Fate/Silver Order -選ばれし48人目のマスターは銀髪侍-   作:天パ男

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月下の狂気

 現在、銀時たちはローマ軍の兵士たちと共に、連合との戦いに於ける最前線のひとつ、ガリアへと向かい森の中を進んでいた。

 ちなみにガリアは距離があるため、銀時たちは、ネロからは馬を借りて進んでいる。

 一軍を率いるのは皇帝ネロ。苦戦している配下を鼓舞する為、皇帝自ら最前線へと立つ、その姿は正に名君といえる。

 

 ── そんな名君も最後は一人で………… か 

 

 銀時たちとは違い、馬ではなく、フォウの背中に乗り一軍についていくオルガマリーはネロを見て、彼女の最後を憂う。

 後世の世では暴君と呼ばれようとも、彼女が民を愛していたのは事実だ。

 それは間近で見たからこそ、わかる。 

 だからこそ、ネロの最後を知るオルガマリーは、あの結末に納得ができなかったし、未来を知っていてもどうしようも出来ないことに腹がたった。

 

「わたしも人のことは言えないかもだけど……」

「あん? 所長、なんか言ったか?」

「なんでもないわよ。ま、貴方がいればその心配はいらない、のかしらね」

「っ?」

 

 銀時は、片眉を上げるが、まあ、いいかとネロの後ろをついていく。

 

『みんな、前方に生体反応あり。サーヴァントではないけど、敵のようだ』

 

 道中は当然ながら敵兵が次々に沸いて出てくる。

 ネロは己の斥候よりも早く、正確な情報を提示するロマニに感嘆しつつも、溢れでる敵に辟易していた。

 

「またか…… 全くゆっくりと語り合う暇すら与えぬとは不粋な反逆者共め。銀時よ、頼めるか」

「ああ。さっさとぶちのめして先に進むぞ」

 

 迫り来る敵兵。

 それを銀時たちは難なく退いていく。

 当然と言えば当然だ。銀時はともかく、マシュたちはサーヴァント。

 神秘の持たない一兵士では傷をつけることすら叶わず、瞬く間に敗れ、気絶させれていく。

 敵を倒しつつ、前へ前へと進み続けるネロの一軍は、やがて森を抜け、開けた場所へとたどり着いた。

 ガリアまであと少し、未だ敵軍の兵士はぞろぞろと出てくるが、これだけならば問題ないだろう。

 

 そう。これだけならば。

 

 

『っ!? ちょっと待った!! この反応は人間じゃない! これは──』

 

 

 

 「ネロォオオオオオオ!!」

 

 

 

 

 大地が震えた。 

 何処かおぞましい、ネロの名を叫ぶその声の主は突如として銀時たちの前に降り立つ。

 

『サーヴァントだ!!』

 

 ロマニは血相を変えて叫んだ。

 オルガマリーも冷や汗をかく。

 

「っ!? ネロ陛下、兵士を下がらせ、マシュと清姫を前に! ただの人間ではあの男には敵いません!」

「っ…………」

「陛下…… ?」

 

 オルガマリーの叫びにネロは答えない。

 それどころか顔を青ざめ、信じられないと男を見つめていた。

 

「伯父上……… あり得ぬと思っていた。確かに情報は既に得ていたのだ。ああ、しかし……」

「── 我が、愛しき、妹の子、よ」

 

 男は前に出で、拳を握る。

 そしてネロに向かい──

 

「させません!」

 

 マシュの盾が男の拳を防いだ。

 だが、それだけでは終わらない。マシュの背中から清姫が飛び出し、男を炎の纏った扇子で凪払う。

 

「はっ!」

「オオオオオオ!!」

 

 火に体を蝕まれ男は苦しそうに呻き、後方へと下がった。

 不意打ちは何とか防いだ。

 全員が武器を構え、男へと向き直る。

 

『伯父上…… 今、彼女はそう言ったのか。だとすればそのサーヴァントの真名はまさか!?』

「伯父上………… いや、カリギュラ!!」

 

