獅子戦役からなんて聞いてない。   作:産業革命

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アニメ決定おめでとうございます(歓喜)。

そのテンションのまま前回のアレを加筆、修整したモノです。

設定を調べはしたけど自信はないので、そこは御注意を。


本編
出会い〜挙兵《七耀暦748〜749年秋》


《西暦2022年》日本 とあるマンション

 

 日本の都市部にあるマンションの一室、ある一人の男性が覇気のない目をして寝台で寝転びながらゲームをしている。

 

 そしてゲームをしながら、コロナ騒動でリストラされた事の愚痴を呟いている。

 

 そう、この男性は今生きる為の活力と目的を失っていた。

 

 

 

 

 

 思い返せば、生きる事の意味を最近は見出だせなかった。

 

 ブラックな企業ではなかったが、毎日仕事に追われて家に帰れば御飯を食べて寝る。

 

 そんなルーチンワークを繰り返す事に何か意味があるのだろうか。学生時代に聞いた歌でも「自分がいなくても世界は廻る」的な事を唄っていた。実際にそうだと思う。

 

 

 

 学生、新成人時代はまだ目的や夢があった。

 

 自分とはオンリーワンな存在で、決して代替品は無いと思っていた。学業や運動がトップでなくとも、それ以外の長所があるから違うと疑っていなかった。

 

 

 

 社会人に馴れた頃だろうか、社会は規格化されていて、自分は取替えの効く歯車の一つだと知った。

 

 資格を持っている?自分以外に持っている人は何百人といる。求人募集を掛ければ幾らでも来るだろう?

 

 軍事や歴史の知識がある?それが何の役に立つのか。趣味なら兎も角、仕事の成果には繋がらないだろう?

 

 勉強が出来て良い大学も出た?それがどうした。卒業生なら同期だけで百何人もいるし、大事なのは仕事が出来るかどうかだろう?

 

 

 

 同一品はなくとも、互換品はある。

 

 そんな事を日々感じていた時に出会ったのが、『英雄伝説』シリーズだった。

 

 久しくゲームをやっていなかったからか、それとも惹き込まれるストーリーやキャラクターが魅力的だからか、運命に必死に抗う彼等の姿に熱中して感動して、そして悲嘆した。

 

 何故リベールやクロスベルに比べて、帝国編はこんなにも悲惨で過酷なのか。

 

 要約してしまうと全部あの『黒いの』(あとそれを産み出した過程の奴らもだが)が悪いで終わってしまうが、それにしても思った事がある。

 

 

 

 閃の軌跡の真のラスボスは一応『イシュメルガ』であるが、私としてはその宿主であった『ギリアス・オズボーン』…いや、『ドライケルス・ライゼ・アルノール』こそが真のラスボスであると思っている。

 

 だが、そんな偉大なる彼の想いを最終的に理解、共有出来た人物が『リアンヌ・サンドロット』唯一人とは、あまりにも哀しいのではないかとも。

 

 獅子戦役当時の人間には寿命という問題があるから仕方が無いとはいえ、あのローゼリアさんですら気付かない…いや、気付かせなかったのは信頼が足りなかったか責任感が強かったかだろう。多分、後者だとは思うが…。

 

 

 

 そんな彼にもしも『ロラン・ヴァンダール』以外の親友がいて、『巨いなる黄昏』時に共犯者となってくれる人物がいたら?

 

 しかもその共犯者が転生者のゲームプレイヤーで、計画の目的を完全に理解していたら?

 

 

 

 こんな世界ではなく、もし、もしも…

 

「あの世界に生きられたらな…。」

 

 寝台に寝転びながらゲームをプレイする男は、そんな詮無き事を呟きながら目を閉じる。

 

 

 

 

 

 男性が眠りについた時、クリアしたゲーム画面がやけに煌いている様に見えた。

 

 

_____________________

 

《七耀暦748年》ノルド高原

 

 雄大な山岳に囲まれて穏やかな風が吹く草原の何処か、馬に跨った青年が広大な野原を一人颯爽と駆けている。

 

 馬の主たる青年の表情は何処か険しく、まるで疾走る事で何かを堪え忍ぼうとしているかの様だ。

 

 

 

 まぁ、青年の顔が険しくなるのも無理は無い。何せ青年の祖国たる『帝国』では、今血で血を洗う熾烈な内戦が起きているだから。

 

 皇帝の崩御から勃発したこの内戦の戦火は既に帝国の全土にまで広がっている。各地の大貴族達の対立と帝位争いが絡まった争いは止む兆しを一切見せず、寧ろ激化する一方だ。

 

