この季節は嫌いだ。   作:グラスワンダー担当

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こんなに読まれて感動です。

中位ながら日間ランキングにも入ってしまって。

感謝の意味を込めて、作中人物の深堀と後日談を。


~人物紹介~と悲劇のその後(一話を読んだ後推奨)

忍野トレーナー

 

身長:175cm 体重:増減なし

好きな食べ物:桜餅

嫌いな食べ物:ピーマン

服装:いつもジャージ

髪型:黒髪、1,000円カットで十分

 

 

今回の主人公、トレーナーは裏方だという思いがある為、あまり自分の容姿は気にしない性格。

 

トレーナーを目指したきっかけは、幼稚園時代に同じ園にいたウマ娘にかけっこを挑み、分からせられ、もう一度挑むも返り討ちにあったことで自分では勝てないと分かり、自分ではなく自分が育てたウマ娘に仇を取って貰おうと考えたから。

 

あの子をケガさせてしまった事を悔やみ、潰れそうなところを後輩ちゃんや沖野Tのおかげで何とか前に進んでいた。あの子が卒業した2年後にチームポルックスを結成し、その後わずか3年でトップチームへと成長させる。

 

あの子がサブトレーナーとして付いてからは、担当ウマ娘から夏祭りへと誘われなくなってしまい少しだけ寂しい思いをしている。その代わりなぜかよく温泉旅館への無料宿泊券を持ってくるあの子と一緒に出掛けることが多くなった。

 

嫌いな食べ物はピーマン。分からせられたウマ娘に小学校時代、嫌いだからお前が食え、と食べさせられ嫌いになった。

最近そのウマ娘のレコード記録を、担当ウマ娘が塗り替えることができ、見事勝利できたので久しぶりに連絡をしてみようかと思っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの子(サブトレーナー)

 

身長:155cm(15歳)165cm(〇〇歳) 体重:微増

好きな食べ物:デカウマ

嫌いな食べ物:納豆

服装:ビシっとスーツ、トレセン時代はかわいい系の私服だったが、今はキレイ系を好む

髪型:栗毛、肩より少しだけ伸ばしている

戦法:追込

 

今回のヒロイン、モブ子として生まれたが当人はそんなこと知るはずがない為、G1タイトルを夢見てトレセン学園に入学した。

 

選抜レース後、7バ身も離されてはスカウトが来るはずがない、と意気消沈していたところにトレーナーさんからプロポーズされる。メイクデビューを目指すが1戦目、2戦目を落とし、挫けそうになっていたが、トレーナーだけは自分を信じてくれていることを自信にトレーニングを積み、運命の3戦目を迎える。

 

ケガをした時はなぜ私だけ...と病んでいたが、毎週お見舞いに来てくれるトレーナーさんと居るうちに少しづつ元気を取り戻していった。一年間の入院リハビリ後トレセン学園に戻ることが出来た。

 

トレーナーに新しくスカウトするように言い後輩ができたが、トレーナーを独占することが出来なくなり、少しだけ不満で、自分の代わりに勝利を捧げられる後輩ちゃんを羨ましがった、しかし良い子なので可愛がった。

この頃からウマ娘に寄り添うトレーナーの在り方を考え、もう走れない自分でも出来ることがないかと考え始め、トレーナーを目指すことになる。

 

卒業後は日本有数のトレーナー養成学校に入学しトレーナーを目指した。ウマ娘のトレーナー志望ということで、貴方は自分で走らないのか?とよく聞かれたがその度に私はもう一生分走りましたので、走ることより支えたい人がいるんです。と答えていた。

 

サブトレーナーとしてトレセン学園に戻った時には、非常に危機感を覚えた。チームを結成し、トップトレーナーへと進む彼の周りには彼を慕うウマ娘どもが多かったが、トレセン学園の先輩として後輩にやさしく語り掛け、みな分かってもらえた。

 

最近の趣味はくじ引き、奇跡は自分で掴みにいくから価値がある。

 

トレーナーさんの鈍感さにはいい加減我慢が出来なくなっている為、そろそろ分かってもらう必要があると思っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女(後輩、アエロリット)

 

