GATE:エターナルズ 彼の地にて斯く戦えり   作:マーベルチョコ

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1話 駆け抜ける金色

その日はとても蒸し暑く、外を歩いている人たちの額には薄く汗をかいており、建物で冷房に当たっている人は外を出歩いている人たちを見て気の毒に思っていた。

銀座の街中でも蒸し暑い状況は変わらない。

銀座を出歩いている人たちはふと大通りの違和感に気付き、目を向ける。

大通り先の風景が歪みだし、オーロラが揺れるように大きな門が姿を現した。

そして、その門から緑色の巨躯を持った人型の生き物、豚のような外見の二足歩行の生き物、軽自動車程の大きさを持つ翼が生えた生き物など様々なファンタジーに出てきそうなな生き物達が現れ、その背後には中世ヨーロッパ時代のような鎧を着た集団が現れた。

銀座の人たちは映画の撮影かなにかと思い、野次馬となってカメラを向けて写真や動画を撮り始める。

鎧を着た集団の中で1人、鎧が豪華な男が馬に乗った状態で前に出て腰に差した剣を抜き、野次馬達に向ける。

 

『ーーーーーー!!!』

 

日本語では無い言葉を高らかに叫ぶと生き物達は一切に走り出し、たむろしていた人々に襲いかかった。

最初は何か分からず、様子見をしていた人たちも襲われていると分かると悲鳴を上げながら逃げ始めるが、緑色の巨躯の生き物、オーガや豚のような生き物、オークなど亜人によって惨殺されてしまう。

更に空から翼竜に搭乗した兵士が操り、食い殺されてしまう。

まさに惨劇が銀座に広がってしまった。

それに合わせて、鎧を着た集団も駆け出し、亜人の襲撃から逃れた人たちを襲い始めた。

その顔には逃げ惑う人たちを襲う高揚感か、未知の世界を圧倒的な力でねじ伏せる征服感で狂気に染まってしまっている。

 

『蛮族共よ!よく聞くがいい!我が帝国は皇帝モルト・ソル・アウグスタスの名において、この地の征服と領有を宣言する!!』

 

その高らかな宣言と共に襲い掛かってきた集団は雄叫びを上げた。

 

 

ある親子が必死に逃げるなか、オーガが棍棒を持って追いかける。

すると、母親に手を引っ張られていた娘が足をもつれさせてしまい、こけて母親の手を離してしまった。

 

「ユミ!!」

 

母親が慌てて抱き起こすが、目の前でオーガが笑みを浮かべて棍棒を振り上げた。

母親は娘の盾になろうとオーガに背中を向けて娘を抱きしめる。

しかし、このまま棍棒が振り下ろされてしまえば、親子諸共殺されてしまう。

母親の腕の中で娘は棍棒を振り下ろすオーガを見ていたが次の瞬間、その目には空が見えていた。

母親もいつまでも来ない衝撃を不思議に思い辺りを見回すとそこには恐らく逃げてきたであろう人たちが不思議そうに周りを見ている。

そして次に自分の目の前に立つ人物に気づき、目を向けた。

そこには先程の襲ってきた集団のような中世の鎧ではなく、赤と黒で色付けされた全身を覆うライダースーツのような鎧を着用し、顔の先が尖ったマスクを被る男が立っていた。

 

「大丈夫か?怪我は?」

 

「え……ぁ、」

 

「とりあえずここは安全だから警察とか自衛隊が来るまで動くなよー」

 

男は軽く言うと全身に金色の紋様が現れ、その場からいなくなった。

いや、いなくなったのではなく()()()のだ。

その頃、鎧を着た集団、帝国軍は異変に気づき始めた。

オークなどの襲おうとした蛮族達、市民が目の前で金色の残像を残して姿を消したのだ。

更には兵士が襲おうとした市民も目の前でだ。

やがて、異変は全体に広がり不安を表れるようになった。

そして自分達の周りには蛮族の姿無くなり、その場には自分達帝国軍しかいなくなった。

不安を募らせる帝国軍だったが1人の若い帝国軍兵士が声を張り上げた。

 

『ハッ!我ら帝国軍に恐れをなして蛮族共は姿を眩ませたぞ!!臆病者共め!!』

 

市民を馬鹿にしたように話す兵士に周りの兵士はそうだ、そうだと不安を打ち消したいが為に同意する。

同意の声はやがて歓声に変わろうとした時に帝国軍の前に男は現れた。

 

