燃える駆逐艦魂を抱えて   作:擬態人形P

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第6話 長月~練度向上を目指して~

「長月さんが私達の嚮導をしてくれる事になったんですね。………他の第十四駆逐隊の方は?」

「遠方への任務等に駆り出されている。基本、改二の力を持つ駆逐艦娘は戦艦や空母等の護衛に引っ張りだこになる事が多い。呉や佐世保、舞鶴等、鎮守府の間で貸し借りをされる事も多いな。幾ら横須賀が駆逐艦の強化をしているとはいえ、その傾向に変わりは無いんだ。」

「それって、第十四駆逐隊として成り立っているんですか?」

「書籍上はな。………だが、実情としては中々一緒にはいられない。此間の営倉入りになった任務が貴重な集合機会だったんだ。」

 

だから曙がはっちゃけてしまってああいう結果になったのだがな、と長月は付け加え肩をすくめる。

その意外な言葉に、大乱闘になった喧嘩を見ていた夕雲は思わず黙り込んでしまう。

もしかしたら彼女達は、轟沈しやすい駆逐艦故に、久々の6人での邂逅をああいう形で楽しんでいたのかもしれない。

風雲が代わりに長月に聞く。

 

「共に過ごして成長してきた仲間なんですよね?寂しくは無いのですか?」

「寂しいさ。」

 

正直に答えた長月の目は、憂いを含んでいた。

 

「だが、出会いがあれば別れもある。私達はそれを乗り越えて今がある。過去に縛られず、それを糧として胸を張って生きていこうと6人で決めたんだ。」

 

寂しげに笑った長月は夕雲達を見て、真剣な顔に戻る。

 

「夕雲型も今は練度向上の為に一緒に修練を積める。だが、改二の力を手にいれ次期主力になった暁には一緒にはいられない。それは覚えておいてくれ。」

「はい………。」

 

長月の言葉に夕雲が答える。

舞鶴では妹達と訓練や軽い実戦を経験していたが、それがいずれは叶わなくなる。

予め覚悟は必要なのだろうと心に秘めておく。

 

「さて、そろそろ話を変えよう。流石に私1人では17人も面倒は見られないから、司令官に頭を下げて3人嚮導を募った。自己紹介してくれ。」

「おう!」

 

そう最初に答えたのは、如何にも元気そうな黒の外ハネしているショートボブの艦娘である。

彼女は腕まくりをすると前に出て白い歯を見せて自己紹介をする。

 

「吹雪型4番艦の深雪だよ!全員、この深雪さまに付いて来い!」

「だから、1人で全員は面倒を見られないだろう?」

「冗談だって!でも、付いて来た奴は深雪スペシャルを伝授するぜ!!」

「だから、そんなものはないだろう………。」

 

何か滅茶苦茶な事を言う深雪に対し、顔を手で押さえて呆れる長月。

唖然とする夕雲型の面々に対し、彼女は深雪を放っておき次の艦娘に挨拶を促す。

前に出たのは、憮然とした表情で腰に手を当てている水色のセミロングの艦娘。

 

「陽炎型7番艦初風よ。」

「単調だな。もっと何か言えないのか?」

「………他に何を言えばいいのよ。」

「司令官の事を「バカ提督」と呼ぶ………とか?」

「私を曙や霞と一緒にするんじゃないわよ!?………もう、足手纏いは置いてくからね!!」

 

如何にも厳しそう………というか素直じゃなさそうな初風の様子に夕雲達は別の意味で唖然とする。

尚もむきになる彼女を放っておき、長月は最後の艦娘に挨拶を促す。

その言葉に、深雪や初風よりも小柄な茶色のボブヘアーの八重歯の艦娘が出てくる。

 

「暁型3番艦雷よ!大丈夫、私がいるからには誰も沈ませないわ!是非、頼ってね!」

「早速地の性格が出ているな。甘やかすだけでは成長しないぞ?」

「分かってるわよ!でも、まず素直じゃないといけないと思うの!」

「確かにそうだな。」

「何で2人して私を見るのよ!?」

 

