第五回 ウマ娘短編合作 ウマ娘のバレンタイン   作:雅媛

2 / 12
メインキャラクター:ゴールドシップ

前書
クッキングランナーゴルシの仁義なきラーメン道が今始まらない


劇場版ゴルシメシ ~しょうゆと塩はチョコの味~(作:あぬびすびすこ)

ガシャーン!

 

「ようトレーナー! 山に行くぜ!」

 

 相も変わらずトレーナー室の扉を蹴破って入ってきたのはゴールドシップだ。

 耳が飛び出た麦わら帽子にシュノーケルとゴーグル。そして浮き輪。明らかに海へ行くための装備だ。

 しかし暖かく動きやすそうな服装をしている。手には登山用の杖っぽいものもあるし。

 

 共存しすぎている!

 というか今は2月だ。山にしても海にしても時期が悪すぎだ。どっちに行っても凍えて風邪をひく未来しか見えない。

 山と海で姿が共存してるなら、間をとって町にでも行こう。お腹も減ったし。

 

「じゃあラーメン食いにいこーぜ。今日はしょうゆにしろってゴルゴル星から天啓がきたからいつものとこだからな!」

 

 ポイポイと装備品を脱ぎ捨ててソファへと投げる。

 またトレーナー室にアイテムが増えるな……部屋の隅に置かれている箱を見た。

 『ゴールドシップ専用! 神秘の炉』と書かれた収納ボックス。中にはトレーナー室に持ち込んでそのまま置いていくおもちゃやら何やらが入っている。たまにいが栗やどんぐりも入っていることがあるから、時機を見て定期的に俺が断捨離トレーナーとなって物を捨てる日々だ。

 

「ゴルゴル神拳最終奥義! 小指の下の生命線!」

 

 そもそも生命線は親指と人差し指の間にあるぞ。俺はそう思った。

 小指以外を使って制服のリボンを直したゴールドシップは、早くしろよと不満そうに俺を見てくる。

 しょうがないなと机の上を片付けて鍵をかける。顔を上げると、彼女は既にいなくなっていた。気が早いな!

 

 トレーナー室から出る前に、扉のがたつきをチェック。

 毎日のように蹴破られているせいで、この扉くんのライフは雀の涙程度しかないからな。

 月に1度はたづなさんに連絡して頭を下げている。もっとも、ゴールドシップの気性を鑑みてかあまりお説教はされないが。理事長は元気で何よりという感じらしいし。それでいいのだろうか。

 

 扉がきちんと閉まることを確認して鍵をかけたところで浮遊感。

 ――ん?

 

「おせーぞトレーナー! 3ゴル秒かかってるからな!」

 

 ぷんすか怒っているゴールドシップに担ぎ上げられたようだ。

 というかゴル秒ってどのぐらいの単位?

 

「√3だろ!」

 

 5秒ぐらいじゃないか!

 

「こまけーことはいいんだよ! 行くぜ!」

 

 担がれたままウマ娘の走行スピードで景色が流れていく。

 自動車ぐらいの速さで走っているのによく目が乾かないなぁと毎回思っている。

 白目剥いて走るとすげー目が乾くとは聞いたけども。

 

 エアグルーヴに怒られたりバンブーメモリーに追いかけられながらも大逃げをして駐車場までやってきた。

 捕縛される前に車に乗り込んでさっさとラーメン屋へと向かう。

 

「すっすめーすっすめーどっこまーでもー」

 

 子供のようにはしゃいで歌うゴールドシップ。

 今日は機嫌がいいなと話すと、ニヤリと笑って紙切れを取り出す。

 

「ここにおわしますのはゴルシン教が奉りし由緒正しいクーポン券でございますわよ」

 

 クーポン券? ラーメン屋に駐車して差し出された紙を受け取って確認。

 『○×商店街で使えるクーポン券! なんでも564%オフ!』と書いてある。

 ものすごい誤字だ! 100%オフを超えたらそれはもう贈与だよ。

 

「おもしれーだろ! これ使ったら金もらえるぜ!」

 

 ゴールドシップのお眼鏡に適うものを手に入れて上機嫌になっているらしい。

 カラカラと笑う彼女にクーポン券を返してラーメン屋へと入る。

 

「いらっしゃいませー!」

「へいらっしゃいッ!」

 

 ゴールドシップがへいらっしゃいで返答した。

 それはこちら側のあいさつじゃない。

 

 予想外の返答で困惑する店員をよそに、そそくさとカウンター席へ座る。

 メニューを開いてみると、何やらフェア期間中らしい。

 

「あん? チョコレートラーメン?」

 

 2人で首を傾げるが、そういえばと携帯電話を取り出す。

 今日は2月14日。バレンタインデーだ。なるほど、だからチョコレートが。

 いや、なるほどにならないけども!

 

「アタシはチョコレートラーメン! こっちはホワイトチョコラーメンな!」

 

 合うのかなぁ、なんて思っていたらゴールドシップが注文してしまった。

 いやちょっと待ってくれ。普通のラーメン食べたいんだけど!

 

「トレぴっぴよぉ! こんなラーメンあるなら食うしかねーだろ!」

 

 確かに気にはなるけども!

 この世には塩キャラメルとか砂糖しょうゆもちとか甘じょっぱいみたいな食べ物はあるから、そういうノリだと思うよ。

 でもお昼ご飯ぐらいは普通のがいいんですけど!

