雨の日に拾った女の子と恋に落ちました   作:緑茶わいん

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契り

 きっと似合わないだろうな、と思っていた。

 これまでの人生では着る機会のなかったタキシード。しっかりと身に纏って鏡の前に立てば、そこに映った自分の姿は、思っていたよりはずっと、

 

「見違えたじゃないか、夜空」

「からかわないでよ、父さん」

 

 恥ずかしさから苦笑しつつ振り返れば、父さんも僕と似たような顔をしていた。

 着付けを手伝ってくれた式場のスタッフさんはにこにこと笑顔を浮かべているが、男二人、どうにもこういう場では緊張や責任が勝つらしい。

 慣れない服装が息苦しく、そして重たいのはこれから背負うことになるものをあらためて認識させるためでもあるのだろう。もちろん試着はしていたが、本番となると感慨はひとしおだ。

 手持ち無沙汰といった様子の父が「じゃあな」と部屋を出て行けば、程なくして友人達が入ってきた。

 

「よう。こういうの似合わねーな、お前」

「やっぱり似合ってないかな」

「いいんじゃねーの。無理して服に合わせる必要ねーだろ」

 

 褒めているのかいないのか。高校時代からの友人──今となっては一番の親友と言ってもいい男はぶっきらぼうにそう言い放った。ちなみにそういう彼のスーツ姿はそこそこ様になっている。新入社員として揉まれている最中という話だが、だんだん板についてきているのかもしれない。

 傍らに立つドレス姿の女の子は隣の男を「もう」と言うように見上げてから、僕に笑顔を向けてくれる。

 

「この度はおめでとうございます、先輩」

「ありがとう。二人とも、来てくれてありがとう」

「もちろん来ます。先輩と、あの子の大事な日なんですから」

 

 言って、感慨深げに目を細める彼女。昔の事を思い出しているんだろう。思えば、彼女と連絡を取り合ったあの日から今日まで、色々な事があった。

 こうして今日を迎えられて本当に良かった、と、心から思う。

 と、親友が肘で僕を小突いて、

 

「幸せにしてやれよ」

「うん、もちろん」

 

 僕は笑顔で彼に頷く。

 

 六月某日。

 僕──長谷川(はせがわ)夜空(よぞら)は一生に一度の結婚式を迎えていた。

 

 

 

 

 

 月日が経つのは早いもので、僕は今年の四月で大学を卒業した。六月の結婚式場はどこも忙しく、予約を取るのも大変だったが、なんとかいい式場を押さえる事ができた。お陰でこうしてタキシードに身を包み、友人達を迎えられている。

 この数年で少しは背が伸びたし、色々とできる事も増えた。

 卒業してすぐ、こうして結婚式を行う事が出来たのも、二人でコツコツお金を貯めてきたお陰だ。

 

「結婚おめでとう、長谷川くん」

「ありがとうございます、店長。わざわざすいません」

 

 頭を下げる僕に、バイト先改め職場の店長は「気にしないで」と微笑んでくれる。

 

「店の方はみんなに任せておけば大丈夫でしょ。何かあったら連絡入るし。本当の緊急事態じゃなければ電話はするなって言っておいたし」

「本当はみんなも来られたら良かったんですけど……」

「お店休んでみんなで行こう、って言ったら拒否したのは誰だったっけ」

 

 痛い所を突かれた。しかし、わざわざそこまでしてもらうわけにもいかない。休日は店のかき入れ時なわけで、社員として雇ってもらった身としてはそこはしっかりしておかなければ。

 

「向こうはどんな様子ですか?」

「まだ着付け中。女の子は時間かかるからね。だから先にこっちに来たわけ」

 

 なるほど、と頷く。準備ができればこちらにも声がかかるはずだが、ただ待つというのも気づまりになる。こうして会いに来てくれる人がいるのはとても助かった。

 

