前書
まだ実装されてない娘を描くのって難しいよね?
まぁ、楽しいわけだけど・・
今日はニ月十三日。
皆が一様にソワソワし始める地震で言ったら初期微動のような日。
それもこれも全てはあのバレンタインが原因だ。
バレンタイン・・・・。
それは女子が想い人にチョコレートを渡してその想いを伝える所謂リア充の祭典。
最近は友チョコや義理チョコなど何だかんだ分からないチョコまで出てきている。
「友チョコは分かるよ。友達に対して親愛とかあるだろう。愛とは違っても少なからず好意はある。でも義理チョコってどう言う事なんだぁ?なんとも思ってないのにチョコが貰えんのかぁ?だからチョコいくつ貰ったかなんてマウント合戦が起んだよ。てことでマウント合戦する男子。来年からお前ら死刑」
「何てトレーナーさんが騒いでて宥めるのが大変だったっス・・・」
「それは大変でしたね・・・・」
ここは学園のカフェテリア。
普段はオグリキャップが丼の大盛りご飯を何十杯も食べているのが見られるが今日は居ないらしい。
そんなカフェテリアでため息を付くのはバンブーメモリー、この話の主人公だ。
そして隣に居るのはヤエノムテキ、この話の苦労人である。
「何とかならないっスかねぇ?去年も血の涙を流してたっス・・・」
「すいません。そう言う話には疎くて・・・」
ヤエノムテキが頭を下げるとバンブーメモリーが頭を上げさせる。
「よしてくださいっス。なら、一緒に作らないっスか?バレンタインチョコレート」
「で、でも私料理は・・・」
「大丈夫っス!アタシも料理はからっきしっス!」
「胸張れることじゃあ無いですよ・・・」
ヤエノムテキがバンブーメモリーに向かってため息を付く。
ふたりとも料理は得意な方ではない。
「トレーナーさんに料理教えて貰っておけば良かったっス・・・」
「お役に立てなくてすいません・・・」
「だ、大丈夫っス!試行錯誤してなんとかすればいいんスよ!」
こうしてバンブーメモリーとヤエノムテキによるチョコレート作成作戦が実行されようとしていたのであった。
「まずは作り方っス!」
トレーナーの部屋のキッチンと、エイシンフラッシュにチョコレートの作り方の本を借りた二人。
トレーナーのキッチンにエプロンを着て立つ。
「フラッシュさんからお借りた本によると先ずは湯煎です」
「すいません。湯煎ってなんスか?」
「湯煎とはお湯でチョコレートを溶かす工程みたいです」
「分かりました!」
そう言うとバンブーメモリーはチョコレートをお湯の張ったボールにぶち込んだ。
「ちょ!何してるんですか!?」
「え?お湯で溶かすって・・・」
「お湯で溶かすってそういうことじゃないですよ!お湯を張ったボールの上にチョコレートを入れたボールを置いてチョコレートを混ぜるんです!」
「あ、そうなんスね!」
バンブーメモリーが湯に溶けたチョコレートをガブ飲みする。
「今度は失敗しないっス!」
「・・・・・・・お願いします」
バンブーメモリーがお湯をボールに入れて更にチョコレートを入れたボールをおいて混ぜる。
次第にチョコレートが溶けていて最後にはドロドロになった。
「次は型嵌めです。この型にチョコレートを嵌めて冷やせば完成です」
「了解っス!」
バンブーメモリーがドロドロになったチョコレートを型に入れる。
そして、ヤエノムテキがふと部屋の外を見る。
そして見てしまったのだ。
「面白そうなことやってんなぁ」
自分たちをじっと見つめにへらと笑うゴールドシップを・・・。
ズカズカと部屋に入ってきてチョコレートを見る。
「ゴールドシップさん!?何故トレーナーさんの部屋に!?」
「あ?んなのトレーナーのベッドの下にエロ本でも隠してねぇかなぁって探しに来たんだよ」
「で、何か見つかったんっスか?」
「見つかったつうか居たっつうか・・・・」
ゴールドシップが手を出す。
バンブーメモリーとヤエノムテキが顔を覗かせて見るとそこに居たのは・・・・。
「ゴキブリ」
「きゃあ!」
「は、早く捨ててくるっス!」
ヤエノムテキがソファーまで飛んでいきバンブーメモリーも後ずさる。
ゴールドシップがつまらなそうに部屋を去ったのを見て安心したのも束の間。
みるみるとバンブーメモリーの顔が青くなっていく。
「ど、どうかしましたか?」
「やってしまったっス・・・・・」
「?」
ヤエノムテキが不思議に思いソファから首を出しキッチンを見る。
そこには溶けたチョコレートが散らばった無惨なキッチンだった。
「ゴキブリにびっくりするあまりチョコレートを零してしまったっス!」
「え!?もう材料無いですよ!?」
バンブーメモリーがとりあえず床を拭きながらどうしようかを考える。
そんな時ドタドタと足音が聞こえた。
またゴールドシップだろうと思ったがどうにも違う。
明らかにゴールドシップの足音ではない。
しかし彼女達はこの足音を知っているッ!
この子供のような足音ッ!