 怒るネロは、偶然ではあったが、ロマニの考察に答えるように男の名を漏らした。

 

「ネロさんの伯父…… つまり、彼は古代ローマ帝国の第3代皇帝です、マスター!」

「そりゃまた厄介だな。よりにもよって身内が、三途の川から泳いで来たってところか」

 

 マシュの解説に銀時はこれはマズイとネロを横目で見た。  

 そんなネロはカリギュラを一心に見つめている。

 伯父を前にしたとはいえ、あろうことか戦場で呆けてしまったとネロは己の愚かさに歯噛みし、そして決してあり得ない存在に震える。

 

「まさか、またそのお顔を見ることになろうとは…… 伯父上、何故連合などに与するか!」

 

 ネロは怒りのままにカリギュラへ叫び、そして首をふる。

 

「いや、いいや! 如何な理由があろうともローマに牙を剥くなど! 確かに無念の死ではあったろうと今も思わずにおれぬ。しかし……」

「余の、振る舞い、は、運命、で、ある」

「伯父上!」

「捧げよ、その、命。捧げよ、その、体── 全 て を 捧 げよ !」

「なにを、言って…… !」

 

 明らかにカリギュラは普通ではない。

 少なくともネロの知るカリギュラはまだまともに話ができた筈だ。

 だが目の前のカリギュラは支離滅裂でネロの問いに答えすらしなかった。

 

「ネロさん! この方は恐らく狂戦士のクラス、バーサーカーです。精神が狂化がされているため、まともな会話はできません!」

「ええい! 余にもわかるように話せ!」

 

 マシュがバーサーカーについて説明するが、あまり魔術知識のないネロには理解不能だ。

 そこでオルガマリーはわかりやすく説明をする。

 

「要は清姫ってことです。陛下」 

「え?」

「うむ、わかった! それはまずいな、伯父上…… !」

「え? なぜです? え?」

 

 自身を例えとして出されたことに困惑する清姫だったが、構っている暇はない。

 戦闘は始まっているのだから。

 

 

「ネロォオオオオオオ!!!」

 

 カリギュラは拳をふるい向かってくるが、マシュは再び防御をしようと前に出る。

 しかし

 

「がっ!?」

「オオオオオオ!!」

 

 カリギュラの腕は盾ではなく、マシュの顔面へと伸び、鷲掴みにされた。

 そしてそのまま力の限り、地面へと叩きつけられる。

 

「がはっ!?」

 

 強い衝撃にマシュの脳が揺れた。

 全身に痛みが走り、体が動かなくなってしまう。

 

「オオオオオオ!! ネロォオオオオ!!!」

「おい、このロ○コン野郎!!」

「っ!?」

「いつまでも姪っ子に、おじさんって呼んでもらえると思うなよ!!」

 

 マシュへ追撃をしようしたカリギュラの体は、横から飛び出た銀時によって、横に大きくぶっ飛んだ。

 

「姪ってのはな、年とれば伯父のことをおっさんか、そもそも口すら効いてもらえなくなるもんだ、覚えとけ」

 

 倒れたマシュを守るように銀時は立った。

 手には魔術礼装として改造された洞爺湖の木刀が握られている。

 これならばサーヴァントにも攻撃は通る。

 だが、

 

「オオオオ!!」

「やっぱ効いちゃいねぇ。無敵になるスターでも拾いやがったか?」

「バカ、銀時! 相手はサーヴァントよ! 貴方は下がって清姫に任せなさい!」

「…… その通りである! 伯父上の相手は…… 皇帝である余が勤める!」

「そうそう…… ってはあ!? いや、だからダメですって、陛下──」

 

 オルガマリーの制止も聞かず、ネロは前に躍り出た。

 銀時の横を抜け、カリギュラへと迫っていく。

 

