余り期待せずお楽しみください。
《七耀暦750年》レグラム近郊
ノルド高原を出立してから半年程経った私達は、戦禍に巻き込まれた人々を助けながら帝国領南東部にあるレグラム近郊にまで来ていた。
ここに来るまでの間、実に様々な困難があったが、個人的に一番困難だったと感じたのは『ロラン・ヴァンダール』の死の阻止だろう。
原作の『黒の史書』でも『リアンヌ・サンドロット』に会う直前にドライケルスを庇って死亡としか書かれていなかったので、ここ最近は常に気を張っていたのだが大変疲れる事この上なかった。
例えるなら、大体一ヶ月程ぶっ通しでデスゲームをやっている感覚だったと言えば分かりやすいだろうか、肉体的にも精神的にも疲労が酷いのだ。
というのも、レグラムに来る直前に寄った町で兵隊崩れの山賊の討伐を依頼されたのだが、その山賊が根城にしているという廃砦での戦いの最中にドライケルスを狙っていた狙撃兵がいて、その攻撃から彼を庇って原作では死んだらしい。
かなり巧妙に偽装していたので攻撃されるギリギリまで気が付かなかったが、攻撃前に紅黒いオーラを感じて反射的に矢を射って狙撃を阻止したというのが真相だ。
普段だったら絶対間に合わなかったタイミング射ったのだが、これまでの戦いでかなり疲労していた事が幸いしたのか、遥か限界まで集中して神業ともいえる速射が出来たから間に合ったのだろう。二度目は多分出来ないし、したくもない。
これまで戦ってきた敵の中にあの紅黒いオーラ――十中八九、帝国に伝わる『呪い』か何か――を感じる敵はいなかったので、多分あの名もなき狙撃兵がロラン・ヴァンダール死亡の原因だったのだろうと推察できる。
今現在の結果としてレグラム到着直前に起きるはずだった彼の死亡を阻止でき、ドライケルス時代を原作よりも(ほんの少しだけ)ハッピーに出来る事が分かった。
まあ、本当の困難はこれからなのだけれども…。
今後とも励むとしよう。総ては、我が
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《七耀暦750年》ローエングリン城
自分が彼女――噂を聞くに名高いサンドロット伯の息女――と出合った時の反応を纏めるなら、きっとこの様な言葉だっただろう。
『彼女と相まみえた時、今まで感じた事のない衝撃が身体中に奔った。』
所謂『目と目が逢う〜瞬間好きだと気付いた〜♪』的な感覚であり、恋愛小説や御伽噺ではごくありふれている表現だが、まさか自分が感じる事になるとは思わなんだ。
一度目は戦場で、二度目はレグラムにある彼女の副将たるシオン・アルゼイド殿の邸宅での会合で、そして協力関係を結んだ事を祝う祝賀会での三度目の今回。
戦場での甲冑姿時もそうだったが、祝賀パーティで初めて見る彼女のドレス姿に嘗て無い程の胸の高鳴りを憶えている。
以前見た時よりも調えられた髪、薄いながらもより魅力を引き立てている化粧、不快感を感じさせない程度の香水等など、溢れ出る女性らしさを全開にした彼女から目を離せない。
自分を慕ってくれている侯爵令嬢の妹分――そう言ったら臣下からは呆れた目で視られた――がこの場にいたら、多分自分の腹を抓られていただろう。
彼女は自分が女性を見ているとそういう事をしてくる。以前に理由を聞いてみても「御自身の胸に御聞きになってくださいまし。」と怒られてしまった。未だに理由が分からないのだが、誰も教えてはくれなかった。何故だろうか…。
そうだ。臣下を連れて今後の協議がしたいというのはどうだろうか。彼女は同じ目標を持つ同士なのだから、別に可笑しい事ではあるまい。うん、そうしよう。
そう思って臣下がいる方面を見てみると、我が悪友のロランは彼女の副将のアルゼイド殿と意気投合したのか中庭で稽古をしようと話しているし、もう一人の友人であるアウィナは既に酒に潰されて夢の世界へ旅立ってしまっていた。ノルドからの友人達も他の臣下達もこの会を楽しんでいて、とても邪魔できる雰囲気ではない。