そう、彼は・・・・・・。
「ゴルアァァァッ!ゴキブリ狩りじゃァァァァァァッ!」
「「トレーナーさん!?」」
そう、バンブーメモリーのトレーナーだ。
「ゴルシにゴキブリが出たって聞いたんだけど・・・何この状況?」
「ゴキブリならさっきゴールドシップさんが持っていきました。後この状況は・・・まぁ、気にしないでください」
「いや、気にするよ?何これ?チョコまみれじゃん俺の部屋」
トレーナーが床にこぼれたチョコレートを触って匂いを嗅ぐ。
「なるほど、ブラックチョコレートか。いいチョイスだと思うぞ?甘いのがあんま好きじゃないって奴は結構居るからな。まぁ、俺ご飯にチョコとカルピス乗っけるくらい甘党なんだけどね」
「・・・・・・・・・」
「トレーナーさん、いつか糖尿で死にますよ?」
「甘いもんで死ねるんだ。悔いはないね」
トレーナーは指に付いたチョコを舐め取って部屋から出ようとする。
そこでバンブーメモリーが竹刀をトレーナーに突き付けた。
「っ!?」
「・・・・・・・・・・」
「おいおいおいおいおいおいおいおい。バンブー、オラ別に風紀違反をしたつもりは無いがね」
「・・・・・トレーナーさん、明日はなんの日か知ってるっスか?」
トレーナーが振り返り顎に手を当てる。
「え?なんの日だろうな。ウィンディとのイタズラ会議は今日だし、ゴルシとの木魚ライブは来月・・・・・」
「待ってくださいっス。そっちの方が気になるんスけど・・・」
「よし、決めた!」
「え?」
「バンブーさん!トレーナーさんを捕まえてください!」
「もう遅い!」
それはヤエノムテキが叫んでバンブーメモリーが一瞬だった。
「逃げるんだよぉ!スモーキーぃ!」
「し、しまったっス」
バンブーメモリーがあとを追おうとするが既にトレーナーは彼方に消えていた。
これもトレセン学園七不思議の一つ。
『ウマ娘に張り合うトレーナー』だ。
「バンブーさん・・・・・」
「・・・・何してるんでしょうね、自分」
バンブーメモリーがぽつりぽつりとつぶやき出す。
「トレーナーさんがモテない男子の僻みを言い始めて・・・、可哀想に思ってチョコレートを贈ろうとしたっス。でも・・・・」
「・・・・・・・・・」
「安心したんっス。トレーナーさんに初めてのバレンタインチョコレートを渡せるって・・・」
バンブーメモリーが竹刀を壁に立て掛けてストレッチをする。
それを見てヤエノムテキがため息をついて雑巾を絞りだす。
「早く帰ってきてくださいよ?」
「分かってるっス!」
こうして二人のバレンタインイブ隠れん坊が始まった。
ある時は畑で・・・・。
「子分の居場所なんてウィンディちゃん分からないのだ!」
ある時は屋上で・・・・。
「あ?トレーナーがどこにいるかって?んな事より今からエジプト行かね?」
ある時は駅前の路地で・・・・。
「教えてやっても良いが私の賭けに勝てたらな」
ある時は寮の前で・・・・。
「トレーナーさんなら今地下牢に閉じ籠もってるよ。悪霊が何とかって言って・・・」
見つかった。
「私も困っててね、君を呼ぼうと思ってたんだよ」
フジキセキに連れられてトレーナーの地下牢の前にバンブーメモリーが立つ。
それに気付いてトレーナーも鉄格子越しにバンブーメモリーの前に立つ。
「出てくるっス。アタシと一緒に帰るっスよ」
「消えな。お呼びじゃあねぇぜ・・・・」
「・・・・・悪霊が憑いてるっスか?」
「・・・・・・・・」
トレーナーが目を瞑ってしばらくしてから目を開く。
「・・・・・・あぁ」
「・・・・・・ウソっスね?」
「・・・・・・あぁ」
そう言うとあっさりトレーナーが地下牢から出てくる。
「何だよ~なんで分かんだよ~」
「気配が無かったっス!」
「んな、あやふやな理由!?」
「さ、帰るっスよ」
「へいへい」
二人が外に出ようとするてフジキセキが二人の肩を持つ。
「見逃してあげたいんだけどね、そろそろ門限だよ?」
トレーナーが時計を見ると既に時間が六時五十分だった。
門限まで残り十分しかない。
「だけど残念な事に毎年この日は想いを届けようとするポニーちゃん達が後を経たなくてね、君も探してくれたら私は凄く助かるんだけど・・・・・」
「?」
「あぁ、でもそうなると君が帰ってきたか見れないし、探してる途中何処に居るのかも分からないなぁ」
ようやくフジキセキの意図に気づいたのかバンブーメモリー・・・ではなくトレーナーが大笑いする。
「なら、俺とバンブーが手伝ってやるよ。ちょいと家に立ち寄ることになるがな」
「それでいいよ。でも十二時過ぎまでには帰って着てね」
こうして二人は地下牢を出ていった。
そして帰ってこないウマ娘達を見つけて寮に返すこと5時間後。
途中から参加したヤエノムテキも加えて寮に帰ろうとしていた。
「うし、ちょいと待ってろ」
トレーナーがトレーナーの寮の前で二人を止める。
しばらくすると寮から出てきたトレーナーが二人に小さな箱を投げる。
「こ、これは・・・?」
「あ?チョコレートだよ。あぁ、安心しろ。お前ら好みの味付けにしてるから」
「私も貰っていいんですか?」
ヤエノムテキが聞くとトレーナーが頭を掻きむしる。
「まぁ、ヤエノにゃあいつもバンブーのトレーニング手伝って貰ってるしな・・・」
「でもアタシ達お返しなんて用意できないっス・・・」
「あ?あー・・・あの散らばってたチョコさ、もしかして俺のために作ってくれてたのか?」
「ッ!?」
「俺にとっちゃそれで十分だよ」
トレーナーが二人の頭を背伸びして撫でる。
「トレーナーさんだってそんな鈍感じゃあないのよん!」
既に十二時を過ぎて十四日になっていた。
それに気付いたのはフジキセキに十二時過ぎまでに帰って来なかった事を注意されたときだった。
その時バンブーメモリーはまだまだトレーナーには敵わないと思った。