燃える駆逐艦魂を抱えて   作:擬態人形P

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第18話 朝潮~夏のバカンスを楽しんで?~

空母夏鬼の敵護衛艦は、フラッグシップ級の雷巡チ級と正規空母ヲ級が2隻ずつだった。

 

「浜波、他に艦影は!?」

「フラッグシップ級の、カ級がうろついてる………!先制魚雷、注意………!」

 

電探で敵艦の位置を図る浜波の警告で、朝潮は空母夏鬼達の反対側から狙ってきた雷撃を回避する。

即座に彼女は単横陣の命令を出し、浜波の示した位置に向け、5人掛かりで爆雷を投げつける。

水中で派手な爆発が起こり、敵潜水艦の髪の毛が浮上してきた。

 

「撃沈かも………じゃなくて撃沈です!」

「油断しないで輪形陣!敵攻撃機はヲ級も含めて一度に9機よ!高波を中心にして………何機落とせる!?」

「3機行けます!」

「いい返事ね!じゃあ、私も3機!残り3機は3人に任せる!島風は前に出てチ級の雷撃を惑わせて!」

「まっかせてー!本気モード!!」

 

島風が身体をスパークさせて先頭に飛び出し、チ級2隻の雷撃を誘発させる。

バラバラに放たれた魚雷はぶつかり合って破片を撒き散らしてくるが、即座に後退する事で島風は被弾を回避する。

それだけ元のスペックの高さと不完全ながらではあるが改二の補正で、彼女の速力は劇的に上がっていた。

一方で、高波を中心として輪形陣となった5人は、爆弾や魚雷を抱えた羽虫のような敵攻撃機を撃ち落としていく。

宣言通り、朝潮と高波が3機、巻雲と浜波と朝霜が1機ずつだ。

 

「小癪ナ………!弱イ駆逐艦共メ………!沈メテクレル!!」

 

幽霊のような声を響かせる空母夏鬼の声を無視し、朝潮は隊内無線で全員に念押しする。

 

「いい、私達の役割は「本隊」が到着するまでの時間稼ぎよ。取り巻きの撃破を優先して!」

「分かってるわ!と言っても、敵の攻撃が激しいから………巻雲姉さん!浜波!隙作るわよ!」

「任された!ビキニ風情めーーーっ!」

「う、うん………!後、まーちゃん、落ち着いて………。」

 

尚も魚雷を撃とうとしたチ級2隻と攻撃機を飛ばそうとしたヲ級を睨みつけて、巻雲が両ふとももの酸素魚雷を8本贅沢に発射する。

魚雷は途中でぶつかり合ってしまい、信管が敵に当たる前に作動してしまうが、破片が4隻の敵深海棲艦に突き刺さり、悲鳴を上げる。

この戦法は、春に風雲の推薦で嚮導の一員になって貰った電から直伝された牽制術だ。

 

「は、浜波………突貫………!」

 

取り巻きが動きを止めた事で、浜波が艤装の主機を全開にして空母夏鬼へと正面から大胆に踏み込む。

 

「コノ………!喰ッテヤル!!」

「やだよ………ばか。」

 

敵は椅子代わりにしていた巨大な口を開き、浜波を喰らおうとするが、それが逆に狙いであった。

彼女は手に隠し持っていた爆雷を口の中に放り込むと主砲を連射、更に魚雷も全部撃ち込み後ろに下がる。

 

「ヒャヤァァァァァァッ!?」

 

次の瞬間派手な爆発が巨大な口から洩れて、空母夏鬼は椅子ごと滑稽に海面にひっくり返る。

旗艦の………ある意味間抜けな姿に怯んでいた敵護衛艦は、更に動揺をしてしまう。

そこに、高波が浜波と入れ替わりで突っ込むとその性格からは信じられない位の身軽さでチ級の懐にあっという間に潜り込む。

 

「この距離なら………迷いません!」

 

そして、顔面を主砲一発で射抜くと、そのまま踏み台にしてもう一匹のチ級に向けて飛びあがる。

チ級は魚雷を再び撃とうとするが、飛んでる艦娘に当たるわけが無い。

高波は魚雷発射管を片方掴むと投げつけてそのまま主砲で起爆。

あっという間にフラッグシップ級のチ級を2隻沈めてみせた。

 

「ちょっと、はしたなかったかも………です。」

「いや、高波姉さん………凄すぎだって。」

 