じーっと見つめる雷と長月に反論する初風。

頭の後ろで手を組んで笑っている深雪も含め、駆逐艦娘達の間柄は良好?らしい。

いつまでもワイワイと冗談を言い合っている長月達と、戸惑っている妹達の姿を見比べた夕雲は、一歩前に出て改めて挨拶をする。

 

「長月さん、深雪さん、初風さん、雷さん。ご指導、宜しくお願いします!」

「ああ、もう既に聞いているかもしれないけど、私達の事は呼び捨てでもいいわよ。気遣っている程、訓練は甘くは無いから。」

 

その言葉に対して、初風が冗談を言ってくる3人の嚮導仲間を放っておき、あっさりと答える。

これは正直、夕雲にとっては有難かった。

妹達の中には敬語とか堅苦しい言葉とかが苦手な者もいる。

そういう意味では、提督の時と同じく、形式に拘らなくて済むのは良い事だった。

尤も夕雲は、基本は敬語で喋る癖があるが。

 

「では、早速訓練の為に隊を分ける必要がありますね。えっと………。」

「あー、悪いけど、隊の割り振りは昨日の内に深雪さま達で決めちまったんだ。」

「え?」

「司令官から、夕雲型全員の舞鶴での成績を含めた資料を見せて貰ったの!その上で分けるわね!」

「わ、分かりました!」

 

どうやら合同演習が終わった後から、今日に向けて長月は色々と手回しをしてくれていたらしい。

夕雲は改めて長月に礼をした上で、その割り振りを聞く。

恐らく、舞鶴で主に旗艦をやっていた夕雲・風雲・長波・岸波がそれぞれ分かれて………。

 

「まず、初風嚮導の駆逐隊からだ。旗艦は夕雲。以下、風雲・岸波・朝霜・長波だ。」

『え?』

 

しかし、予想外の編成に夕雲だけでなく、妹達も一斉に声を揃えて反応する。

早霜を除けば昨日の合同演習と同じ編成………というか、旗艦に向いていそうな艦娘が全員同じ隊に入っている。

 

「すみません、意見をしても宜しいですか?」

「どうした?」

「舞鶴の資料を見たのならば分かると思うのですが、私と風雲と長波と岸波は分かれた方がいいのでは………?」

「それは逆に言えば、実戦での練度も一番高いという事だろう?だから初風と共に警戒任務も兼ねて、近海で本格的な実戦形式の訓練をする。」

「他の夕雲型の艦娘達は………。」

「この演習海域で訓練だ。深海棲艦と遭遇した際に転覆したら最悪轟沈に繋がる。そうでなくても、練度が高い艦娘と練度の低い艦娘が同時に訓練すると効率が悪くなる。ちなみに私は初期の第十四駆逐隊では特別に練度が低かったから、よく曙に文句を言われたものだ。」

 

長月はそう答えると残りの編成を読み上げる。

深雪の駆逐隊は巻波・沖波・早霜・秋霜。

雷の駆逐隊は涼波・藤波・早波・秋雲。

そして、長月の駆逐隊は巻雲・高波・浜波・清霜。

 

(この組み合わせは………。)

 

妹達がざわめく中で、夕雲が嚮導艦達の思惑を感じ取る。

それを口に出す前に、初風がパンパンと手を叩き、指示された隊に分かれるように促す。

 

「じゃあ、抜錨よ。私の指揮下の艦娘達は付いてきて。」

「り、了解………。」

 

そのまま夕雲達5人は、初風と共に抜錨する形になる。

単縦陣のまま、初風・夕雲・風雲・岸波・朝霜・長波という順番で沖合へと進んでいった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

沖合の天候は嵐が巻き起こっており、波が荒れていた。

その中を初風は物ともせずに進んでいく。

夕雲達も、荒天中の訓練は経験している為か転覆する艦はいなかった。

 

「………何か言いたい事があるでしょ?ここならこの6人にしか会話が響かないから遠慮なく言っていいわよ。」

「分かりました、では………。」

 

