「うぉぉぉぉぉっ!?」
ホテルの部屋にダイナミックエントリーをかましてきたプテラノドン。
その必殺の一撃を、全身を使って横っ飛びして避わす。
ざ、ざけんなこらぁ!すっぞこらぁ!!
そういえば、武器を持っていると気が付いた。
警備室から拝借した拳銃を引き抜く。
プテラノドンが暴れながら肉薄する。
「よっしゃ死ねよやぁぁぁ!」
引き金は動くが弾は出ない………あっ、
拳銃を操作する。
プテラノドンが距離を詰める。
………弾は出ない。
あ、スライドを引いて初弾装填しなきゃ撃てない。
慌ててスライドを引く、今度こそ!
いや、ダメだ近いっ!
銃口を向けるという動作を終える間に、嘴で突き殺される。
ええい、ままよ!!
「っ!」
迫り来るプテラノドンの嘴の側面を、拳銃の銃握で殴り付ける。
パンッ
乾いた間抜けな音を立てて、銃が暴発した。
飛び出した弾丸は、幸運にもプテラノドンの目を掠めて飛んでいったらしい。
ギャウ
耳障りな悲鳴を上げて、プテラノドンが怯んだ。
一歩二歩と後退り、俺との距離が少し空く。
「この、クソ鳥トカゲっ!!」
銃の引き金を引く引く引く。銃声、銃声銃声。
ギャッギァ
一発目は焦って撃った為か明後日の方向にかっ飛んでいったが、二発目と三発目はボディにクリーンヒットした。
ギャウゥゥゥ
「喰われてやんねぇ………喰われてなんかやんねぇからなぁぁぁぁ!!」
銃撃に怯んだプテラノドンに向かって吠える。
ギアッ、グワァ!!クァァァっ!!
対面のプテラノドンは、俺を睨み付けながら更に後退りして割れた窓へとジリジリと近づいて………飛んで去って行った。
対する俺は、暫く動けなかった。
狙うべき標的が飛び去った空間に銃口を向けながらゆっくりと部屋の出口へと向かう。
後ろ手でドアを開けて、ホテルの廊下に出てドアを閉めてから………俺はへたりこんだ。
こ、腰が抜けた!怖えぇぇ!!
なんだあれ、化け物かよ!飛ぶなよ、嘴を鋭くしてんじゃねぇ!!てか魚でも喰ってろ、周りは海やぞガラス破ってダイナミックエントリーしてまで人間さまを襲うんじゃねぇ!!!
「………んふ。ってか何で、まだ俺生きてるの?すごくない?」
いや、こんな島に取り残されたのは不幸だと思う。
けれどもですよ?あんな太古に滅んだモンスターに襲われて、大した怪我もなく、消費した物資は拳銃の弾がええっと………四発?で切り抜けられるってヤバない??
「ふふっ!なんじゃい!トカゲ共がなんぼのもんじゃぁい!!!こちとら現代の支配者人間さま『ぎゃぉぉぁぁぉぉん!!』ひぇっ。」
俺は何処か遠くの恐竜の吠声にびびった。
うん………調子に乗るのは良くない。
取り敢えず何とかなったけど、この島において種族:人間は最弱なんやなって、ここまでで骨身に染みました。
うん、今の俺ならヤクザも怖くない。
けど、恐竜だけは勘弁な!
そんでもう一つ解った事。
ホテル………ってか、今俺が居る島の中央エリアは結構な危険地帯だわ。こんな頻度で恐竜に会ってたら命が幾つあっても足りんわ。
食糧の確保も結局出来なかったし。
安全な寝床なんて夢のまた夢である。
いやこのエリアにあるビジターセンターに行って電力とかを復旧出来たら、また違うのかもしれないが十中八九死地になってるだろ?そんなところに突っ込むのは再び無謀だってはっきりと分かる。
………取り敢えず今日はもう疲れた。一回の戦闘でとても疲れた。
うん、医務室か警備室の扉をしっかり閉めてぐっすり寝よう。
しかし、安全な寝床もまともな食糧も手に入れられんかったなぁ。
何か考えないといかんなぁ。
映画の中では園内に無骨なコンクリート打ちっぱなしの建物かちょくちょく出てきていた。
ああいう建物を寝床として確保出来れば理想的だ。
食糧は………正直甘くない物が恋しくて仕方ない。
贅沢言える状況じゃねーですが、チョコバーはもう嫌ですぅ。
塩が………体に塩が、足らんのです。
水も………水もやっぱり足らんのです。
「どっこいせっと。」
クソみたいに甘くてケバい色をしたアメリカンなファッキンスポドリで、緊張と恐怖でカラカラに乾いた喉を潤してから、おっさん臭い掛け声と共に俺は立ち上がった。
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深夜 コスタリカ沖 イスラ・ヌブラル島から60㌔の洋上での出来事
『こちらは、
闇の中を、大型の潜水艇が四隻からなる船団を組んで進んでいた。
そんな彼らは、不幸にもこの海域を哨戒していたアメリカ沿岸警備隊のパトロール艇に補足されていた。
『あー、クソっ。ツイてねぇ!!!おい、
『けど、ジーンの兄貴!あんなん撃っても………』
潜水艇に乗っているチンピラがそう言ったと同時に
ドンドンドンドン
腹に響くような低音の銃声が闇夜に響く。
パトロール艇の
『クソ、撃ってきやがった!他の舟の奴らは何してやがる!!
兄貴とよばれた男の怒鳴り声に対して、チンピラは
無理もないだろう。
若頭の命令に従って武器を担いでハッチから頭を出せば、パトロール艇の
掠めれば腕が血飛沫をあげて千切れ飛ぶような12.7mm弾の嵐にさらされるのだから。
だが、それを恐れない者が居た。
『どいて、私がやる。』
そう囁くようにチンピラに告げて、小さな影がロケットを奪い取りハッチから身を曝して、トリガーを引いた。
構える本人の体格に比すると随分大きく見える
シュュン、ドン!!
チンピラにとっては幸運な事に、相対するパトロール艇にとっては不幸なことに、弾頭は機関銃の近くに着弾し破片が銃手ごと無力化する。
その爆炎が、一瞬だけ潜水艇から身を出した射手の顔を照らした。
少女だった、幼さをその顔にしっかりと残す少女だった。
しかし、その眼差しは世界に絶望したような暗さを宿している。
面影のあどけなさと、何もかもを諦めきったその瞳がやけに闇夜に映えていた。
少女が言う。
『次を寄越して。』
チンピラ達が、その光景にあんぐりと口を開けて呆けている中で、ジーンと呼ばれた青年が呆れた様に笑いながら次の得物を少女の為に用意する。
『おい!あんまり無茶してガキの癖に早死にすんじゃねーぞ!』
『………うん。頑張る。』
そう言って、少女は二発目のロケットを闇夜に放った。
翌日、この海上での銃撃戦の結果はアメリカでこう報道された。
『本日未明、コスタリカ沖の海上で