ちなみに一話は実質的に3.5話くらい。もうコレわっかんねぇな。
遅めの昼食を食べた後、俺たちはギルドへと向かった。ギルドと家はそこまで離れていない。ギルドから借りているから当然と言えば当然か。
ギルドに向かう途中、行列が出来ていた。行列の元はなんとギルドだった。確かにウチのギルドはランク急上昇を達成し、話題性は充分だが、どうやらギルドでクエストを受けようとしている訳では無い様だ。服装が軽装過ぎる。
「何でこんなに行列が出来ているっキャ?」
「クエストに行くような服装じゃない。まるで食事でもする様な軽装だ」
キャロは何か閃いた様な様子で指をパチンと鳴らした。
「ルーベルト。それっキャよ。食事っキャ」
「……?確かにギルドでは食事は出来るがわざわざギルドで食う必要はねぇだろ?」
「チッチッチ。考えが甘いっキャね、ルーベルト。さっきのニュース番組でやっていたっキャ。「有名な奴隷商が転職」ってあったっキャ」
「それってつまりおっちゃんがギルドで飯を作っているってことか?」
「そう言う事になるっキャね」
真相を確かめる為に俺たちはジャングルの奥地へと向かった。
いや、ギルドへ向かった。ギルドに着いた。
「やはりワシの読み通りっキャね」
さっきキャロが言ったことが見事、的中していた。どうやら行列の正体はおっちゃんのタコスだった。
「コッチにパンチパーマタコス二つ!」
「コッチはスパイシータコス三つ!」
ギルドの右奥に設置された飲食スペースは人で溢れている。とてもとても繁盛している。ここ本当にギルドかぁ?
「ワシらも買ってみるっキャ?」
「ああ。んじゃ俺らも列の最後尾に戻るか」
俺とキャロはまたギルドから出て列の後ろに着いた。俺たちの後ろには人がもう並ばなくなった。俺らが嫌われているんでも何でもなく単純にみんな食べ終わったからだ。どうやら俺たちが最後の客らしい。俺らの番まで二十分位だったな。
「お!お前らか。久々だな。一週間くらいだったか?もっと早く顔出すと思ったのになんでお前ら全然来ないんだよ!」
おっちゃんの顔は何処か寂しそうだった。きっと俺たちが来るのを期待していたんだろう。何でこんな普通なおっちゃんが有名な奴隷商なんてやっていたんだろうか。何でキャロを売っていたんだろうか。………気になっちまうな。いっそのこと聴いてみるか!と俺が勇気を振り絞っておっちゃんに話しかけようとした時。
「なんでおっちゃんは奴隷商なんてやっていたっキャ?」
………………俺の葛藤を返してほしいな。あと労力とブドウ糖。
「そうだな。話せば短くなるだけどな。そうだなぁ。奴隷を減らしたかったんだ」
………?
どういう事だ?奴隷を減らしたいのに奴隷商をやっていた?
「俺は昔、仲良くなった女の子が居てなぁ………。その娘と俺は結婚しようとしたんだけどな、その娘は奴隷だったんだよ。身分の違う結婚は当時、認められなかった。俺は奴隷制度を憎んだよ。人生で一番憎んだ。そして俺は決意した。『奴隷をいっぱい解放してその娘と結婚する』ってな」
「「主人公かよ(っキャ)」」
マジで主人公ムーブが激しいんだが。
「俺は今はもう三十二。奴隷商を始めたのが二十だったからもう十二年も奴隷商をしていたのか。一応目標の奴隷を限りなく減らすことには成功したんだがその娘とは出逢えていない。今どこにいるのか検討も付かない。そんな生活を続けていたある日嬢ちゃんと出会った」
「ワシのことっキャね」
もしかして俺、主人公の座を奪われる?こんな壮絶な過去俺持ってないよ??
