Fate/Silver Order -選ばれし48人目のマスターは銀髪侍- 作:天パ男
橋の上に立ち銀時たちを見下ろすのは、髑髏マスクのサーヴァント。
最初に倒した髑髏マスクのサーヴァントとは違い、胸がありポニーテールの青い髪から女性であることがわかる。
オルガマリーは髑髏マスクのサーヴァントに捕まっていた。
フォウはどうせ何も出来ないと思われているのか、オルガマリーの肩にしがみついたままで、特に何もされるわけでもなく放っとかれている。
「所長!」
「おま!? なに捕まってんだ! つーか、また髑髏野郎かよ! まさか複数いんのか!?」
銀時の疑問に、髑髏マスクのサーヴァントは答える。
「オマエタチガ倒シタノハ、ワガ分体。我々ハ郡ニシテ個ナノダ。見ルガイイ」
橋と銀時たちの間。もう一人、髑髏マスクをサーヴァントが現れる。
橋の上にいる髑髏マスクとは違い、長身痩躯の男性の姿をしていた。
「クク。私ハ基底ノザイード‥‥‥‥」
「おいおい。一人で何人分だよ、こいつら」
「コレゾ我ガ宝具。サテ‥‥ 本題二入ロウカ」
「ひっ」
髑髏マスクのサーヴァントは捕らえたオルガマリーをチラリと見る。
オルガマリーは涙を浮かべ、体を小刻みに震わしていた。
「コノ女ト、コノ‥‥‥‥ リス‥‥‥‥ ? イヤ、ナンデモイイ。コノケモノヲ助ケタケレバ、ギンパツノオトコヨ。キサマノイノチヲサシダセ」
「っ!?」
敵の要求を横で聞いていたオルガマリーは、ただでさけ血の気の引いた顔をより青く染め上げた。
銀時が自身の命を身代わりにしてまで、オルガマリーを助けてくれるなど到底思えない。
ついさっきまでだって言い合っていたばかりなのだ。最早自分が助かる道はない。
「い、いや『わかった』え?」
思いもよらぬ銀時の返答。オルガマリーは、何を言っているんだと目を丸くした。
マシュも血相を変えて叫ぶ。
「マ、マスター! 何を言っているんですか!! 止めてください!」
「わりぃ、マシュ。今は黙っててくれや」
止めようとするマシュに対し、銀時は顔も向けずに言う。
「あ、あなた何を言って──」
「だが、その前に教えてくれよ。なんで俺の命を狙う? 最初に出くわした髑髏マスクも俺を執拗に狙って来やがったが」
「決マッテイル。オ前ハ異物。ソレニクワエテ、コノマチデエ唯一ノマスタートナッタ。オマエハ邪魔ナノダ」
動揺するオルガマリーは無視され、話は勝手に進められていく。
こいつらが何を目的にしているのかは知らないが、とにかくマスターである銀時は障害になりかねないらしい。
「はあ‥‥‥‥ こっちは巻き込まれただけだっつーの。まあいい。わかった。ただ、俺は切腹とか絶対無理だからよ、介錯はお前か、そこの男の方のお前のどっちかやってくれや」
「‥‥‥‥ イイダロウ。デハ、マズハボクトウヲステロ」
「へいへい。お前ら相手だったら、木刀があってもなくても同じだと思うけどね」
銀時はサーヴァントの言いなりになり、木刀を投げ捨てた。
その動きを見てオルガマリーは益々わけがわからないと、恐怖すら忘れていた。
銀時に対して己が良い対応をしてこなかったことは、オルガマリーが一番自覚している。
「なによ、なんで。なんで、なんで!」
「ム? オイ、女。黙ッテ‥‥‥‥」
「ふざけんじゃないわよ! 部外者の癖に! 私に、あれだけのこと言われたのに!」
オルガマリーは叫んだ。意味がわからない。あり得ないと銀時の行為を否定する。
せっかく助かるかもしれない可能性を投げ捨てまで、オルガマリーは自身の思いを叫び続ける。
