Fate/Silver Order -選ばれし48人目のマスターは銀髪侍-   作:天パ男

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皇帝と所長

 

 『連合ローマ帝国』

 

 歴代ローマ皇帝が蘇り、彼等が主体となって作られた新たなる、いや真の帝国。

 彼等はローマの属州だった人民や一部のローマ兵を焚き付け懐柔し、自国の兵としてみせた。

 人間離れした力を持つ歴代ローマ皇帝率いる、連合ローマ帝国は力強く、彼等の進軍は破竹の勢いだった。

 

 だがしかし。

 

 その進軍は遂に止められた。

 ネロ率いる正規のローマ軍と、最近になって兵力として就いたとされる異邦の魔術師たちの手によって──

 

 

 

「カエサルが死んだか。まあいい。減った戦力は召喚し、補充すれば良いだけだ。そうだろう? アレキサンダー」

 

 連合ローマ帝国の首都。

 その首都に聳え立つ城の一室にて。

 宮廷魔術師として連合ローマ帝国に所属する男は失ったサーヴァントに関して悲観に思うこともなく、寧ろ笑って見せた。

 話をふられた少年、アレキサンダーは特に表情を変えることなく答える。

 

「んー、僕はあまり良い手法とは思わないな。だってどんな英霊が召喚されるかわからない。下手をすれば話の通じない獣の可能性だってある」

「らしくもない意見を。それは貴様の慕う、先生とやらの考えだろう?」

「ありゃ、バレてたか」

 

 男はジロリとアレキサンダーを睨む。

 しかしアレキサンダーは困ったなと首を傾げるだけで、緊張感をまるで感じさせない。

 

「お前たちサーヴァントはマスターである私の命令にただ従うだけの存在だ。ならば何が召喚されようが何も問題はない。まあ確かに、貴様のように、はぐれサーヴァントと接触しても報告すらしないようなゴミが召喚される可能性は大いにあるがな」

「報告をしなかったのは申し訳ない。でも裏切った訳じゃない。そうだろ?」

「私の指示を仰がず、勝手に兵士を撤退させておいてか?」

「あれは現場の判断ってやつさ。そもそも兵士を指揮することに慣れた僕を戦場に寄越したのはこういった不足の事態に対応させる為だろ? 実際、兵士は貴重だし、結果失わずにすんだ」

 

 男はアレキサンダーの言い分を聞き、チッと舌打ちをするのみでガリア撤退については、これ以上責めなかった。

 一応、彼の言っていることは全うで特に間違ってはいないからだ。

 とはいえ──

 

「はぐれサーヴァントとの接触を黙っていたのは問題だ。貴様には罰を受けてもらう」 

「手厳しいな、マスターは」 

「当然だ。言っておくが今さらはぐれサーヴァントを私の目の前に連れてきても遅いぞ。そもそもはぐれなど、信用できんしな。貴様へ課す罰は単純だ。刺し違えるつもりで、銀髪の男、坂田銀時、もしくはネロ・クラウディスを殺せ。生きて帰ることは許さん」

「へぇ………」

 

 男の無茶な命令を受けるも、アレキサンダーは憤ることもなく、ましてや狼狽することもなく、笑みを浮かべて見せた。

 彼の反応を見て、男は流石に気味が悪くなってしまう。

 

「何を笑っている? 命令の意味を理解していないのか」

「いいやわかっているとも。ただ感謝しているのさ。僕はあの二人に興味を持っていたからね」

「ネロはともかく、坂田銀時にまでか? ふんっ。まあいい。さっさと行け。私は追加戦力の補充をする」

 

 男はアレキサンダーに背を向け、部屋の奥へと向かっていく。

 その背中にアレキサンダーはボソリと呟く。

 

「勿論、例え命令されなかったとしても行っていたさ。マスター……

         

           レフ・ライノール──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『首都ローマ』

 

 連合とは違う。 

 正真正銘、正しき歴史のローマ。

 ローマへと凱旋したネロ率いるローマ軍は民衆からの拍手喝采を受けていた。

 

