さて、状況を整理しよう。
俺の目標は助けが来るまで生き残る事だし、おなかすいた。
その為には、外界に向けてSOSを飛ばして助けに来てもらわにゃならん、おなかすいてるしのどもかわいた。
まず、持ち物を確認しよう。
スマホ…食えない。
お財布…食えない。
ホテルのルームキー………やっぱり食えない。
以上っ!!
食いもん!食いもんは何処だぁ!!
…いや、普通に見つけたわ。
ぶっ壊されてる売店に、チョコバーとかのお菓子類が散乱してたわ。
飲み物も…あるわ、あったわ。
えっ、これ飲んで大丈夫!?みたいな毒々しい蛍光色の…スポーツ飲料?みたいなペットボトルが散らばっとるわ。
「ふぅ。」
取り敢えず、チョコバーと謎スポドリをそれぞれ一本失敬して、瓦礫に腰かけて一休み。
チョコバーの過剰な甘さと、スポドリのわざとらしい味わいが俺にアメリカの空気を感じさせる。
追加でもう一本のチョコバーを腹に納めて、満足したので改めて今後どうするかを考える。
手元には、風で流れてきたペラ紙一枚の園内マップ。
この島は、逆さ涙滴とでも言うような形をしている。
現在位置はその中央部分だ。
北には聳え立つ火山がある。確かあの山が噴火して2年?3年??後に、ここにいる恐竜たちは全滅するっ!ヤベーって感じで『ジュラシック・ワールド:炎の王国』が始まる。え?知らない?見よう。ジュラシック・ワールドはイイゾぉ!?
まぁ、それはおいといて、岩肌の露出した割合不毛の大地っぽいので、草食肉食どちらの恐竜もやってくる事は少なさそう。
むしろ火山ガスによって突然の死を迎える方が怖いまである。
で、西側………左手の方に行けば草食竜がありのままに暮らすらしい地域がある。まぁ、多分いっぱい死んでる。インドミナスレックスの虐殺現場だし。肉食竜に出会わない草食系のか弱い(俺含む)生き物の楽園では無くなっているだろう。
東側。危ない肉食恐竜が住む地域。行けば多分大型肉食竜に食べられる。近寄りたくないので却下します。
南側には港がある。
脱出の為のフェリーも多分此処に接岸する。
但し、船は多分もう無い。
ひょっとしたらとついつい考えてしまう自分にフェリーはもうないと納得させるため………いや、確かにひょっとしたらモーターボートとかが残っているかも知れないが、船の動かしかたなんて俺は知らんです。
そして、自殺するために行くようなものである。
あっちに向かうモノレールの線路の上に、プテラノドンやディモルフォドンが空を舞っているのが遠目に見えたしね。
上から襲われて喰われてしまうでしょう。
取り敢えず、東と南に行ったら死ぬ可能性が大である。
恐竜にモグモグされて死ぬ。
北の火山地帯に逃げ込む。
或いは西の草食竜たちの楽園に向かう。
そして最後の選択肢。
島の中央部に留まって救助を待つ。
此処にはビジターセンターやらホテルやらがある。
つまり人が生きるのに必要な物が沢山残っていそうということ。
これがベストっぽい………のだけれども。
現状建物内に何が潜んで居るか分かったもんじゃない。
乗り物に乗ってる奴と、安全そうな建物に隠れている奴は恐竜にあっさり喰われて死ぬのがジュラシックシリーズの定石。
車に乗って、ふぅ。一息、これで安心だぜからのOh,Nooooooガブぅ!食われるシルエットぉ!!とか、怯える獲物にzooom!!が、ジュラシックシリーズの醍醐味である。
まぁ要するに、フラグが立ちすぎてて不吉極まるのが中央に留まると言うことである。
………正直言って、俺は怖い。
生きながらに喰われて死ぬと言うのが、とても怖い。
転生してこれ迄の人生を送って、それなりに経験を積んだと思ったが………あれは簡単に抗える死に様ではない。
決して人がして良い死にかたじゃない。
恐竜は人間を食べる時に、楽に殺してくれない。
彼らは自分が食べやすい様にと、人を食らうのだろう。
生きながらに四肢をちぎり、折り畳み呑み込む。
食われる奴の苦痛も悲鳴も、それまで努力してきた技術、築きあげてきた地位や立場も全て意に介さず食らう理不尽。
例えば、俺のように転生した人物が両方の人生の全てを刀を振るうことに費やしたとしても、届かないであろう生物単体としての格差。
そんな生き物を隣人として生きなければならないと言う現実が目の前に………
止めよう。いかん。
今、凄く後ろ向きになった。
深く考えるな。
今は自分の中の不安に向き合ってはいけない。
どれだけ考えてみても、所詮は憶測と推測に彩られた妄想に過ぎない。
東に行っても案外肉食竜に出会わないかもしれない。
南に行けば、俺を待ってるフェリーが居るかもしれない。
北なら、噴火活動を調査するヘリや飛行機の目にとまるかもしれない。
西で草食竜と戯れながら救助を待てるかもしれない。
「あした、お肉が食べたいな!美味しいお肉が食べたいな!」
………そうだ。
ホテルで、高そうな食べ物探そう。
今ならまだ腐ったりしてない良い感じの食べ物があるかも知れない。
そんなもんをつまみにしながら、救助しに来たやつに「やぁ、遅かったじゃないか?」とか言えたら最高にカッコいい。
「アンチョビとか、つまんでブランデー飲みたいー!」
そう呟きながら、俺はビジターセンターの隣にあるホテルへとフラフラと歩いて向かった。