燃える駆逐艦魂を抱えて   作:擬態人形P

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第75話 雪風~新戦力~

「えっと、貴女達が海外艦であるヒューストンさん、パースさん、デ・ロイテルさん………ですか?」

「ええ。貴女は日本以外の艦娘を見るのは初めて?」

「あ、はい………やっぱり重巡や軽巡のような大人の方が多いんですね。」

「私の知る限りでは駆逐艦とかもいるらしいわ。もしかしたら、艦娘の多国籍での構成実現の為に、今後増える更に組み込まれる可能性はあるかもしれないわね。」

 

挨拶をする高波に対し、ニコリと答えていったヒューストンは周りを見渡すとそれぞれの艤装等をチェックする。

やはり、本国から日本の艦娘の特徴等を掴むように指示されているのかもしれない。

しかし、ヒューストンを始め、パースとデ・ロイテル達はそれぞれ顔を見合わせると頭を下げる。

 

「後、私は重巡洋艦だけど、練度では貴女達駆逐艦達の方が遥かに上だから、色々と学ばせて貰うわね。厄介になると思うけれど宜しくお願いね。」

「軽巡である私達に対しても気にしなくていいわ。先輩である貴女達の技術を学べば色々と掴める事もあるだろうし。」

「そうそう!日本のコトワザ?にあるよね。郷に入れば郷に習え?だっけ。というわけで、気さくな感じで宜しくね!」

「あ………宜しくお願いします。」

 

重巡や軽巡とはいえ、自分の立場や練度は弁えているのだろう。

駆逐艦である高波達に遠慮なく頭を下げる所を見ると、艦種としてのプライドよりも自身の強さを獲得していこうとする貪欲さが見えた。

 

「仲良くしてやってほしい。後、大発動艇を積める駆逐艦娘達にも着任して貰ったよ。」

「改白露型1番艦海風です。現在タウイタウイにいる山風の姉で様々な状況に対応できるように頑張ります。」

 

そう長い銀髪の三つ編みを垂らした艦娘は服の上からでも分かる胸部装甲を持っていた。

軽巡………下手したらそれ以上の物を持っているその姿を見た綾波と雪風が思わず真顔で見つめる。

 

『じ~~~………。』

「な、何ですか!?私の胸を見ても何も出ませんよ!?」

「いえ、いつ見ても格差社会は残酷だな~と。」

「雪風ももう少し欲しいものです………。」

「女性の永遠の悩みかもしれないけど、あんまりいじめたらだめだよ。とにかく、そういうわけでもう1人大発動艇を積める艦娘を配備して貰った。」

「睦月型7番艦の文月だよ~。大発動艇以外を運用できる事以外は、対空攻撃が得意かな~?」

 

そう答えたのは長い茶髪をポニーテール状に纏めた小柄な艦娘。

役割が似ている改二姿を持っている霞が彼女に注目をする。

 

「大発の運用と対空防御を同時に行うのは大変だけど、大丈夫なんでしょうね?」

「訓練は沢山積んでるから大丈夫だよ~?睦月型は世界一の船だって長月ちゃんや皐月ちゃんも言っているし~。」

「それだけの自信、実戦で見せてもらうわよ?」

 

笑顔で癒し系の彼女ではあるが、意外と海戦の時は闘志をむき出しにすると長月から聞いたのを高波は思い出す。

人は見かけによらないとは言うが、それは彼女にも言えるみたいであった。

 

「最後に空母も1人連れてきた。赤城とは別チームで運用が可能になるだろう。」

「大鳳型軽空母4番艦………神鷹です………。この最前線で皆様の役に立てるように頑張ります………。」

 

最後に自己紹介されたのは、金髪蒼眼という西欧風な風貌を持つ艦娘であった。

一瞬この娘も海外艦なのでは?と思った高波であったが、日本の着物を着ている。

その疑問に気付いたのか、面識があるのだろう………空母である赤城が言う。

 

「神鷹さんは、元々はドイツの客船を日本で回収した艦だから、そのような外見を持つのよね。」

「はい、ドイツの言葉も使えます。残念ながら人間としての記憶が無いので、私が元々日本人なのかドイツ人だったのかは分かりませんが………。」

「……………。」

 