身長:145cm 体重:微減

好きな食べ物:デカウマ

嫌いな食べ物:辛い物

服装:パーカーが多い

髪型:葦毛、肩にかからない程度で少しくせっ毛

戦法:逃げ、先行

 

トレーナーを逆スカウトし担当になったウマ娘。

先輩とトレーナーをよく目撃しており、その関係性に憧れた。

 

メイクデビューはすんなりと勝てたが、その後は好走するがあと少しという結果で、もがいた、卒業式で先輩にG1ウマ娘になることを誓った。その後のG1桜花賞ではスタートで出遅れ、最後尾からのレースになってしまったが最後に意地で追い込み5着に入る。

 

そして迎えたG1 NHKマイルCでは忍野トレーナーに初G1のタイトルを捧げた。

 

先輩に分からせられたウマ娘、ちょっかいをかけたら倍では済まないことを学んでいる。現在はドリームトロフィーリーグに進み、怪物たちとしのぎを削っている。

 

実は名家出身。

 

親戚にはカレンチャンや白毛として初の重賞ウマ娘のユキチャンがいる。

 

従妹で小学生のソダシにはお姉様と呼ばせて優越感に浸っているのは内緒。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~巻き込まれたウマ娘達~~

 

 

 

-桜散る-

 

 

その文字が世間をかけたのはまだ3月末のことだった。

桜がようやく色づき、春よ来いと人々が心待ちにする中でその文字は異質だった。

レースに参加した半数以上が完走できなかったその事故は、近年で最悪の事故と言われ、連日新聞とテレビではトップニュースで扱われた。各局がこぞって犯人捜しに躍起になっている頃、あるチームは解散の危機にいた。

 

 

 

 

 

 

「.........」

 

 

 

 

 

 

理事長室の中は静寂が支配していた。

先ほどから秋川理事長が目の前のトレーナーに対し、言葉を発しようとし、躊躇し、諦めている。

 

掛ける言葉がみつからない。

 

簡単な言葉では彼は納得しないだろう、簡単な思いでは彼を動かすことは出来ないだろう。そんな簡単なことは分かるのにこの状況を好転させる為の言葉が見つからない。

 

「嘆願ッ!...思い直すことはないのか?」

 

あぁ、理事長でありながら願うことしかできないのかと表情を暗くしたままそう問う。

 

「...はい。俺にはもう資格がありません」

 

そう言い、俯くトレーナーの姿を見つめ悔しさで顔を歪める。

 

彼の担当ウマ娘は、現在日本で最も注目されていると言っても過言ではないだろう。

あの最悪の事故を起こしたとされるウマ娘なのだから。

 

 

 

 

 

 

「早く!早く!救助を!」

 

いつもならばレースの臨場感を伝えるべき実況が叫ぶのは、ウマ娘の救助を願う叫びだった。

 

「こんな...こんなことがあっていいのでしょうか!?...今か、今かと開花を待つ彼女たちの結末を誰が..誰が決めたというのでしょうか...あぁ...あぁ...桜が散る...散ってしまう」

 

レース結果を伝える電光掲示板を見るものは居なかった。皆一様に最終直線にたどり着くことが出来なかった彼女達を見つめている。

 

レースに出ていたウマ娘のトレーナーが叫ぶ。切実な、悲鳴にも似た声で自分の愛バの名を。大丈夫か。返事をしてくれと。しかし...それに答える声はなかった。

サイレンが鳴り響き、スタッフの声が響く。

 

早く。早くと。

 

救助班が彼女たちに向かう。

 

 

 

そんな喧噪を一人の少女は真っ白になった頭で、理解できないながらも見つめ続けていた。

 

「わ...わた...しのせい?」

 

膝から崩れ落ちる。

体に力を入れることが出来ずにターフに手を着く。

コーナーでスタミナ切れを起こしたことまでは覚えている、その後の恐ろしい音を聞いてからの記憶がない。全力で走り続けたことは確かだったが、決着すらも分からないでいた。

 

すがる思いで自分のトレーナーが居る場所に目を向けるとそこには、絶望の表情で私を見つめるトレーナーの顔があった。そして目が逸らされた。

 

「ぁ...」

 

私のせいだ。

 

 

 

私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。

 

 

 

「おい!」

 