 最も、現在争っている誰が勝利したとしても待っている未来が明るいという事はないのだが。皇帝の座に即位しても良くて後ろ楯たる貴族の傀儡で、悪ければ帝位簒奪があり得る。

 

 そして、その先に起きるのは他の貴族の不満から起きる第二の内戦か虎視眈々と帝国領土を狙う諸外国の侵略だろう。若しくは抑圧されてきた市民による『革命』もあるかもしれない。

 

 いくら帝国が大国であるとはいえ内乱によって国力は大幅に低下している現状、二度の内乱を治める事も外国からの侵略を防ぐ事も、市民の蜂起を防ぐ事も難しい。

 

 

 

 

 

 

 

 内憂外患な祖国を憂いつつ、愛馬に身を任せて走る事少々。青年の姿は高原と帝国を繋ぐ街道にあった。

 

 祖国を放浪した後に辿り着いたノルド高原、其処で遊牧民に迎えられてから早ニ年。

 

 結果として内乱から逃れる事が出来たのは幸か不幸なのかは分からないが、遊牧民である彼等と共にいると皇子としての責務、今は亡き母の想いを放棄している事をつい忘れそうになる。

 

 

 

 その皇子としての責務を思い出す為、母の言葉を忘れない為に、青年は護衛も無しに度々帝国へ続くこの街道――現代のゼンダー門周辺――に来ていたのだが…。

 

 

 

「む…。アレは…人か…?」

 

 

 

 七耀暦にして748年のある日、将来は『獅子心皇帝』と呼ばれ、後に帝国中興の祖として知られる事になる青年〈ドライケルス・ライゼ・アルノール〉は、ある一人の異邦人と出会った。

 

 

_____________________

 

 突然だが、一つだけ聞いてほしい事がある。

 

 

 「自室のベッドで『英雄伝説:閃の軌跡』シリーズをプレイしていたと思ったら、突然草原の何処かに立っていた。」

 

 

 何を言っているのか分からないと思うが、自分でもどうなっているのか分からなかった…(以下略)。というジョジョネタは兎も角として、まるで意味が解らない状態になっていたらどうすべきなのだろうか。

 

 周囲を見渡して見ても生い茂る草と疎らに生えている樹木、遠くにはストーン・ヘンジらしき何かと巨人らしき石像位で人も建物も見えやしない。

 

 強いて言うなら道らしきものは見当たるが、タイヤ痕や車輪痕等の乗り物が通っている様な跡がまるで無い。  

 

 獣道はあるので生物が闊歩している事だけは理解できるが、果たして本当に人が来るのだろうか。

 

 

 

「どうしましょう…。」

 

 

 

 そんな事よりもだ。付近に人がいるかどうかは今気にしている事に比べると別にどうでも良い。

 

 いや、本当に。

 

 大事な事は唯一つ。それは…

 

 

 

 

 

「私の…私の長年の相棒が…!?」

 

 アイエエエ!ナンデ!?TSナンデ!?

 

 正直ニンジャスレイヤーは一粍も知らないが、そんな事を叫びたくなる。

 

 長年の相棒は影も形もなく、それどころか慣れない下の感覚と奇妙な胸の重さと声の高さを感じる事にパニックをせずにはいられ無い。

 

 それに『俺』が自然と『私』に変換され、ヒラヒラとした服装故か少しだけ風を感じるのもパニックポイントに加算されている。

 

 彼の有名なトラック=リインカーネーションを経験した訳でもなく、ブラックダークノワールカンパニーで社畜していた訳でもない。ましてや部下に突き落とされて神の存在を否定してもいない。

 

 

 

 何が原因かとその場で考えていると、突如として頭が痛んだ。どんな痛みかといえば、頭の中を直接掻き回される様な頭痛がする。

 

 余りの頭痛に禄に思考が纏まらないが、何とか周囲と自分の状態を確認しようとする。

 

 そして痛みに耐えかねて気絶してしまう前に見た物は、遠くから馬で駆け寄ってくる一人の青年の姿だった。

 

 

_____________________

 

 内戦の影響もあり、最近はめっきりと見なくなった来訪者に驚いて傍観してしまった青年だったが、突然倒れ込んだその人を見て急いで駆け寄る。

 

 倒れた人物は女性のようで、不躾の無い様に診断した結果、熱があり顔色も少々優れないが命に別状は無さそうだと判断し、少し汚れている帝国では見慣れない衣服や年期が入った持ち物から、女性というのは珍しいがおそらくは異国の旅人だろうなと推察できた。

