Lostbelt No.■.■■ 昏き■■の玉座   作:KEI (~ ̄³ ̄)~

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前回、GW中には投稿したいと申しましたのに遅くなってすいません。
忙しかったのもそうですがスマートフォンが故障してデータ消えてやる気なくしてました。
IDとパスワードメモしてて良かったです。
でも書いていたアルフ降臨時のイラストと令呪デザインが消えてしまって…

とにかく空いてる時間にコツコツと執筆したので読んでくれると助かります。



アーケード、ネモ引けません。すり抜けでオジマンディアスがきました…
お金が……………………



























Episode10 降臨

 

 

 

 

「さあ。始めよう、カイニス!これが、最後の『人間同士』の戦いだ!」

 

 

 

 キリシュタリア・ヴォーダイムが純白の外套(マント)

を広げ高らかに宣言した。それを合図に神霊カイニスが「待ちくたびれたぜ、キリシュタリア!」と疾走する。

 

「くたばりやがれ!カルデア!」

 

 槍を手にしたカイニスがカルデアに猛スピードで迫る。

 

 「マシュ!」

 

 それに対し、藤丸立香はカイニスの槍による攻撃をマシュの盾で防ぐように指示する。マスターの指示に従いマシュが勢いのあるカイニスの攻撃をガードする。そして、その間に藤丸立香は「霊基グラフ」を起動させる。

 

「抑止の輪より来たれ!天秤の守り手よ!」と声を上げ、簡易召喚により赤を基調としたサーヴァントを喚び寄せた。

 

「サーヴァント、セイバー。ネロ・クラウディウス。呼び声に応じ参上した」

 

 藤丸立香が召喚したサーヴァントは、第ニ特異点『永続狂気帝国 セプテム』で歴代の皇帝が存在している連合ローマ帝国に統治していた国が侵攻を受け、窮地に陥っていた戦場で出会い縁を結んだネロ・クラウディウス、後年は暴君として語られたローマ五代目皇帝であった。

 

「ネロ陛下、力を貸してください」

 

「うむ、藤丸、マシュよ、余を上手く扱うが良い!余も上手く扱ってやろう」

 

「はい!なんとしても勝ちましょう!」

 

 藤丸が意思のこもった強い言葉と共に敵対するマスターを見据える。キリシュタリアもカルデアのマスターから目を逸らさない。

 

 

 そして、彼もまた自身が信頼するサーヴァントに力のある言葉を告げる。

 

 

「────カイニス。その魂に、黄金の誇りを与えたまえ」

 

 

 

 さらに力を纏ったカイニスが再度疾走する。「おらあ!」と男の声色を発し攻撃を仕掛ける。

 

「ネロ陛下、頼みます!」

 

「うむ!華麗に舞うとしよう」

 

 カイニスとネロがぶつかり合い、槍と炎を纏った剣が重なる。マシュをそれを傍観する気はなくカイニス打倒のため盾による攻撃を試みる。

 

 槍と盾、槍と剣が二十合と打ち合った両者一旦下がり間を取り直すとキリシュタリアが称賛を送る。

 

「本当に素晴らしい!それでこそ我々でない新しいカルデアのマスターだ」

 

 その称賛に対し藤丸もキリシュタリアに言う。

 

「俺はなんとしてもカイニスを倒す。そして貴方に勝つ!」

 

 藤丸立香の目に力の衰えはない。その目は姑息な手は打たず正面から受けて立つという意志が見て取れた。

 

 キリシュタリアは"数多の経験"からここで彼の宝具を開帳することが最善と判断し宝具の使用を許可した。

 

「────なんの。神霊カイニス()の力を甘く見ないでほしいな。カイニス宝具の開帳だ」

 

 カイニスが槍を目前に持ち上げると同時に彼の力が膨れ上がる。

 

 

 

「"高く" "もっと高く" "どこまでだって俺は飛べる"」

 

 

飛翔せよ、我が黄金の大翼(ラピタイ・カイネウス)

 

 

「「マシュ!」」

 

 ネロ・クラウディウスとマスター、藤丸立香が言う。

 

「大丈夫です、マスター!必ず止めます!」

 

 

 

「オルテナウス、疑似リンク開始」

 

「真名、凍結展開。これは多くの道、多くの願いを受けた幻想の城───呼応せよ!