強引に私の顔が上げられる。そこには憤怒の表情を浮かべたウマ娘がいた。

今回の2番人気だったと思うウマ娘。

 

「自分がなにやったか、分かってんのか!!」

 

私の襟元をつかみ上げ、そう目の前で叫ぶウマ娘は泣いていた。

ほほを流れる涙に構うことなく私の目を見ながら。

 

「み..みんな無事だよね?」

 

そう声が聞こえたほうを向けば別のウマ娘が泣きながら地面に座り、彼女達を見つめながらそう問う。

 

「無事なわけねぇだろが!お前も聞いただろ!?何かがぶつかる音!骨が折れる音!潰れる音を!!あ...あんな音させてて無事なわけがねぇ!」

 

あの音だ。恐ろしい音。聞いたことがない音。絶望の音。終わりの音。

 

現実を認識する。

 

「ぁ...あああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!」

 

私は叫んだ、現実から目を背けるように。事実を伝える言葉が聞こえないように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は...彼女が一番頼りたいときに突き放しました」

 

それは彼の後悔の言葉。

 

「守るべき彼女を、寄り添い、支え合う彼女を自分を守るために突き放したんです」

 

人バ一体という理想から最も離れた行為を。

 

「思えばいつも自分が大事だったんじゃないかと思うんです。トレーナーになったのも給料がいいし、世間体もいい、選ばれた職というのは優越感を満たすには最高でした」

 

彼の独白を理事長は黙って聞いている。

 

「俺は彼女じゃなくてもよかったんです」

 

思わず彼を見つめる、目が合った彼の瞳は暗く、沈んでいた。

 

「たまたま、スカウトしたら来てくれた子。他にも候補はいたけれど、まあまあ及第点。担当になって重賞一つでも勝てれば儲けもんって。数ある中の妥協だったんです。」

 

彼女にとっては、俺しか居なかったというのに。

そう最後に話し、彼は理事長室を出て行った、残ったのは彼が置いていった辞表のみだった。

 

 

 

 

 

 

彼女が実家に帰ることになり、同時に引退することが決まったのと同時期にトレーナーも引退することとなった。

 

トレセン側としては不慮の事故、わざとではない事故である為、このまま残り競争を続けて欲しいと伝えていたが、彼女の心はもう擦り切れていた。日々加熱する報道によるストレスは計り知れず、限界を迎えてしまった。

 

 

 

 

 

2年がたったがまだ彼女は家から出れていない。

 

 

 

バッシングは酷く、彼女のみにならず家族までその対象になってしまっていた。

 

勝つために手段を択ばない、最低なウマ娘。

 

そんな娘を育てたお前らも同罪だ。

 

そんな心無い誹謗中傷が彼女たちを襲った、URAとしては弁護士を付け、悪質なものには法的処置も辞さない姿勢を見せたことである程度は沈静化したが、引っ越しをせざるを得なくなってしまったのだ。

 

 

 

 

 

さらに2年後の3月末。

 

 

 

 

この季節は嫌いだ。

 

 

 

 

あの時のバ鹿な自分を思い出すから。

中央トレセンに合格した日、我が家の記念日にする!と興奮しながら言うお父さんを恥ずかしいから止めてとなだめたが、それならせめて今日は豪華にするぞと高い寿司屋に連れてってもらった。

いつもならウッマ寿司しか連れて行ってくれないのだが相当嬉しいのだろう。

 

店に入るなり大将に。

 

「未来のG1ウマ娘だ!」

 

と紹介するお父さんのお腹を小突きながら席に着く。

 

なんでも好きなものを食べていいぞっと言うお父さんの笑顔は今でも忘れられない。

 

お腹がすいた私は遠慮することなく寿司を注文し食べ始めるが、お父さんはニコニコしながら私が食べる姿をずっと見ている。

 

お父さんは食べないの?おいしいよ?