「おお、美しい。ネロ、お前、は、美しい。奪いたい、貪りたい、引き裂きたい」

「伯父上えェェェ!!」

「女神がごとき、お前の、美しさ、すべて、無茶苦茶、に、蹂躙、して、やりたいッッ!! 捧げよォォォ!!」

 

 ネロの剣がカリギュラへと振り下ろされようとした、その時、それは発動する。

 

『この反応は、まずいぞ!!』

 

  我が心を食らえ、月の光(フルクティクルス・ディアーナ)

 

 カリギュラの背後の巨大な月が現れた。

 その月の光は青く不気味に輝き、カリギュラにとって美しき愛しいネロを祝福するように照らして見せた。

 そしてネロもまた、その光に見惚れ、振り上げた剣を下ろしてしまう。

 

「ネロ陛下!」

「陛下!!」

 

 オルガマリーやローマ兵たちの叫びは届かない。

 今、ネロの視界には歪な光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

 愛が見える。

 

 ネロに優しく微笑むカリギュラの姿が見える。

 

 ネロの手を取るカリギュラの姿が見える。

    

 ネロに語りかけるカリギュラの姿か見える。

 

 そしてネロの母であり、カリギュラの妹であるアグリッピナも同様に愛すカリギュラの姿が見えた。

 

 

「母上、伯父上……」

 

 

 その愛が崩れていく。

 暴虐のカリギュラが、目前で毒におかされ、刃に突き立てれ、命を落とし、崩れた。

 そして一人で嘲笑う母、アグリッピナの姿が残り、優しくネロに微笑んだ。

 

 ──ネロ。母の愛を受け取るのです。そしてなるのです。皇帝に。母の願いを叶えるのです

 

 そうしてアグリッピナはネロを包容する。

 決して逃げられないように。

 

 

 

 

 

「ああ、あァアァァッ!!」

 

 視界が黒く染まった。

 ネロは訳もわからず剣を振り回す。

 

「陛下! ロマニ、これは…… !」

『間違いなく、サーヴァントカリギュラの宝具によるモノかと! 恐らく直接攻撃ではなく精神に作用するタイプかと思われます!』

 

 ロマニの考察にオルガマリーは歯噛みする。

 よりにもよって守るべきネロに宝具を受けさせるなど、とんだ失態だ。

 ネロは頭を抱え、首を左右にふる。

 

「落ち着きなさい! 皇帝ネロ!」

 

 清姫がネロに駆け寄る。

 しかしそんな彼女の首は、ネロの両手で強く絞められた。

 

「がっ!?」

「耳、障り、だ!! 声が、この声は…… !! ああ、獣の、唸る、声が…… ッ!!」

 

 生者たるネロにはあり得ない程の力で、清姫は抑えこまれた。

 流石にこれで死ぬことはないが、まともに動くことができない。

  

「ならば、その、痛み、愛が、癒そう」

 

 そこにカリギュラが拳を振り上げふ。

 しかし変わらず、ネロは清姫を抑えたまま、そこから動かない。

 

「その、渇き、は、愛が、満たそう。余の、振る舞い、こそ、うんめ──」

「黙れェェ!!」

 

 ズバッ!!

 

 それは一瞬だった。

 ネロは清姫から手を離し、落ちていた剣を拾ってカリギュラの腹部を横に斬り裂いたのだ。

 カリギュラから血が流れる。 

 

「え? サーヴァントに攻撃を…… !?」

 

 オルガマリーは驚きの声を上げた。

 本来ならば神秘のない生者の攻撃はサーヴァントに通らない。

 戦うには銀時のように礼装を持つか、魔力を持った魔術師でなければならないはずだ。

 なのに、なぜと、オルガマリーは疑問に思うが、そんな暇はない。

 ネロは今にも実の伯父を手にかけようと動き出す。

 

「オオ…… ネロ…… 我が、愛しき」

「貴様の声は頭に響く!! 消えよおォォォォ!!」

 

 そして止めをさそうと剣を構え──

 

 

 

 ゴンッ!!