「皇帝陛下ばんざーーい!!」

「ローマ軍に栄光あれ!!」

「平たい顔族の銀髪も良いぞおォォ!!」

「ローマ軍の凱旋だぁ!!」

 

 男も女も老人も子供もネロを筆頭に進むローマ軍兵士を見て、歓喜の声を上げていく。

 ネロもまんざらでないと両手を上げ、勝利の凱旋である!! とまるとアイドルのファンサービスのように民衆たちへと笑顔を向けた。

 民衆も陛下と目が合った等とにわかに騒いでいる。

 その様相はまるで祭りのようだった。

 

「おい、今、なんか俺のこと平たい顔とか言ってなかった?」

「気のせいじゃないの。ま、流石に民衆も喜びを隠せないって感じね。何せ、連合との戦争が始まって以来初の大勝利だし」

 

 銀時は疑問符を浮かべ、オルガマリーはネロ同様、まんざらでもないと民衆たちを見渡す。

 

「お前たちいィィ!! あたしたちは遂にガリアを取り戻したあァァ!!」

「「うおォォォォォォ!!!」」

「その祝い金として、あたしのキノコをくれてやるわあァァァ!!」

「「うおォォォォォォ…… ォ?」」

「キノコ女! あなたのせいで民衆が困惑してるじゃないのよ! もうそのキノコ寄越しなさい!」

 

 ちゃっかり混ざっていた料理人の女は、キノコを民衆へとばらまいていく。

 が、やっぱり反応は悪かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ローマ 黄金宮殿』

 

 勝利に浮き足立つ民衆にもみくちゃにされながらも何とか帰りついたネロたち一向。

 決して悪い気分ではないものの、疲れがたまっていた彼等はため息をはく。

 

「ふう……… これでやっと落ち着けるな」

「凄まじい人の賑わいでしたね」

「全くね。でもまあ、悪い気はしないわ」

『はは。所長、人から褒められ慣れてないからな~』

「ロマニ、あなた減俸ね」

 

 うそ!? と通信の向こうで顔面蒼白になるロマニは置いておいて、ネロは目をキラキラとさせて銀時たちを見る。

 

「さて! ローマに勝利の凱旋したならば、まずすることは決まっておる! それは………」

「「「それは?」」」

「テルマエである!!」

 

 

 

 

 

「カポーーン」

 

 湯船に浸かるマシュの口から、何処か気の抜けるような声が漏れた。

 茶碗にお湯を入れ、某目玉の妖怪のごとく入浴するオルガマリーはギョッと目を丸くし、ネロは首を傾げる。

 

「マシュよ、それは何を口ずさんでいるのだ?」

「大衆浴場ではこのような音と共に風呂に浸かれ── と先輩から教えられたのです。何でも先輩の故郷の伝統文化だそうで。そうですよね、清姫さん」

「え? あ、あー、そうですわね。うん」

「清姫、はっきり言ってあげなさい」

 

 銀時から教えてもらった、変な知識を思いだし、行動に移してしまったマシュ。

 彼女の純粋無垢な姿にオルガマリーは呆れ、清姫は適当に相槌をうった。

 ネロは信じてしまったのか、ひたすら、カポーンと口ずさんでいる。

 

 現在、宮殿に特設されたネロ専用テルマエにはネロとマシュ、オルガマリー、清姫たち女子組が入浴していた。

 ブーディカだけは入浴をやんわりと断ってしまったが………

 

 ── ま、流石に敵対していた国のテルマエで、しかも敵だった皇帝の前で素肌は晒せないわよね……

 

 

 ブーディカの気持ちを察していたオルガマリーは顔を上げ、高い天井を見つめる。

 そんなオルガマリーの心中等、ネロは知らず、立ち上がったかと思うと、憤った様子で話し出す。

 

「しかし、銀時め……… 何故、このテルマエに入ろうとせぬのだ!! せっかく余がこの志向のテルマエに招待したというのに!」

「まったくの同意見です、陛下!!」

 

