 するとそれだけで兵士たちの熱は更に大きく上がっていく。

 高ぶる熱狂に大地が揺れるように感じられた。

 タキシードの男は鬱陶しそうに眉をしかめた。

 皇帝は両手を掲げる。そして彼等に告げる。

 

「── (ローマ)である!!」

 

 一言。

 たったそれだけの一言に全てが込められていた。兵士たちの喝采が大陸全土に響き渡っていく。

 この熱狂がこの世界を戦乱の地へと変えていく──

 

 

 

 

       二章 第二特異点

 

     永続狂気帝国 セプテム

         薔薇の皇帝

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ── カルデア 管制室

 

 

 この場には所長、オルガマリーを筆頭にマスター、坂田銀時。そのサーヴァントであるマシュ・キリエライトと清姫。

 そしてサポートであるロマニとダヴィンチ、カルデアスタッフ数名が集まっていた。

 集まった理由は当然のことながら特異点修復である。

 二つ目の特異点、行き先は一世紀のヨーロッパ。

 つまりは古代のローマ帝国であり、地中海を制した言われる当時の大帝国だ。

 その名を聞いたダヴィンチは興味を抱き羨ましそうに私も行きたいと目を輝かせている。 

 

「駄目に決まってるでしょ、ダヴィンチ。あなたには解析作業があるんだから。サーヴァントはマシュに清姫もいるんだし」

 

 興奮気味のダヴィンチをオルガマリーは静かに諌めた。 

 

「むー、残念。誰でもいいから一人くらい、ローマ皇帝と話してみたかったんだけどなぁ」

「今度ね、今度。もしかしたら今後、銀時がサーヴァントとして召喚することもあるだろうし。今はサポートに集中しなさい。とはいえ……」

 

 肩を落とすダヴィンチだったがあっさり引き下がった様子にオルガマリーはホッとする。

 ダヴィンチの強みは、やはり歴史に名高い知性だろう。

 現場に出て危険な目にあうよりも管制室から安全に状況を見定めてもらった方が効率がいい。

 とはいえダヴィンチの好奇心にも一定の理解を示すオルガマリーは今後もチャンスはあると宥めつつ、横目で銀時を睨む。

 

「ダヴィンチの積極性はしっかりと見習ってほしいものね、銀時」

「うぷ…… ちょっ、トイレに行ってもいい?」

 

 世界を救う最後のマスター、坂田銀時。

 そんな彼は今、顔を青ざめ、左手を壁につき右手で口を抑えて俯いていた。

 

「あなたが人類最後のマスターでなれけば今すぐトイレに流していたところよ。昨日もバカみたいに酒盛りして」

「バカやろー、オメー。男にはな、必要なんだよ。嫌なことを全部忘れて酒に溺れたくなる時が── オボロロロ!!」

「本当だ、溺れてる。酒じゃなくて、自分の嘔吐物にだけど」

 

 銀時はついに我慢できず胃の内容物を吐き出してしまう。

 一応、危険を察知したマシュが袋を出す直前に銀時の口元へと向け、嘔吐物を受け止めたのて、最悪は免れた。

 

「…… 先輩には忘れたいことがあるのですか。もしかして先輩の記憶にない夢を見てしまったりとか…… 」

「オボロロロロ!! うー…… んあ? ゆ、夢? なんで?」

「い、いえ…… なんでもありません。あ、これ捨ててきますね」

「あ、そ、そう…… うう…… だ、誰か飲み物くんない?」

 

 何か気になる様子のマシュだったが、気持ち悪さが勝ってしまい、気に止める余裕はなかった。

 吐いてある程度スッキリはしたが、まだ不快感が残っている銀時にスッとコップが差し出される。

 

「お、麦茶。わりーな。えーと…… 清姫」

「いえ妻いえ…… マス妻ターの、健康妻をお守り妻するのは妻の役目妻ですから妻」

「いや、妻妻うるさ!? なにこれ、妻のサブリミナル!?」

 

 銀時の妻(自称)であることを強調する清姫にオルガマリーはツッコむ。

 当の銀時はツッコミを入れる余裕もなく麦茶を飲んでいるが。

 

「所長、そろそろ……」

「わ、わかってるわよロマニ。えー、コホン。では、繰り返しになるけれど、行き先が決まったわ。目的の時代は一世紀のローマ。聖杯の正確な場所は未だ不明。前回と同様、あなたたちには特異点の調査、修正及び、聖杯の獲得を行ってもらうわ」

 

 話が脱線しかけてたが、ロマニのおかげで軌道修正することができた。

 オルガマリーは所長として今作戦の概要を説明を行った。

 改めて説明を聞き、銀時以外の面々は気を引き締め動き出す。

 

「さ、銀時。あんたも行くのよ」

「ぷはー、あー、わーったよ。わかったから急かすな」

「新婚旅行はローマ…… 悪くありませんね。ふふ、そこで必ず……」

「清姫、あんたのこと、監視してるから。変なことしたらマジで処すから」

「処す!?」

 

 銀時に良からぬことをしようと企てる清姫をオルガマリーは冷たい目を向けながら脅した。

 

「全く…… サーヴァントとしての自覚を持ちなさいよね…… ん?」

「フォーウ、フォー……」

 

 呆れていると忍び足で歩く四足歩行の生物、フォウの姿が視界に入った。

 

「フォー…… フォ」

「………… ちょっと」

 

 オルガマリーとフォウの目が合う。

 さるとフォウがたちまち体中に汗を流し始め、そして──

 

「フォウフォウ!!」

 

 脱兎の如く駆け出した。

 

「いや、待ちなさいよ、この謎生物!! あなた、まーた、マシュに隠れてレイシフトしようとしたわね!! 私なんか、レイシフトしたくても出来ないってのに!!」

 

 オルガマリーも小さい体でフォウを追いかけ始める。

 

「フォウフォウ!! 訳 うるせー!! ただでさえ出番すくねーんだ! レイシフト位させろ!!」

「なんて切実な理由!? いや、フォウの言葉、理解できた私もヤバいけど、そんな理由でレイシフトさせられるか!! どーせレイシフトしたってあなた空気なんだから意味ないわよ! フランスでなんか後半いなかったも同然じゃない」

 

 オルガマリーの何気ない言葉がフォウの逆鱗に降れたか。

 フォウは逃げるのを止めてオルガマリーの方へと振り返り、んだとコノヤローと言わんばかりに吠える。

 

「フォウフォウ!!」

「うわっ!? ちょ、いきなり止まんないでよ!! あ、足すべ──」

 

 ズルッ!! 

 そこには、先ほど銀時が嘔吐した時に受け止めきれなかったか、少量の嘔吐物があった。

 気づくのが遅れたオルガマリーは思いきり足を滑らせた。

 そして体は宙に浮かび──

 

「フォ── ぐ、ゴクン! フォウ……」

 

 フォウの口内へと見事に吸い込まれ、喉奥へと落ちていったのだった。

 

「………」

 

 そしてフォウは顔を青ざめ周囲に見られていないか確認しながら、その場をゆっくりと離れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうこうしている内にレイシフトの準備が進められていき、銀時はコフィンの中へと入る。

 

 

 ──アンサモンプログラム スタート。霊子変換を開始します

  レイシフト開始まであと3、2、1……

 

「銀時くん、マシュ、清姫…… 頼んだよ」

 

 ロマ二は彼らの無事とミッション達成を祈る。

 それは他のカルデアスタッフたちも同じく、固唾を飲んで銀時たちを見守る。

 

 

 ──全工程 完了

 

 

 

 今、二度目の特異点修復の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 ──グランドオーダー 実証を 開始します。

 

 

 

 

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