 

いまは脆き夢想の城(モールド・キャメロット)』!!」」

 

 

 

 

 2つの大きな矛と盾が交わる。

 

 周囲には大きな衝撃波が伝播し、視界が遮られる。

 

 そして、お互いのサーヴァントは仕切り直しの意味も込めてそれぞれ交代する。

 

 攻防は拮抗していた。キリシュタリアのサーヴァントである神霊カイニスも「クソ、しつこい上に面倒くせえなコイツら」と悪態をついている。

 

 

 

 

 

 

 そして、その攻防をはるかなる高みから見下ろす者がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ローマ五代目皇帝、か。人間によって多くの説が積み上げられた。自らの民に責め立てられ、濡れ衣を着せられ、裏切られ、見棄てられた皇帝。『666』の獣の数字。彼女に取り憑いた『悪魔』の内の一体と語られた少女。そして、本来(・・)の第六の………」

 

 

「貴様が人を、人理を、守るというのか?母の愛も父の愛も知らず、人の愛すら知らずに失意のどん底の中人生を終えた貴様が。

 ───────ネロ・クラウディウス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいキリシュタリア!なに出し惜しんでやがる、アレやってくれアレ!」

 

 悪態をついたカイニスが自身のマスターを対して物申す。その申し出に対してキリシュタリアは困惑した表情をする。少し考えた様子で答える。

 

「む?アレというと?────もしや、海岸で見せたあのことか?オフェリアの前で脱ぐわけには───」

 

「こんな時に狂ってるのかキリシュタリア!テメェの女の前で何やろうとしてんだ!」

 

 

「(ぬ、脱ぐって一体なにかしら?それにキリシュタリア様の女って!!!!)」

「(脱ぐって一体何のことだろう?)」

 

 混乱するオフェリアとカルデアのマスターを他所にカイニスはキリシュタリアにアレのことを教える。

 

「こんな時に勘違いしてんじゃねぇ!そっちのアレじゃなくお得意の隕石の方だ!アトランティスじゃあ見られなかったからなァ!一度は味方(こっち)側で悠々と拝ませろ!」

 

「ああ、惑星轟の話か。もちろん勘違いなどしていないし出し惜しみもする気はない。

 だか───時間のようだ。すまないが、ほんの十数秒手を止めてくれるかな、藤丸立香」

 

 

「「え……?」」

 

 当然の停戦要求にマシュと藤丸立香の口から一音漏れる。そして簡易召喚されていたネロ・クラウディウスと擬似サーヴァントであるマシュが空想樹内の変化に気づいた。

 

「! 藤丸よ!」

「! マスター!」

 

「空想樹内部の魔力反応、急速に上昇!危険です、距離を取って……!」

 

 マシュのマスターへの警戒を合図に一般人の藤丸立香にもわかるような変化が現れ始めた。

 

「空から、何か降りてきている……!?」

 

「空想樹の中身が……消えた?いや、違う。中に何か見える。アレは───巨人? 人の形をしているような───」

 

 ここまで藤丸立香と一緒に行動してきたマカリオスも空想樹の変化に目を奪われる。

 

 

 そんな状態の中足音が一つ。

 

 

「ンン!ンンンンンンンン!!あれこそは我ら使徒が呼び出された理由、"異星の神の使徒"が待ち続けた神の玉体が降臨される予定だった(・・・)もの!!」

 

 

「リンボ!」

「!─────────」

 

 

 そこに現れたのはリンボと名乗った異星の神の使徒。

 

 

「"異星の神の使徒"としてはこう言うべきでしょう!よくぞ人の身でここまでたどり着いた見事なりクリプターのリーダー、キリシュタリア・ヴォーダイム!───と」

 

「さあさあ!事はこれにておしまい。人類もこれにておしまい!私の主(・・・)の、あの御方の降臨は誰にも止められない!」

 

 

 

「…………空想樹が育ちきり、その虚ろが満たされた時、『異星の神』は降臨する。この地球に肉体を持てない『異星の神』が空想の樹を器にして顕界する。君たちカルデアの大召喚器アイテールと同じようなものだ。まさしくゲームセットだ」

 

 

 

「っキリシュタリア!今すぐ、あなたを倒す!」

 

 

 

 

 藤丸立香が吠えるように言うがこの盤面は既に詰んでいた。いや、この盤面は藤丸立香とキリシュタリアのものではなく─────────。

 

 

 

 

 

「ンンンンン。ンンンンンンンンンンンンンンンン!駄目、駄目ですよぅ、藤丸立香!よい威勢ですがあの御方の前ではあまりにも無力!私の王(・・・)の降臨を見守らなければ!」

 