自分が孤軍である事を認識し、致し方無いと覚悟を決めて彼女に話しかける。
「ウウンッ…リアンヌ嬢、少し宜しいか。」
自分の声に反応してこちらに振り向く彼女。一瞬見惚れ掛けて固まってしまったが、勇気を振り絞って続ける。
「その…少しバルコニーで話さないか?」
そのやり取りに周囲の人々が固唾を呑んで見守る中、彼女も緊張からか頬を僅かに染めて肯定し、二人してバルコニーがある方向へ消えていった。
なお、結局この後は互いの事を話すだけで、異性としての関係は進展しなかった。
後日、両名は互いの関係性を臣下から質問攻めにあうのだが、主君から答えを聞いた両名の臣下はあからさまにがっかりしたとか。
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《七耀暦752年》7月1日 帝都ヘイムダル近郊
あの会合から2年が経ち、鉄騎隊と各地の人々、それに第6皇子であるルキウス陣営の協力と新たな灰色の騎神『ヴァリマール』を得て、遂に帝都ヘイムダル近郊にまで辿り着いた。
魔王と化した『緋』によって魔都へと変貌した帝都――原作での『煌魔城』――での決戦を前にして、皆最後の準備をしている。
と言っても、私がする事は自分の得物である弓矢の手入れと、砲弾や魔煌兵、医療物資の在庫の確認程度なのだけれども。
戦いの火蓋を切ったのは何方だったのだろうか、『緋』と味方砲兵の激しい砲撃戦から決戦が始まった。
魔弓の放つ矢や武具と大砲から放たれた砲弾が所々で衝突して爆発を起こし、こちらが展開している魔道障壁に命中した剣や槍が嫌な音を奏でながら消滅していく。勿論『緋』は此方の砲弾が当たっても微塵も傷つくことはない。
私は『灰』と『銀』が煌魔城に近づくまでの陽動と援護の指揮を執っていたが、一体どれ程の時間が過ぎたのだろうか。
これ迄激しい射撃の応酬をしていた『緋』が急に攻撃を止め、城内へと急いで姿を消した。恐らくだが、鉄騎隊等の精鋭で構成された突入部隊が潜入に成功したのだろう。あの魔城から離れている筈のこの場所でも激しい戦闘音が聞こえてくる。
あとは祈る事しか出来ない自分に少し腹が立つと同時に、是非とも原作の激戦を観戦したいという場違いな思いまで感じてしまった。
そのまま激しい戦闘音だけを聞きながら最悪の事態に備えていたが、あの突入より三日が経った七耀暦752年7月4日。
これまで続いていた激しい戦闘音が止み、突入班があの魔王を打ち破って遂に帰還した。
彼等は後に偽帝と呼ばれる事になるオルトロスと、槍の聖女と呼ばれる事になるリアンヌの遺体を背負っていた。
分かり切ってはいたが、彼女の運命を変える事は出来なかった。
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《七耀暦752年》秋 帝都ヘイムダル
次期皇帝の座を巡って勃発し、5年にも渡って続いた内戦は、内戦中盤から参戦して事の発端であった第4皇子オルトロスを打倒した第3皇子ドライケルス・ライゼ・アルノールが勝利した。
相思相愛の仲であった人物であるリアンヌ・サンドロットを帝都での最終決戦で失うという哀しい結末になってしまったが、彼は皇帝として彼女の想いを受け継いでこのエレボニア帝国を導いていかなければならない。
ある程度復興が進んだある日の事、正式に皇帝へと即位する為の戴冠式が行われようとしていた。
この歴史的な戴冠式には彼へ忠誠を誓った臣下やノルドの民は勿論の事、今後の帝国を支える事になる生き残った各地の貴族達、諸外国の来賓客も参列している。
会場では皆が今か今かと待っていたが、鐘の音が数回鳴り響くと共に入口が開き、今回の主役たる彼――第73代エレボニア皇帝(予定)――がゆっくりと威厳ある歩みで入場してきた。