「私は、私は‥‥‥‥ 貴方のことを信じられないって言ったのよ! 侵入者だからってずっと閉じ込めたし! それに腐れ天然パーマーモジャンボニート侍とか影で言ってたし!」
「腐れ天‥‥‥‥ !? テメェ、んなこと言ってたのか!」
「なのに! なんでよ! なんでなのよ! どうして嫌われ者の私のためにそんなこと出来るのよ! なんの関係もない貴方が!」
オルガマリーとて死にたくない。そもそも本当のところは、とんでもなく臆病だし、こんな戦地に出向く覚悟だって持ち合わせていない。
だがそれでも、それ以上に、プライドが高く、それでいて自分というものに自信を持てなかった彼女は認められなかったし、信じられなかった。なんの関係もなかった筈の銀時が嘘をついてまで、自身を犠牲にしようとしていることを。
他者から疎まれ続けた筈の彼女を、赤の他人が救おうとしている事実を。
「死にたくない! 死ぬのは怖い‥‥‥‥ ! でも、でも! 私の為に、関係のない貴方の命まで、犠牲にはしたくないわよ!」
「‥‥‥‥ うっせーな」
「は?」
「そんな偉そうなこと言える立場か、お前は。つーか、なんだ? 死にたくないのに俺の命取られるのは嫌だとか、どんだけわがままお嬢様だ。流行りの悪役令嬢か、テメーは」
「せ、先輩?」
思わぬ銀時の返答にオルガマリーは呆けた顔になる。マシュも、思わず先輩呼びに戻ってしまう程に、動揺していた。
「だが、まあ。おかげでお前のことがよーくわかった。最初は傲慢ちきの高飛車女だと思ってたが。いや、まあ実際その通りだけどよ」
「な、なんですって!?」
「だが、悪い女じゃねえ。良い女だよ、お前は。少なくとも、他人の、それも嫌ってる俺の命を思ってくれる程にはな」
「え‥‥‥‥」
「いい女ってのはな、幸せにならなきゃいけねーもんだ。って長谷川さんが言ってた」
「‥‥‥‥ 誰よ、そいつ!」
無茶苦茶だ。オルガマリーは、なぜ、そこまでしてと益々意味がわからなくなる。
恐らく銀時に何を言っても止まらないだろう。だがそのおかけで、意味嫌っていた男の命を犠牲にし、己は助かるのだ。
オルガマリー自身がそれを許さないと思っていても。
「クク‥‥‥‥ 自身ノ命ヲ犠牲ニスルトハ見事。敬意ヲ持ッテ、キサマノ命ヲイタダコウ。ソシテ死ヌ前ニ聞クガイイ!! 我ガ異名(自称)ヲ!」
最早抵抗する気のない銀時の様子を見て、男の髑髏マスクが高らかに叫ぶ。
「我ガ名ハザイード!! 暗殺オ『アンザス』ウッテギャアアアアア!!?」
ザイードが異名を名乗り切る前に、突然彼の体が発火した。
火に全身を包まれ、断末魔と共にザイードが消滅する。
「バガザイード!! イヤ、ナンダ! ダレダ。ドコニイル!!」
銀時たちは勿論、分体が死に、髑髏マスクの女も驚き左右を見渡し始める。
オルガマリーも、また驚き呆然としている。すると彼女の脳内に直接、誰かの声が聞こえてきた。
「なにが‥‥‥ 『おい、嬢ちゃん』え」
聞き慣れない男の声。これは恐らく魔術によるものだろう。
『聞こえてるなら、直ぐにその場から離れろ。あー、あとそれと気に入ったぜ、あんたらのこと』
「っ!? ああああ!!」
髑髏マスクの女は動揺し、隙が出来ている。チャンスはもう今しかない。
オルガマリーは勇気をだし、髑髏マスクの女の手を振り払い、その場から逃げ出した。
「ナ、キサマ!?」
勿論、このまま逃がすような髑髏マスクの女ではない。即座に捕まえてやろうと動き出す。
しかし、
ズオ!!