 リンボが攻撃態勢を整えようとするカルデア一行に呪符で妨害する。血の爆発が藤丸立香の周りで発生し思うようにキリシュタリアへ攻撃を放つことができない。ホームズの力を借りマシュの盾でリンボの呪符による一撃を防いでネロ陛下に接近して撃破した方が良い、このままではダメだと藤丸立香が考えているとキリシュタリア・ヴォーダイムが意外な言葉を呟いた。

 

 

「だが、『異星の神』が降りるべき場所はここにはない。見てみるがいいリンボ、そして新しきカルデア。私の空想樹の中には、何が捧げられているのかを」

 

 キリシュタリアの言葉にこの場に集った者すべての手が止まる。そして、空想樹の内側を確認するように促す。

 

 

「やっぱり空想樹のなかに何かいるぞ!あれは人の形?巨人のような……」

 

 マカリオスが最初に感じていた違和感を再度口にする。

 

「─────ふむ。空想樹の何に直接召喚されたサーヴァントがいるということか。あの影の大きさ、そして空想樹の名前────キミが空想樹内部に直接召喚したサーヴァントは、世界を支え続けた巨人、神霊アトラス。違うかなミスター・ヴォーダイム。そして、ミス・ファムルソローネ。」

 

 マカリオスの言葉を受けた世界的名探偵がそれを補うかのように説明する。

 

「ええ。流石はシャーロック・ホームズ。あれこそはキリシュタリア様が召喚した三体目の神霊、汎人類史においてギリシャ世界の礎となった巨神アトラス」

 

「む、アトラスとは如何なる者なのだ?」

 

「ネロ陛下。オリュンポス神との戦いに敗れ、罰として天空を支える役目を受けた後にギリシャ神話の礎となった巨人です。それを事前にキリシュタリアさんが……?」

 

「そうだ。彼には相互理解の末、私の計画に賛同してもらった。この地球を『異星の神』に渡すためでなく。新しい神代の世界にするために」

 

 マシュの疑問に『異星の神』への叛逆を明確にした男が答えた。

 

「え?でもあなたは異星の神の降臨のために……異星の神に逆らうの?」

 

 なぜこのような行動を取ったのか藤丸立香には理解が叶わず説明を求める。

 

「私ははじめから従ってない。『異星の神』とは対等に取引をしていただけだ。『異星の神』の蘇生によって、汎人類史とは相容れない体になってしまいはしたが………私は、『異星の神』の為に人理を覆そうとしたのではない。『異星の神』を排斥する為、私は汎人類史から離れた。私は人の未来、可能性を信じてここまでやってきた」

 

 

「令呪を持って命じる。巨神アトラス『異星の神』との交信を途絶を開始、新たな法則(テクスチャ)の生成を」

 

 

 ここにきっぱりと『異星の神』への反抗を宣言した。叛逆した男が天に右手を掲げると赤い光が手袋越しのその手に纏わる。

 次の瞬間アトラスの空想樹の天輪が赤色に変化した。

 

「たった今アトラスに命じて『異星の神』との交信を遮った。これでアトラスを排除しない限り『異星の神』の降臨はかなわない」

 

「では……キリシュタリアさんは『異星の神』から地球を守る為に……?」

 

「……そう簡単な話なら良かったのだがね。そうではないのだろう、キリシュタリア、オフェリア?」

 

 マシュの申し立てに名探偵シャーロック・ホームズが否定する。それは違う、間違っていると。

 

「私にもようやく見えてきた。キミたち、いや、キリシュタリア・ヴォーダイム、キミが何に対しての脅威なのか、が」

 

 藤丸立香にはホームズの語った「何に対しての脅威なのか」がわからなかったためホームズに会話の主導権を譲る。

 

「─────その通りだ。カルデアの賢者。先程のアトラスの件といい、この件といい、大神ゼウスにその知恵を乱されていながらのその考察力、解析力、恐れ入る。」

「私は『異星の神』による地球支配を望まない。だが、汎人類史への帰順もあり得ない」

 

 世界的名探偵を称賛した後、キリシュタリアは力強い、意志の籠もった声でそれを告げ知らせた。

 藤丸立香もマシュもオリュンポスの双子、アデーレとマカリオスも困惑した表情をする。

 

「言っただろう?私は人の未来、可能性を信じてここまでやってきた、と。人類の未来ではなく、人の未来、だ。私は汎人類史を守ろうとも、これまでの人類史を最適だとも考えていない。空想樹を使うのは『異星の神』か、私か。どちらでも同じなんだよ、藤丸立香、マシュ・キリエライト」

「私は汎人類史の未来を選べない。未来を選べるのは君たちカルデアだけだ」

 

 真っ赤になっていた空想樹にまた変化が現れる。今度は白く光りだした。その様を神妃エウロペは「世界を滅ぼすものではあるのだけど―――とても、暖かくて―――」と表現した。