 

そう私が言うとお母さんが。

 

「お父さんは幸せを嚙みしめているからいいんだって」

 

そういいながら自分は食べるお母さんを見ながら、不思議だなぁと思いながらも食べ続ける。

 

「お父さん、あーんして」

 

暫くしてさすがにかわいそうだと思った私は寿司を箸で持ち、お父さんに食べさせてあげることとした。

 

お父さんは幸せそうな笑顔をしながら今度は食べてくれた。

 

美味しいって言いながら。

 

お腹が一杯になった私たちは店を出る、お父さんが美味しかったかい?聞いてきたので。

 

「うん!めっちゃウマかった!」

 

「それは良かった!今度はメイクデビューで勝ったらまた食べに来よう!」

 

そうお父さんがいい私の頭を撫でる。

 

少しごつごつしてて大きくてあったかい手で。

 

 

 

 

 

もうあの時の味も、お父さんの手の暖かさも忘れてしまった。

 

 

あの事故に巻き込まれた彼女達のその後については自分の義務だと思い調べていた。

事故の影響でメイクデビューがさらに遅れたもの、バ群が怖くなり今までの走りが出来なくなり戦法の変更を余儀なくされたものが多くいた。その中でもあの子のことは特に申し訳なく思う。

最後尾を走っていた栗毛の彼女。

彼女だけが足を骨折し、私とは違い物理的に走ることが出来なくなってしまったのだという。今ではリハビリのお陰で、日常生活は行えるようになっていると聞いたときは本当に安堵した。

 

「ごめんなさい」

 

彼女達に言えなかった言葉を口にする。

 

私が居たから。

 

私なんか居なければ良かったのに。

 

もう何度も考えたことが頭の中を埋め尽くしていく。

 

 

『ピンポーン』

 

思わずしっぽが反応する。

 

誰か来たようだ、だが今朝お母さんは誰かが来るとは言っていなかったので宅配だろうと判断する。

しかし、体が動かない、未だに私の体は家族以外の人を拒絶するようだ。今日は自分以外には誰もいない為、仕方ないがやり過ごそう。そう考えたが。

 

『ピンポーン、ピンポーン』

 

今回の配達員は強情のようだ、もう少し待てばさすがに帰ってくれるだろう。

 

『ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン』

 

何だというのだ、居留守が分からないのかと怒りたくなったが悪いのは私だ。仕方がない。

非常に気が進まないが荷物を受け取ってすぐに帰って貰おう、そう判断し玄関に向かう。しかし、その歩みは一歩一歩で。未だ鳴り続けるインターホンの方が歩いた歩数より多く鳴っている。

 

 

ようやく玄関に辿り着き、震える手でサムターンを回す。

 

カチャ。

 

鍵が外された音が鳴り、心臓が破裂するほど鼓動をしている。防犯チェーンも取りドアノブを握り、扉を開く。早く終わってくれと希望を願いながら扉を開けるとそこには。

 

 

「やぁ...久しぶり。元気にしていたかい?」

 

かつてのトレーナーが居た。

 

「な...な...なにしに来たんですか?」

 

何とか声を出すことが出来たが、頭の中は真っ白である。

事故の後に一回だけ会い、その後一度も姿を現さなかったトレーナーがなぜ?

 

「あの日で止まってしまった俺たちの時間を進めようと思って」

 

笑顔でそう言ったトレーナーの顔は今まで見た中で一番生き生きとしていた。

 

「さあ、行くぞ」

 

そういうと私の手を取り外へと誘うトレーナー。

 

転ばぬようにバランスを取りながら、何が何だか分からないまま上着を羽織り、靴を履き外に出る。

 

こっちだ。

 

そう言いながら早く目的地に連れて行きたいのだろうか私の手は以前引かれたままであるが、無理に引っ張るようではなく、私の歩調に合わせてくれているようで苦ではなかった。

 

引っ越してきてからもほぼ家からは出ていなかった為、家の周囲のことを何も知らかったが近くに喫茶店があったらしい。彼はそこに私を案内したかったようである。

 

喫茶店の扉に手をかけながら

 

「みんなもう待ってるから」

 

そう言いながら扉を開け中に入るとそこには懐かしい彼女達が居た。

 

「ぇ...なんで?な...なんでみんないるの?」

 

最初に転倒し、バ群に飲まれ、肋骨の骨折と全身の打撲をしてしまったウマ娘。

 

「えへへぇ、来ちゃった!」

 

最初に転倒した子と接触し、自身も転倒し巻き込まれたウマ娘。

 

「まったく、ホントに探したんだからね!」

 