艦娘になった時点で人としての記憶は消されてしまう。

そういう意味ではこういう所でも吹雪が言っていたブラックな物を感じ、高波は思わず黙ってしまう。

 

「それにしてもしれえ、当初は2~3人って言ってたのに、一気に6人も沢山の仲間を集められて凄いです!どうやってこんなに集ったんですか?」

「まあ、パラオの事は何だかんだ言って上層部も認識しているからね。それだけ最前線であるトラック泊地への強化も考えてはくれてはいるみたいだよ。」

 

雪風の質問に、トラック泊地の提督は笑顔で答えていく。

そこに霞が溜息を付いて一言。

 

「要は他国への介入とかドス黒い事考えてるから躍起になってるんでしょ?」

「否定はできないね。とにかく、現場は現場で色々とやるしかないさ。」

 

そう言うと、提督は集った艦娘達のプロフィールを改めて確認する。

 

「現在の基地の艦娘は18人………この編成ならば、連合艦隊である水上打撃部隊も組めるし、輸送で2チームずつ出してもトラック泊地の防衛が出来る。大発動艇を積める艦娘も4人いるし、物資の輸送効率は大幅に上がるだろうね。」

 

それだけテキパキとした作業を求められるという事ではあるが、現地で建設を行っている作業員の安全を考えれば、むしろ有り難いと思えた。

只、問題があるとすれば………。

 

「うーん………。」

「しれえ、何か悩みがあるみたいですね?」

「雪風、君なら分かると思うけど、国同士の思惑のぶつかりあいは想像以上に複雑だ。命令書には、海外艦の3人は防衛じゃなくて、物資の運搬を積極的に行うようにと書いてある。特にこの近くのオーストラリアに所属しているパースは特に実績を上げて欲しいらしい。」

「提督、私が活躍する事は不満なのでしょうか?」

 

ちょっとむっとした顔でパースが聞いてくるが、提督は困った顔で正直に答える。

 

「僕としては海外艦が活躍する事は別に困りはしない。でも、この海域に出現する深海棲艦の事を考えると、君達の練度だと下手したら轟沈する可能性も高いのが現実だ。」

「抗議じゃないけれど、擬似改二は私達も使えますよ?」

「ヒューストン。一日十分台の擬似改二が使えるだけじゃ、ダメなんだ。せめて半日は擬似改二や改二の姿を持たせられるように工夫しないと君達の身が危ない。」

「や、やっばーい!半日も持たせるには、まだまだ訓練期間が足りないかも!?」

 

素っ頓狂な声を上げるデ・ロイテルの声を受け、提督は考える。

そして、彼は高波に1歩前に出るように言う。

 

「司令官?」

「彼女は現在、輸送作戦の旗艦を務めてくれている高波だ。訓練海域でちょっと彼女に10分間3人で砲撃を当ててみてくれ。多分、ここでどれくらいの練度が必要か分かるから。」

「駆逐艦を侮っているわけじゃないけど、さすがにそれは………。」

「ほ、本当にいいのかしら?その、高波………?」

「本気でやるからボコボコになるかもしれないよ?」

「あ、えっとその………大丈夫かも?です。」

 

改二になった高波が本気で熟練の目を発揮したら、綾波と霞に指示を出しながらでも、扶桑、山城、赤城、加古の攻撃を無傷で乗り切れたのだ。

当然ながら、練度がまだまだである海外艦3人の攻撃を1人で無傷で乗り切るのはそんなに苦労する話では無かった。

数十分後、彼女達だけでなく初めてその様子を観戦していた海風、文月、神鷹も唖然とさせられる。

高波は涼しい顔で反撃する事なく、全弾模擬弾や魚雷を回避してしまったのだから。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

その夜、高波は自室で中々寝付けなかった。

提督の指示であったとはいえ、自分にかすり傷1つ付けられなかった海外艦3人の落胆ぶりを見てしまったのだから。

何ていうか悪い事をしてしまったように思ったが、この泊地の現実を知らせないと彼女達の身が危ないのだから仕方ない。

しかし、理解は出来ても感情が中々納得できないのは事実であった。

それは、海外艦3人も同じだろう。

 