「それにしてもあなた達が結婚かあ」

「意外でしたか?」

「ううん。むしろようやくか、って感じ」

「いえ、その。さすがに大学くらい出ないと……」

 

 貯金や覚悟など、色々な面から踏み切れなかった。だから、このタイミングがベストだと思う。

 

「まあね、きみ達は付き合う前から同棲してたわけだし。今更結婚って言っても形だけの話か」

「そうですね。……って、色々語弊がありませんか?」

「気にしない気にしない。大事なのは二人とも、相手のことを良く分かってるだろう、ってこと」

「はい」

 

 僕は彼女のことを良く知っている。彼女も僕のことを良く知っている。一緒に住んでいた期間も長いから、今更「思ってたのと違った」なんて言う事もないはずだ。

 僕と彼女のこれからは、歩いてきたここまでの延長線上にある。

 

「泣かせてきた女の子もいるんだし、幸せになりなさいよ」

「だから語弊があるんですが……はい、必ず」

 

 他にも何人もの人が部屋を訪れて声をかけてくれた。

 高校時代に知り合った人。大学時代に知り合った人。あれから多くの出会いがあった。楽しい事ばかりじゃなくて辛い事ももちろんあった。多くの人に支えられ、見守られてここまで来た。

 泣かせた女の子、なんて店長は言ったけど、会いに来てくれた子の中にそういう子がいなかったわけでもない。

 

『浮気したくなったらいつでも言ってください』

 

 なんて、不穏な事を言い放った彼女は新婦側の出席者の一人。本気というよりは僕の覚悟を試すための言葉だろう。もちろん連絡をするつもりはない。

 

「新郎様。新婦様の準備が整いました」

「ありがとうございます」

 

 一度深呼吸をしてから、僕は愛する女性を迎えに行った。

 僕達の物語が始まったのは高校二年のゴールデンウィーク前。

 あの時から可愛くて心優しかった彼女は、今──。

 

「長谷川くん」

 

 純白を纏って僕へと幸せそうな微笑みを投げかけてくれている。

 彼女はあの頃よりもぐっと綺麗になった。髪は長く伸び、痩せがちだった身体は健康的な美しさを手に入れ、儚げな白さのあった肌も張りと質感を増している。荒野に一輪で咲いていた花は、草原で他の花々と一緒に華やかな色合いを見せてくれるようになった。

 そして、彼女の笑顔と真心はあの頃と変わらない。いや、もっともっと魅力的になって、今もこうしてあり続けている。

 思わず見惚れてしまい、そのまま立ち尽くしそうになるのをぐっと堪えて、僕は「綺麗だよ。すごく似合ってる」と彼女へ笑いかけた。

 

 ふわりと裾の広がったウェディングドレスは彼女の美しさをぐっと引き立ててくれている。清楚さと華やかさが両立していて、まるでどこかのお姫様のようだ。

 ドレスを選ぶのは大変だったが、その甲斐はあったと思う。

 カタログを見て目を輝かせては費用を見て足踏みする彼女に「気にしなくていい」と言ったのは喜んでもらうためと同時に、綺麗な彼女を見るためでもあった。それでもなかなか「これ!」とは決まらず、最終的には夜空が選んだ。

 自分が着たいものを選んだ方がいいのでは、とも言ったのだが、

 

『あなたが着て欲しいものを私も着たい』

 

 そんな風に言われてしまえば断る余地なんてあるはずなかった。

 試着の際にも一度見たが、選んだドレスは彼女に良く似合っている。

 

「それより、どうしたの? 急に昔の呼び方なんて」

「大したことじゃないんです。ただ、昔のことを思い出していたので……」

「そっか。僕と一緒だったんだ」

 

 あの雨の日に出会った僕達。

 成り行きから一緒に暮らし始めて、少しずつお互いの事を知って。僕は気付いたら彼女の事を好きになっていた。そんな時に彼女が家に連れ戻されて、僕は大分無茶な方法で取り返そうとした。

