GATE:エターナルズ 彼の地にて斯く戦えり 作:マーベルチョコ
銀座に現れた門、通称『ゲート』の向こう側には異世界が広がっている。
広大な土地、豊かな自然、そして魔法や神などが存在している。
その異世界にある村、コダ村の中で人が1人住むのに十分な大きさの小屋から1人の青年が出てくる。
ダークブロンドの髪を短く揃えた髪型、深緑色の目を持つ17、18歳くらいの青年だ。
彼は朝早く村の中央にある井戸に来ると既に家事に勤しんでいる村の主婦達に挨拶する。
「おはよう」
「あら、おはよう『カイ』。今日も早起きね」
青年の名前は『カイ』と言い、他の主婦達にも挨拶をする。
「そういえばカイに頼み事があるんだけどいいかい?」
「何だ?」
「実は今日畑で野菜を収穫する予定なんだけど、今年は豊作なのよ」
「豊作ならいい事じゃないか」
「だけどねぇ……豊作過ぎて人手が足りないのよ。収穫手伝ってくれるかい?」
「分かった。今日分の薪を作り終えたら手伝いに行くよ」
「本当かい?ありがとうね」
カイの仕事は木を伐採し、薪を作ることだがカイは仕事が早く、力仕事や助けが必要な時はよく頼られている。
そしてカイにはもう一つ仕事があった。
カイは自分の小屋近くに建てた屋根だけがある建物に長机と長椅子を並べた所で村の子供達に勉強を教えている。
「さて、今日は数字の勉強と計算の仕方を教えよう」
「ねー、なんでかずのおべんきょうしないといけないの?」
子供達の中で小さいほうの子が質問するとカイは優しい笑顔を浮かべて、目線を合わせる。
「お勉強をして将来をより良く生きるためさ。物を買う時、物を数える時これらのことを知っていると役に立つ。そうしたら自分もみんなも喜ぶ時がくるよ」
「わかったー」
カイは子供の頭を優しく撫でて、勉強会を始めた。
○
カイは薪割り、村人の手伝い、勉強会を終わらせて村の外れまで来ていた。
その他にはバスケットを持っており、中には食料が入っている。
やがて、一軒家が見えて来て戸を叩くと中から魔法使いのような帽子を被り、同じく魔法使いが持つような杖を持った老人、カトー老師が現れた。
「こんにちは、カトー老師。今日分の食事を持って来ました」
「おお、いつも悪いの」
カトー老師にバスケットを手渡し、家の中を覗き込むがもう1人の住人が見当たらない。
「レレイは?」
「ふむ、今日は天気が良いから滝の近くで陽に当たりながら読書でもしとるじゃろ。悪いが食事を持って行って貰っても良いか?」
「分かりました」
カイはバスケットから2人分の食料を分けて家のすぐ近くにある滝に向かう。
滝の近くに人が腰掛けられるように曲がった木があり、そこに青みがかったブロンドのショートヘアーの少女、レレイが本を読んでいた。
「レレイ」
「ん、カイ」
カイがレレイの名前を呼ぶと本から目を離し、カイの方を見る。
カイは持っていたバスケットをレレイに掲げて見せて隣に座る。
「今日の食事を持って来た」
「いつもありがとう。苦労をかける」
「いいって、と言うより俺が用意しなかったらレレイ達碌な食事を取らないだろうし」
「そんなことない。ちゃんと食事は取っている」
「じゃあ、朝と昼は何食べた?」
カイが質問するとレレイはカイから目を逸らし、言いにくそうにする。
「………朝はリンゴ一個。昼はまだ」
「だと思った。レレイは育ち盛りなんだからもっと食べないと」
「私は魔術師。その生涯を魔術の探究に捧げる」
「探究するためには体が資本。またカトー老師にロンデルにいる義姉さんと比較されて揶揄われるぞ」
カイはそう言うと15歳の彼女にしては育っていない部分を見てしまう。
それに気づいたレレイは頬を僅かに膨らませ、側に置いてあった杖を取り、カイに向けて魔力を込めて魔術を使おうとするが、それに気づいたカイは謝った。
「悪かった。ただカトー老師にまた揶揄われるぞ、てことを言いたかったんだ」
そう言いながらバスケットからサンドイッチを取り、レレイに差し出す。
レレイも少しジト目でカイを見ながら、杖を置いてサンドイッチを受け取る。
「…‥許す。後で師匠に文句を言う」
「程々にな」
カイは少しカトーのことを気の毒に思った。
食事を取る前にレレイはカイに話しかける。
「今日はオルガ国について聞きたい」
カイは色々な場所を旅しており、彼女自身が流浪の民ルルドであるためカイの旅した話を聞くのが好きだった。