隊内無線を発しながら初風が振り向かずに言う。

夕雲はその言葉に遠慮せずに言う。

 

「本当に訓練時の成績で分けましたね。」

「ええ。貴女達が上だとすれば、深雪と雷の隊が中。そして、長月の隊が下ね。」

「……………。」

 

これでも夕雲はネームシップだ。

舞鶴に居た時は、秋雲を含めた妹達16人の成績を管理していた。

だから、その妹達の成績は手に取るように分かる。

 

「否定や非難はしないのね。」

「した所で何か変わるわけではありません。実際、こういう荒天時の訓練では長月さんの指揮下に入った4人は転覆とかをしていました。」

「艦娘に選ばれた以上、全員素質はあるのよ。でも、性格がそれに付いていかないと実力は発揮できないわ。」

 

初風の的を射た言葉に、夕雲は考え込む。

 

巻雲は性格面でそこまで問題があるわけでは無いが、何故か制服が大きい。

甘えんぼ袖である為に砲塔の構え方がおかしく、よく砲撃戦で外していた。

制服は何か秘密があるのかサイズのあった物を新調できなかったので、袖を畳むしか現時点では方法は無かった。

 

高波は自分に自信が持てないのか、「かも」という口調をよく使う。

それだけならば可愛いものだが、艦隊内でコミュニケーションを取る際に誤認に繋がってしまう。

初風の言う通り、素質は高いとは思っているので、後は本人の努力次第だと思った。

 

浜波はかなりの恥ずかしがり屋で喋り方もおどおどしている。

コミュニケーションを取るのも一苦労で、正直旗艦に一番向いてない妹であった。

勿論、潜在能力は他の夕雲型と同じく高いのだが、極端に怖がりな性格を何とかしなければならなかった。

 

清霜は、コミュニケーション能力はいいし制服もダボダボでは無い。

だが、戦艦を目指したいという夢を抱いており、それ故に良い意味でも悪い意味でも大胆不敵な砲撃を仕掛けてしまう事があった。

後、大量飲食してダウンしてしまう等、性格面で空回りをしている部分も見え隠れしていた。

 

「………みんな強くなれるでしょうか?」

「長月も落ちこぼれだったから、彼女達の気持ちを汲み取りながら練度の上昇を目指していくでしょうね。貴女が立場上心配する気持ちは分かるけど、今は自分の上達に集中しなさい。………さて、そろそろね。旗艦交代するわよ。私はしんがりを務めるわ。」

「分かりました。」

 

初風の言葉に、今は妹達の事を置いておこうと思った夕雲は、先頭になって嵐の中を突き進む。

正面には不気味な姿をした深海棲艦が航行をしていた。

 

(あれが、私達の敵………殲滅するべき敵。………ッ!?)

 

遠くから敵影を確認した所で、夕雲は初風達に伝達をする。

 

「敵艦、駆逐艦イ級2隻!軽巡洋艦ホ級1隻!重巡洋艦リ級1隻!!」

「マジか!?」

 

思わず朝霜の声が漏れる。

彼女達はまだ重巡洋艦には対峙した事が無かった。

 

「初風さん!こんな近海に重巡がいるんですか!?」

「最近、何故かいるのよね………。警戒任務をするとたまに見つけるの。」

「私達、まだ実戦で対峙した事ありません!」

「じゃあ、今回が初戦闘ね。沈まない程度で遠慮なくやっちゃいなさい。大丈夫。多少、砲の威力と射程と水柱が大きい位で後は駆逐艦と同じよ。」

「簡単に言ってくれますね………。」

「やれると思わなければ連れてこないわ。後、戦闘時くらい、邪魔な敬語は無くしていいわよ!早く指示を出しなさい!」

 

どうやら、全て旗艦である夕雲に任せるらしい。

確かに巻雲達を連れてこなくて良かった………そう思ってしまった彼女は、頭からその思考を振り払い、艦隊指示を出した。

 

「全艦、私に続いて!駆逐艦オブ駆逐艦の力、見せるわよ!!」

 

夕雲の勇ましい声が海に響いた。

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