その二人に足をすくわれる形で転倒したウマ娘。

 

「そうだよねー、退院した後には既にトレセンからいなくなってたしねー」

 

前方三人を避けようと減速したときに後ろから追突され転倒したウマ娘。

 

「まあ、あの時はちょっと異常だったし仕方ないっちゃ仕方ないんだけど」

 

急に減速したウマ娘に追突し、バランスを崩し転倒したウマ娘。

 

「でも、こうして見つけられたんだから良かったわ」

 

バ群の中を踏まれ、蹴られ、転がってきた彼女を避けようと内ラチに接触し転倒したウマ娘。

 

「うんうん。よかったよかった!」

 

そして、走ることを奪ってしまった彼女。

 

「貴方に伝えたいことがあって来ました」

 

聞いてくれますか?

 

そう栗毛の彼女が言う。

 

私は頷くことで肯定する、視界がぼやける。

 

「誰もあなたのことを恨んでいませんよ」

 

とても優しい声だった。

 

顔を上げると彼女は優しく微笑んでいる、周りを見るとみんな同じ顔をしている。

 

「あれはただの事故だったんです。それ以上でも以下でもありません。周りの人は好き放題言いますが当事者の私たちが言うんですから間違いありません」

 

嘘ではないだろうか、不安になりトレーナーを探してしまう。

見つけたトレーナーは私の目をじっと見ながら言う。

 

「大丈夫、みんな本当に君のことを心配して来てくれたんだ。だから信じて」

 

目を逸らさずに言うトレーナーの言葉が素直に胸に染みる。

 

「貴方はずっと傷付いて来ました。だからもうそろそろ自分で自分を許してあげていいんですよ」

 

頑張りましたね。

 

そう言いながら頭を撫でてくれる手はかつて感じたことがあるあったかい手の感触だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでトレーナー?今回はどういうことだったの?」

 

泣きはらした顔を冷やしたタオルで冷やしながら彼女は問いかける。

 

「ほら、栗毛のあの子のおかげだよ、ひと月前に俺が住んでる家に来てさ、彼女のトレーナーなら最後まで面倒を見なさいって叱咤してくれてさ。私にとってトレーナーがどれだけ大切な存在かって、彼女にとっても同じだって。自分のためじゃなく彼女のために出来ることから逃げるな!って言われて。3日くらい寝ないで考えたよ」

 

そういう彼の横顔はとても清々しい表情をしている。

 

「そしたらさ、こんな俺でも君の役に立てることがないかって、思えるようになって。そう思ったらもう止まれなかった。ケガしたウマ娘の子に会いに行って君に会って欲しいって頼んだんだ。みんなみんな二つ返事で是非って言ってくれたんだぜ」

 

笑顔でそう話す彼は、チームで練習を指示する時と同じ顔をしていた。

自信を持ち、私たちを強くしようと真剣に取組んでいた時と同じ。

 

その顔をするトレーナーがなんか悔しくて悪態をついてしまう。

 

「でも、完走した子達は来てくれなかったじゃん」

 

「あの子達にも会ったんだよ、そしたら君が悪くないのは分かってる。分かってるんだけどあの時君に吐いてしまった言葉は、元に戻せないから、私は行く資格ないってさ。ごめんって伝えてって言ってたよ」

 

そう言ってトレーナーは立上り、そろそろ俺は帰るからあの子たちと仲良くなって言いながら出口へと向かう。

 

「っ...トレーナー!」

 

扉を開けながらこちらを振り返る。

 

「貴方はやっぱり私のトレーナーだよ!」

 

それを聞いたトレーナーは少しだけ呆けたあと

 

「君を担当に選んで本当に良かった!」

 

まるでつき物が取れたような笑顔でそう言い出ていくトレーナーの背中を扉が閉まるまでずっと見つめ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日、お父さんが帰って来たら昔食べたお寿司屋さんに連れてって欲しいと言おう。

最近は食欲もなくて昔ほど食べれないかもしれないけど。

あの時のあたたかさをもう一度感じてみたいから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ハッピーエンドのつもりって書いたからにはちゃんと救わないとねってことで後日談的なやつでした。

明日仕事なのに...
こんな時間まで...
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