 

「ここで挑戦しねーとかありえねーだろ! あ、水くれ」

 

 差し出されたコップに水を注ぐ。

 うーん、これはもう食べるしかない流れだな。

 

 不安に思いながら待っていると、店員さんがラーメンを持ってきた。

 

「こっちがチョコレートラーメン。あとホワイトチョコラーメンです」

「おぉー! マジでチョコレートが入ってんじゃねーか!」

 

 チョコっぽいものがラーメンスープに混ざっていて、さらにごろっとしたチョコレートもある。

 おお……本当にチョコが存在感を放っている……しかし具はチャーシューにメンマ、なると、ネギという普通のもの。

 俺のホワイトチョコラーメンは物凄く白い。ホワイトだ。そしてぷかぷかとホワイトチョコが浮かんでいる。

 なんという……暴挙ッ。でも匂いは普通なのでおいしそうだ。

 

「うっし! いただきます!」

 

 いただきますと手を合わせ、いざ実食。

 スープを1口……あれ?

 

「ほぉー、ウマいな」

 

 ゴールドシップも驚いている。

 そう、なんというか、美味しい。俺のは塩スープにふわりとカカオ、ホワイトチョコの風味があるって感じだ。

 なるほどね、塩ラーメンなんだ。そして甘さが思ったよりくどくない。さっぱりしてるね。

 

「トレーナーのは何だ? 塩か? アタシのはしょうゆ」

 

 こちらを覗き込んでくるのでスープをすくってレンゲを差し出す。

 そのまま口に含んだ彼女はまたほぉーと何度か頷く。

 

「ほら」

 

 ゴールドシップからもレンゲを差し出されるのでスープを1口。

 ああ、うん。こっちはしょうゆにカカオの風味が抜ける感じだ。思わずふーんと頷く。

 

 続いて麺も1口……ああ、これは……。

 

「しょうゆラーメンだな」

 

 塩ラーメンだ。

 そこにカカオとチョコの風味がある……って感じ。

 美味しいけど後味がチョコレートだから、今俺は何を口に入れてるんだろうみたいな気持ちになるな。

 

「おもしれーな、コレ」

 

 2人で興味深いなぁと言いながら食べ進める。

 途中浮かんでいたチョコレートが溶けていたので欠片になったものを食べてみたが、完璧にチョコ。ただのチョコ。

 ラーメン食べてるのにチョコの甘さが口に広がり、思わず2人とも笑ってしまった。

 

 カランとレンゲをどんぶりの底へ置き、箸も合わせて横に置く。

 

「ごちそうさまでした」

 

 ごちそうさまでした。手を合わせて呟き、水で口内をリセットする。

 いやぁ、不思議なラーメンだったな……。

 

「アタシは何を食ってたんだろうな……」

 

 2人で遠い目をしていると、店員さんが食器を下げる時に何かをテーブルへ置いていった。

 何だろうかと視線を向けると、そこにあるのは包装された小さなブロック。

 

「チョコじゃねーか!」

 

 チョコだった。俺のはホワイトチョコ。サービスでくれたらしい。

 何が何やら……怒涛の展開に苦笑してしまう。

 

 食休みを挟んで、会計をして車に戻る。

 なんとも不思議な体験だった……お昼ごはんとしては適さない気がしたな、うん。

 

「なんつーか、食事でもおやつでもねー感じだったな」

 

 シートに体を預けて考え込むゴールドシップ。

 いや、ホント。チョコ味のラーメンかと思いきや基本がラーメンの味でチョコ風味という不思議な感覚。

 頭の中が整理できないというか、腑に落ちないというか。ねぇ?

 

 ぼんやりとした気持ちになりながら学園に戻ろうかと車を発進させる。

 来た道を戻っていると、ゴールドシップが隣でガサガサやっているのが見えた。

 

「トレーナー、口」

 

 言われた通りに口を開けると、何かが放り込まれた。

 うわ、苦ッ! すごい苦ッ!? ああでも慣れると美味しく感じるなぁ! チョコの風味あるからチョコだなコレ! カカオ何%のチョコだコレ!

 思わず隣を見ると、そこには楽しそうに笑っているゴールドシップの姿が。

 

「はははは! すげー顔!」

 

 楽しそうに笑いながら、ゴールドシップは口の中にチョコを入れる。

 ん? それってさっきのチョコ?

 

「おう! いやぁ、甘んめーなぁホワイトチョコ」

 

 ラーメン屋でもらったホワイトチョコを彼女に渡したのだ。

 じゃあさっき食わされたのはゴールドシップが貰ったチョコ?

 ミルクチョコに見えたんだけどなぁ……ビターチョコだったのかな。

 

「カカオから作ったチョコだぜ! 味わって食えよな!」

 

 チョコは全部カカオからできてるのでは?

 

「そりゃそうだろ……ハッ、もしかしてアタシが知らねーチョコがあんのか!? ベニテングダケで作られたチョコが!」

 

 キョロキョロ周りを見るゴールドシップ。

 相変わらずおかしなことを……と思っていたが。見慣れないものが彼女の手元に。

 手のひらサイズの小さな箱と、見覚えのある茶色のブロック。そして手作り感あふれるラッピング。

 

 ……ゴールドシップ。

 

「あん?」

 

 ホワイトデーは何がいい?

 

「……へへっ。口ん中あめーからな。ラーメン食いにいこーぜ」

 

 俺はすごい苦いけどな。

 そう話すと、ゴールドシップは嬉しそうに笑うのであった。

 




ちょっぴりオトメのゴルシちゃん☆

作者
あぬびすびすこ
代表作
ゴールドシップとの3年間
https://syosetu.org/novel/255533/
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。