お腹がある程度満たされて、ふんわりと自分の置かれた環境と内面を確認して結局考えたことを一言で言うと………
「あっ、ホテルの部屋に荷物置きっぱなしや。」
である。
まぁ、次の行動に移るための理由をどうにかこうにかでっち上げた。
行動指針と言うには穴だらけではあるが、ともすれば昨日目にしたスプラッタな光景のショックで足がすくんで止まってしまわない様にと心を殴り付けて折り合いをつけただけのこと。
健全な生き残り生活の為には必要な事なんです。
と、カッコつけたのは良いんだけど次の瞬間には警戒がマッハだったよね!
視界の端にですな、さっきからチョロチョロと小さい、それこそ掌に乗りそうな恐竜が走ってるのを見かけるんですよ。
確か、コンプソグナトゥスとか言う名前の奴だ。
園内で見た記憶がある。
かわいいサイズのくせして、立派に肉食だったのが衝撃的でした。
丁度餌やりの時間だったんだが、沢山のミニ恐竜が一斉に肉に群がる姿は軽く恐怖を覚えた。
そんな彼らに情けなくもびくびく怯えながら、えっちらおっちら歩いてホテルへと無事に到着した。
うーん、分かってたけどやっぱり誰も居ない。
電源が
ここにこのまま突っ込むと、とても危ない目に遭う。
そんな雰囲気だ。
具体的には、良い感じの、人間を襲って食べるサイズの二足歩行の肉食竜に出くわして追い回される。ヴェロキラプトルとか、ディロフォサウルスとか。
そんな
俺はスッとポケットからスマホを取り出してライトを点け、それをかざした。
深部に至るほど、暗くなるホテルのエントランス。
スマートフォンのライトが心細い感じに光ってる。
「うん、絶対足りないよね、光量。」
はっきり照らせて2~3メートル。
5メートル先には光が届かない。
もっと輝けよスマートフォン!!!
俊敏な
そんな屋内に踏み込むとか、絶対ムリ。
しかし、ここまで来て何の成果も得られないと言うのも癪だ。
いや、と言うかかなり疲れてるし、何より肩が猛烈に痛い。
翼竜に
一日の時間を置いて、かさぶたでふんわりと塞がっていたそれが、移動やら食べ物を漁ったりとそこそこアクティブに動いた結果開いて出血してる。
取り敢えず、傷口を消毒洗浄して塞がないといけない。
せめて、その為の道具が必要だ。
贅沢を言えば、メディカルキット的な奴。
贅沢を言わなければ…ウィスキーみたいな強い酒とステープラーとか、針と糸。
火薬で傷口を焼くワイルド応急処置は………無しである。
いや、ホテル内に医務室とかある筈。
ここ、絶海の孤島だしあるよね?相応の医療設備。
「よし、行くか。超怖いけど。」
そう自分を勇気づけて一歩踏み出す。
スマホの明かりを頼りにフロントのカウンターまで向かう。
物音を立てないように静かに、静かに………
だが、そこで俺は見てしまった。
血のように赤く十字が描かれた扉を。
「えっとメディ?………医務室じゃん。」
医務室じゃん。
何だよ、超あっさり見つかるじゃん。
ラッキーじゃん。
いや、待てひょっとしたら鍵がかかって………ない。
「あっさり開くじゃん。………けどまぁ、そらそうよなぁ。」
足を踏み入れた医務室内は、非常に荒れた様子である。
とはいえ、獣に荒らされた感じではない。
まぁ、あれだけの騒ぎがあったんだから負傷者大発生でここは戦場の様に忙しくなったってだけだろう。
寝台には乾いた血痕がべったり着いている。
ごそごそと室内を漁ると、案外簡単に縫合用の道具類を見つける。
消毒用のアルコールは寝台の近くに出しっぱなしにしてあった。
シャツを脱ぎ、傷口を消毒して………
「痛ぁ!!無理!針と糸で縫うとか無理!!」
普通のシティボーイたる自分には、麻酔無しで傷口を縫うだけの根性は無かったよ。
その後、改めて医務室内を漁りもっとお手軽な止血用のキットを見付けた。
凄いや、謎の白い粒を傷に塗り込むだけで良いんだ。
一緒に入っていた解説図を見ながら、スマホの頼りない明かりの下でどうにかこうにか応急処置を終えた。
気がつけば、時刻は16:00。
「よし、今日はここで一晩過ごそう。もう何もやる気が起きねー。」
念のため鍵を閉めて、ポケットから取り出したでろでろに溶けたチョコバーで侘しく食事を取る。
寝台に横になれば、あっという間に眠りに落ちた。