新規トレーナーの追加は今回で一区切りです。
昼休み終わり、あるトレーナー室にて。
作業服を着た、中性的な顔の人物が部屋に置かれた冷蔵庫に向かっていた。
「……こんなところですかネ。あんまりモノ詰めすぎないでくださいヨ」
「ごめんね~。飲み物の消費すごいから、つい」
「なぜこのラインナップで消費が激しいのか、不思議でなりませン」
この部屋の主、
それに対し、冷蔵庫を修理していたらしい作業服姿の人物……
それもそのはず、「おしるこサイダー」だの、でかでかと「牧草」と書かれた缶だのといったモノが何本も入っているのだから。
ちなみに中西の担当であるタマモクロスはこの品揃えを見て「開発チームに牛でもおったんか!?」と突っ込んだ。
閑話休題。
盛本光という人物は修理業者などではなく、アグネスタキオン担当トレーナーである。
マッドサイエンティストと名高いタキオンだが、盛本自身も負けず劣らずのマッドである。
一応、トレーニングの効果を高めるためという目的はあるが、しばしば変な機械を作っては騒ぎを起こすのだ。
学園内の機械類の修理や製作を請け負っていることもあってか、奇行については黙認されているようだが。
「では私は戻りますヨ。タキオンがお待ちかねですのデ」
「あ、ちょっと待って。これ持ってって」
「……なんですカ、コレ?」
「まあ、中はお楽しみってことで~。タキオン待たせてんでしょ?行ってら~」
(誤魔化しましたネ……)「はいはイ……」
盛本が研究室に入ると、そこにはいかにも待ちくたびれた、という様子で頬杖をつくタキオンの姿があった。
「遅かったじゃないかトレーナーくん……おや?その袋は何だい?」
「これですカ?先ほど中西サンから頂いたのですガ……」
中には1本のペットボトル。ラベルには「ゲロあまダージリン」と書かれていた。
「在庫を押し付けましたネ……」
「ふぅン……中西くんも分かってるじゃないか」
タキオンは盛本からボトルを受け取ると、ためらいもなく飲み干した。
(いくら甘党とはいえ、あのレベルをよく飲めますネ……)
翌日。
盛本は中西に、昨日のタキオンとのやり取りについて話していた。
「──ということで、あっさり飲み干しましタ。調べたら飽和ギリギリまで砂糖が溶けていたようなあれヲ……」
「タキオンなら飲むと思ったんだよね~」
「……で、今度は何を飲んでるんですカ」
「これはねぇ~、『がぶ飲みスープカレー』」
(また無茶なもんを買ってきますネー……)
「ただ、これ結構辛くてさ~。とても『がぶ飲み』できるものじゃないね」
舌は割とまともだったのか、という目で中西を見る盛本。
「……あたしのことイタチザメ*1か何かだと思ってた?」
ギクリ。表情でバレてしまうくらいに顔に出やすいらしい。
「よろしい、ならばブルボンだ」
自販機のボタンを押すことすら禁じられるほど機械との相性が悪いミホノブルボンの名を出す中西。
機械いじりが好きな盛本にとってはこれ以上ないほどの脅しである。
すでに何度か痛い目を見ている盛本は、静かに土下座の姿勢に入った。
「申し訳ありませんでしタ」
「分かればよろしい」
これは、ウマ娘達に負けず劣らず個性的なトレーナー達による、なんてことはない日常である。
そんなわけで、一応はここまでがプロローグ(?)のつもりでした。
後ほど登場人物紹介をまとめておこうと思います。
今後ともどうぞお楽しみに。