 憤るネロに清姫まで同調した。

 そんな二人を見て、オルガマリーは冷静に答える。

 

「清姫にネロ陛下も、良いですか? 私たちはいずれも年若い女性です。そんな所にあんな爛れた恋愛しかしてきていなさそうなオッサンを連れてきたら、この作品はR-18になり、運営からBANされます」

 

 二人は知らないが、実は銀時の入浴を止めたのはオルガマリーだった。

 銀時自身はここぞとばかりに、

 

「皇帝陛下直々の招待となれば断る訳にいきませぬ。では男、坂田銀時── いや暴れん坊将軍、出陣!!」

 

 鼻血を垂れ流していたので、取り敢えず地面の穴に埋めてやった。

 

「まあ、心配はいりませんよ、陛下。私たちがテルマエから出た後は順番で銀時もスパルタクスと一緒に入りますから」

「旦那様と巨大筋肉が風呂場で二人……… は!? ま、まさか…… !」

「清姫、あなた、のぼせてるんじゃないの?」

「おお、そうか! 後で入るのならばまあよい! この至高にして究極のテルマエに入らぬなど不敬にほかならぬ故な!」

 

 少なくとも後程入ることを知ったネロは満足したのか落ち着いて座り、湯船に浸かる。

 

「ローマのテルマエは本当に素敵だと思います。カルデアには簡素なシャワー室しかないので、先輩も喜ぶかと」

「…………ふっふっふ。そうであろう、そうであろう!! つまり、ローマは最高なのだ!!」

 

 続き、マシュからもテルマエを褒められ、更にネロは鼻を高くする。 

 

「そう、ローマは最高なのだ。ふぅー………」

「陛下………… ?」

 

 さっきまで騒がしかったネロは天井を見上げ、息を吐くと静かになる。

 いきなりテンションが落ち着いたネロを見て、オルガマリーは片眉を上げた。

 

「はじめに七つの丘(セプテム・モンテス)ありし── 神祖とかの丘と共に栄光の歴史は幕を上げた。最高、至高にして絶対の国、ローマ」

「…………」

 

 オルガマリーたちは黙って話を聞いている。

 

「しかしそのローマが、ローマの礎を築いてきた筈の先人たちによって蹂躙されようとしている。その中には伯父上も。余はそれが恐ろしいのだ……」

「ネロさん………」 

「すまぬな………… 皇帝が情けない姿を晒した。ふふ、この有り様でよくもゴダセンや伯父上、それにカエサル殿に強く出られたものだ」

 

 弱みを晒らけだし、本音を漏らしたネロ。

 マシュはこの時代を生き、英雄に数えられるであろうネロが震え、顔を俯かせる様子を見せるも、何と声をかけていいのかがわからない。

 きっと銀時がいたら何か言ってくれるのではないか──

 マシュが銀時の姿を思い浮かべた時、

 

「良いんじゃないの、別に」

「………… っ!」

「しょ、所長?」

 

 言葉をかけたのはオルガマリーだった。

 それも今まで、ネロを皇帝として扱い、敬語を使ってきた筈のオルガマリーが軽い口調で話している。

 思わぬ状況にマシュは目を丸くする。

 

「神様でもないのに、怖いものなんて何もない、なんてあるわけじゃない。いや、神様だって神話を見れば弱味の一つや二つあるけどね」

「………… だ、だが余は栄えあるローマの皇帝で」

「私は怖いモノばっかりよ」

「む…………」

 

 オルガマリーは続ける。

 

「大国ローマを治めるあなたと私では背負う重荷は違うと思う。でもカルデアの所長という役職に対しての誇りを私だって、同じくらい持っているつもりよ」

「………」

「でも正直言うと、父の後を継いだばかりの時は恐怖でいっぱいだった。人類の危機、マスターの適正はないというスキャンダル、それに………… 父の犯してきた罪(・・・・・・・・)

「所長………」

 