戴冠式は順調に進み、遂にメインである戴冠の儀を迎える。
誰もが戴冠する彼に目を奪われたその一瞬、警備中だった衛兵達の気が緩んだ隙の出来事だった。
式場の床に突如として魔法陣が現れ、それから見知らぬ女性が出現して戴冠中だった彼へ向かって薄暗い光沢をもった宝石を勢いよく投げつけた。
「愛するオルトロス様の仇!死ねっ、ドライケルス!!」
その言葉と共に石が輝きを放ち始め、護衛が動くよりも早く石がドライケルスの元に届く。
「陛下ッ!!」
誰もが間に合わないと思い、当事者であるドライケルスでさえも諦め掛けたその時、彼は腹心であるアウィナに突き飛ばされていた。
突然の事に意識がハッキリとせず、ただ流される様に床に倒れ込む。
そして次の瞬間に彼が見たのは、時空の歪みに消えていく彼女の姿だった。
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《黒の史書》9~『獅子心皇帝・後日譚』~より
以下、一部抜粋
『終戦の年に即位し、またそれと同時に最初の臣下であり腹心であった彼女も自身を庇って時空の果てに去ってしまった。』
『悲しみと後悔はあったが、それを乗り越えて仲間達と帝国の復興にひたすら尽くした。』
(中略)
『内戦を
『彼女の様に、自分という存在が不幸を齎す事が無かったからだ。』
(中略)
『――懐かしい、あまりに懐かしい鈴のような声と共に』
『黄金を溶かした髪をなびかせた”その人”が顕れるまでは。』
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《七耀暦1184年》帝都ヘイムダル
大陸横断鉄道が出来た頃の帝都ヘイムダルの何処か。
帝国最大の都市にして最多の人口を誇るこの都市では日々人影が絶えず、それに比例して問題事や事件も数多く発生している。
そんな帝都の治安を維持し、事件などの解決をする組織である憲兵隊の本部庁舎に一本の電話が掛かってきた。
「はい、こちら帝都憲兵隊本部。」
「…何?身寄り不明の少女を発見しただと?」
「対象者の名前は?年齢は幾つだ?」
「……なるほど、了解した。一度帝都庁に問い合わせるので、一時的に我々が保護するとしよう。」
その憲兵は電話を切ると、今度は帝都庁へ問い合わせの電話を掛けて、こう尋ねた。
「身寄り不明の
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皇帝に即位する為の戴冠式の最中に起きた事件からドライケルスを庇った私は、気が付けばまた見知らぬ場所に立っていた。
前回は草原だったが、今回は何処か見覚えのある教会の様だ。だが、記憶のモノより年期を感じるのは気のせいだろうか。
周囲を確認できたので自分の事を確認してみると、あの戴冠式当時の服装だった。しかし、身体が縮んでしまっているのか大分袖を持て余している。
既に二度目の経験だと驚くにも驚けず、寧ろ様々な突っ込みの方が湧き出てくる。自分は何処かの高校生探偵してた訳でも毒薬を飲まされた訳でもない、魔法的な何かは喰らったけど、みたいな。
これでは本当に麻酔銃を撃って迷探偵の声真似をしなければならないのだろうか。
そんなくだらない事を考えていたら、突然扉が開いて軍服らしい服装をした男女が銃を構えながら入ってきた。
誰だろうかと思っていると、相手は私が此処にいる事に困惑した様子ながらも女性の方が質問してくる。
「ここで何か爆発の様な事が起きなかったか」「何故ここに一人でいるのか」「御両親は何処にいるのか」といった質問に対して、正直に「分からない」「気が付いたら此処に一人でいた」と答える。
私のその答えを聞いた女性は男性に目配せして彼は何処かと連絡を取り始めた。
その会話を流れ聞きしていると、この状況に何処かデジャビュを感じる。
……『帝都』?