「ガハッ!?」
突如、髑髏マスクの女の足元から巨大な藁人形の頭が飛び出してきたのだ。
髑髏マスクの女は藁に体を取り込まれ、身動き一つ取れなくなってした
「我が魔術は炎の檻。茨の如き緑の巨人。因果応報。人事の厄を清める杜──」
何処からか。魔術の詠唱が聞こえてくる。
それと同時に藁人形は全身を露にする。それはあまりにも巨大で、魔術を知らぬ銀時にも、これがどれだけ大規模な力なのかを理解することができた。
「おいおい、コイツは‥‥‥‥ !」
「焼き尽くせ。木々の巨人
藁人形如、髑髏マスクの女が燃えていく。やがて藁人形は完全に燃え付き、女も光と共に消えていった。
戦いを終えた銀時たちの前に一人の男が現れた。
藍色の長髪と深紅の瞳、美青年というよりは荒々しく野生感のある男らしい顔立ち。
筋骨隆々な肉体には少々不釣り合いと思われる、魔術師然としたローブ姿。
男は銀時たちを見るとニヤリと笑う。
「さて自己紹介といこうか。オレのクラスはキャスター。そんで真名はクー・フーリン。他のと違って話の通じるサーヴァントだ。よろしく頼むぜ、何処ぞの時代の漂流者さんよ」
『ク、クーフーリン!? 本物の大英雄じゃないのか!』
「ええ‥‥‥‥ ! それにさっきの連中と違って、確かに話は通じそうではあるけれど‥‥‥‥」
通信越しに、椅子に座って話を聞いていたロマニは驚き、思わず立ち上がった。
オルガマリーも真名を聞き、驚きつつも警戒した様子でいる。
「おいおい。せっかく助けてやったってのに、そんな警戒すんなよ。銀髪の兄ちゃんに
「当然でしょ! 下手したら私も炎に巻き込まれてたのよ!」
オルガマリーはクーフーリンの宝具を思い出して怒鳴った。銀時の右腕に自身の腕を絡めてくっつく姿で。
「いや、なんでだよ」
「あた!? なにするのよ、銀髪!」
「オメーも銀髪だろーが。なんでくっついてるんだって聞いてんの」
銀時は、何故か己にひっつくオルガマリーの頭頂部に空手チョップをくらわせた。
オルガマリーは、未だに銀時に腕を絡めたまま、不服そうに睨んでいる。
「あ、当たり前じゃない! さっきも言ったけど私は死ぬのが怖いの! だから、あ、あなたに守ってもらわなきゃ!」
「だったらマシュにへばりつきゃいいだろ」
「え‥‥‥‥ い、いやダメよ! マシュは戦闘要因なんだから、私がくっついてちゃ戦えないでしょ。そ、それに‥‥‥‥ 認めてくれたじゃないのよ‥‥‥‥ 私のこと」
「は? なんて」
オルガマリーの声が段々と小さくなっていく。
「いや、だから。その私をいい女だと‥‥‥‥ ゴニョゴニョ」
「え、なに? ポケモン?」
「そりゃゴニョニョだろーがあァァ!! なんで最後のゴニョゴニョだけ聞こえるのよ! この朴念仁!」
オルガマリーは今まで人から一度も認められたことがなかった。
これまで所長としてカルデアを維持する者として振舞い上にたつ者としての責任を背負いつづけていたものの、彼女の努力は認められず、それどころか職員の多くからは疎まれ嫌悪されてきた。
だからこそ、絶体絶命の状況下という事も相まって銀時の言葉はオルガマリーの心に大きく響いたのだ。
生まれて初めて、自身のことを認めてくれた存在。それも端から見れば口説き文句のような台詞を言われたのだ。
銀時に対する印象が180°変わっても仕方がない。
とはいえ銀時はオルガマリーの気持ちのことなど、これっぽっちも気づいていないので、気の効いた言葉などかけられる筈がない。
結果二人はクーフーリンそっちのけで、あーだこーだと言い争いを始めた。
すると突然、ガンッ!! と大きな音が後ろから響き、二人は口を閉じて振り返った。
そこには拳を握りしめて、ニコニコと笑うマシュがいた。
「おや? 何処かでガレキでも崩れたのでしょうか? 所長もマスターも。クーフーリンさんが困っていますよ。話を続けましょう」
「あ、はい」
「なんか、すいません」
謎の威圧感に圧倒されたオルガマリーと銀時は、マシュの言葉に素直に従った。
ちなみにオルガマリーは、マシュから目を逸らしつつ、銀時から離れた。
「関係が良好そうで羨ましい限りだよ。で、早速だが本題に入らせてもらう。あんたら、俺と手を組まねえか?」
「‥‥‥‥ 手を組む、ね。まあこっちとしちゃあ、棚からぼた餅だが、なんでそんな提案してくる? お前さんにメリットはあんのか?」
先程の戦いから、クーフーリンの実力は中々のものであることがわかる。
それに対し、こちらはお世辞にも戦力として数えるには強いとは言えないのに、態々向こうから接触してくるとはどういうことだろうか。