 藤丸立香は目の前に佇む男の目的がわからなくなっていた。だから問うた。「おまえの目的は何なんだ、キリシュタリア!」と。

 

 

 すると彼は答えた─────人理の新生と。

 

 

 そして彼は言った。

 

 

「─────私は、ここに人智の敗北を宣言する。

"私たちでは、この先には進めなかった"と。人間は正解を選べない生き物だ。当然、私も含めて」

 

「幾たび悩み、幾たび争い、幾たび繰り返そうと、我々の歴史が『正しい結果』を示すことはないだろう。なぜか?言うまでもない。人間という生命では、この先に展開はないからだ」

 

「私たちはあまりにも弱い。個人の話ではない。全体の話だ」

 

「他者を愛し、認め、尊ぶことができるのは、そういった環境にいる者だけ。人間の知性行動は根本的に他者から奪うことで成り立っている」

 

「理想郷はどこにもない。犠牲者を生まない世界はどこにもない。汎人類史という地獄がそれを証明している。だが、だからといって諦めることはできない。妥協することはできない。後退することは、許されない。()に絶望するなど以ての外だ」

 

「私の目的は単純だ。今の人間では無理だというのなら、これを変革する。人間が種として弱いのなら、これを強くする」

 

「─────そう。これより、

この地球に生きる全ての人間は生まれ変わる(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 藤丸立香の前に立ちふさがる男の言葉はまだ続き、そして最後にこう締めくくった。

 

 

「これが私の結論。私の破神計画。人類はこの日を以って、神という概念を撃ち落とす」

 

 

 彼の、キリシュタリアの計画を聞いて、何より彼の内に灯る強い強い意志を聞いて、すごい、彼に道を譲るべきだという考えが一瞬ちらついた。

 だけど───────

 

 

 

 

『────戦え、少年。僕は信頼している。人間にはその責務に耐えるだけの、強靭(つよ)さがあると!』

 

 

 

『俺に幸福な世界があることを教えてしまった失敗を、絶対に許さない。だから立て(・・・・・)立って戦え(・・・・・)。おまえが笑って生きられる世界が上等だと、生き残るべきだと傲岸に主張しろ。胸を張れ。胸を張って、弱っちろい世界のために戦え』

 

 

 

『征け。カルデアの者たち。戦いに敗れ、地に倒れ伏し我らを……幾百、幾千、幾万の……無限無量の炎と氷、そして想いの屍を超えてを─────おまえたちは、征くがいい』

 

 

 

『─────いいだろう。賭けに乗ろう。編纂事象の将来を汎人類史に委ねる。見事、栄華を極めてみせよ』

 

 

 

『そうか。凄いな、貴殿たちは。その心の強さ、純粋に、敬意を表する。……さらばだ。負けるなよ、戦友』

 

 

 

 ─────これまでの異聞帯を思い出す。

 

 

 

 

「……君はどう思う、藤丸立香。私の計画には賛同できないか?」

 

 

 眼の前の男の目を見て話す。まずは自分の思ったことを。

 

「こんな状態でなければ、凄いことだと思う。でも─────」

 

 凄いことだ思ったのは嘘偽りはない。でも、おまえの、いやあなたのその結論は…………

 

「その結論は、受け入れられない。その結論は、『異星の神』と変わらない」

 

 その返答にキリシュタリア・ヴォーダイムは眉をひそませ何かを教えようとしていたがそれは遮られた。

 

 

「ンンンンン!ンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンン!!!!」

 

 

 

「「「「「!!!」」」」」

 

 

 

 藤丸立香は遅れて気がついた。キリシュタリアの破神計画があまりにも壮大過ぎてこの場に異星の神の使徒リンボがいたことを。

 

 

 そして、そのアルターエゴ・リンボは───────

 

 愉悦に満ちた表情で笑っていた。

 

 『異星の神』への裏切りが判明したにも関わらず。

 

 

 

「ええ!キリシュタリアヴォーダイム、我々はわかっておりましたとも!あなたの空想樹の内部に巨神アトラスが居座っていことも!これでは『異星の神』が降臨できないことも!あの方はすべてを見通していた!」

 

 

 

「─────────っ!まさか!」

 

 

 口が裂けそうになるまでに上がった口角で告げた

 

 

「さあ、さあ!これより降臨するは真なる我が主!これにて人の身でここまで辿り着いたキリシュタリア・ヴォーダイムも異聞帯を失ったクリプター共も汎人類史もカルデアもこれにてお終い!新しき我が主の策はここに完了する!今宵こそは降臨日となる!」