 オルガマリーとマシュの目が一瞬合った。

 オルガマリーのことを少なくとも銀時よりも知っているマシュは彼女の苦しみを察し、顔を伏せる。

 

「私ね、ずっと怖かったのよ。ううん。今も怖い。今でも夜に眠れない時がある。でも……… それでも私が立っていられるのは銀時と…………… マシュのおかげよ」

「………… っ!」

 

 顔を伏せていたマシュがハッと顔を上げた。

 オルガマリーが少し微笑んだように、マシュには見えた。

 

「二人が、か」

「ええ。所長というリーダーである私が部下である筈の二人に助けられていることに、あなたは情けないと思う?」

「そのようなこと……… !」

 

 あるわけがない。

 オルガマリーたちを見ればわかる。

 彼等は互いに信頼し合い、確かに形式上、上下関係のある立場であれど、その根本は対等なモノだ。

 この三人の絆を何故情けないと笑えるのか。

 もしそのような輩がいればネロは決してその者を許さない。

 

「でしょ? あなたならそう言うと思った。だから、それでいいのよ。信じられる仲間の前でくらい、裸になったっていいのよ。だってローマはテルマエが最高の国なんでしょ?」

「む、むう………… し、しかし、そなたたちは客将で」

「あら? 私はとっくにあなたの立派な仲間だと思ってたけれど。所詮は外部の人間、位しにか思ってなかった?」

「な!? そのようなことあるものか!」

 

 ネロは思わず、飛沫を上げて立ち上がった。

 オルガマリーは涼しい顔で続ける。

 

「だったら良いじゃない。私たちの前でくらい、いくらでも裸になればいい。怖いモノがあるのならばいくらでも話せばいい。私たちがあなたと一緒に戦う。恐怖を乗り越えるなんて無理かもしれないけど、隣に寄り添うことくらいはできる」

 

 ネロは立ち上がったまま、だが静かにオルガマリーを見る。

 

「皇帝として兵や民の前に立つあなたは充分立派な皇帝だった。私には輝いて見えた。だから、良いのよ」

 

 これは本当だ。

 恐怖を抱いても、疑問を抱いても、己を奮い立たせ、リーダーとして兵や民を引っ張る。

 そんなネロの姿にオルガマリーは尊敬の念を抱いていたのだ。

 

「本当に、か」

「ええ」

「そなたたちの前で余は余をさらけ出しても良いのか」

「ええ」

「そうか………」

 

 ネロは顔を伏せる。

 そしてしばらく間をおくと、

 

「オルガマリーいィィィィ!!」

「ええ── ん?」

「実は最初見た時から余のモノにしたくてたまらなかった!! その不出来に見えて実は完璧なる造形美!! 悔しくもあるがローマの彫刻師に負けず劣らずの技術力の結晶!! そなたの全てが欲しいのだ!!」

 

 ネロは頬を朱く染め、息を荒く漏らし、両手をわきわきと動かし始める。

 オルガマリーは嫌な予感がし、小さな体を小刻みに震わした。

 

「あ、ちょ、やっぱ今のなし──」

「オルガマリーよ!!」

 

 

「ああああああああ!!!!!」

 

 

 オルガマリーの絶叫がテルマエに響き渡った。

 

 

「いい湯ですね」

「そうですね」

「ああああああ!!!!!」

 

 マシュと清姫はテルマエを堪能した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日。 

 少し休息は必要だろうというネロの提案により、銀時たちは彼女直々の案内の元、ローマ観光を楽しむことになった。

 ローマはガリア奪還を祝してお祭り騒ぎとなっており、観光するには持ってこいの時期とも言える。

 

「さて余直々にこのローマを案内しよう! 心してついてくるがよい」

「今回はテルマエ以外も連れてけよ。あれ、所長、なんかやつれてね?」

「ん? ああ、まあね」

 

 いつも以上に艶々になった肌のネロとは対照的にオルガマリーはげっそりとした顔でマシュの頭の上に乗っていた。  

 銀時の疑問に適当に相槌をうつ位、疲れているようである。

 