 

 なぜ彼女がこの高原に辿り着いたのかという疑問が過ったが、救助が先決だと判断して彼女を背中に背負うようにして馬に跨り、介抱するために速足で集落へと向かう。

 

 

 

 そして青年はその途中、世界の何処かで歯車が回り始めた音を聴いた気がした。

 

 

_____________________

 

「……知らない天井です。」

 

 一度は言ってみたかった(※個人の主観です。)よくある目覚めテンプレな科白を呟きながら目を開けると、ゲルらしき天井が目に入った。

 

 上体を起こして周囲を見回すと、何時ぞやの本で見た事がある遊牧民らしい家具や寝具が置かれている。

 

 

 

「おっ…無事に起きたか。」

 

「え…と、アッハイ。」

 

 そのまま部屋の内装を観察していると、入口から一人の青年が入って来た。

 

 つい変な言葉と目を泳がしながらで返事してしまったが、突然現れた青年と今の状態に混乱気味な自分を察してくれたのか青年は今に至る迄の説明をしてくれた。

 

 

 

 どうやら自分は『エレボニア帝国』へ繋がる街道で倒れていた所を青年…いや、自らを『ドライケルス』と名乗る目の前の人物に助けられたらしく、介抱する為に此処『ノルドの民』なる遊牧民の集落に連れてきたのだとか。

 

 

 

 ………『エレボニア帝国』…?『ノルドの民』…?

 

 えっ…?先程この人『ドライケルス』って言った?

 

 すみません。今は何年ですか?

 

 はぁ…『七耀暦748年』ですか…。

 

 

 

 

 

 えっ…エエェェええぇぇ!?

 

 確かにこの世界で生きたいとは思っていたし、口にも出していたけれど…

 

 

 

こういうのって、普通はトールズ士官学院からじゃないの?

 

 

_____________________

 

 助けた女性――アウィナというらしい――は非常に面白く、又博識な人物だった。

 

 助けてくれた御礼がしたいと彼女に言われたので、戯れに何か面白い話をしてくれと頼んでみた。旅の話か何かでも話すのかと思えば、彼女が生まれたという国の事を話してくれた。

 

 嘗て戦乱を経験したニッポンなる国は永きに渡って戦争を経験していないとか、食が豊かで餓死する人がほぼ出ず、努力すれば誰もが教育を受ける事が出来るのだとか。

 

 大陸で最も国力のある国の一つである帝国でも有り得ない様な話ばかりだったが、もしその様な国が本当にあるのなら正しく楽園なのではないだろうか。

 

 もし自分が国を率いる指導者ならば、是非ともその様な国を目指したいという指標の参考になった。

 

 ただ彼女に「まるで楽園の様な場所だな。」と言ったら、無言で何処か遠くを珍しく濁った目で視ていた。祖国で何か嫌な事でもあったのだろうか、だとしたら申し訳ない事をした。

 

 

 

 ノルドの民たちにも、何時の間にか受け容れられていた。

 

 積極的に仕事を手伝ったり、見知らぬが美味しい料理を披露したり、子供の遊び相手をしていたのが理由だろう。

 

 自分としては、彼等の仕事を手伝っている時や料理中の明らかに慣れていない動作に不安を感じずにはいられなかったのだが…。

 

 

 

 あと、銃火器や火砲に対する知識が豊富だった。

 

 偶然彼女が私物の手帳に何か描いているのを見かけて尋ねてみたら、戦場において効果的な火砲や銃火器の配置や螺旋状の溝を刻んだ小銃、新型の弾丸について描いていた。

 

 武を尊ぶ帝国貴族としては別に可笑しい知識ではないのだが、他国の女性が戦術や武具について学ぶというのは珍しい。

 

 もしかしたら産まれは名のある武門の家柄か武器工房なのだろうか。だとしたら立ち振舞が丁寧な事も知識がある事も頷ける。

 

 

 

 

 

 そんな彼女と交流し見識を深め、挙兵について考えていたある日の事。

 

 遂に、その日が訪れた。

 

 

_____________________

 

《七耀暦749年》秋 ノルドの民の集落

 

 放浪時代に親交を深めた親友『ロラン・ヴァンダール』が齎した知らせを契機として、母の言葉を胸に挙兵する事を決意した。

 

 そして集落で旅立ちの支度をしている最中、一人の女性が青年に声を掛ける。

 