 

 

 この場に全員を見下すようにしてリンボが両手を広げる。

 

 するともう一度空想樹の変化が現れる。キリシュタリアの令呪によって『異星の神』との交信を途絶した時とは異なる。その時よりも紅い。

 それは炎だった。

 ホームズが危険だと藤丸、マシュ、召喚したネロ・クラウディウスに一時退避を呼びかける。

 

 そんな中二人のクリプター、キリシュタリアとオフェリアは驚きを隠せないでいた。それは、彼らは育ちきった空想樹を外部から燃やすことが不可能であることを知っていたからであった。

 

 一同が困惑する中、不敵な声が膨張した。

 

「空想樹を外部から燃やすことは不可能。だから内部から燃やしたんだよ。アルフが言ってたじゃねえか、『空を曇らせている天幕と繋がっている枝は、キリシュタリアのとこだけだろう』ってな。それで気づいたわけよ。成長した他の空想樹を根元から燃やして、枝を通して山火をそっちにお裾分けってなことも可能だってな」

 

 不敵な声の主が事態を解説し、声の主が素早くキリシュタリアの背後に忍び寄る。マスターの前方でカルデアと向き合っているカイニス(邪魔者)に妨害されないように。魔眼を持つ者がそれを使用する暇を与えないように早くそして大胆に。

 

「キリシュ、後ろ……!」

「キリシュタリアーァ!」

「キリシュタリア様、後ろです!」

 

 指摘されても"狼"は止まらない。「始末屋」の仕事て身につけた魔術でリーダーの男の急所を狙う。

 

 しかし、攻撃が届くことはなかった。クリプターのリーダーはこれまでの"夢"で育んできた圧倒的な経験を元に反応してカイニスの助けを借りることなく防ぐことに成功した。

 

「マジかよ!?後ろに目でもついてんのか、ヴォーダイム!?」

 

 防がれるとは思っていなかったのか襲撃者は口を半開きし目線もキリシュタリアの目から若干逸れている。

 

「君こそ。もっと慎重に行動すると思ってたよベリル。私にはカイニス()がいる、サーヴァントを連れていない君がこんな大胆な行動をとるとは。───────もしかして誰かに唆されたのかな」

 

 

 毅然とした態度で襲撃者の名を呼ぶ。そして、カイニスに自身を守らせ、ことを仕組んだ黒幕についての考察をする。

 誰から見られても冷静沈着を装い、貴族然とした態度を崩すことなく完璧に見栄を貼り続けている。

 

 

「え?なに?オレが誰かの指図を受けたって?なんだよオイ、冷静すぎじゃねえか。オレたちがアンタをブスッとやりたがってたの、知ってたのか?オレはまあアレだが、『アイツ』は完璧に隠せてたと思うがねえ」

 

 

「いや、冷静とは言えないよベリル。ただ頭を冷やして考えると『彼』の行動には納得するよ。"夢"とは……彼の世界とは違い私と『彼』は認め合えていない。そして、『彼』の正体が私の想像通りだというのなら私の計画には相容れないのは当然だ。神によって堕ちたのだから」

 

「あ?言ってるコトは分からねえがまあいいや」

「なら"オレからの"置土産代わりに教えてやんよ。どうしてオレがギリシャ異聞帯に来たのか。オレゃあ妖精を裏切った身ですし?ぶっちゃけ、四六時中狙われてるワケ。『ここにいるぞー』って叫べば、すぐに天罰が落ちてくるくらいにな?」

 

 

 

 

「──────ッ」

 

「キリシュタリア様っ!」

 

 

 キリシュタリアとオフェリアは思わず息を呑んだ。

 

 次の瞬間、遥か上空から降ってくる莫大な光の熱量。それは、キリシュタリアの最後の『夢』で浴びた闇とは対極に位置する圧倒的な光。

 

 

「マシュ、藤丸!オフェリア!マカリオス!アデーレ!皆下がるんだ──────アレは私が止める!」

 

 手袋で隠された皺だらけを手を天に掲げ、天上(そら)に配置した魔術式を"本来想像していたものとは別の用途"で起動させる。

 キリシュタリアは光の正体を知っていた。人理修復の『夢』の旅路で戦った騎士王の成れの果てが所持していたものと同等であると。

 

 惑星轟の盾とロンゴミニアドの槍が衝動。轟音が響く。

 惑星轟の防陣に割れ目が入り、オリュンポス中に光の粒子が降り注ぐ。

 キリシュタリアの惑星轟が押されてることは明白だった。それでも彼は「まだだ!」と告げる。

 