……『ヘイムダル大聖堂』?
あの、今って何年ですか?
えっ…『七耀暦1184年』?
確か
まさか、今度もトールズ士官学院からじゃないの?
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●主人公(アウィナ・ウェレンドルフ)
閃の軌跡のファンである男に憑依された現地人の女性(22歳)。
今回は原作イベントであるロラン・ヴァンダール死亡事件を阻止する事に成功し、リアンヌと主君の関係性があまり進まないのをみて少しイライラして、リアンヌに突撃かました事も裏であったりする。
帝国は魔境で修羅の国だと常々思っていたが、リアンヌさんやアルゼイドさん、ロランさんやローゼリアさん等の帝国トップクラスの奴らを近くで見続けた結果、感覚と実力が何処かおかしくなってしまった。
具体的には先程のヤベー連中と相打ち、又は善戦出来ないと弱いと思う程度の思考と実力がついた。
獅子戦役を生き延び、ドライケルスの戴冠式ではオルトロス派の残党が起こしたテロから主君兼推しを身を挺して守った。
が、そのせいで遥か未来へ時間転移&ロリ化(十歳程度)してしまう。
主君の事を守ったは良いが、その精神状態を悪化させた事はまだ知らない。
●ドライケルス・ライゼ・アルノール(23歳)
リアンヌに一目惚れした第73代エレボニア帝国皇帝になる男。
産まれて初めての恋にドキドキが止まらなかったりした。恋愛弱者1号。
リアンヌとは両片想いだったが、初めての女性の扱いに勝手が分からずに周囲をヤキモキさせていた。
最後の決戦では原作通りにリアンヌが負傷して死亡してしまうが、無事ではないけど原作同様に獅子戦役を平定する事が出来た。
とても哀しかったが、ロランや主人公という臣下がいるので原作よりは良い状況。
ただ主人公も戴冠式という戦場以外で自分を庇って目の前で(生きているけど)死亡(扱い)してしまったせいで、自己犠牲精神は原作同様に強い。
●リアンヌ・サンドロット(26歳)
ドライケルスとは両片想いだった伯爵令嬢。
単純な武力では帝国でも一・二を争う程に強いが、恋愛では意外にも箱庭令嬢だった為に恋愛弱者2号と化した。
帝都決戦までの間、腹心の部下であるアルゼイドや自身の導き手に恋愛相談する姿が見られたとか何とか。
実は主人公とドライケルスの関係性を疑っていた事も、ドライケルスと関係があまり進展しない原因だったりした。(なお、誤解だった模様。)
●ロラン・ヴァンダール(23歳)
ドライケルスを庇って死ぬ運命だった彼の親友にして悪友、そして臣下。既に妻子がいる。
今回は主人公が偶然助ける事に成功した。
鉄騎隊の副将であったアルゼイドとは意気投合。武芸と主君の話題で盛り上がるが、互いの主君の恋愛クソ雑魚っぷりには頭を抱えている。
主人公とは主君の女性の扱いをどうにかしようとする仲だった。目の前でいなくなってショックを受けるが、それを乗り越えて帝国の復興に専念する。
戦後は帝国軍元帥に昇進し、トールズ士官学院の初代学院長にも就任。ドライケルスの異変にも気づいていたが彼が頑なに事情を話さなかった事もあり、心配しつつも彼より先に死去。
なお、ヴァンダール家は原作と変わらない構成になる。
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因みに、テロを起こした女性はオルトロスさんの騎神の導き手という設定。
『魔女』として緋が封印されている帝都の皇宮で侍女として働きながら緋の監視をしていたが、そこでオルトロスに恋をして全面協力する事に。緋の封印を解いたのもこの人。
テロの時に使った石は宝物庫にあった最高品質の時属性の七耀石。理由は得意な魔導属性が時属性で最速発動可能だったから。この時、既に『呪い』に掛かっている。
オルトロスさんとの間に子供もいたので、カイエン公の遠い祖先…だったのかもしれない。
次回は未定です。