「そりゃあ簡単な話。あんたらがさっきの奴等に比べれば百倍マシだからだ。それと‥‥‥‥」
クーフーリンはチラリとオルガマリーを見る。
「嬢ちゃんにはもう言ったが、あんたらを気に入っちまってね。となりゃあ手を組むのも道理だろ?」
「‥‥‥‥ 要は俺ら以外に、この街にはまともな人間がいないってことか」
「理解が早えーじゃねーか。ま、そういうことだ。この街には、もうあんたら以外に人間はいねえ。街を炎が包むと共に全て消えてしまった」
『っ! まさか‥‥‥‥』
銀時の推測をクーフーリンは肯定する。
通信を聞いていたロマニは、そんなバカなと顔を青ざめた。
「あんたらの事情は大体分かるが‥‥‥‥ この時代の正しい歴史ってのが、何なのかはわからねえ。だがそれでもわかることは一つ。俺たちの聖杯戦争は完全に狂ってしまったということだ」
「聖杯戦争‥‥‥‥ ! そうだわ。確かに、この時代の冬木では聖杯戦争が行われていた」
「聖杯戦争?」
銀時がなんだそれ? と首を傾げていると、ロマニが聖杯戦争についてざっくりとではあるが、説明をしてくれた。
『聖杯戦争とはある種の儀式のことなんだ。戦争といっても国と国とよる大規模な戦いではなく、選ばれた七人の魔術師とそれぞれに召喚されたサーヴァントよる表には決して知られる事はない秘匿された戦い。この戦いに勝ち残った魔術師は聖杯を得る事ができるんだよ』
「聖杯?」
『聖杯とはあらゆる魔術の根底にあるとされる魔法の釜。聖杯は万能の願望機と呼ばれ持ち主のあらゆる願いを叶えてくれるとされているんだ』
「無茶苦茶うさんくせー話だな。んな眉唾もんに命を賭けるくれーならドラゴンボール探した方がマシだぜ。つーかこの街がこんな有り様なのは、その聖杯戦争が原因なんじゃねーのか?」
銀時の疑念を聞き、オルガマリーも同意し、頷く。
「そうかもね…… でも、少なくとも歴史がこうして改編される前はそんな事はなかった筈よ。サーヴァントも魔術師も、存在は全て秘匿され歴史の表舞台に立つ事はなかったわ。それがどうしてこうなってしまったのか、原因は不明だけれど」
オルガマリーは視線をキャスターへと移し、こうなった原因はなんなんのか。眼だけで問いかける。
「さて、なんでこうなったのかは俺にもわかりゃしねぇ。ただわかることは一つ。聖杯戦争は再開された。ほぼ無理矢理だが、ある一人の騎士によってな」
『それも、サーヴァントですか』
「ああ。サーヴァント、セイバー。奴さん、水を得た魚みてぇに暴れだしてよぉ…… セイバーの手でアーチャー、ランサー、ライダー、バーサーカー、アサシンが倒された。そして倒されたサーヴァントはさっきのランサーやアサシンよろしく真っ黒な影に覆われサーヴァントとしての自我を失った」
「そんな‥‥‥‥」
誇り高き英霊たちが自我を失い、街を彷徨い続けている事実を知り、マシュは胸を痛める 。
本物ではないといえ、同じくサーヴァントになったマシュだからこそ、感じる痛みだった。
「まあ、そう気を落とすなよ盾の嬢ちゃん。連中も俺も所詮は影法師。元々、魔力や聖杯がなけりゃあ消えてなくなるような存在だ。それに、あんたらが倒してくれたおかげで連中もすっきり成仏しただろうよ」
「そうだといいのですが‥‥‥‥ そういえば、他の自我を失ったサーヴァントの方々は何処にいるのでしょうか? 少なくともあと、三人はいると思うのですが」
「黒いライダーはあんたらと会う前に仕留めた。バーサーカーに関しては放っておいても問題はねぇだろ。力はあるが理性がねえ分、こっちから手を出さなきゃ襲ってはこねえ。アーチャーも残っているが、セイバーにひっついていやがる。セイバーを狙えば、必然的に相手をすることになるだろうな」
『セイバー‥‥‥‥ 聖杯戦争を再開した原因か。もしかして、そのセイバー、そしてアーチャーを倒せば──』
ロマニの推測を聞き、クーフーリンは頷く。
「ああ。聖杯戦争は終わる」
「成る程ね…… 恐らくこの時代のこの時間において大きな出来事である聖杯戦争を終わらせる事ができれば、この特異点Fの異常もおさまる可能性が高いわね。でも居場所はわかってるの?」
「ああ…… この土地の心臓──」
キャスターの視線は都市から離れた山へと向けられる。
「大聖杯の眠る地に奴はいる」
この特異点の最大の壁、セイバー。立ちはだかるであろう最大の敵。
それぞれの思いを胸に銀時たちは原因解明の為、大聖杯に向かうこととなる。
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