そう突っ込みながらも、清霜は1隻のヲ級に牽制射撃を続けていた。

持っている杖で砲弾を弾き抵抗し攻撃機を飛ばすが、清霜が近くにいる為に上手く射程に捉える事が出来ない。

その内にインファイトの距離になり、清霜は砲塔を右手で握り締めると杖を弾き飛ばす。

 

「私は次期戦艦候補、清霜よ!!」

 

そして、サマーソルトキックを喰らわせて怯ませると、一気に離脱し隙だらけのその身体に魚雷を叩きこんで沈める。

 

「みんなすっごーい!これで夕雲型の落ちこぼれだったなんて信じられないね。」

「その分努力してたんでしょ。春からずっと訓練してたもの。」

 

もう1隻のヲ級は島風と朝潮が2人掛かりで追い込んでいた。

ヲ級は苦し紛れに攻撃機を飛ばすが朝潮が対空機銃で迎撃をして、その隙に島風が5連装酸素魚雷を喰らわせて逆に海の藻屑にしてしまう。

空母夏鬼が体勢を立て直す頃には配下の深海棲艦達は全滅していた。

 

「ア、 有リ得ン!?」

「有り得るんですよ!いつまでも、バカンス気分でいるからそうなるんです!」

「巻雲、貴女いつまで根に持っているのよ………!?」

 

朝潮がツッコミを放つが、巻雲は魚雷を全て使ってもまだ闘志満々だ。

隊内無線で朝潮は浜波に聞く。

 

「本隊到着までは………!?」

「後………1分で、射程に入るって………!」

「よし!攻撃機の撃墜は高波、浜波、清霜に任せるわ!私と島風と巻雲は砲撃を止めるわよ!………巻雲、確か1分間なら出来るわよね!」

「任せて下さい!」

 

そう言うと巻雲は息を吸い………その身体をスパークさせる。

一瞬強く発光したかと思うと、彼女の姿が夕雲と同じく「改二」に変わっていた。

その姿は凛々しく、小さかった身体も夕雲に匹敵する位の体格にまで成長していた。

甘えんぼ袖もしっかりサイズが合っている。

 

「バ、バカナ!?チンチクリンジャ無カッタノカ!?」

「深海棲艦にまで突っ込まれるとは思わなかったですよ!お礼です!受け取って下さい!!」

 

巻雲はそう怒りの言葉を叫ぶとその右の水上の2門の砲塔に向けて、改二になった事で復活し、強化された酸素魚雷を炸裂させていく。

砲門は再生をしようとするが、そこに更に酸素魚雷をどんどんつぎ込んでいく。

派手な水柱が上がり、そこから反撃の砲火が巻雲に飛ぶが、彼女は油断せず回避していく。

ここら辺は、夕雲や風雲の経験を夕雲型で共有した結果だ。

 

「1分あれば、酸素魚雷1本ずつ撃ち込んでも8本分の余裕はあります!訓練に付き合ってくれてありがとう、敷波さん!」

「本当に練度をどんどん上げてるのね………負けられないわ!」

 

一方で左の2門の砲塔は朝潮が担当していた。

彼女もまた改二になっており、次々と砲撃を回避し、逆に魚雷や主砲を叩きこんでいた。

更に背後からは島風の連装砲ちゃんが牽制射撃をしてダメージを増やしていく。

空母夏鬼はカタパルトから攻撃機をどんどん飛ばすが、こちらは高波達が隙なく撃ち落としていく。

このままではどうしようもない状態であった。

 

「クッ………ダガ、私ノ再生能力ハ貴様達ヲ凌駕スルワ!」

「確かに今の私では改二の姿は1分が限度ですが………もう大丈夫ですね!」

 

酸素魚雷を撃ち尽くした巻雲が元の姿に戻る。

尚も砲門は再生されていくが、そこに2機の偵察機が飛んできた。

 

「ナンダ………?」

 

次の瞬間、巨大な砲弾が飛来し、空母夏鬼の2つのカタパルトが吹き飛んだ。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

ブラウン色の髪をポニーテールで結んだ艦娘とおかっぱのショートヘアの艦娘が巨大な砲門を向け、偵察機を活かした弾着観測射撃を遠距離射程から叩きこんでいた。

伊勢型1番艦の伊勢と2番艦の日向だ。

彼女達は航空戦艦であり、速力を犠牲にしながらも強力な攻撃力を持っていた。

その力を十二分に活かす為に、今回の作戦では速力のある朝潮率いる駆逐艦6人が敵の親玉を発見して消耗させ、彼女達の本隊が殴り込む方法を取っていたのだ。

 

