Fate/Silver Order -選ばれし48人目のマスターは銀髪侍- 作:天パ男
「先輩── あなたが、私のマスターですか」
マシュの問いかけに、銀時は
「‥‥ へ、マスター? あ、ポケモン的な? 新作出たし」
「先輩、いえ、マスター。どうやら私はサーヴァントになったようです」
「あ、俺のボケ、無視? つーかサーヴァント?」
サラッと流された上、更に知らない単語を追加された。
「あ、すみません。先輩はあまり魔術については詳しくはありませんでしたよね」
「ああ、まあな‥‥‥‥ 似たような力を使う連中は知ってるけどよ」
陰陽師結野クリステルや巫女である阿音&百音。それに幽霊 もといスタンド使いであるお岩。
銀時は科学とは対照的な力を持った存在に、意外と多くの知り合いを持っている。
ただ、魔術師なる存在とは出会ったことはなかったが‥‥‥‥
「であれば説明をしたい所、なのですが、後にしましょう。他にも合流すべき人がいます」
「他にもここに来てる奴がいんのか?」
「はい。それも危険な状態である可能性が高いです。なので急ぎましょう!」
「はあ、はあ…… 何なの、何なのコイツら!? なんだって私ばっかりこんな目に逢わなくちゃいけないの!?」
オルガマリーは叫び今にも泣きそうな勢いで骸骨の群れから逃げ回っていた。
爆発に巻き込まれ目を覚ましたかと思えば火に包まれた街に一人。さらに追い討ちをかけるように骸骨、スケルトンが襲いかかってくる。
いったい何故。どうして。自分ばかりがこんな酷い目に逢わなければいけない。何故あんなにも頑張っているのに報われない。どうして助けてくれない。
「もうイヤ、来て、助けてよレフ! いつだって貴方だけが助けてくれたじゃない! どうして…… どうしてなのよ! どうして…… 何で誰もいないのよ……」
オルガマリーにはいつだってレフが側にいてくれた。彼がいつも助けてくれた。だが、ここに彼はいない。
ここには自分一人だけ。カルデアにいる時から、いや昔から何も変わらない。自分は最後まで一人なのか。
「いやーー」
自身の過去を思い返し悔いしかない人生に彼女は気づく。だが、だからといって彼女に新たなチャンスはもう来やしない。それを告げるようにスケルトンの剣はオルガマリーへと降りかかる。
その時だった。
「おらあァァァァァァ!!」
スケルトンの体が横に吹き飛んだ。
吹き飛ばされたスケルトンは周囲の骸骨へとぶつかり何体か一気に消滅してしまった。
「あ……」
「よう無事か。所長さん」
銀色の髪をした着物姿の男。カルデアに侵入してきた自称、異世界人。
「貴方‥‥‥‥ ! な、なんで侵入者の貴方がここにいるのよ!」
「助けてやったんだ、細けーこと言うなよ。それに今はコイツらやんのが先だろ」
木刀の剣先を骸骨たちに向け銀時は不敵に笑う。
オルガマリーはそんな銀時の言葉を信じられなかった。
「あ、貴方、あの数を相手に一人でやる気!? そんな木刀一本で何とかなるわけないでしょ!」
「別に問題ねーよ。さっきも倒したし。それに戦えんのは俺だけじゃねえ」
「なにを──」
ニヤリと笑う銀時にオルガマリーが訝しげに眉を寄せているとそれは現れた。
オルガマリーの頭上を飛び越えスケルトンたちの前に立ち塞がった一人の見慣れた少女。
「マシュ……!?」
マシュは巨大な盾を武器に向かってくる骸骨たちを次々に蹴散らしていった。
それはオルガマリーの知る彼女の姿ではなかった。
勇猛に戦うその姿は戦士そのもの。
「はああああ!!」
骸骨たちは反撃をすることもなくマシュ一人にあっという間に消滅させられてしまった。
マシュは最後のスケルトンを倒し一息つくとオルガマリーに向き直った。
しかしオルガマリーは突然の事態に目を白黒とさせている。
「………………。…………… どういう事?」
「所長。信じがたい事だとは思いますが、私はデミ・サーヴァントになってしまったようです」
「あ…… わ、わかってるわよ、そんなこと! サーヴァントとの融合、デミ・サーヴァント。見れば直ぐにわかるわ!」
「いや、今の今まで忘れてた感じだったぽいけど」
「うるさいわね! そういう貴方はデミ・サーヴァントが何なのか知っているのかしら!」
「はっ。そのくらい知ってるっつーの。あれだろ、あれ。育てると美味しいよねデミ・サーヴァント」
「全然違うわ!」
「所長のツッコむ姿は大変興味深いものですが…… 所長、今はこの現状について状況を整理する事が大事かと」
ツッコミを入れるオルガマリーが珍しいと思いつつも一向に話が進まなそうなのでマシュが割って入った。
「そ、それもそうね…… じゃあ訊くけど、何故今になってサーヴァントとの融合が成功したのかしら?」
「カルデアには特異点Fの調査解決の為、事前にサーヴァントが用意されていたのは勿論所長もご存知かと思います」
『サーヴァント』に続いて『特異点F』と聞き慣れぬ単語が続く状況に銀時は首を傾げているが、マシュは構わず話を続ける。
「爆発に巻き込まれ死の縁にいた私の目の前に彼の英霊は現れたのです。彼は私に契約を持ち掛けました。英霊としての能力と宝具を譲り渡す代わりに特異点の原因を排除してほしいと。それを承諾した結果、私はサーヴァントと融合しデミ・サーヴァントとなったのです」
「そういうことね…… それじゃあもう一つ訊きたいのだけれど、もしかしてマシュのマスターって‥‥‥」
