これはまだキャロと出会う前の話。
キャロと会う前、俺はその日暮らしの冒険者として生を謳歌していた。と言ってもキャロと出会ったのは冒険者になった日だったけどな。
俺は、実は異世界転移者だ。………おっと待ってくれ。俺はよく居るチートを持っている様な人間じゃ無い(河童ではあるが)。俺は今、知り合いの妖怪に異世界に飛ばされてここに居る。飛ばされる時にこの世界の神、カッブに性別を渡したりと色々あったが気にしないで置こう。
気にしたら負けだと思ってる。いや、そうに違いない(自己暗示)。
で、異世界に来たら来たでモンスターに追い回されて、死闘の末、何とか勝ったんだ。
そして街へ行き冒険者ギルドを目指した。異世界モノが好きな俺は、きっと凄くワクワクしていたんだと思う。期待通りの立派な扉だった。俺はこれから起こるであろう様々な出会いを想像しながら扉を押し出した。
ギルドの中はひどく閑散としていた。荒くれ者の様な者も居らず、若々しい新米冒険者も居なかった。いるのはぐでーっと机に頭を突っ伏している受付嬢だけだった。その受付嬢はコチラを覗くと直ぐ起き上がり、言い訳を始めた。
「ち、違うんですよ!べ、別にサボってたわけじゃないんですよ!だ、だってこのギルドに人が来るなんて思わないじゃないですか!」
「自分の職場に言うセリフか?」
「し、しょうがないじゃないですか!ここはFランクギルド『雑草』なんですよ!」
受付嬢曰く、ギルドにもランクがありココは最下位のギルドらしい。ギルドランクが低いと依頼も来ない上、設備も不十分だという。確かに受付嬢の言う通り人が来るはずが無い。
「なるほどねー。だからこんなに閑散としていたのか。ま、いいや。この蜂、買い取ってくれねぇか?」
俺はずっとおぶっていた蜂のモンスターを床に下ろした。受付嬢は蜂のモンスターを見つめると、次の瞬間。俺の肩を揺さぶりながら話しかけてきた。物凄い剣幕だ。
「こ、コレは!ええと。貴方の名前は?」
「ルーベルトだ」
「ルーベルトさん!!これはキラービーです!何でもBランクギルド「紅葉」のトップが組んでやっと倒せるというあのキラービーです!し、しかもこれは……!女王蜂です!女王蜂だとAランク……いや、Sランクギルドでもやっとでしょう。ルーベルトさん?コレを買い取らせて頂いて良いんですか!?」
「落ち着けよ。早口過ぎる。買取は是が非でもお願いしたいが、俺、冒険者じゃ無いんだよね」
「どっひゃぁーーーー!!!」
そう叫びながら受付嬢は椅子から転げ落ちた。
「大丈夫か?」
「私の事なんかより貴方ですよ!冒険者でも無いのにどうやってこんな大物を仕留めたんですか?」
「水に引き摺り込んだ」
「え?」
「だから水に引き摺り込んだ」
「わっつ?」
「だーかーらー!水に引き摺り込んだ」
「ごめんなさい私の脳の処理が追いつきません。え?水に引き摺り込んだってどう言う事ですか?」
「そのまんまだよ。コイツの尻尾?お尻ら辺を掴んで水底へ引き摺り込んで十分くらいたったら動かなくなった」
「人間やめてますね」
「そもそも人間じゃねぇし。河童だし」
「道理で見たこともない様な見た目をしているんですね。冒険者って変な服装する人ばっか何であんまり気にしてませんでした」
「それで受付嬢は務まるのか?」
「務まって無いから机にチューしてたんですよ」
「ギルドマスターに報告させて貰うね」
「えっ、ちょっ、ゆ、許して下さい何でもしますからっ!」
「ん?今、何でもするって言ったよね?」
「あっ(察し)」
「(報酬に)色。付けて貰おっか」
「はい………」
ということで色を付けて貰った結果銀貨百枚になった。日本円だと百万円くらいらしい。
「トホホ……私、ギルドマスターに怒られちゃう……」
「まぁ、でもギルドランクが一個上がるんだろ?ギルド的には万歳じゃないか(受付嬢は除く)」
「確かにそうですけど……そういえばルーベルトさん。冒険者ライセンスを取りませんか?お金はかかりますが様々な特典を受け取れますよ。例えばギルドでのお食事を割引とか、個人からの依頼を受けられる様になるなど様々です」
「ほーん。取ってみようかなー。金額は?」
「銀貨五十枚です」
「ぼったくりじゃねーか。給料の半分が飛ぶわ」
「あ、忘れてました。ライセンスを取るときに自分のステータスを計測でき「やります」……まだ全部言ってないんですけど」
「異世界モノが好きなんでやります」
「あっハイ。コッチです」
そう言って受付嬢はカウンターから隅にあるゴツゴツとした機械の所へ向かった。メカメカしてる。メカだけに。
「寒いですよ」
「心の声にツッコミ入れんな」
「さてここに頭を突っ込んで下さい。早く」
言われるがままメカの中に頭を突っ込むと、機械がガコガコ揺れ出した。
やがてシュー……。と煙の様な物を出しながら止まった。ウィィンと機械からライセンスが出てくる。なんで無駄にハイテクなんだよ。受付嬢がカードを取ってコチラに渡してきた。
「はい。コレがルーベルトさんの冒険者ライセンスです」
渡されたライセンスを見るとそこには俺のステータスが書いてあった。
力 強いかも?