「終わらせるわけにはいかないのさ」

 

 最後の『夢』にて"■■の■"と敵対した時のことと同じことを言う。

 

「まだ藤丸立香()とは決着をつけれていない!そして、何より彼らの旅を、ここで終わらせる訳にいかない!」

 

 

「──────そうかい。本当だったらオレが殺してやりたかったがオフェリアも眼帯取って睨んでるし、カイニスがいるならこの視界の中でもムリだなあ。仕方ねえ、予定通りオレはブリテンに戻るわ。アンタをぶっ殺すのは『アイツ』に譲ってやんよ」

 

 

 手札を切らせたしな、と呟き、轟音と極光を浴びながらでもオフェリアをカイニスが目をギラつかせる中、手早くコヤンスカヤを呼び寄せギリシャ異聞帯から立ち去った。

 

 轟音と極光がピークに到達しよえとする。

 

 

「──────つっ!はぁぁぁぁあ!!!」

 

 

 金色の長髪が特徴の青年から普段なら聞けないような声が聞こえる。

 

 藤丸立香が眩しさにより閉じた視界をゆっくりと開くとカイニスに肩を預けるキリシュタリアが見えた。

 

「やぁ、藤丸立香!心配をかけたようだね」

 

「キリシュ!」

 

「キリシュ、か。うん、いい響きだ。まるで十年来の親友みたいな距離感だな。うん、とても好ましい。では私も立香と呼ぶことにしよう」

 キリシュタリア・ヴォーダイムは何とも言えない感慨深さを覚えた。

 キリシュタリア様のことをキリシュって呼ぶなんてなんて、ともえない表情をしているオフェリアもキリシュタリアを支えるように立っている。

 

 キリシュタリアの惑星轟の防御によりロンゴミニアドの光でオリュンポスが消滅することは防がれた。

 

 異聞帯消失の危機を乗り切り、大神ゼウスとの約束を守れたことに安堵し、残る力を用いてリンボの排除、カルデアとの決着を望むキリシュタリアに神父の格好をしたものが声をかけた

 

 

 

「仲が深まったところ申し訳ないが、キリシュタリア。君は反逆者であることを明かしたそのことについて間違いはない、ということでよろしいかな?」

 

 

 その場に現れたのはであの日、12月31日に殺戮猟兵の軍勢をもって、カルデアを壊滅に追い込んだラスプーチンであった。

 

「一度は爆破されて蘇った命だ。私を救いあげた『異星の神』には悪いが私の命はカルデアに委ねるよ。言峰神父」

 

「なるほど、カルデアに投降すると。では君たちも同じかな?オフェリア、カイニス」

 

「私はキリシュタリア様の為にすべてを尽くす。それに変わりはないわ」

「オレはキリシュタリア・ヴォーダイムのサーヴァントだ。コイツがカルデアにつくなら従う。テメェらに反旗を翻すならそれに乗る、『異星の神』の敵側になる」

 

「そうか、残念だ」

 

 聖職者を依代にしているせいか、形だけだろうが瞼を伏せて哀しむような仕草した。

 

「では、今度は君だ。リンボ。君は"かの王"の方につくといえ認識で問題ないか?」

 

「ええ、ええ、ええ!!当初は破壊の限りを尽す『異星の神』の元、汎人類史、カルデアの滅亡のご覧に甘美に浸ろうと思っておりましたが、……ですが、まあ。

 ──────『異星の神の使徒』やめます」

 

 

 右手で左手をポンと叩くリンボ。

 

 

「そうか、キリシュタリア、リンボ含め、君たちは好きに生きるといい。──────もちろん。これから降臨する『異星の神』の敵として、ね」

 

 

 この場に緊張が走る。

 

「さて出番だ、千子村正。存分にその刀を振るうがいい。君はこの瞬間のために『異性の神』に選ばれたのだから」

 

 どこからか刀が抜刀、斬撃が放たれた音がした。

 

 巨神アトラスの霊基が引き裂かれ、禍々しい瘴気が広がる。その場に何かが顕れようとする。

 

 それと同時に計測音が鳴り、マシュがその霊基パターンを報告する。

 

「魔力量、個人装備では測定できません!ですが……ですが……。この霊基バターンは……!」

「トリスメギストスが予測、分類した七つの人類悪、最後に位置する獣冠(つの)────!クラス、ビーストⅦです!!」

 

 

「「「!」」」

 

 マシュの報告した直後、半分が理解不能な言語が聞こえてきた。

 

「『■■言語■■■知性・■■■共有■■■』」

 

