ジュラシックな島に取り残された件。   作:むりー

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 缶詰めとは、文明の利器である。

それを俺はいま、身を持って知っている。

ふらりと侵入したシェルター。そこでコロンと打ち捨てられていた缶詰めを見つけた。

きっとこの中には、塩辛い、きちんと甘くない食事が待っている筈である。

チョコバーには到達し得ない、クソ甘スポドリモドキには到達し得ない、きちんとした食事が備えるお塩の味。

それを俺は猛烈に求めていた。

が、しかし。開けられない。

開かないっ!開かないよぅ!!

缶詰めが開けられない。

この缶詰めは硬派な奴だ、プルタブとか横に鍵みたいなツールが着いててくるくるやるやつではない。

缶切りが無いと、開けられない感じのザ・缶詰めである。適切な道具という文明の利器がないと、この保存食(文明の利器)は開けられない。

 

「手持ちの道具だと………ダメだ、拳銃以外にろくな物が無いわ。」

 

 缶詰め相手に拳銃をブッ放して風穴開けて………いや、何かもっと良い方法がある筈だ。

荒れ果てたシェルター内を見回す。

こいつはシェルターに備蓄された非常食なんだろうから、どっかに缶切り的ツールがある筈………視界に疎らに入ってくるのは、瓦礫、瓦礫、千切れた布、スマホ、血痕………缶詰め開けられそうな物はどこにも落ちていない。

ちょっと考えてみよう。

缶詰めを開けるってのは、要するに厚さ数ミリの鉄板に穴さえ開けられれば良いんだ。

んで点で空いた穴を繋げれば、取り敢えず缶詰めは空いてくれる。

固くて鋭い物さえあれば良い。

綺麗に缶を開けようとはしなくても良い。

 

と、そこまで考えて俺はめんどくさくなった。

拳銃を構えて引き金を引いた。

 

「往生せいやぁぁぁぁ!!」

 

パァン!

 

目の前には風穴の空いた缶詰め。

どうやらミネストローネスープの缶詰めだったらしく、赤い内容物を溢しながら地面に転がっている。

慌てて拾い上げ、埃やら小さなゴミやらを手が汚れるのも気にせず拭い落とす。

小さく拳銃弾の形に空いた開口部から、はしたなく内容物を啜るように口に入れた。

 

文明人とは思えない汚い食事の光景。

でもそれで良い。

どうせ見てる奴も居ない。

寧ろこんな蛮行を行っている自分に高揚感すら覚える。

ライク・ア・バンゾク・プレイング。

うぉぉぉぉ!俺は今を生きてるぞぉおぉお!!

そして、二口目位で噎せた。

 

味濃い!!

これ水で薄めるタイプの奴だ!!

 

 

 

 

ふぅ。

どうにかこうにか、クッソ味の濃いスープを腹に納めて一息つく。

シェルターから一歩出て、タバコを咥えて火をつける。

 

「大自然の中で吸うタバコって何でこんなに美味いんやろ?」

 

謎である。

 

しかし、これからどうすっかねー。

扉が開きっぱなし、かつ中は荒れまくり。

とは言え腐ってもシェルターだ。その外郭は堅牢だと直ぐに分かる。

扉さえ何とか出来れば安全な拠点になってくれる筈。

うむ。要は何かで塞げれば良いんだよなぁ。

良さげな何かを探して見るか。

 

外れたドアとか、何かしらの鉄板めいたものでも良い。

んで、廃材探しつつ他にも使えそうなものを探してここに溜め込もう。

ホテルの医務室や警備室は、同じ建物に肉食の奴らが居るので安全面と精神衛生的にノーサンキュー。

 

そんな風に肚を決めれば、何やらテンションもアガる。

サバイバルだとか生き残る生き延びるだとか余裕が無いと考えるからダメなんだ。

ここをキャンプ地として、秘密基地を作る!

そんな感じで行こう!

 

ベッドを運び込み、電熱でも炭でも薪でも良いから熱源を確保しよう。

最初はペットボトルに水を溜め込むようなしょっぱい方式でも良い。バスタブ持ち込んで水瓶にグレードアップしても良いし、いっそ井戸でも掘ってやろうか。

 

よし、そうと決まれば………先ずはドア探し。

ラプトルサイズとコンプソグナトゥスの侵入を防げるようなやつ。

ティラノサウルスクラスのでかい奴は口を突っ込む位しか出来ないだろうから、中で端に避けるとかしてやり過ごそう。

いや、いっそ車で塞ぐ………ダメだ。デカいのは押し退けて突破してきそうだ。うん。

そもそもジュラシック世界で車って死亡フラグみたいなもんだ。大体追いかけられるし、車の下に逃げたら潰されかけた挙げ句に喰われたりする。

縁起(?)が悪いわ。

 

 

んで、首尾よくドアが付けられたら今度は………シェルター内のお掃除が必要だ。

何せ、ゴミとか血痕とかあるんで。

掃除道具は………うん。調達できなかったら自作かなぁ。

そこらに生えてたりする木の枝を良い感じに纏めれば箒位は作れるやろ。

 

よし、物資漁りの旅に出るど!!

漁るぜェ~、超漁るぜェ~!!!

 

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イスラ・ヌブラル島北西部 砂浜

 

 

太平洋に浮かぶ恐竜たちの楽園、「イスラ・ヌブラル島」

その北西部にある砂浜に、六隻の粗末な潜水艇の姿があった。

その表面は失敗した日曜大工の成果の様にボコボコとしており、浜に上がった姿はさながら打ち上げられて瀕死の鯨の様だった。

かばりと開いた上部のハッチから、次々に人間が這い出してくる。

 

ぞろぞろのたのたと、這いずるように表れたのは30人。

その中に、一際目立つ者が二人居た。

 

一人は小柄な少女だ。

屈強な体躯を野戦服に閉じ込めている男たちの中にあって、ブカブカだぼだぼの野戦服にくるまれているその少女は何ともチグハグな印象を抱かせる。

何よりも、死んだ魚のような目である。

この世の全てを諦めて切り捨てきったその目が、非常に目立つ。

ティーンエイジャー(十代の少女)にはとてもじゃないが似合わない大きな銃を背中に背負いながら、銃よりも表情が見るものに違和感を抱かせる。

 

もう一人は、場にそぐわない派手な紫のジャージを着た男。

下品な金のネックレスで首もとを飾った男は、サングラスを外して心底嫌そうな表情で悪態をつく。

 

「あー、クソ。根っからの都会派のこの俺様が、何でこんなクソみてぇな島のクソ砂浜に居るんだよ!!なぁ、ガキンチョ!?」

 

「さぁ?ジーンの兄貴がボスにケツ貸さなかったからじゃない??」

 

その一言に、周囲から野太い笑いが起きる。

 

「………ガキが吹くじゃねぇかぁ。」

 

と、その時浜の前の茂みがカサリと小さく揺れた。

そこからひょっこりと顔を出したのは恐竜の子供だった。

 

ステゴサウルス。

背骨に沿って、五角形の骨を生やした草食恐竜。

彼女は二足歩行の見慣れない動物の姿に対して警戒して………そのまま身を翻して逃走した。

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