守 強いかも?
知 普通
魔 ほぼゼロ
運 本人次第
………なんだこの適当なステータス表は…。
「ルーベルトさんは接近タイプですね。魔法は使えない様です」
「異世界来てコレかよ………あれ?受付嬢は異世界の部分に突っ込まないの?」
「いや、異世界転生者は沢山見てきました。どれも人生舐めてそうな顔しながらメッチャ強いです。正直に申しますと異世界転生者はその素行の悪さからこの世界では嫌われています。ですがルーベルトさんはそんなに強そうじゃ無いし、何より人生舐めるどころか人生から舐められてそうな顔していたので、あっ、この人ならわかる!と思いました。まあつまり異世界は見慣れてます」
「長ぇよ。でもスッキリしたわ。そうだよな。俺も人生舐めてる系主人公嫌いだから分かるわ」
「ルーベルトさんは今日の宿はお決まりですか?」
「いや、まだ決まってねぇんだよな。今日来たばっかだしな」
「でしたらこのギルドの裏にある家なんてどうでしょうか?そこなら直ぐにギルドへ向かえる+安いです」
「んじゃそこで」
「銀貨五枚です」
「流れる様に金を絞るのお上手ですね?」
「特技ですから」
胸を張りながら言うことじゃ無いと思う。まぁ家が決まったことだし毛布でも買いに行くかな。
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ということで街です。晩飯はギルドで食うとするか。にしても時間が余るな。俺は特に何も考えずにブラブラと街を練り歩いた。するとある物が目に入った。
「奴隷だよー!安いよー!」
どうやらこの世界は奴隷文化があるらしい。と言っても檻に入っているのは一人だけだ。遠目で確認するとどうやら少女が売られているらしい。身長は百四十センチくらいだろうか。髪はオレンジ色で奴隷として売られているのとは対照的に綺麗な身なりをしている。まぁ、別に俺は少女愛好家では無いし、変な正義感も無いのでそのまま通り過ぎようとした。そしたら奴隷の少女が話しかけて来た。
「お兄さん?童貞っキャ?」
「は?」
「いやー。つい話かけちゃったっキャ。でもお兄さんが彼女居なさそうな顔して居るのが悪いんだっキャ。ワシは悪く無いっキャ」
「は?」
「おお。コワイコワイっキャ。そんなコワイ顔してると一生独り身っキャよ?」
「………………………おっちゃん。いくらだ?俺は今、銀貨四十枚持ってる」
「ホントは金貨十枚だが、銀貨四十枚にまけてやるよ。アンタが可哀想でな。持っていけ」
そう言いながらおっちゃんは檻の鍵を開けた。
「何でまけてくれたんだ?」
「コイツ、見た目は極上品なのに中身が生意気でな。買い手が全くつかねぇんだ。そんならコイツを一番従えそうなアンタに託そうと思ってな。俺はもう、奴隷商をやめる。足を洗う前に一つ良いことをしとこうと思ってな」
「おっちゃん!」
「頑張れよ!ボウズ!」
「熱くなっている所悪いっキャけど、家まで連れてって欲しいっキャ。眠いっキャ」
少女は欠伸をしながらそう言った。
奴隷とは思えないドライでワガママな反応を見せる少女の名はキャロ。
ルーベルトはキャロを絶対にわからせるという決意をこの日、固めた。
彼らはこの先どう過ごしてゆくのだろうか?
それはまだ、わからない。
お気に入り登録してくれると作者が叫びながら続編を作るぞ(小声)