「違法オークション会場を調べてほしいと国から依頼が来たんだ。これでも真っ当な奴隷商だったからな。依頼はよく来た。そしてその会場の目玉として嬢ちゃんが落札されそうになっていたんだ。『金貨百枚!』『俺は二百枚!」『五百枚!』………どんどんと嬢ちゃんの金額が上がっていった。今まで見たどのオークションよりも高い金額だった」
「そんなこともあったっキャねぇ」
「いやそれで済む様な内容か?」
おっちゃんとキャロの温度差で風邪引きそうだ。
「まぁ嬢ちゃんは今まで見てきた奴隷の中でも飛び抜けて美人だったからな。金額も跳ね上がるさ」
そう言われるとキャロは確かに可愛いな。わからせることに夢中であまり気にしていなかった。確かに美人だけど色気が無いんだよな。色気が。
「ルーベルトが何考えているか当てるっキャ。どうせワシに色気が無いとか思っているっキャ。そんなんだからまだ童貞なんだよっキャ」
「キレそう」
真面目にこのメスガキをわからせよう。とりあえずこの小説のRを引き上げる所から始めて、カッブ(神?)に一旦性別返してもらったら完璧か?わからせ棒が帰って来ればコッチのモンだな。勝ったな、ガハハ。
「ま、落ち着けよボウズ。ほら、スパイシータコスだ」
キレ散らかしている俺におっちゃんはスパイシータコスをくれた。ついでに炭酸水も貰った。試しに一口食ってみた。
「うま」
人間って美味いもの食うと「うま」しか言えなくなるんだぜ知ってたか?まぁ俺河童だけども。俺がタコスをモシャモシャしてるとおっちゃんが続きを話し始めた。
「でな、俺は嬢ちゃんを見た時。あの娘と重なって見えちまったんだよ」
「あの娘ってその、奴隷だったあの………」
「ああ。そうだ。で俺は自分の初恋の相手と嬢ちゃんを重ねちまって金貨「千枚」で買ったんだ」
ふーん。金貨千枚かぁ。ん??ん?
あれ?金貨って銀貨の十倍だよな?ってことは日本円で十万円って事だ。じゅうまんかける、せん、………………ッッ!!!!
「一億円!?」
「円ってまさかお前日本人かよ!」
「ああ。そう。でもチート能力とか特別な何かを持った勇者でもなく唯の河童だから。俺」
「はー。大したもんだな。何の能力も持ってないのに生きている日本人なんていないぞ?さて話を戻すか。俺は嬢ちゃんを買った。が、金が無くなっちまった。だから信用できる奴を探した。嬢ちゃんを預けられるような奴をな。十日間あの通りで人を見ていたが信用できる奴は居なかった。そんな中お前が来たんだよ。ボウズ」
「俺?」
おっちゃんが俺に指をピシッと指した。それと同時に椅子に座っていたキャロが立ち上がった。
「ワシお手洗い行ってくる」
そう言って行ってしまった。俺とおっちゃんは会話を再開した。
「何で俺なんだよ?」
「ハハハ!何でだろうな?でも俺は人を見極めるのが得意だ。なんせ十二年も奴隷商をやっていたからな」
「よく分からんけど俺を信用して来れたんだな?………そういやさ、その娘ってどんな姿をしていたんだ?もし見かけたら声くらいはかけれるぜ」
俺の言葉を聞いたおっちゃんはちょっぴり意外そうな顔をしていた。
「………そうだなぁ。嬢ちゃんとおんなじ位の背丈で、髪は白色だった」
「うんうん」
「一人称は私だったか?とても丁寧な言葉遣いだったな」
「なるほど、なるほど」
「そして名前は………………………『キャロ』だったな」
!?!?!?!?!?
「え??ん??おっちゃん。アイツの名前知らないのか?アイツの名前はキャ………」
気がつくと――――――
俺の後ろには無表情のキャロが立っていた。
その目に生気は無く、ただ深い絶望と煮えたぎる怒りがあった。まるでそれは気味の悪い美しい人形のようだった。もしこれ以上喋ったらどうなるかも検討が付かない。それほどまでに不気味だ―――。
そしておっちゃんが俺の後ろを覗く素振りを見せるといつもの様な笑顔に戻った。
「ん。嬢ちゃん帰ってきたか。ほらタコスだ」
「おっちゃんありがとうっキャ!」
よかった。いつものキャロだ。
………さっきのは何だったのだろう。俺が考えていると閉まっていたギルドの扉が勢いよく開いた。そこには二つの人影があった。
「ン。ここが「雑草」カ。オデもココならやっていけそうだナ。どうダ?ジャガガ」
「あまり油断すると痛い目を見ますよモヤモシ。まぁ私がいる限りは大丈夫でしょうが」
俺はこの時コイツらが一生の仲間になるなんて思ってもいなかった。
世界の歯車が動き出した。
必要なピースはあと四個―――。
東風的にはこのシリーズを二、三百話作ろうと思ってます。投稿頑張るぜ〜。河童をスコれ。