「出立の時なのですね、ドライケルス様。…いえ、『ドライケルス・ライゼ・アルノール皇子』。」

 

 此処で呼ばれる筈がない『皇子』と呼ばれて振り向くと、そこには何時ぞやに助けて交流を重ねた女性――アウィナが立っていた。

 

 巷の噂で自分の名を知っていたらしく初めて名乗った時から気付いていたと言い、今回の事で確信を持ったと言う。

 

 そして胸に手を当てながら必死にこう続ける。

 

「どうか、私も貴方様に同行させて頂きたいのです。」

 

 あの助けられた日からこうなるであろう自分の力になる事を決めており、この時の為に護身術としてノルドの弓術を教えて貰っていたらしい。

 

 一瞬彼女の申し出を断ろうかと思ったが、こちらに向いた目に宿る堅固な意思を感じ取り熟考する。

 

 確かに人手が欲しい上、彼女の知識は大いに自分の助けになるだろう。しかし、帝国に無関係であろう彼女を帝国男児としても人間としても自分の危険な旅路に巻き込んでも良いのだろうか…。

 

 

 

 そのまま向かい合っていた二人だったが、半刻程悩んだ後に彼女へ「よろしく頼む。」と唯一言だけ返す。

 

 それに応えるように、彼女も臣下の礼を返した。

 

 

_____________________

 

《黒の史書》7~『ドライケルス挙兵』~より

 

 以下、黒の史書より一部抜粋

 

『ある日、青年は一人の異邦人を助け、そして彼女との間に性別を越えた得難き友情を築く。』

 

『彼女との交流は、青年にとって目指すべき未来を示す良き助けとなった。』

 

 (中略)

 

『旅立ちの支度をしているドライケルスに友人である彼女が訪ねてきた。』

 

『恩人である彼の助けになる為に同行を申し出る彼女の提案に悩んだドライケルスだったが、熟考の末に受諾した。』

 

『彼女も臣下の礼をとり、第二の盟友となった。』

 

 (中略)

 

『七耀暦949年秋、ドライケルス軍挙兵――』

 

『手勢はわずか1()8()()であった。』

 

_____________________

 

●主人公(アウィナ・ウェレンドルフ)

 

 何の拍子かリアルワールドの男の魂が宿ってしまった現地人の女性(19歳)。転生ではなく憑依にしたのは因果律云々の設定をややこしくしない為。

 原作でのカルバード周辺で暮らしていたが、内戦が起きた帝国に居るという親戚の安否確認しに来た所を戦火に巻き込まれて、導かれるようにノルドまで逃げてきたという設定があったりなかったり。

 あと、途中の頭痛は意識が融合する時の副作用で、現地語が読み書き出来たり仕草が女性として違和感が無いのも其のため。

 

 憑依した男は両親の事故死にコロナ禍でのリストラという追討ちを喰らって意気消沈だったところ、現実逃避する様に好きだったこのゲームをプレイしていた。

 なおミリオタ兼歴オタであった為、作中の知識はこれが由来。

 英雄伝説シリーズではギリアス推しで、偉大な人柄とラスボスとしてのオーラが堪らなく好きだったとの事。

 

 憑依後は憑依前が嘘であったかのように非常に活き活きと活動。

 最初は興奮や未知の環境からくる空元気だったが、新鮮な遊牧民生活と穏やかな自然環境で精神も従来の精神状態にまで回復。鬱病の治療法に近い。

 

 名前の由来はドイツ産出の宝石であるアウイナイトと、同じくドイツの宝石工房であるウェレンドルフから。

 

 TSにした理由は、男よりも女の方がドライケルス一行のバランスが取れると思ったから。容姿イメージはヘタリアの女体化版「にょたりあ」のロシア。

 

●ドライケルス・ライゼ・アルノール(20歳の姿)

 

 若かりし頃の獅子心皇帝の姿で、無自覚だがその魂の子孫へ引き継がれるカリスマと朴念仁が既に備わっている。

 放浪中や集落での生活では、彼に心惹かれる人(異性含む)が多数いたとか。ただ、後に惹かれあう女性以外の好意にはまだ気付かない。

 

 ノルドにて争いとは無縁に過ごしていたが、原作と同様にロランの知らせにより挙兵を決意。

 ただ原作に比べて既に目指すべき国家像が定まっているので意思は固く、主人公のミリタリー&歴史知識の影響か軍略にも明るい。

 




次回は未定です。

その、資料がないので…。
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