更にカイが人に物を教えているため様々な知識を持っており、魔法は使えないが魔法の話をしたりもする。
「まず飯を食べてからだ」
しかし、カイが食事が先にだと言うとレレイは少し不満する。
「時間は貴重」
「ゆっくりで良いだろ。俺はどこにも行かないよ」
カイの言葉に納得したのかレレイは黙々と食事をとり始め、カイもそれを見て微笑んだ。
○
やがて夕方となり、カイが自宅に戻ろうとするとレレイとカトーがついて来た。
夕食の支度をするとのことで一緒に行った方が時間の短縮になるし、手伝うとレレイから提案して来たのだ。
カイの自宅に向かう途中、井戸の周りに村の男衆が集まっており、皆一様に不安そうな表情をしていた。
「村長どうしたんだ?」
「カイにカトー老師とレレイもいたのか。ちょうど呼びに行こうと思っていたんだ」
村長はカイ達を連れてある村人の小さな牧場に案内した。
牧場の隅まで案内されるとそこには無残に殺された牛の死骸が2体あった。
「今朝来たらこんな風になっていたんだ……これから乳の収穫時期だってのに……」
飼い主の男は悔しそうに呟き、村長が肩に手を置いて慰める。
カイとレレイは死骸の側に近づき、その傷口を間近で確かめる。
「損傷が激しい。これは殺し目的じゃなくて、食べるために襲ったな」
「うん。四肢の欠如が見られるし、肉の大部分がない。恐らく野良のオーガかオーク、熊が襲ったと思う」
カイとレレイの推理を聞いた村長はため息を吐いた。
「はぁ、やっぱりか。カトー老師、魔除けの薬や獣避けの薬など用意できますでしょうか?」
「簡単な物なら作れるが今日中には無理じゃ。明日には用意できるようしよう。レレイや、これから家に戻って薬作りじゃ」
カトーはそう言って家へと戻っていくが、レレイはカイの家で食事を取れないことに少し残念そうにしていた。
そんなレレイの頭に手を置いて微笑む。
「後で飯は持って行くから。また今度一緒に食べよう」
レレイはその言葉に納得して、カトーの後をついて行った。
「カイも夜出歩くの気をつけてくれ」
「分かったよ村長」
カイは牧場の先に広がる森を一瞬見つめると自宅へと戻った。
○
夜、レレイ達に食事を持って行った帰りにカイは森の中で気配を感じ、森を見つめる。
カイの足は自宅の方へと向かず、森へと向かって行った。
森の奥深くに行くと血の匂いが漂って来た。
そして、その先には口元が血で濡れたオーガが肉を貪っていた。
「オーガ……お前かコダ村の牛を襲ったのは」
「ーーーーーー!」
オーガはカイに気づくと足元に置いてあった古びた大剣を取り、雄叫びを上げる。
その雄叫びを聞いてもカイの表情は何も変わらず、オーガと向き合う。
「この森から出て、コダ村や周りの村に被害を出さないなら見逃してやる。さっさと出て行け」
カイが注告してもオーガは意に返さず、武器を振り上げカイを襲おうとする。
カイの頭に向かって大剣を振り下ろすが、カイは片手で大剣を掴んで受け止めた。
「!?」
「見逃すって言っているのにわからないのか」
手に力を込めると大剣は粉々に砕け散る。
唖然とするオーガにカイはオーガの腹に蹴りを入れて吹き飛ばす。
木にぶつかったオーガは驚きながらもカイを恐れた目で見る。
「無駄な殺しはしたくない。早くここから去れ」
カイはそう言ってオーガに背中を見せて、村に戻ろうとする。
オーガは背中を見せたカイが隙を作ったと思い、近づいてその頭を掴んで握り潰そうとする。
「馬鹿が……!」
オーガの気配に気づいていたカイはオーガの方を振り向くと目を金色に光らせ、目から
死んだオーガに近づき、その様子を観察する。
(はぐれのオーガにしては装備が整っているな。こいつ帝国に飼われている亜人部隊のオーガか?それによく見ると体のあっちこっちに怪我がある。剣や槍でできた傷じゃない………何と戦ったんだ?)
「そういえばアルヌスからエネルギーを感じる。それと関係あるのか?」
カイは遥か遠くにあるアルヌスの方向を見て、次に自分が殺したオーガの方を見る。
「死体の処理をしないと……よっと……!」
カイは巨体なオーガの体を軽々と持ち上げて肩に担ぐ。
「うっ……酷い匂いだな。服に着付かないといいけど」
カイはオーガの体臭に顔を引き攣らせながら、空中に浮いて夜空へと消えて行った。