 結果的には、ギリギリのところで守る事ができた。父親を名乗るあの男はもういない。児童相談所を頼ったり、学校の先生にも相談したりして彼女との関係を引き剥がした。その後も接触を図ろうとしてきたけど、きっぱりと「もう関わらない」と約束をさせている。

 以来、うちの両親が実質的な保護者となってくれている。二人とも彼女の事は実の娘のように溺愛していて、母さんなんて今も実の息子の晴れ姿をそっちのけで彼女の世話ばかり焼いている。まあ、父さんもウェディングドレス姿の彼女を見て泣いているのだが。

 

「でも、千夏。さすがにもう『長谷川くん』はおかしいよ」

「あ、そうですよね。これからは私も『長谷川』なんですから」

 

 くすりと笑った千夏は俺に歩み寄るとそっと耳を近づけて、囁くように言う。

 

「これからも、よろしくね。あなた」

「……うん」

 

 今のはあまりにも不意打ちだ。

 今すぐこの場で思い切り抱きしめたくなるのを堪えるのは、正直とても大変だった。

 

 

 

 

 

 千夏は今でも敬語をデフォルトにしている。

 以前は自己防衛の手段だったそれ。今は単に、癖になってしまったのでその方が楽、というだけになっている。周りからも特別不思議がられることはなく、当人の心優しい性格もあって「礼儀正しい良い子」というイメージを助けてくれているようだ。

 そんな千夏が言葉を崩すのは仲のいい友達と話す時や僕と二人っきりの時。特に僕へ甘える時が多く、そのギャップがたまらない。あまりにも破壊力が高いのでつい「この子の本性は小悪魔なのではないか」などと思ってしまう。

 一緒に住むようになって六年。できるだけ一緒にいるようにしたし、意識しなくても一緒にいた。それでも彼女に魅了される男子はかなりの数に上ったようで、実際に告白されたこともあるらしい。もちろん断ったらしいが、僕としてはそれでも嫉妬してしまったり。

 

 逆に、千夏に心配をかけてしまった事もある。

 それでも、僕達はこうしてこの日を迎え、千夏は純白のドレスを身に纏い、バージンロードを歩いてきてくれた。

 

「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」

「誓います」

「誓います」

 

 多くの参列者が見守る中、僕達は立ち合い人の問いかけへと静かに答えた。

 

「では、近いのキスを」

 

 緊張で胸が締め付けられるのを感じる。

 もちろん、キスは初めてじゃない。初めてキスをした時の事は今でも鮮明に思い出せる。それから何度も交わしてきたキスの一つ一つも。しかし、そのどれよりも今回のキスは特別に思える。

 ゆっくりと僕の方を向く千夏。両手でそっとヴェールを上げると、彼女は僕を見上げ「大丈夫だよ」と言うように微笑む。瞬間、見えるのは千夏の顔だけになった。かすかに潤んできらきらと輝く瞳を覗き込み、若干身を屈めるようにして、少し背伸びをした千夏へと唇を重ね合わせる。

 

「……ふふっ」

 

 時間としてはほんの一、二秒。

 けれど、僕はこの柔らかな感触を生涯忘れないだろう。そしてきっと千夏も同じだ。照れるように笑って、白い手袋で目元を拭う彼女を見て、僕は心からそう思った。

 

『新郎と新婦が互いを意識し始めたのは新郎が高校二年生の時。困っていた新婦を新郎が助けた事がきっかけでした。それから、複雑な事情から生活する場所に困っていた新婦を新郎の一家が助け、二人は共同生活を送るようになりました』

 

 披露宴ではお決まりのスライドが流された。当事者としては恥ずかしいだけだったのだが、みんなには意外と好評。良いスライドだった、などと(僕達が作ったわけでもないのに)褒められてしまった。

 

「二人ってこうして振り返るとドラマみたいな恋愛してるよね」

「ドラマって……さすがにそれは言いすぎだよ」

「そんなことないよ。挨拶でも言ったけど、二人は本当にお似合いだと思う」

 

