ジュラシックな島に取り残された件。   作:むりー

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ざらざらとしていて湿った何かが、頬を撫でている。

 

「う゛っ?」

 

その感触の不快感に合わせて、生臭く暖かな風の不快感が俺の意識を覚醒させた。

 

「うぉっ!!」

 

目を開ければ、巨大な嘴。

 

俺はプテラノドンに連れ去られそうになっていた事を思いだし、慌てて跳ね起き…ようとして失敗した。

 

「ったぁぁぁ!?」

 

肩に鋭い痛みが走った為だ。

 

茂みで無様にひっくり返った俺が見たものは………背中に鞍を着けたトリケラトプスの子供と、首の骨を折って死んでいるプテラノドンだった。

 

どうやら、トリケラトプスが俺を起こしてくれたらしい。

 

プテラノドンの方は…俺をお空に拐おうとした奴だな。

どうやら麻酔銃で撃たれて墜落死したらしい。

折れて不自然に曲がった首もとに、青い液体が少し残った小さいアンプルが刺さっている。

飛んでるプテラノドンに弾速の遅い麻酔弾当てるとかすげえな保安職員さん。

 

痛む肩に苦戦しながらも、どうにかこうにか立ち上がる。

 

俺はどのくらい気絶していたのだろうか?

 

辺りがすっかり静まり返っていた。

…ん?静まり返って??

 

「おい…おいおい待て!?」

 

ポケットから慌ててスマホを取り出して、時刻を確認する…

 

時刻は10:28。但し日付が変わっている。

 

「…ははっ。俺のお寝坊さんめ。」

 

視界を上げると、木々の間から天へと鋭く伸びるビジターセンターがちらりと見えた。

 

いや、大丈夫。まさか、そんな訳ない………

 

フラフラと覚束ない足取りで、俺はビジターセンターへと向かった。

 

不幸中の幸いにも、あのプテラノドンはそんなに遠くまでは俺を運ばなかったらしい。

 

20分程も歩けば、俺はビジターセンターへと到着した。

 

雄々しく聳え立つビジターセンターは、高層階までもガラスが割れていて廃墟同然になっていた。

 

モノレール駅やホオジロザメを丸呑みにするヤベー奴(モササウルス)の居る湖へと向かうメインストリートには誰も居らず、破壊された売店が寂しげに佇んでいる。

 

手元のスマホに目を落とすも、当たり前の様に圏外。

そりゃそうだ。映画の中でも最後まで残ったオペレーターの人が電源を落としていた。

中継局も死んでいるだろう。

 

「ふへっ。」

 

余りの事態に、変な声が出る。

 

うん。これ、取り残されたよね。

恐竜だらけの孤島に取り残されたよね。

 

「何だよ、一体俺が何したってん!っんほぉケツゥ!!?」

 

呆然と立ち尽くし、現状への不満を空にぶちまけようとして居た俺のおしりに、突如強烈な衝撃が加わる。

 

現世の小学校でカンチョーをクリティカルにかまされた記憶が蘇り、俺は咄嗟に背後を取った襲撃者(アサシン)へとファイティングポーズを取った(腰が引けている)。

 

そして目に入ったのは、不満げに鼻を鳴らすトリケラトプスの子供だった。

 

「お前ぇぇ、どげな了見じゃぁぁ…俺パーフェクトおしり様にケチぃ付けるたぁのぅ…」

 

俺は臀部への強烈な打撃のせいで脳の言語野がバグった。

 

だが、犯人を視界に収めたことで急速にその敵意を萎ませた。

 

 

 

「何だよ鞍を外して欲しかったのか。」

 

まるで俺の言葉を理解した様に、そのトリケラトプスは俺に体の側面を向ける。

 

「分かった分かった。ハイハイ、っと、ここをこうして……ん?いや、間違ったかなぁ?いや、間違ってない??」

 

悪戦苦闘の末に何とか、鞍を外すことに成功した。

圧迫感から解放された喜びを表すように、目の前ののトリケラトプスは体をぶるぶると震わせた。

そして、ちらりと此方を見てから、フンッと溜め息をつくように鼻をならして去っていった。

 

「うわぁ、可愛げねえ奴っちゃなぁ………」

 

妙に人間臭い仕草のソイツを見送って、人のいぶきが感じられなくなったメインストリートに独り立ち尽くす。

独りぼっちの絶望をコミカルに吹き飛ばしてくれたトリケラトプスに幾ばくかの感謝を捧げつつ、ふっと息をする。

 

「さてっ、と。」

 

この状況からどうするか?

取り敢えず、喰われて死ぬのは嫌だ。

血反吐を撒き散らしながら、恐竜に貪り食われるのは絶対に嫌だ。

 

じゃあどうするか?

この島で助けが来るまで生き残るしかない。

 

そうだ。

喰われてなんてやるもんか。

生き延びてやる。

 

そうやって、気合いを入れた所でグゥと腹から音がする。

 

うん。おなかすいた。

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