今回、主人公はまたも技名を叫ぶはずでしたが、連続でやるのもしつこいと思い完全ハンター視点でお送りしました。
ネロミェール好きです。オオナズチもですが、歩き方がよちよちしててかわいいんですよね。
オオナズチはその可愛さに霧みたいな掴み処の無さが、ネロミェールは可愛さに貴族みたいな上品さが足されてなんとも言えません。
『グゴギャギャギャ‼』
どこか喉につかえるような独特の咆哮。ドスン、ドスンと地を揺らす足音とともに、深緑の巨体が林間から這い現れた。
狂乱の中のさらなる闖入者にハンターたちが目を見開く。
「あいつはここに来て初日に仕留めた…ヨツミワドウだっけか?だが…」
「でかい。通常個体の優に三倍はある。」
樹陰を割いて現れた巨体。姿形を見れば、そいつは間違いなく河童蛙・ヨツミワドウだった。
だが、明らかに普通ではない。
通常種を遥かにしのぐ体躯。異常発達した前腕・爪・苔背甲。特に苔背甲はほとんど別物と言っていい様相だった。
通常の甲より恐ろしく分厚い。そこには種々の植物が根を下ろしており、分厚い緑の覆いからはこれまた異様な発達を遂げた棘状突起がまるで山脈のように突き出している。
その見た目は、あたかも大地そのものを背負っているかのような印象を与えるほどだ。
「加えて、周りに付き従うこれまた異常に成長した生物たち。報告にあった“水神の眷属”か。ということはあいつが噂の…河童神。」
「おい、一人で納得してんなや。どうする!?あいつを先にやんのか。」
「いや、里長の言っていたことが本当ならば水神は無暗に被害を出さん。どころか、伝承によれば里をあらゆる水の禍から守るそうだ。」
「はあ?」
『グオオオオオオ!』
困惑するギルドハンターをよそに、巨大なヨツミワドウが力強く吠える。それに共鳴するように水神の周りを飛んでいた生物―ヒオウギカワズが一斉にヒレを大きく開いた。
「ヒオウギカワズの威嚇で相手を引き寄せる?まさか古龍を二体同時に相手取るつもりなのか?」
「おい、何なんだあのヨツミワドウは!あと、周りに飛んでる明らかにデカすぎるヒオウギカワズも!」
「奴はここらで水神と崇められている特殊個体だ。周りにいるのは通称“眷属”。水神の加護を受けた従者だと聞いた。ほら、ヒオウギカワズ以外にも背中にわんさか引っ付いているぞ。」
「何…?」
「げ、本当だ…。」
「なんか気持ち悪くなってきた…。」
確かに、目を凝らしてみるとヨツミワドウの背中の茂みはがさがさと動いており、多種多様な環境生物が見え隠れしていた。しかも、そのどれもが通常より一回りは大きい。
「ヒトダマドリにアメフリツブリ…デカいな。ガスガエル各種。まるで生物の移動要塞だ。」
「おい、来るぞ!」
ハンターたちがヨツミワドウの異様に騒いでいる間に、古龍種の一頭であるクシャルダオラが威嚇に誘われてこちらへと突っ込んできていた。と、
『キィィィヤアアアアア‼』
ズズウゥゥン‼
「ネロミェール!?」
クシャルダオラが風の鎧を纏った状態でヨツミワドウに突進を仕掛けた瞬間、その横合いからネロミェールが激突。クシャルダオラを吹き飛ばす。
「ヨツミワドウへの攻撃を妨害した?」
予想外の展開に流石の猛き炎も困惑する。
「おい、あんた!もういいじゃねえか!勝手につぶし合ってんだ。逃げようぜ!」
ギルドハンターの内、最年少らしい青年がほとんど悲鳴に近い声をあげる。
「お前たちだけ戻れ。個人的に興味がある。それに、古龍種の消息は値千金だ。見過ごせん。」
「だから、俺たちだけじゃ道がわかんねえんだって!」
「マシュー、余波が来る!全員何かにつかまれ!」
リーダー格の注意喚起から数瞬遅れて、烈風と鉄砲水が押し寄せてきた。
「うおおおおお!?」
「世話の焼ける…。」
流されそうになった青年の手をカムラのハンターが掴んで助ける。
「マシュー。逃げるのは諦めろ。これは二頭を視界に入れておいた方がいい。」