 親友に話しかけられた千夏は顔を真っ赤にしながらも嬉しそうだった。あの時、千夏を助けられなかった事を悔いていた彼女。なんだかんだあった今も千夏の友達をしてくれていて、友人代表としてスピーチまでしてくれた。スピーチの途中で涙ぐんでいたせいか、その目元は赤い。

 

「二人は結婚しないのか?」

 

 僕の方へとやってきた親友にそう尋ねれば、彼は「ば、馬鹿」と慌て始めた。

 

「あいつ、ブーケまで受け取って滅茶苦茶嬉しそうにしてたんだぞ。そんな話したらどんどん話が進むだろ」

「? なんの話ですか?」

「な、なんでもない。なんでもない!」

 

 千夏達が話に入ってくると強引に話題を切った彼だったが、この分だと近いうちに二人の結婚式にも参加できそうだ。その時は友人代表としてスピーチをさせてもらえるんだろうか。

 

「香典用のお金も準備しておかないといけないかな」

「お父様とお母様に学費も返さないといけないし、贅沢はできないね」

 

 二人して話しながら戻っていった友人達を見つつ、千夏と言葉を交わした。

 千夏は現在大学三年生。

 一度中退した高校にあらためて入り直し、卒業後に大学へ進んだせいだ。学費は奨学金を利用すると共に、夜空の両親からも援助を受けた。父さん達は「別に返さなくてもいい」と言っているが、千夏は返したいと希望している。僕も千夏に賛成だ。

 結婚式の費用はできるだけ自分達で出したが、両親も少しだけ援助してくれた。それから千夏のお母さんからも。

 というのは、主に桃谷家を引き払ったお金だ。家のゴタゴタの後、この地域にいられなくなったあの男は家を引き払って出て行った。その辺りの手続きの際、幼い頃亡くなった千夏のお母さんの生前書いた手紙が見つかったのだ。

 

『できるなら、私のウェディングドレスを千夏にも着てもらいたかった』

 

 残念ながら、ドレスはその時既にあの男が処分していた。手紙を遺書として扱うのに十分な内容で、それに基づけばドレスは千夏の相続するべきもの。それを勝手に処分したあの男は、その他の金銭的な相続分も加えたまとまった額を千夏に残さなければならなくなった。

 結果的に住んでいた家まで失ってしまった千夏だが、終わった後はさっぱりとした顔をしていた。

 

 僕達は今、二人でマンションに住んでいる。

 僕が進学するにあたって「千夏ちゃんに何かあったらどうするの」と両親(主に母さん)が強く主張。それを機に新しい物件を探して引っ越した。家賃はもちろん上がったが、千夏もバイトを始めていたので生活費は問題なかった。

 広めの部屋を選んだので、少なくともあと何年かはこのまま住み続けるつもりだ。

 結婚と同時に新居へ引っ越すというのも夢ではあったのだが、

 

『そんなの勿体ないです。今のところでも不自由してませんし、ここでいいじゃないですか』

 

 と、千夏が言ってくれたのが決めてだった。

 実際、今の部屋のままでも十分余裕がある。家族が増えても平気なくらいだ。

 ……なんて言ったら、千夏には盛大にからかわれた。

 

『増やしてくれる予定、あるのかな……?』

 

 上目遣いの彼女に「じゃあ、今すぐ」と告げるのもぐっと我慢した。さすがにそれはタイミングを見定めないといけない。二人で話し合って決めたいと思う。母さん達は「孫の顔を見せろ」と言ってくるだろうが、そこは無視である。何も見せないと言っているわけじゃないし、長々と我慢できるとも思えない。

 お金の問題は仕事を頑張るしかない。

 