 

「へぐっ」

 

 カリギュラに剣先が届く前に、鈍い打撃音がした。

 気づくとネロは小さな悲鳴を漏らしながら地面に倒れていた。

 

「へ?」

 

 オルガマリーは素っ頓狂な声を漏らした。

 視線の先、そこにはネロの頭を小突いたであろう木刀を握りしめた銀時が立っていた。

 

「ふー」

「ぎ、銀時! 貴方、なにを!!」

「伯父だかなんだ知らねーが、ここはこいつの出る幕じゃねぇ。こいつの剣は身内(クソヤロウ)に向けるべきものじゃねぇ。だからら、テメーの相手は俺がしてやるよ。姪離れの出来ねぇ、変態ジジィ」

 

 銀時の獣を食い殺さんと言わんばかりの眼力がカリギュラを突き刺した。

 しかしカリギュラはそんなことでは怯まない。

 寧ろ己以外の人間が愛する姪を手にかけたことに怒り、殺意を滾らせた。

 

「オオオオ!! 貴様、は、余が、蹂躙する!!」

「生憎、俺のケツにはなぁ…… 結野アナっつー先約がいんだよ!!」

 

 カリギュラの拳を銀時はギリギリで横に避ける。

 風圧だけで服の一部は避けたが、気にする暇はない。

 相手は圧倒的な力を持つサーヴァント。ならば一撃で終わらせるつもりで攻撃しなければならない。

 

「おらあァァァ!!」 

 

 銀時の木刀がカリギュラの頭を叩き割るように振り下ろされた。

 しかし、

 

 ガキンッッ!!

 

 

 カリギュラは倒れない。

 足を踏むこみ、ギロリと銀時を睨んだ。

 

「ちっ……」

 

 やはり冬木やフランスの時のようにはいかないか。

 あの時はクーフーリンというルーン魔術にたけたサーヴァントによる洞爺湖への加護とマシュの奮闘があったからこその奇跡。

 フランスでのセイバー、デオンもまた、英霊としての自我と矜持を失い殺戮人形に成り下がったからこそ、勝てたと言える。

 しかし今回は違う。

 

「オオオオ!! 潰れよォォ!!」

「があァァ!!?」

 

 ネロの攻撃を受けたとはいえ、致命傷には至らず。

 また、カリギュラはデオンとは違い、逸話からして狂った反英雄とも言うべき暴君。

 そんな彼には銀時の剣は届かなかった。

 

 カリギュラの拳が銀時の腹にめり込んだ。

 咄嗟に後ろに飛び、衝撃を殺して地面に転がった。

 おかげで意識までは飛ばなかったが、体が痛み、直ぐに立ち上がれない。

 

「旦那様ァァ!!」

 

 ネロのからの思わぬ不意打ちでダメージを受けるも、この中で一番早く回復した清姫が叫び、銀時へ駆け寄ろうとする。

 しかしカリギュラの方が早い。

 

「オオオオ!!」

「ッ…… !」

「銀時! 命呪を使いなさい!」

 

 オルガマリーが咄嗟の判断で令呪使用を叫ぶが、もう間に合わない。

 というか、衝撃で声が出なかった。

 カリギュラの拳は銀時へと向かい、今度こそ止めをさそうと──

 

 

 

 

 

 

「宝具展開── !!」

 

『え? この反応は!!』

 

 

   約束されざる守護の車輪(チャリオット・オブ・ブディカ)!!」

 

 

 突然の魔力反応にロマニがいち早く気づいた。

 そして気づいた頃には銀時の前に赤い髪の女性が降り立ち、声高らかに叫ぶ。

 すると周囲に、 無数の車輪が現れ、カリギュラの拳から守ってみせた。

 

「っ!?」

「ごめんね、遅くなった! スパルタクス!」

 

 女性はカリギュラの前に立ちはだかると、誰かの名を叫んだ。

 

「はははははは!! 圧政者よ!! 我が身は貴様の前に立ちふさがらん!!」

 

 すると今度は大きくジャンプしてきたのか、女性とカリギュラの間に割って、大男、スパルタクスが着地してきた。

 