「『■■■■■・プレーン■■作戦■■■、生成』」

 

「『────応答 セヨ』」

 

「『────返答 セヨ』」

 

「『コれ ヨり』」

 

「『コウシンを カイシする』」

 

 それを合図に理解できる言語が聞けるようになった。耳障りな笑い声を散らしながら『異星の神』は顕現した。

 

 

 

「『あ──────────はっはっは!ようやく私の出番か!待たせたな使徒達よ!虚空の星に在りし我が身の器、よくぞ用意した!少々時間はかかったようだが褒めてつかわす!』」

 

「『フ―――それにしても、ここが地球か!我が同胞が苦しめられたというから来てみれば―――。なあんだ、大した事のない惑星ね!小さい、小さい!この程度、征服に一年とかからないわ!』」

 

 

 

「―――!」

 

 

 

「『―――? なんだ、今私に向いた精神波は。原生生命のものか?大小いくつかの精神波含めて多くの方向から向けられているわね……その全てこの私への畏敬の念が感じられないわね……。……待て。なんだ、この貧相な身体は。我が作戦実行体は空想樹から作られるものでしょう? それがなんで、こんな規模になってるの……?』」

 

 

 

 

「───────マスター。私の理解が及ばないのですが、今、私達の頭上にいる存在は、空想樹に顕あらわれたクラス・ビーストであり―――『異星の神』そのものと、推測されます。でも、でも―――」

 

「(そうだ……だって、あの顔は……)」

 

 

 

「『……まあいい。現状を報告せよ、使徒。キリシュタリアの件といい、リンボの件といい、多少の手違いがあったようだが?』」

 

「御身の玉体となるべきだった空想樹マゼランは、そもそもキリシュタリアの叛逆により玉体となれないよう巨神アトラスを潜ませておりました。千子村正によりアトラスを排除しましたが、ベリル・ガットと"かの王"の策により空想樹マゼランは空想樹セイファートの炎上に巻き込まれました。御身の霊基そのものに支障はありませんが、おそらく、権能の出力範囲は低下しているかと」

 

 

「『ふむ。羽化前、といったところか。それはそれで良い。楽しみが出来た。足りぬものはここで補えばよい。丁度良い食事が目の前にあるのだからな。異聞帯一つでは物足りぬが、なに、私も体を得たばかり。起き抜けと思えば栄養のバランスも良い。だが―――』」

 

そこでようやく

 

「『せっかくの前菜に虫が混ざっているのは興覚めだ。あれなる人間たちがカルデアの残党か?裏切ったキリシュタリア以外、我が使徒が手を焼くほどの者とは思えないが……そもそもなぜ、あの者達は私を畏れない?神に傅く事は、この惑星の原則ではなかったか?……そうだな。踏み潰すのはたやすいが、この疑問は晴らさねばなるまい』」

 

 

「『答えよ、藤丸立香。貴様は、なぜ私を畏れない?偉大なもの、強大なものには頭を垂れ、教えを請い、服従を示すのではなかったか?』

 

 

「だって、それは…………貴女が、オルガマリー所長だからだ!」

 

 

 はっきりと告げる藤丸立香。

 そう『異星の神』の正体は特異点Fで助けられなかったオルガマリー・アニムスフィアと瓜二つだった。

 

 

 

 

「『なに言ってるのよ、この地球人。私が、えーと、所長?なによ所長って。……仕方のない。恐怖で気が狂っているようだから、最後に教えてあげましょう』」

 

 

「『私は虚空より降りたる神。この惑星の邪悪を廃し、正す為に顕あらわれたもの。地球をひとつの国家として手中に収め、人類をひとり残らず管理する究極の支配者。すなわち―――』」

 

 

 

「『地球国家元首、Uーオルガマリーであ───────、あ?』」

 

 

 傲慢にも地球国家元首と名乗ったビーストⅦが間抜けな声を出した。

 間抜けな声から0コンマ1秒もかからないうちにそれは起こった。

 黒、漆黒、昏きもの、容易に言葉にできない禍々しい衝撃がビーストⅦを襲った。

 そして、キリシュタリア・ヴォーダイムだけがその衝撃の正体を知っていた。 

 人理修復の"夢"の最後の最後で目の当たりにしたものと同様のものだった。

 

 

 だが、それに一番最初に気づいたのは彼ではなかった。

 初めに気づいたのは頭を抑えながら苦痛を漏らす薔薇の皇帝、ネロ・クラウディウスだった。

 

 

「……くっぅ、マスターよ!ヤツの上空だ。……っ、そこからだ。この頭痛の元凶が……」

 