「とはいえ………あの子達でほとんど料理しちゃっているわね。」

「お陰でこちらは楽だがな。美味しい所だけもらって悪い気もするが………。」

 

2人は苦笑しながらも手を抜かない。

カタパルトを吹き飛ばした後は、上の2門の砲塔を破壊し、どんどん武装を奪っていく。

その2人の前には、彼女達を護衛する形で旗艦夕雲と風雲を先頭で、その後ろに長波と岸波が複縦陣で並んでいたが、もはやその必要も無い状態であった。

 

「巻雲さん達ったら………張り切り過ぎよね。」

「私達も出番欲しかったなぁ………。」

「まあ、たまにはいいんじゃね?」

「少しだけバカンスを楽しんでた敵に同情するわね。」

 

散々航空戦艦の強力無比な砲撃を受けた空母夏鬼は、悲鳴を上げながら、その玉座と共に沈んでいった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

夕雲達と朝潮達が合流すると、巻雲がビシっと敬礼しながら夕雲に報告をする。

 

「夕雲姉さん、やりました!巻雲、改二を使い「鬼」クラス撃破の一翼を担いました!全ては長月さんを始めとした嚮導の皆様の教えのお陰です!」

「改二の巻雲さん素敵でしたよ。でも、いつ見てもあそこまで身長が変わるなんてね………。」

「それ、あの深海棲艦にバカにされましたよ………普段からそうだといいんだけどなぁ………。」

 

元に戻った甘えんぼ袖を見ながら今更暑さを思い出したのか、パタパタ仰ぐ巻雲。

その様子を笑いながら、一同はしばらく和やかな雰囲気に包まれる。

しかし………。

 

「何か………浮かんでくる!?」

『!?』

 

電探を使っていた浜波の言葉に、全員が揃って武器を構える。

見れば、空母夏鬼がいた所が光っていた。

 

「あの現象は………まさか………。」

「私ヲ沈メルトハナ………褒美ダ、持ッテイケ………。」

 

驚く風雲達の耳に沈んだはずの空母夏鬼の声が響いてくる。

見れば、光の中から以前、電が駆逐水鬼を倒した時のように少女が………一糸纏わぬ少女が浮かんできていた。

違っているのはその少女は銀灰色の髪を持っていた事だろうか。

慎重になる夕雲達を他所に、朝潮が少女の元に向かう。

 

「貴女は………誰?」

「吹雪型7番艦………薄雲………です。ここは………。」

「お帰りなさい、薄雲。朝潮よ、覚えてる?」

「あ………そっか、私………。」

 

何かを悟ったように微笑むと少女は気を失う。

風雲が黙って上着を脱ぐと朝潮に渡した。

肌を隠した少女は、伊勢がお姫様抱っこをして大切にする。

日向は母港に遠距離通信をし、状況を伝えた。

 

「夕雲姉さん………これって………一体………?」

「他言無用らしいですよ。口外したら裁判沙汰になるらしいです。」

「ど、どういう事ですか!?」

「その内分かるらしいです。」

 

驚く巻雲に対し、夕雲はそれだけ言うと朝潮と連絡を取り合い、艦隊を指示して横須賀へと戻る。

恐らく薄雲という少女もあの時出会った旗風という少女と同じなのだろう。

だが、だとしたら彼女達は………。

 

(今は安全第一ね。)

 

夕雲は頭に浮かんだ疑問を振り払った。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「う~ん!何か久々に横須賀に戻ったわね!」

 

一方同時刻、横須賀の桟橋には呉鎮守府に出張していた駆逐艦娘達が戻ってきていた。

その内、オレンジの髪をサイドテールで結んだ艦娘は呑気に伸びをする。

 

「呉は地元だけど、今は軽巡洋艦と重巡洋艦の訓練強化の本拠地になってるから肩身が狭かったのよねぇ………。駆逐艦が多いここの方が何か落ち着くかも。」

 

そう肩をコキコキと鳴らすと白手袋に包まれた手をポンポンと合わせて言う。

 

「長月は元気にしてるかな?それと………。」

 

そして、横須賀の鎮守府を見上げる。

 

「あの子達に………ちゃんと伝えないとね。」

 

一瞬だけ目を伏せた艦娘は………陽炎型1番艦の陽炎は決意を固めた。

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