群れるトレーナー達   作:手ブレ写真家

5 / 12
本編(?)としては初投稿です。
感想、お気に入りに感謝


(一応)本編
子供向けだけが絵本じゃない


「絵本の読み聞かせ?」

「はい。この近くにある図書館からオファーがありまして」

 

唐突な話を持ちかけてきた理事長秘書・駿川たづなに対し、岩間はなんとも素っ頓狂な表情を見せた。

なんでも、近々読み聞かせ会をすることになったのだが、せっかくトレセン学園があるのだからダメもとで在籍するウマ娘を誰か呼べないか、となったらしい。

そこで、絵本が好きなライスシャワーが候補に上がったのである。聞いた予定日も空いていた。

 

「なるほど…俺としては問題ありませんが、ライスさん自身の話を聞かないことにはまだなんとも」

「そうですよね……すみません。こんな急に持ち掛けてしまって……」

「いえ、いいんですよ。むしろありがたいことです。俺の方で聞いておきますから」

「分かりました。では、よろしくお願いしますね」

 

「かくかくしかじかでライスさんに是非、とのことなのですが……」

「わぁ!本当に!?やりたい!!」

願ってもない話だったのか、目を輝かせていた。

珍しくテンションの高いライスに、岩間は少したじろいだ。

「で、ではそのように伝えておきますね」

 

「――ということで、俺も意外なほど乗り気でした」

「ふむふむ……。それはよかったです!」

「ところで、当日読む絵本は決まっているんですか?」

「えっと……この中のどれかを予定しているそうです」

 

そう言うと、たづなは絵本の候補が書かれた紙を岩間に渡す。

「えっ…………」

「ど、どうされました?」

「駿川さん……今回の読み聞かせ、何歳ぐらいが対象ですか?」

「確か、4~6歳だったかと」

「ライスさんの影響で俺も絵本はそれなりに分かりますが……これ、4~6歳に聞かせる内容ですか?」

というのも、渡されたリストにあった、絵本3冊の内容は大体こんな内容だったからだ。

 

・怖い

・めちゃくちゃ怖い

・大人もトラウマになるほど怖い

 

「……そうですよね……」

「これ、他のトレーナーとも相談して大丈夫ですか?ライスさんが乗り気な手前、今ここで断るのもためらわれます。ただ、もはや我々2人だけの手には負えません」

たづなは難しい表情を浮かべつつ、岩間の提案を了承した。

 

そうして岩間がトレーナー室に呼んだのは高田と新海の2人。

「……なるほどねぇ。その絵本の現物はあるの?」

「3つともそこそこ話題になった作品なので……これです」

「どれどれ……」

「ちょっとワクワクします」

新海よ、今に限ってはその好奇心はマズい。

読み始めて2分ほど経ち……

 

「「うっ……」」

2人の反応はこれであった。

新海に至っては途中で何度か気絶していた。

 

「新海さん、無理せず少し休んでください……」

岩間の言葉に甘え、新海は部屋にあるソファで休むことにした。

そして、高田が切り出す。

 

「じゃあ、僕からいいかな」

「どうぞ」

「図書館に他の本を提案した方がいいよ。それがダメならこの話はナシだね。これは子供が泣いちゃうよ。てかライスちゃんも泣いちゃう」

満場一致の結果であった。

「そうですね……代わりの候補はどうしましょうか」

 

そこへ、いつの間にか復活していた新海が口を開く。

「それこそ、ライスちゃんと選ぶのがいいと思います。ところで……お子さんのいる高田氏を呼んだのは分かりますが、なぜ私も……?」

「先方が俺にも同席してほしいとのことなんですが…この強面を隠したところで威圧感は拭えないと思いまして、当日は代わりに同席していただきたく」

「なるほど……」

 

子供たちに大泣きされる様子が簡単に想像できたのか、新海はそれ以上何も言わなかった。

ちなみにその夜、1人で寝られなかった新海は中西の部屋に泊まったとか。

 

新海の了解も得たところで、岩間とライスが代わりの絵本を選ぶこと3日。

岩間は選んだ絵本のリストを引っさげて件の図書館に向かった。

担当の職員がヒグマに出くわしたような顔をしていたが、岩間にとってはよくあることなので流した。

「――ということで、読む絵本を変えられないでしょうか」

「……本当に申し訳ありませんでしたぁ!!あのリストを作った者にはきっちり落とし前をつけさせますので……」

「あの、せめて土下座はやめてください。このリストからであればあとはお任せしますので」

「か、かしこまりましたっ!!」

(俺、泣いていいでしょうか)

 

完全に岩間にビビってしまっている担当者にやりにくさを感じつつ、読み聞かせ会当日を迎えた。

部屋を埋め尽くすほどの子供が集まっていた。

新海だが、あくまで岩間の代理として紹介された。ちなみに岩間本人は別室で待機している。

さすがは現役で走っているウマ娘というだけあってか、かなり盛り上がっていた。

 

「……おしまい」

パチパチパチパチ

喝采。千秋楽ばりの喝采。読み聞かせは成功に終わった。

……が。この様子を聞いていた岩間は油断していた。その結果、部屋を出た直後に子供の1人と鉢合わせてしまったのだ。

その瞬間。

「うわああああああああああん!!ヤ○ザが!ヤ○ザがいるよおおおおおおおおおお!!ヤ○ザがあああ!!!」

3回も言った。どこでそんな言葉を覚えたのか。新海に代理を頼んだのが台無しである。

つられて他の子供も泣き出すわ通報する親は出るわの阿鼻叫喚。

臨場した警察官は「あー……うん、お疲れ様です」みたいな目をしていた。

 

その夜、岩間は新海に慰められながら飲み明かした。翌日に影響の出ない範囲で。

「今回は……今回は本ッ当に……俺が悪いんです……!!」

「よしよし……」




『ライスシャワーセレクション』みたいな特設コーナーできてそう(余談)
思いつくままに書いてたらいつもより長くなった…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。