「おお、オルガマリーよ! 疲れているのならば、マシュの頭ではなく、余の胸元に来るが良い!」

「遠慮するわ、まじで」

「なんかお前ら、前より仲良くなってね?」

 

 いつの間にかタメ口で話しているオルガマリーに疑問を覚えるも、特に理由を答えられることはなかった。

 それよりも、とネロは続ける。

 

「ブーディカとスパルタクスは残念なことに、ローマ観光を断ったためおらぬが、そなたたちは全力でローマを楽しむと良い!」

 

 二人にも誘いは入れたが、流石に見張りにサーヴァントが一人もいないのはまずいと、ブーディカ自ら観光を断っていた。

 スパルタクスも同様の理由でここにはおらず、兵士と共にローマ周辺を見回っている。

 とにもかくにも、ネロと銀時たちカルデアメンバーによる、ローマ観光が始まった。

 

 

 

 

「お前の父親は私だ」

「嘘だあァァァァァ!!」

「泣けるね…………」

「なんか見たことあるんだけど、この話」

 

 時にはローマ劇場に。

 

 

 

「すいませーん。なんか甘いものとかあります」

「ありますよ! 遠い異国の地から取り寄せた──」

「まさか、キノコじゃないわよね? いい加減読者も飽きたわよ」

「『タケノコの都』です!」

「キノコじゃなかったあァァ!! でもそれダメえェェ!! 戦争になるやつ!」

「¥8€}]=@☆7&♡€♡♪&}<€8〒>$◇◇>=~」

「ほらあァァ!! 向こうでキノコ女がなんか変な呪詛唱えてるし!」

 

 時には屋台に

 

 

 

 

「みなさん お待たせいたしました!! ただ今より 天○一武道会を開催いたしまーーーす!!!」

 

 時にはコロッセオに──

 

「いやなんか違う世界観に来てない!? なんか見たことあるグラサンスーツいるけど!」

「ようやくこの時が来たな、ネロロット」

「余も待ちわびたぞ、パチータよ」

「なんかネロのやつ、参加してるしィ!? パチータって誰よ!? ただのパチモンじゃないのよ!」

「優勝したもんねえェェェ!!」

「ネロ負けてるし! ていうかその勝利宣言とポーズって、パチータ、プライドないの!?」

 

 時にはコロッセオ(多分)に

 

 

 

 

「色々行ったが、やっぱりローマはテルマエよな!」

「いや、だからテルマエはもういいって──」

「そこのお客さーん、テルマエのプロレスはお好き?」

「テルマエってそっちいィィィ!?」

「すいません。このDXコースで」

「あなたはなにハメ技しに行こうとしてんのよ── って、やかましいわ!!」

 

 キャッチに連れられ、店に入ろうとする銀時が扉を開けた時だった。

 

「おらあァァァ!」

「ごほぉ!?」

 

 すると扉の向こうから、屈強な男が飛び出し、交差した腕を開き、銀時へと手刀を叩きこんだ。

 

「まさかのDX(ダイレクトでクロスチョップ)コース!!? 本当にプロレスだったんかいィィ!!」

 

 時にはやっぱりテルマエ? に。

 

 

 

 

「さあさあ皆さん、寄ってらっしゃい見てらしゃっい!! 世にも珍しい角の生えた人間だよ~」

 

 大きめの布を被せた荷車の前に男が道歩く人々を呼び込んでいる。

 

「あれは、なんでしょうか?」

「多分、移動式の見世物小屋でしょ? 時代だから仕方ないけどあんまり良いものじゃないわね。ネロ、ここはいいから、他の所に──」

「歌って踊れる角つき少女! その名もエリザベート~!!」

 

 見世物小屋の男が布を剥ぎ取ると、牢屋に入れられ、死んだ魚のような目で座る、どっかで見たことある少女がいた。

 

「…………… よし、行くわよ」

「ネロ、俺、またテルマエに行きたくなったわ」

「うむ!」

「いや、助けなさいよおォォォ!! 子イヌうゥゥゥゥ!!」

 

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