「千夏ちゃんも、早く卒業してうちに就職してね」

「はい。ありがとうございます、店長。あと二年待ってくださいね」

「二年かあ。長谷川くんと交換できないかなあ」

「店長、それはひどいですよ」

「だって千夏ちゃんはうちの看板娘だし」

 

 千夏のバイト先も僕と同じ、店長のところだ。

 僕が桃谷家に殴り込みをかけて入院した後、色々あってお父さん(自称)の問題がひとまず解決した後、千夏はバイトをしたいと希望した。

 お金の事は気にしなくても良かったのだが、それよりも千夏みたいな子が家に閉じこもって一人でいるのは勿体ない。僕は「どうせなら一緒のところでバイトしないか」と彼女を誘った。

 

『あの、その。いいんですか……? だってそんなの、幸せすぎて……』

 

 変な動揺の仕方をする彼女を思わず抱きしめてしまったのは不可抗力だと思う。

 その時点ではなんというか、告白はしたし彼女からも嫌われていない、むしろ好かれている事がほぼ確定していたものの、明確に付き合ってはいないという曖昧な状態だった僕達。

 

『桃谷さん。告白の返事、貰えないかな?』

『……それは、だって、わかるじゃないですか。好きじゃない男の子と一緒に住んだりなんて、できません』

 

 真っ赤になって言い訳していた千夏だったが、最終的にはきちんと言ってくれた。

 

『好きです、長谷川くん。私からもお願いします。私と、お付き合いしてください』

 

 幸せすぎる、なんて、それは僕の台詞だ。

 むしろ千夏は今まで苦労してきた分、もっと幸せになってもいいくらいだ。いや、他人事みたいな言い方じゃ駄目だ。

 僕が彼女を幸せにする。

 そう思ってやってきたし、これからもそうするつもりだ。彼女に感じた愛おしさは今でも変わっていない。それどころかどんどん強くなっている。

 こうして友人やお世話になった人達に感謝を述べている最中だって、ふと気を抜けば千夏の事を考えてしまう。

 例えば、結婚式の後の夜の事とか。

 現代では結婚後に初夜なんてありえないわけだけど、それはそれとして、期待してしまうのは仕方ない。こんな事を言うとやっぱり千夏にはかわかわれるのだが。

 

『……長谷川くんって、意外とえっちなんですね』

 

 当たり前だ。人より我慢強い方だとは思うが、僕だって男だ。好きな女の子と一緒にいてそういう事を考えないはずがない。むしろ、最初に「一緒に住もう」と言えたのは自分の気持ちに気づいていなかったからというのが大きい。

 まあ、今となっては大人の付き合い方ができるようになったというか、六年も一緒にいると色々と生活サイクルに組み込まれてしまっていて、その辺、職場の先輩(男子、イケメン)からすると「お前ら結構爛れてるのな」となる。でも、自分としてはきちんとしているつもりだ。

 ちらりと千夏の横顔を見る。

 綺麗だな、と思いながら、彼女が僕の方を見ていないのがなんとなく嫌で、思わず膝の上の手を握ってしまう。驚いたように彼女が振り返って笑顔を作る。

 

「もう、どうしたんですか?」

「なんでもないよ」

 

 幸せを感じながら微笑み返すと、周囲から歓声が上がった。

 

「おいお前ら、そういうのは二人っきりになってからやれよ」

「そうそう。あーあ、私も彼氏欲しいなあ」

「長谷川。この後二次会と三次会もあるんだからな。当分いちゃいちゃなんてさせねーぞ」

「そうだね。私達にも千夏をもう少し貸してね、長谷川くん?」

 

 この分だと本当に、なかなか二人きりになれなさそうだ。

 僕は苦笑して、はやる気持ちを外へと逃がす。焦る必要はない。時間はこれからたっぷりあるのだ。

 命ある限り、真心を尽くす。

 嘘を誓ったつもりはない。僕はこの子とこれから長い間、一緒に歩いていく。

 願わくば、そう。

 

 最期の瞬間まで、この子を愛し続けよう。

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