 

「ネロ陛下、大丈夫ですか?しっかりしてください」

 

 

 藤丸立香がネロに寄り添う。

 

 そこでまたひとつ新たなイレギュラーが加わる。

 

 再び計測音が鳴りわたる。

 

 

 

「マスター!再び簡易計測機が数値を計測しました。こちらも魔力量、個人装備では測定できません!………そして、この霊基バターンの反応もまた……!」

「トリスメギストスが予測、分類した七つの人類悪、6番目に位置する獣冠(つの)────!もう一体のビースト反応を補足。クラス、ビーストⅥです!!」

 

 

 

 ■■の■はゆっくりと下降してくる。遥かなる高みから。

 

 その人物もまた地球国家元首、Uーオルガマリーと名乗ったビーストⅦと同じくマシュの知る人物────

 

 

「…………アルフさん!?」

 

 

 あの日、初代ダヴィンチから聞いた話を藤丸立香は思い出す。Aチーム内でも屈指の戦闘能力を持つ者で難易度の高いシュミレーター訓練でも安々とクリアする戦いの天才だと。

 

 その彼を見上げるマシュが恐る恐る尋ねる。

 

 

「アルフさん……その黒い角と翼は一体……?それにこのビースト反応は……」

 

 

 マシュが呼びかけるもアルフはそれに答えることはなかった。彼(?)の視線は『異星の神』にのみ注がれている。ゴミを見るかのような冷めた目で。

 

「ンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンン!ようやく、ようやくご降臨なされましたか!昏き魔王、私の真なる主よ!!ビーストの座に座られたのならありのまま魔王の如くキリシュタリアも汎人類史も『異星の神』も蹂躙なさるのがよろしいかと!!」

 

「『リンボ、貴様裏切ったか』」

 

「ンンンンンンンン!かつての主よ、貴方様の側で地球の支配を目にしとうございましたがこのリンボこの通り新しき主に出会いまして……ええ、ですから、まあ『異星の神の使徒』やめます」

 

「『そうか、なら死ね!我が寛容はついに奈落へと到達した』

 

「はは、ははは、はははははははははは!よろしい、拙僧は潔く退場いたしましょう!オリュンポスも汎人類史もこれにて終了。我が王による蹂躙を目にするのはまたの機会に。一足先に消滅し、天覧の地獄絵図を主に捧げるために励むといたしましょう!」

 

 その言葉を最後にリンボが自刎する。そして、『異星の神』に暗い斬撃が伝播する。不測の事態に先程まで傲慢の塊のようであった彼女(?)に動揺が走る。

 

 

「『……くっ!この地球国家元首たる、Uーオルガマリーに手を出すとは……。貴様程度の存在、この私にかかれば容易に消せるぞ!』」

 

 

 

(オレ)を、()を簡単に消せるだと?────ふざけるのも大概にしろ。"我が席、終焉の獣の座"を掠め取っただけの貴様がこの(オレ)を消せるとは大きく出たものだな?もしそれが虚勢ではなく事実として述べているのならその傲慢さ、我が憤怒、我が怒りによって燃え尽きよ!」

 

 

 ビーストⅥの周囲に漆黒の瘴気が漂い始めた。

 

 ビーストの獣冠(つの)と3対6枚の黒い翼、全身にその瘴気を纏う。

 

 

 

 

 

「天より授かりし翼は黒く輝きて───────────」

 

 

「今、ここに世界の破滅を」

 

 

 

「第二宝具再演」

 

 

 

滅亡へと誘う昏き極光(カタストロフ・ノヴァ)

 

 

 

 

「『があああああああああああ!!!』」

 

 

 

 

 黒と紫の極光よって『異星の神』が包まれる。

 

 

 

 

「そういえば、()の正体を告げてはなかったな。

 私は終焉の獣の座に座り世界を滅ぼす大災害。そして、その座を貴様の介入によって奪われた者。それにより、私の新たな席は決定した。

 クリプター、アルフ・エンブリーなぞ偽りの名。

 私の名はビーストⅥ/S。

 7つの人類悪のひとつ、『憤怒』の理を持つ獣である」

 

 

 

 

 それを告げるとその闇がまたたく間に膨張し『異星の神』を完全に飲み込んだ。

 

 

 

 





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真名偽装

クリプター、アルフ・エンブリー

ビーストⅥ/S



終焉の獣(ビーストⅦ)の座に座る予定だったが『異星の神』の介入によりビーストⅥ/Sの席につく理は『憤怒』









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次回の投稿は短いと思います。なるべく早く投稿できるように頑張る!
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