「ふぅー……これでここらの一般人は全員避難させたか……さて、おーい!俺の言葉わかる!?」

 

男は帝国軍に向かってフレンドリーに手を振って声をかける。

帝国軍達は突然現れ、声を掛けてきた男に突然警戒し、帝国軍のリーダーらしき男が代表として男に質問した。

 

『貴様!何者だ!?ここらの蛮族の1人か!?』

 

「え?何?ごめん!もう一回言って!?」

 

『貴様は何者だ!?先の蛮族の失踪も貴様がやったのか!?』

 

「あー……ダメだ。どこの言語だがわかんねぇ。ハイボール飲み過ぎたな」

 

男は額に手を当ててヤレヤレといった素振りを見せると、帝国軍のリーダーはその様子に怒りを覚え、先の号令と同じように剣を男に向ける。

 

『あの無礼者に帝国の礼儀を教えてやれ!!』

 

その号令に部下の帝国兵は男に向かっていく。

その瞬間は男は音を置き去りにして走り出す。

帝国軍のリーダーが気づいた時には男は目の前に現れ、自分は馬から降ろされ地面に転がっていた。

体には凄まじい衝撃が残っており顔だけ向けることしかできない。

 

『な、なにが……』

 

リーダーが倒されたことに気づいた兵士達は男に斬りかかるがまた男の姿は消え、手に持っていた武器も突然無くなり体に衝撃が走る。

次々と兵士達は倒れ、行動不能となっていく。

遠目から見ていた帝国軍の将軍には兵士達の合間に金色の残像が走っているのが見えていた。

 

『ま、まさか……金色(こんじき)の神々の一柱なのか……!?蛮族共は神の加護を受けているのか!?』

 

その言葉を聞いた周りの兵士達に動揺が走る。

それに気付いた将軍は自分の不意な言葉が不利な状況判断し、声を張り上げる。

 

『蛮族共が信奉する神など取るに足りない存在だ!!亜人共に襲わせろ!!』

 

将軍の指示により、男を亜人に襲わせる。

男は向かってくる亜人に背を向け、走り出した。

 

『我々から逃げた……!』

 

男が逃げ出したと嬉しそうに言おうとした瞬間に亜人の群れは凄まじい衝撃音と共に吹き飛んでしまった。

その衝撃は空気を振動させ、離れていた兵士達にも伝わっていた。

 

『何が起きたんだ……?』

 

呆然とする将軍を他所に亜人達と兵士達は次々と衝撃音と共に吹き飛ばされていく。

 

『こ、こんなことが……』

 

周りの兵士達が逃げ出すなか、将軍の顔は徐々に絶望に染まり口を震わせるが目の前に巨体の亜人が吹き飛ばされて押し潰されてしまった。

 

 

やがて、帝国軍は全員が生き絶えたか、気絶して行動不能となった。

 

「こんなもんかね……」

 

男は一息つくと背後から何人もの走ってくる音、キャタピラ音、ヘリの音が聞こえてきた。

振り向くと自衛隊、警察が向かってきていた。

 

「おー、やっと来たか。遅かったな、もう終わっちまったよ」

 

「動くな!!両手を上げて跪け!!」

 

隊員の全員が男に銃を向けて命令する。

男はその言葉に一瞬呆然としてしまうが漸く頭が追いついて来て、自分が敵だと思われている事に気づいた。

 

「違う違う!俺はここらの人たちを助けて、コイツらを倒したの。俺たち仲間だって」

 

「一歩でも動けば発砲するぞ!!」

 

言葉は伝わっているはずだが隊員達は警戒を解かず、引き金に指をかけていつでも発砲できるようにしている。

これは何言ってもダメだと判断した男は少しため息を吐いた。

 

「はぁ……しゃーない。………あっ!UFO!!」

 

男は突然空を指差し、大声を上げると隊員達は男の指先を見てしまう。

その隙に男は走り出し、その場から姿を消した。

 

 

銀座で起きた惨劇で日本国民で58人の尊い命が失われたが、それは奇跡と言える数だった。

本来であれば2桁の数では収まらない数の犠牲者が出たであろうが、突然現れた奇妙な姿をした男によって多くの市民の命が救われた。

助けられた人たちはこう供述した。

 

『気づいたら知らない場所にいた』

 

『目の前の光景が早送りみたいに流れた』

 

『風が体を突き抜けた』

 

その中で最も多く供述されたのがこのコメントだった。

 

『ヒーローに助けられた』

 

 

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