「ははははは!! おお圧政者よ!! 傲慢に満ち溢れた悪しき魂が、ついに崩れ消え去る時が来た。己を蝕む圧政の欲望から解放されるこの一時を我が愛と共に噛み締めるがいい!」

「オオオオ!!」

 

 スパルタクスは手に握られた小剣を振り回し、カリギュラを翻弄する。

 しかしカリギュラも負けじと、スパルタクスの攻撃を避けつつ拳を入れた。

 

「おう!? むうぅぅ、良いぞ、圧政者よ!! それでこそ、我が解放の力を振るうに相応しき圧政!! だが、我が愛が貴様の圧政力に劣ることなど決してない。自由を求め躍進することこそ、人の有るべき力と知れ!」

 

 だが、スパルタクスも倒れない。

 寧ろ、更に高揚したかのようにスパルタクスは満面の笑みを浮かべて剣をふるい続けた。

 

 

  

 

「ちょっ、なんなのアレ!? あの大男もバーサーカーなの!? もはや何を言っているのか理解できないのだけれど」

「とはいえ、これはチャーンスでありますよ。なにせ、あの二人もまた、ローマの客将なのですから!」

「貴方、いたの!? ていうかマシュたち以外にもいたのね、味方のサーヴァント」

 

 スパルタクスの意味不明な言動にドン引きするオルガマリーに、何故かついてきていたキノコ料理人の女が自信満々に言った。 

 ここに来て味方の登場はありがたい。

 

「当然、私も戦います! よくも旦那様をやってくれましたね!」

 

 マスターを支える妻、もといサーヴァントでありながら、銀時に怪我を負わせてしまったことの自分への怒り。

 そしてカリギュラに対する憎しみから清姫は内に込められた炎を燃え上がらせる。

 

「しゃっ!!」

「オオ!?」

「はっ! しゃあっ!」

 

 スパルタクスとカリギュラの間に割って入り、清姫は炎の連続攻撃をぶつける。

 この怒涛の攻撃にはカリギュラもたまらず、たたらを踏み、スパルタクスは感嘆の声を上げた。

 

「おお! 素晴らしいぞ、小さき解放者よ! 君の熱き闘志ならば私と肩を並べ戦う資格があるだろう! さあ、共に愛を語りあおう!!」

「旦那様は私と愛を誓い合い、永久の刻を共にする運命。それを阻む者は何人たりとも許しません!!」

「余の、振る舞いは、絶対! 故に、捧げよォォォ!!」

 

 三人とも、バーサーカー。

 それ故に全く会話の噛み合ってない、地獄のような光景が広がっていた。

 しかしこの地獄は強制的に終わらせられる。

 

「はああああ!!」

 

 白馬二頭が引く、戦車(チャリオット)に乗るのは赤い髪の女性。

 彼女の雄叫びと共に馬は駆け、カリギュラを撥ね飛ばした。

 

「ぐおおおお!?」

「ここまでよ、バーサーカー、カリギュラ!」

 

 ゴロゴロと転がるカリギュラに女性は勝利を確信する。

 

「手負いのあんたに対して、こっちはサーヴァントが三騎。明らかにあたしたちの優勢よ!」

「ぐっ…… お、おお…… 我が、愛しき…… 妹の、子。なぜ、何故捧げぬ。我が、愛しき、ネロよ……」

 

 しかしカリギュラの体はその場から、幽霊のように瞬く間に消えてしまった。

 

「霊体化か…… 逃げられた。でも、まあ助かったから良しとしましょう」

 

 

 倒しきれなかったことに不満はあるが、生き残れただけでも儲けものだ。 

 

「さて……」

「ネロ陛下、お気を確かに!」

「マシュ、銀時! しっかりしなさい。息はあるわね!」

 

 倒れ気づいた者たちと、それを介抱する者たちを見て、女性は、まだまだ厳しい戦いが続くことを覚悟した。

 

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