「そうだな。不意打ちで今のを喰らうと対処を間違えるかもしれん。台風から走って逃げるのは無理がある。」
「畜生…。」
『オオオオオオオオ‼』
クシャルダオラの咆哮。巨大な黒い竜巻が巻き起こり、ネロミェールを弾き飛ばした。
「龍風圧…。古龍の弱点を突く古龍か。」
ネロミェールがじりじりと後退していく。と、例の巨大なヨツミワドウがネロミェールを庇うように前に出た。
その目は明らかな闘志に燃えており、全身は燐光を放っている。周囲を飛び回るヒトダマドリによる多重のバフだ。
『グゴゴゴゴァ‼』
地鳴りのような咆哮とともに、ヨツミワドウが相撲で言う“仕切り”の様な前傾姿勢をとった。
時を同じくして、苔背甲の草むらがガサガサと騒めき、多種多様な光や煙が散布される。それは誘われるようにヨツミワドウの頭部、“皿”と呼ばれる円錐状の突起へと集まった。
「なんだありゃ?ヨツミワドウの皿が光ってる?」
カムラの里のハンターが目を細める。
「あれが―
突進。
耳をつんざく金属音。やや遅れてクシャルダオラの絶叫がこだまする。黒い竜巻が消滅し、倒れ込んだ鋼龍がバタバタともがく。バラバラと剥がれ落ちているのはクシャルダオラの鋼鱗だろう。
「あの鱗を貫いた上に麻痺か。いや、他にも何か重ねられている。ただの突き攻撃ではないな。」
「すげえ…。」
「カムラの。瑚璉てのは?」
「奴の頭の突起だ。普通じゃないだろ?」
「皿のことか?確かに何か光ってたが。あいつは全身普通じゃねえよ。」
バチバチバチッ
もがくクシャルダオラに対し、ヨツミワドウと入れ替わる形でネロミェールが近づく。その体には、稲妻がほとばしっていた。
「追撃か。手厳しいな。だが、これで確定だ。河童神と溟龍は何らかの形で協力関係にあるらしい。」
「溟龍って水だけじゃなくて雷も使えるのか…?」
「里に来ている商人に聞いたことがある。新大陸では周知のことだ。」
「そりゃ無知で悪かったよ。」
雷光!
「鋼龍と溟龍は仲が悪く、溟龍と水神は協力関係にある。これで雷雨の夜に鉄を打つ者の正体も割れたな。ひとまずクエストは成功だ。」
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とある鍛冶師の昔話。
わしの爺様がその昔、寒冷群島へ採掘に行った時の話だ。
岸壁に狂ったみてえに頭を打ち付けてる、とんでもなくデカいヨツミワドウを見たってんだよ。
最初はびっくりしたらしいが、途中からは見ほれちまったらしい。と言うのも爺様が言うには、そいつの頭の突起、あの皿って呼ばれてる角がそりゃあ綺麗に輝いてたんだと。
あのヨツミワドウはわしらと同じ鍛冶師で、自分の皿という傑作を鍛える為にああして頭を打ち付けてるんだと爺様は言っていたよ。
それにこうも言ってたもんだ。あいつは生涯にたった一つの作品しか創らねえ。それに比べて、何本も何本も作っては売っちまう俺たちは炎の熱さが足りないのかもしれねえってな。
それからさ。普通の鍛冶師だった爺さんの腕が多少評判になり始めたのは。
そいつは水神じゃないかって?さあなあ。ああ、でも爺さんはそいつの皿のことをこう呼んでたよ。“
瑚璉とは、中国古代王朝で使われていた神への供物を載せる祭器の名前です。玉(ぎょく)と言われる宝石の一種を散りばめた豪華なもので、器の中では最上のものなのだとか。詳しくはググってください。
主人公の皿は採掘作業の結果、徐々に鉱石類と一体化を果たしており、まさに宝石を散りばめたようになっています。形状も、ただの円錐形からさらに各種鉱石の突起が突き出ており、皿と言うより王冠のイメージ。
もう一つ裏設定。主人公が今回使った技の名は『外無双(そとむそう)』といいます。相手の力を取り込むのではなく、ジンオウガみたいに体外に共生している環境生物と属性エネルギーを共鳴・増幅させて解き放つ技です。