「はあ………。」

「溜息ばかりついてますね~。」

「あ、綾波さん………すみませんかも………。」

 

同部屋の綾波もまだ眠っていなかったらしく、高波を気遣う。

 

「こういう場合どうすればいいか分からないかも………謝るのも逆に失礼だし………。」

「こればかりは、明日にならないと~………。あれ?」

 

ここで、高波達は外で綺麗な音色が鳴っているのに気づく。

楽器の音色である。

窓から外を眺めてみれば、海外艦3人が砂浜で楽器を鳴らしていた。

 

「アレは………。」

「ちょっと行ってみましょう。」

 

綾波の言葉で、高波は制服に着替えて外に出ていった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

外ではヒューストン、パース、デ・ロイテルの3人がセッションを行っていた。

ヒューストンがサックス。

パースがトランペット。

デ・ロイテルがクラリネットだ。

人数は3人しかいなかったし、楽器は管楽器ばかりであったが、本格的な練度があり音の厚みはジャズバンドを組んでいる敷波達6人を凌駕していた。

その音色に惹かれたのだろう、その場には高波達だけでなく、続々とトラック泊地の艦娘達が集まってくる。

やがて、演奏が終わると思わずみんなが拍手をした。

 

「ごめんなさい、起こしちゃったみたいね。」

「いえいえ~、ジャスバンドが趣味の親友は綾波にもいるので、むしろ本格的な演奏を聞く事が出来て良かったです~。」

 

謝って来たヒューストンに対し、綾波が代表して笑顔で受け答えをする。

高波も朝霜や岸波がそのジャズバンドに参加している事も有り、思わず感動を覚えてしまう。

それは磯波と関係の深い吹雪や、野分や嵐と関係の深い雪風も同じであった。

 

「あの………ヒューストンさん達は、嫌な事があったらこうやって気を紛らわすのかもですか?」

「あら、昼間の事ならば気にしなくていいわ。私達の練度が低いのが悪いんだし。でも、貴女の目、どうやってあんな事ができるようになったの?」

「えっとほぼ毎日訓練をして、嚮導のみんなに色々な事を教わって………。」

 

長月や初風、深雪や雷、そして電の事を考えながら話す高波の様子を見て、パースやデ・ロイテルは少し寂しい顔をする。

 

「日本には頼もしい仲間が沢山いるのね。ちょっと羨ましくなっちゃったかも。」

「私やパースはまだ国としては唯一の艦娘だからねー。ヒューストンのように一緒に仲良くしてくれる艦娘はいるけど、自国の船は他にいないからね。」

「そうですよね………。孤独は寂しいです………。」

 

自分が1人だけだったら辛くて耐えられないだろうと思った高波であるが、そこで雪風が笑顔で提案をしてくる。

 

「だったら、ここで仲間の輪を広げませんか?」

「どういう事かしら?」

「色々な思惑や本国の現状を抱えているのは、何となく雪風も分かります。でも、一蓮托生って言うじゃないですか。」

「まあ、確かに………。」

「1人で無理だと思った時は遠慮なく相談して下さい!雪風達は、仲間を見捨てる艦娘ではありませんから!」

「言い切るねー。」

 

雪風だって、丹陽という姿を持つ故に海外艦3人の気持ちが全然分からないわけでは無い。

だからこそ、彼女達の不安をなるべく取り除いてあげたいと感じたのだろう。

海外艦3人は、まだしっくりこない部分もありそうではあったが、とりあえずは雪風の言葉に笑顔を見せてくれた。

 

「ありがとう、じゃあ少し甘えてみようかしら。」

「ヒューストンったら………聞きたい事は聞くから頼むわね。」

「パースも素直じゃないなー。あ、私も色々と宜しくね!」

『はい!!』

 

決して完全に打ち解けたわけでは無いだろう。

でも、自分が頼もしい嚮導達の元で力を付けたように、ここから海外艦達も育っていくのだと感じ、高波はより一層今後の任務に対し気合を入れた。

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