オルガマリーは訝しげな目で銀時を見る。
「はい。先輩、坂田銀時が私のマスターです。その証拠として先輩の手の甲には令呪が刻まれている筈」
「嘘でしょ‥‥‥‥」
「は? お前ら、なんの話して‥‥‥‥ うげぇ!? なにこれ、なんか知らない内に変な刺青彫られてるんですけど!?」
驚き慌てふためく銀時の手には、確かに赤い謎の紋章が刻まれていた。
その様子を見てオルガマリーは頭を抱える。
「なんてことなの‥‥‥‥ よりにもよって侵入者のこの男がマスター。いや、そもそも適正者だったなんて」
「なあ、なんか勝手にガッカリされて腹立ったんだけどよ。結局なんなんだ。マスターだ、サーヴァントだって」
「‥‥‥‥ そうですね。今後のこともありますし、まずは説明をしましょう。マスターの知らないカルデアの目的も含めて」
「それもそうね。いいわ。不本意だけど、所長として私が教えてあげるわ」
カルデアとは人類の未来を観測し保証すること。それは以前、銀時も聞いていた話ではあった。
だが、この話には続きがある。侵入者である銀時には隠していた目的が。
カルデアは未来を観測し続けた。しかし2016年を境に未来の観測ができなくなったのだ。それが意味することはすなわち、人類の絶滅。
カルデアはその原因を探った。その結果、一つの異変を見つけたのだ。
2004年、日本の地方都市である冬木。現在銀時たちがいるこの街の名だ。
この冬木に原因があるとしり、調査解明のため、レイシフト実行を計画。人間を霊子化し過去に送り込む実験のことだ。マシュも含め、カルデアに呼ばれた適正者たちはこの実験のために集められたのだ。
本来ならば、この場にはマスター適正者、48名(結局集まりきらず47名だが)がいなければならない。しかし突然官制室が爆発した結果、銀時たち三人と一匹がレイシフトされてしまったというわけだ。
そしてサーヴァントについて。サーヴァントとは歴史に名を刻んだ英雄達の総称である。
英雄達を使い魔、サーヴァントとして召喚し使役する、魔術世界の中でも最上位とされる奇跡の力。召喚された英雄、この場合は英霊と呼ばれる彼等は規格外の力を有する。神秘の付属されていない攻撃では決して傷をつけることができない等、魔術世界においては最強の兵器ともされている。
更にサーヴァントには七つのクラスが存在する。
セイバー ランサー アーチャー ライダー バーサーカー キャスター アサシン
英霊たちの逸話と能力により当てはまるクラスは変化するようになっているのだ。
「と、まあ。色々かいつまんではいるけれど、カルデアの目的やサーヴァントに関して、理解できたかしら? 侵入者」
「‥‥‥‥ まあ、大体はな。かなり頭痛のする話だが、俺の世界にもスタンドはいたし、そこまで驚きはしねーよ。信長とかいたし。ブリーフだけど」
ブリーフ‥‥ ?と困惑するオルガマリーを他所に、銀時は話を続ける。
「そーいやよ。サーヴァントについてはわかったが、マシュのそのパワーアップはなんなんだ? さっきはデミ・サーヴァントとか言ってたが、マシュは別に英霊じゃねーだろ」
「それは──」
ピピピピピ!!
突然、マシュのつけていた腕輪から電子音が響いた。
マシュがボタンを押すと、聞き慣れた男の声が。
『やっと繋がった! レイシフトの形跡があったからダメ元で通信をかけていたんだが、本当に良かったよ。マシュ‥‥‥‥ に銀時君!? え、なんでいるの。そ、それに所長まで!? あの爆発で生きていたのか、どんだけ!?』
「それ、どういう意味よ! それにロマニ! 何故、貴方が通信をかけてくるの! 他のスタッフ、レフは、どうしたの!」
『所長…… 言いづらいのですが、レフ教授はあの爆発の中心部に…… 生存は絶望的かと……』
「は? え、そん、な……」
レフの死。オルガマリーは信じられないと思いながらも否定できない現実に体を震わせた。
『現在生き残ったカルデアの正規スタッフはボクを入れて二十人に満たない。ボクが作戦指揮を任されているのはボクより上の階級の生存者がいないためです』
ロマニの説明は絶望に陥っていたオルガマリーをさらに追い詰めるものだった。
オルガマリーは顔を青白くさせ、通信越しにロマニへ詰め寄る。
「ちょっと待ちなさい! 二十人にも満たないって…… それじゃあマスター適正者たちはどうなったのよ!」
『全員…… 危篤状態です。医療器具も足りませんので全員を助け出すのは……』
「ふざけないで! すぐに凍結保存に移行しなさい。蘇生方法はあとまわし、死なせないのが最優先よ!」
『……! 至急手配します!』
ロマニは慌てて生き残っている数少ないスタッフたちに所長の命令を伝えた。
これで一先ず命をとりとめる事ができたと安堵する。
「所長、よろしいのですか。許可のない凍結保存は犯罪行為に当たりますが」
「構わないわ…… 生きてさえいれば後でいくらでも弁明できるもの。それに、47人の命を私一人で背負いきれるわけないじゃない……!」
オルガマリーの声は微かに震えていた。どれだけ威厳を保とうとしていても彼女はまだ人の上にたてるほどの器をもちあわせてはいない。
それは彼女自身が誰よりも理解している。しかしそれでもだ。
「こんな所で立ち止まっている場合じゃない。凍結保存が済み次第、ロマニも交えて、今後の作戦を立てるわよ!」
オルガマリーは自身を奮い立たせるように、現場指揮を続ける。